抗リン脂質抗体部会

部会長: 保田晋助
副部会長: 家子正裕 野島順三
部会員: 渥美達也 上野祐司 奥 健志 金子 誠 杉浦真弓 關谷暁子 武谷浩之 徳永尚樹 
内藤澄悦 藤枝雄一郎 松林秀彦 森下英理子 本木由香里 山﨑 哲 吉田美香 渡邊俊之
詳細情報
  • 平成28年度活動報告書

    部会長 保田 晋助(北海道大学 免疫・代謝内科)
     
    抗リン脂質抗体部会では、家子正裕部会長のリーダーシップのもと、平成24年度からの4年間で標準化の基礎作りを行った後、「測定方法の標準化から診断方法への標準化へ」と一歩進んだテーマに取り組みました。平成28年度は小生が引き継いだ最初の年度となりました。測定法の標準化がある程度進捗してきており、「多彩な抗リン脂質抗体の標準化から実用へ」とのテーマを掲げて抗リン脂質抗体プロファイルと臨床像の関連を見出し、最適の治療法を明らかにしてゆきたいと考えています。抗リン脂質抗体部会では、ELISA-aPL部門, ループスアンチコアグラント(LA)部門, APS部門の3つの小グループがaPL測定方法の標準化を中心に、新たな目標に向けて活動しています。
     

    1)ELISA-aPL部門
     山口大学の野島順三先生が中心となり、APS診断に必須な検査項目である抗カルジオリピン抗体(aCL)および抗β2GPI抗体(aβ2GPI)測定の標準化を目的に、従来のELISAに加え、自動分析装置を用いた抗体価測定試薬について多施設共同研究を行った。健常人血清ならびにAPS患者血清を対象に、IgGおよびIgMクラスのaCLとaβ2GPIの合計4種類の抗リン脂質抗体の測定を北海道医療大学・金沢大学・山口大学の3施設にて実施した。自動分析装置による抗体価測定は、aCL(IgG・IgM)およびaβ2GPI(IgG・IgM)の4項目全てで測定値の施設間差は殆ど認められなかった。測定者の熟練度で測定値が変動するマニュアル操作のELISAと比較して、自動分析装置による抗体価測定では、どの施設で測定を実施しても同じ測定値を得ることができ、病院検査部での抗リン脂質抗体測定の標準化・実用化を進める上では、一つの有用な測定法であることが確認された。従来のELISAとの比較では、自動分析装置用測定試薬にて測定した抗体価は、マニュアル操作によるELISAの測定結果と概ね良い相関を示したが、一部の検体で測定値の解離が確認されており、原因の精査が必要である。これまでの検討により、APS診断のスクリーニング検査としてはIgGクラスのaCL-ELISAが最も有用であることを提唱した。今後は、血栓症を発症するリスク予測のためにどのような抗リン脂質抗体を測定しなければならないのか、ホスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体(aPS/PT )も含めて検討する予定である。
     

    2)ループスアンチコアグラント(LA)部門
     LA部門では聖マリアンナ医科大学の山崎 哲先生が中心となり、本邦で保険適応となっている3種のdRVVT試薬の標準化を目的として検討を行ってきた。健常邦人を対象とした多施設共同研究において、健常人平均値によりnormalizeしたリン脂質無添加dRVVT/リン脂質添加dRVVTの比(normalized screen/confirm ratio: N-S/C ratio)での報告方法で、健常人カットオフ値を共通して1.2付近に設定できる可能性、さらに、ホスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体モノクローナル抗体(23-1D)またはLA陽性コントロール血漿による結果値のハーモナイゼーションの可能性を報告した。本年度は、検査としての利便性を考慮し、normalizeに使用する正常血漿について検討を加え、少なくとも20~40名由来のプール血漿を使用することで試薬ロット間差が収束する結果を得た。また、健常人において若干の男女差を認めたことから、プール血漿作製においては男女比を考慮する必要性を提唱した。今後は、患者血漿を対象としたAPS診断のカットオフ値設定の試みや、APTT系LA試薬の標準化について取り組む予定である。
     

