部会長: | 安本篤史 |
副部会長: | 金子 誠 矢冨 裕 |
部会員: | 伊藤隆史 河野浩之 薦田さつき 高田眞紀子 土井洋平 宮田茂樹 本橋慎也 山本晴子 和中敬子 |
HIT部会
部会長 安本 篤史(北海道大学病院 検査・輸血部)
a) 第16回SSCシンポジウム
第16回SSCシンポジウムでは、血栓性素因部会と合同開催し、テーマを「COVID-19とSARS-CoV-2ワクチンによる血栓症の最新情報」として発表した。HIT部会から3名が発表し、COVID-19患者とHIT、SARS-CoV-2ワクチンとHIT、そしてSARS-CoV-2ワクチン後の抗PF4抗体について発表した。
b) ガイドライン、診断基準、共同研究などの成果
・「HITの診断・治療ガイドライン」が完成し、2021年に血栓止血誌32(6):737-782にて発表した。今後はこの初版をもとに定期的に見直しをかけて更新を行っていく。
・「アストラゼネカ社COVID-19ワクチン接種後の血小板減少症を伴う血栓症の診断と治療の手引・第1〜3版」の作成協力を行った。
c) その他の活動
以前は単施設において機能的測定法が行われていたが現在は受付を停止している。現在、本邦では確立された機能的測定法を提供することはできていないため、HIT部会として重要な検討事項のひとつである。現在、北海道大学病院検査・輸血部にて機能的測定法を確立して、SARS-CoV-2ワクチン後の血栓症に対してのみ検査を受け付けている。現在、HITでも施行可能なように倫理申請を進めている。検査体制が安定してくれば同様の方法を他施設(東京大学附属病院や熊本大学など)でも施行できる体制を設立する。
・機能的測定法の確立を行う。今年度は北海道大学病院で確立して、症例数を積み重ねて、多施設でも再現性をもって実施できるようにプロトコールを作成していく。
HIT部会 部会長 安本 篤史(北海道大学病院 検査・輸血部)
a) 第15回SSCシンポジウム
HIT部会では、HITの診断・治療ガイドラインの作成を進めており、Clinical Question(CQ)を部会内で検討し、7つの大項目に分けてそれぞれのエキスパートが担当し、ヘパリン起因性血小板減少症の診断、治療ガイドライン-最終案-とのテーマで発表を行った。コロナ禍にあったが、メールにて議論を行い、最終的な推奨文と解説文を作成し、今回の発表に至った。
b) ガイドライン、診断基準、共同研究などの成果
HIT部会ではHITの診断・治療ガイドラインの作成を進めている。これまでにCQの決定、関連する参考文献の抽出および収集、各CQに対する推奨文及び解説文の作成まで行い、令和元年12月にHIT部会員が集まり、詳細な最終検討を行った。コロナ禍の中も活発にメールにて修正を加えて、最終案として3月に完成した。ガイドライン委員会や外部委員にご評価をいただき、次年度に発表していく予定となる。
c) その他の活動
以前は単施設において機能的測定法が行われていたが現在は受付を停止している。現在、本邦では確立された機能的測定法を提供することはできていないため、HIT部会として重要な検討事項のひとつである。HIT部会内での意見を集約した結果、北海道大学病院にて機能的測定法を確立して、同様の方法を他施設(東京大学附属病院や鹿児島大学など)でも施行できる体制を設立する。
・ガイドラインの発表を行う。
・機能的測定法の確立を行う。今年度は北海道大学病院で確立して、症例数を積み重ねて、多施設でも再現性をもって実施できるようにプロトコールを作成していく。
・新型コロナウイルスに対するワクチン、特にアストラゼネカとJ&J社のワクチンで血栓症が報告されている。原因はHITと似たような機序でおきるTTS(血小板減少性血栓症)であることから、HIT部会でも対応策に関与することになった。脳卒中学会からの依頼で、脳卒中学会、COVID-19対策チーム、HIT部会とで手引き作成を行っていく。
HIT部会 部会長 安本篤史(北海道大学病院 検査・輸血部)
1. 令和元年度の活動報告a) SSCシンポジウムの準備内容 b) ガイドライン、診断基準、共同研究などの成果 HIT部会ではHITの診断・治療ガイドラインの作成を進めている。これまでにCQの決定、関連する参考文献の抽出および収集、各CQに対する推奨文及び解説文の作成まで行い、令和元年12月にHIT部会員が集まり、詳細な最終検討を行った。現在はフォーマット調整を行い、HITの基本事項をまとめている段階である。 c) その他の活動 以前は単施設において機能的測定法が行われていたが現在は受付を停止している。現在、本邦では確立された機能的測定法を提供することはできていないため、HIT部会として重要な検討事項のひとつである。今後はガイドラインと並行してどのような体制を作っていくかを検討する。 |
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2. 令和2年度の活動計画ガイドラインの完成に向けて活動していく。CQに対する推奨文および解説文は完成したため、ガイドラインの正式な文書を作成する。HITガイドライン作成委員会にも、適宜、意見を仰いでいく。並行して、機能的測定法の提供についても検討を重ねていく。 |
1. 平成30年度の活動報告a) SSCシンポジウム b) ガイドライン、診断基準、共同研究などの成果 前年度のSSCシンポジウム後にCQを決定し、関連する参考文献の抽出および収集したところ、さらにCQを分ける必要が出たため、CQを7つの大項目に分類した。各担当を決定し、各自でCQに必要な文献の抽出および推奨文を作成し、SSCシンポジウムで発表を行った。そこで検討されたことを踏まえて、推奨文および解説文をガイドラインのフォーマットで作成していく。 c) その他の活動 以前から和中によりHITの情報提供の場としてホームページが作製されていた。定期的にホームページの更新及び症例相談にも応じている。 |
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2. 令和元年度の活動計画ガイドラインの完成に向けて活動していく。CQに対する暫定的な推奨文および解説文は完成したため、GRADEに基づくMinds診療ガイドラインに則って、ガイドラインの正式な文書を作成する。必要に応じてHIT部会員で集まり、進捗を確認しながら進めていく。HITガイドライン作成委員会にも、適宜、意見を仰いでいく。 |
1. 平成29年度の活動報告a) SSCシンポジウム HIT部会では、HITの診断・治療ガイドラインの作成を進めており、平成29年度はHITの診断、治療ガイドライン策定に向けて-検討すべきClinical Question(CQ)とは-のテーマで発表を行った。臨床的診断、血清学的診断、急性期治療、慢性期治療の4つ大項目に分けて、それぞれのエキスパートから現状の問題点をあげていただき、それに基づいたCQを提示して、ディスカッションを行った。今回の検討、討議でガイドラインに必要なCQを網羅することができた。 b) ガイドライン、診断基準、共同研究などの成果 「HITの診断・治療ガイドライン作成委員会」設置を日本血栓止血学会理事会に申請し、承認された。委員長は矢冨裕、副委員長は宮田茂樹とし、部会外委員、外部委員もそれぞれ選出し、承認された。並行して、ガイドラインの作成も進めており、SSCシンポジウム後にCQを決定し、CQに関連する参考文献の抽出および全参考文献の収集も完了した。 c) その他の活動 全国様々な病院からのHIT診断に対するコンサルテーション依頼に対応するために、本邦での機能的HIT抗体検査は、国立循環器病研究センターの宮田らによって行われている。また、HITの全国登録調査が実施され、日本のHIT疑い症例のデータは当該施設に集約されている。今後、検体の二次利用が可能となるように研究計画の変更について、倫理申請が行われている。 |
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2. 平成30年度の活動計画ガイドラインのCQ設定と関連する参考文献の収集は完了したため、平成30年度は、HIT部会員で分担して、GRADEに基づくMinds診療ガイドラインに則って、ガイドラインを作成していく。定期的にHIT部会員で集まり、進捗を確認しながら進めていく。HITガイドライン作成委員会は設置されたため、適宜、意見を仰いでいく。 |
1. 平成28年度の活動報告a) SSCシンポジウム 抗血小板第4因子(PF4)/ヘパリン抗体が細菌や核酸(DNAやRNA)などにより誘導され、ヘパリン投与歴のない整形外科術後患者や感染症患者でspontaneous HIT syndromeが発症する報告が増加している。SSCではまずspontaneous HIT syndromeの一症例が提示され、そのメカニズムおよび適切な診断へのアプローチについて概説された。最後にmouse HIT抗体を用いたspontaneous HIT syndromeのin vitroモデルの確立とその基礎的検討についての発表がなされた。 b) ガイドライン、診断基準、共同研究などの成果 HITの診療ガイドライン作成を目指すこととなった。 c) その他の活動 全国様々な病院からのHIT診断に対するコンサルテーション依頼に対応するために、本邦でのfunctional assayは、国立循環器病研究センターの宮田らによって行われている。また、HITの全国登録調査が実施され、日本のHIT疑い症例のデータは当該施設に集約されている。今後、検体の二次利用が可能となるように研究計画の変更について、倫理申請が行われている。 |
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2. 平成29年度の活動計画ガイドラインの作成に向けて、動き始める。GRADEに基づくMinds診療ガイドラインに則って、ガイドライン策定を行う予定。まずはガイドライン作成委員会の申請を行うこととし、部会員、関連他学会、部会員以外での学会員からの委員選定を行う。また、ガイドライン作成に必要な論文の選定と要約のまとめを早い時期から開始したい。 |
(文責 HIT部会長 宮田茂樹)
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1. | 今年度の活動報告
a) SSCシンポジウムの内容 1.ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)最適診断法の確立 |