    3)APS部門
     北海道大学が中心となり、APS診断方法の標準化を検討した。これまで「aPLスコア」がAPS診断および血栓症のリスク予測に有用であることを提唱してきたが、ヨーロッパから提唱された類似の予スコアであるGAPSSとの間で有用性の比較を行った。結果、APSの診断には両者は同等に有用であったが、血栓発症予測能に関してはaPLスコアがより有用性が高いことが示唆された。
     また、APS分類基準に含まれていない抗リン脂質抗体である抗β2GPIドメインI抗体 (aDI Abs)およびホスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体 (aPS/PT Abs)の診断における有用性についても検証した。その結果、これらのnon-criteria Absは従来のLA, aCL, 抗β2GPI抗体と同等のAPSの診断能を有することが示された。
     現在on goingの状況ではあるが、抗リン脂質抗体プロファイルと臨床像との関連を全国規模で明らかにする目的で、APS患者血清・血症をバイオバンク化し、患者データベースとリンクさせるシステムを構築している。バイオバンクについては北海道大学生体試料管理室を利用し、同大学で立ち上げたEDCに研究者が患者情報を登録可能にすべく準備を進めている。

  • 平成27年度活動報告書

    部会長 家子 正裕(北海道医療大学歯学部内科学分野)
     
    抗リン脂質抗体部会では、私が部会長になった平成24年度から3年間を「標準化の基礎作り」と考え、診断に用いる抗リン脂質抗体(aPL)の検査方法の標準化から開始した。4年目となる今年度は、標準化の基礎作りから一歩進んで「測定方法の標準化から診断方法への標準化へ 2nd Stage」とテーマを決めて、現状で可能なaPL測定方法の標準化に関する提言を目的とした。現在、抗リン脂質抗体部会では、日本検査血液学会標準化委員会「血栓止血検査標準化小委員会」のメンバーと共同で組成した「日本抗リン脂質抗体標準化ワークショップ(APS-WS)」を活動の場として、「APSの疫学・診断・治療を検討するグループ(APS部門)」、「ELISAで測定されるaPL測定の標準化を行うグループ(ELISA-aPL部門)」、「ループスアンチコアグラント(LA)の標準化を検討するグループ(LA部門)」にメンバーを分け、aPL測定方法の標準化を中心に活動している。
     

    1)ELISA-aPL部門
     山口大学の野島順三先生が中心となり、APS診断に必須な検査項目である抗カルジオリピン抗体(aCL)および抗2GPI抗体(a2GPI)の標準化を目的に健常人サンプルを種々のaCLおよびa2GPI測定キットを用いて測定する多施設共同研究を行った。aCL ELISA kitはIgGおよびIgMクラス抗体測定用の5種類、a2GPI ELISA kitはIgGおよびIgMクラス抗体測定用の2種類のキットを用いて健常人参考値を決定した。試薬間差は認めたが、ELISAの測定原理を熟知し正確な技術を修得した人が測定することにより施設間差はきわめて最少にすることができ、信頼できる測定値が得られることが分かった。それぞれの測定キットにおける健常人参考値に加え、APS患者を対象とした検討も現在進行中で、今後のaPL測定における「健常人の基準値」および「APS診断のカットオフ値」として、後日学会誌に報告予定である。また、aCL-IgGは本邦で保険収載があるが、その他のELISA-aPLは認められておらず、今後この結果を元に保険収載への道を模索する予定でもある。
     

    2)ループスアンチコアグラント(LA)部門
     聖マリアンナ医科大学の山崎 哲先生が中心となり、LA検査のひとつであるdRVVTの標準化を目的として行っている。現在、本邦では3種類のdRVVT試薬での測定が可能であるが、その結果の同一性は不明で標準化が望まれていた。健常邦人を対象とした多施設共同研究を行い、3種類のdRVVT試薬における標準化の可能性を検討した。リン脂質添加dRVVT/リン脂質無添加dRVVTの比での報告方法では、ホスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体モノクローナル抗体(23-1D)が2社の試薬で共通のコントロール標準品になりうる事を確認した。また、231Dに反応が弱い1社の試薬も、同試薬に含まれる標準品による値を231Dによる値と換算できる事も確認できた。また、比での結果報告では、3社の試薬共そのカットオフ値を1.2付近に設定できる事も分かった。今後のdRVVT系LA測定における「邦人のカットオフ値」として、後日学会誌に報告し多くの医療施設に周知すると共に、今後はAPTT系LA試薬の標準化も予定する。
     

    3)APS部門
     北海道大学の保田晋助先生が中心となり、APS診断方法の標準化を検討した。現在、APSの診断にはAPS分類基準が使われているが、APS分類基準による診断には12週間の観察期間が必要であり、また治療開始基準としては用いることは難しい。北海道大学より提唱された「aPLスコア」は、APS診断にも有用であり、また血栓形成の危険性の確認となることが報告されたおり、APS部門ではその有用性を中心に検討している。現状のaPL測定方法ではaPLスコアのAPS診断への有用性は高く、また血栓形成の予測因子としても有用であることが示された。当然ながらaPLスコア算出のためには、aPL測定の標準化が重要であり、今後標準化された方法によるaPL測定値を用いたaPLスコアのAPS診断の有用性および血栓傾向の指標としての可能性を再検討すると共に、aPLスコアの全国への普及を目的に活動する予定である。

  • 平成26年度活動報告書

    文責:「抗リン脂質抗体部会」部会長:家子正裕

    (北海道医療大学歯学部内科分野)

    1.構成員

    部会長:家子正裕

    副部会長:保田晋助、松林秀彦

    部会員:渥美達也、野島順三、杉浦真弓、武谷浩之、北島勲、森下英理子、金子誠、上野祐司、奥健志、

    山崎哲、内藤澄悦、本木由香里、吉田美香

     

    2.抗リン脂質抗体検査標準化への取り組み

    APSの診断のためには、国際的には①抗カルジオリピン抗体(aCL)(IgGおよびIgM)、②抗b2GPI抗体(ab2GPI)(IgGおよびIgM)、ループスアンチコアグラント(LA)の測定が必須である。しかし、現在我が国で保険収載されているのは、aCL-IgGおよびLAだけである。そこで、「抗リン脂質抗体部会」では、まずELISA-aPLグループ、LAグループおよびAPSグループに別れて活動している。

    1)ELISA-aPLグループ:野島先生を中心にaCL-IgMおよびab2GPI-IgG, IgMの標準化を行っている。日本人の血清約3000サンプルをもとに、上記ELISA-aPLを測定し、健常邦人にける基準値を決定すべく、金沢大学(森下先生)、北海道医療大学(吉田先生)を含む3施設で検討した。同様に将来のAPS診断的検査項目と言われているホスファチジルセリン抗プロトロンビン抗体(aPS/PT)についても健常邦人の基準値を検討中である。次回のSSC symposiumではその結果を公表する予定である。

    2)LAグループ:山崎先生を中心に希釈ラッセル蛇毒凝固時間(dRVVT)法によるLA測定の標準化を行っている。保険収載のあるLA test Gradiporeをスタンダード試薬として健常人血漿による基準値を聖マリ大学(山崎先生)、北海道医療大学(内藤先生)を含む3施設で測定し検討中である。合わせて、Positive controlの標準品を用いて他のdRVVT試薬とのハーモナイゼーションも行っている。同様に次回のSSC Symposiumには報告できる予定である。

    3)APSグループ:APS診断方法の改善を目的に、北海道大学(渥美先生、保田副部会長)が中心となってAPS scoreの検討を行っている。現在標準化中のaPL測定方法を用いて、将来的にはAPS scoreによるAPS診断方法の標準化を目指す予定である。また、血栓症を主症状とするAPSと産婦人科領域のAPSが同一病態として分類可能かなどの検討も、松林副部会長を中心に行う予定である。

     

    3.他学会との標準化における連携

    抗リン脂質抗体部会は、日本検査血液学会標準化委員会「血栓止血検査標準化小委員会」と連携し、上記標準化の検討を行っている。その成果は、独立した研究会組織である「日本抗リン脂質抗体標準化ワークショップ(APS-WS)」の学術集会で報告され、約90名の参加者において討論されている。

    また、本部会での検討事項は、日本血栓止血学会学術集会のみならず日本検査血液学会学術集会でも発表され、多分野の先生からの意見やコメントを集積し標準化への資料としている。

     

    4.今後の予定

    1)aPL測定試薬・方法の標準化:本部会でのaPL測定用スタンダード試薬を決定し、それによる健常邦人の基準値を設定する。また、他試薬とのハーモナイゼーションを行った後、そのデータをもとに保険収載申請の努力をしたいと考えている。

    2)APS診断基準のためのcut off値設定:APS患者サンプルを収集の後、APSと診断されるELISA-aPLおよびLA値のcut off値の設定を試みる予定である。そのため、現在部会員の所属する施設でのAPS患者血漿を収集中である(各施設の倫理委員会の承認は得ている)。