2. | 来年度の活動計画 HITの発症メカニズムについて、さらに検討を行うとともに、これまでの検討結果を踏まえ、本邦独自のHIT診断基準、治療指針の策定に向けて具体的な作業を開始する。 |
(文責 HIT部会長 宮田茂樹)
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1. | 実臨床におけるヘパリン起因性血小板減少症(HIT)診断の問題点
HITはclinicopathologic syndromeとしてとらえるべきとされ、HIT診断は臨床症状と血清学的診断を組み合わせて行うことの重要性が指摘されているが、実態としてその診断は必ずしも容易ではない。 血清学的診断法として、従来主に行われてきた免疫測定法(antigen immunoassay:2012年に薬事承認されたラテックス凝集法、化学発光免疫測定法による抗PF4/ヘパリン抗体測定法も免疫測定法)については、感度に優れるものの、特異度が低く、偽陽性を示す割合が多いことが、いくつかの施設での検討で確認された。免疫測定法に過度に依存したHIT診断における、過剰診断の懸念が指摘された。 また、臨床的診断法で一般的に用いられている4T’s スコアリングシステムを用いても、臨床的情報のみでHITを診断することは困難であることが指摘された。特に、4T’s スコアについても、異なる判定者による最終的なスコアに乖離が生まれるという問題も報告され、今後さらに、HITの臨床的診断法ならびに血清学的診断法改善の重要性が指摘されている。 |
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2. | 感度、特異度に優れた機能的測定法(functional assay)の確立 上述したHIT診断の問題点を解決する1つの方法として、患者血清に含まれる抗PF4/heparin抗体が、血小板活性化能を保持する抗体(HIT抗体)かどうかを検討できるfunctional assayの重要性が指摘されている。HIT抗体に感受性の高いドナーを選択し、洗浄血小板を作成、患者抗体がヘパリン依存性に洗浄血小板を活性化させる能力があるかどうかを検討する方法である。いくつかの施設で、検討され、確立されつつある。本邦からも、HIT診断に対し、感度、特異度に優れた方法としてその有用性も報告されており、今後、HIT診断の感度、特に特異度を向上させる方法として、確立していく必要性が確認された。 |
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3. | HIT疑い症例の全国登録調査(HITレジストリ)を継続 国立循環器病研究センター倫理委員会の承認を得て、HIT疑い症例の全国登録調査を継続して実施している。現時点で、全国230を超える施設から、520症例が登録され、データベース化している。それらの解析の中で、次に述べるHITの臨床的特徴について検討された。 |
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今後さらに、これら構築したデータベースを用いて、解析を進め、本邦独自にHIT診断基準、治療指針の策定につなげていく。 |
(文責 HIT部会長 宮田茂樹)
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1. | Clinicopathological symdromeとしてのHIT診断の特性の検討 従来、本邦では、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)診断の血清学的測定法として、免疫測定法(antigen immunoassay)が主に実施されてきた。2012年に薬事承認された抗PF4/ヘパリン抗体測定法も免疫測定法であり、これらのアッセイは、感度に優れるものの、特異度が低く、偽陽性を示す割合が多いことで、過剰診断の懸念が指摘されてきた。実際、いくつかの施設による検討が行われ、免疫測定法によるHIT診断の感度、特異度に問題があることが報告され、また、臨床的診断法として汎用されている4Tsスコアリング判定も、その判定の不確からしさから、臨床症状のみでHITを診断することは困難であり、HITをclinicopathological syndromeとして、臨床的確からしさと血清学的診断法の特性を理解した上で、的確に診断する必要があることが確認された。 |
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2. | 感度、特異度に優れた機能的測定法(functional assay)の確立 上述したHIT診断の問題点を解決する1つの方法として、患者血清に含まれる抗PF4/heparin抗体が、血小板活性化能を保持する抗体(HIT抗体)かどうかを検討できるfunctional assayを確立し、運用している。HIT抗体に感受性の高いドナーを選択し、洗浄血小板を作成、患者抗体がヘパリン依存性に洗浄血小板を活性化させる能力があるかどうかをフローサイトメトリーで検出する方法である。HIT診断に対し、感度、特異度に優れた方法としてその有用性を報告した。(Thromb Haemost 2014, in press) |
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3. | HIT疑い症例の全国登録調査(HITレジストリ)を継続 国立循環器病研究センター倫理委員会の承認を得て、HIT疑い症例の全国登録調査を継続して実施している。現時点で、全国300を超える施設からの770症例に対する診断、治療に関するコンサルテーション依頼に対応してきた。このうちHITレジストリとして470症例分の症例報告書を回収、データベース化した。HIT抗体測定依頼にも対応している。(可能な限り1日以内に結果を報告する努力を継続している) |
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4. | HITの臨床的特徴の解析
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上記本年度の研究概要について、2014年2月22日に開催された第8回日本血栓止血学会SSCシンポジウムで報告され、その内容について討議した。 |
平成25年3月18日
(文責 HIT部会長 宮田茂樹) |
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1. | 本邦におけるヘパリン起因性血小板減少症(HIT)診断基準(案)の策定 | ||||||||||
平成23年度厚生労働科学研究費 難治性疾患克服事業 「ヘパリン起因性血小板減少症の診断基準確立のための研究」の研究成果として、研究班の合意のもとに、「本邦におけるHIT診断基準(案)」を作成。 現在、作成したHIT診断基準(案)の妥当性について、多施設共同で検討するための前向き観察研究実施に向けた研究費を申請中。 |
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2. | HIT疑い症例の全国登録調査(HITレジストリ)を継続 | ||||||||||
国立循環器病研究センター倫理委員会の承認を得て、HIT疑い症例の全国登録調査を継続して実施している。現時点で、全国200を超える施設から600症例を超える登録をいただいいており、症例報告書を358症例回収、データベース化している。また、HIT症例に対する、診断、治療に関するコンサルテーションに対する対応や、HIT抗体測定依頼にも対応している。(可能な限り1日以内に結果を報告する努力を継続している) 全体のデータベースの解析を実施しているとともに、これらのデータベースから基礎疾患ごとの特異性を検討するためのsub解析を実施している。
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3. | 免疫学的測定法(antigen assay)の現状、問題点についての解析 | ||||||||||
上記HITレジストリとは別に2つの研究が実施された。 | |||||||||||
4. | 上記本年度の研究概要について、2013年1月12日に開催された日本血栓止血学会SSCシンポジウムで報告され、その内容について討議した。 |
皮肉にも優れた抗凝固薬であるヘパリンが誘引となり、免疫学的機序により血小板減少とともに重篤な血栓塞栓症を引き起こす「ヘパリン起因性血小板減少症(HIT: heparin-induced thrombocytopenia)」という疾患の病態が近年、急速に解明されつつある。
本邦でもようやく2006年4月にヘパリンの添付文書が改訂され、HITが重篤な副作用として認知された。しかしながら、現時点において、HITの治療薬、診断薬としてわが国において薬事法上承認されたものはない。このため、臨床上大きな混乱を招いており、その対策が急務となっている。
HIT部会では、ヘパリン起因性血小板減少症の本邦における診断基準、治療指針の策定に向けて、活動を行っている。
平成18年度には、本邦におけるHITの発症割合ならびにHITの現状を把握するために、岡本歌子先生を代表とするHIT情報センターを中心として、本邦におけるHIT症例の集積とその検討を行うととともに、レトロスペクティブならびにプロスペクティブコホート研究を行ってきた。
特に、ヘパリン投与が必須である心臓血管外科手術ならびに経皮的冠動脈インターベンション施行患者を対象とした、多施設共同プロスペクティブコホート研究(循環器病研究委託費 15公-1)を実施し、全国11施設より合計1,554名の登録が行われた。現在その解析を実施している。
また、本邦においてHIT治療薬として薬事法上承認されたものはない現状を打破するため、アルガトロバンのHITに対する臨床試験(自らが実施する治験)(厚生労働科学研究費補助金:治験推進研究事業 大規模治験ネットワーク:日本医師会 治験促進センター)を実施した。本治験は本邦における初めての医師主導治験の1つとして実施された。全国20施設の御協力を得て、最終的に8症例が登録された。現在、解析を実施している。また、海外のHIT研究者とも連携を取り、情報収集を行っている。