    3)APS診断および治療の標準化:2)の値をもとに、APS診断率の向上を目指す。現在、北海道大学より報告されているAPS-Scoreを中心に検討する予定である。また、APS-Scoreを用いた治療効果判定も視野に入れて検討中である。

  • 平成25年度活動報告書
    部会長 家子 正裕(北海道大学歯学部内科学分野)
    抗リン脂質抗体部会では標準化の基礎作りを3年間と考え、平成24年度はAPS診断・治療の標準化を視野において現状を確認する作業を行った。平成25年度は、昨年の結果より、まず診断に用いる抗リン脂質抗体(aPL)の検査方法の標準化が重要と考え「診断検査の標準化を中心に」活動した。
    本部会では、日本検査血液学会標準化委員会「血栓止血検査小委員会」および「日本抗リン脂質抗体標準化ワークショップ(APS-WS)」と協同して活動を行っている。メンバーを、「APSの疫学・診断・治療を検討するグループ(APS部門)」、「ELISAで測定されるaPL測定の標準化を行うグループ(ELISA-aPL部門)」、「ループスアンチコアグラント(LA)の標準化を検討するグループ(LA部門)」に分けて活動している。
    1)APS部門:「aPLスコア」の診断的有用性の確認とaPLスコアの全国への普及を目的に活動した。aPLスコアは、抗カルジオリピン抗体(aCL)-IgG, -IgM, 抗β2GPI抗体(aβ2GPI)-IgG, -IgM, ホスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体(aPS/PT)-IgG, -IgM, APTT, カオリン凝固時間(KCT), 希釈ラッセル蛇毒時間(dRVVT)の測定結果にスコアをつけて、総数をカウントして判断するものである。aPLスコア30以上で血栓症リスクが増大し、またAPS症状に対するROC解析より、APSの診断に関してAPS分類基準(Sapporo Criteriaのシドニー改訂)より有用性が高いことを確認した。また、今年度のSSCミーティングで、産科におけるAPSの診断検査は現状では問題がある旨の指摘があり、今後の検討課題とすることにした。
    2)ELISA-aPL部門: ELISAで測定されるaPLの標準化を行っているが、本年度はaPS/PTの健常人参考値の決定を目標に活動した。現在本邦で使用可能な3種のaPS/PT試薬を用いて、aPS/PTにおける健常人参考値は、IgGクラスでは2試薬がほぼ同様で0.12~17.18U/mL、他の1試薬では4.27~38.57U/mL、IgMクラスでは1試薬が0.98~38.68 U/mL, 他の1試薬では3.14~35.38U/mLであった。このように試薬間差が大きく、モノクローナルaPS/PTである23-1Dを基準物質とした試薬間のハーモナイゼーションが必要であり、今後の予定とした
    3)ループスアンチコアグラント(LA)部門:dRVVTの標準化に向けた作業を開始した。健常人を対象とした基準値設定、患者血漿を対象としたLA診断のカットオフ値設定、およびコントロール血漿やホスファチジルセリン依存性抗プロトロンビンモノクローナル抗体(23-1D)の添加血漿を用いた精度管理や試薬間差の検証をdRVVT試薬4種、分析装置6種を用いて検討している。健常人血漿(129例)とコントロール血漿(陽性5種、陰性2種)および23-1Dの添加血漿についての測定が現在進行中で、4機種までの測定が終了した。4試薬4機種のScreen/Confirm(S/C)比の健常人99%タイル値は、1.16~1.43と組合せによる差を認めている。また、231Dの添加血漿による比較でも、添加濃度に対するS/C比に差を認め、組合せごとの基準値、カットオフ値の設定が必要となるか、または231Dによる補正などが可能となるかを含めて検討課題とし、次年度以降も検討を継続する。
  • 平成24年度活動報告書
    • 今年度は、今後抗リン脂質抗体症候群(APS)の標準化を行うために、APS治療の現状およびAPS診断方法の現状を確認した(SSCシンポジウムで報告)。

      1)APS治療の現状および問題点
      – 血栓症の予防・治療として、ワルファリンによる抗凝固療法が主体である。しかし、藤枝先生(北大)らは、動脈血栓症では抗血小板薬の予防投与で動脈血栓症の再発が防げた。
      – 産科ガイドラインでは、本邦の「PTE/DVT予防ガイドライン」に準じている。しかし、欧米で妊娠中にも頻用されている低分子ヘパリンやXa阻害剤が、本邦では適用外となっている。今後、このような薬剤の適応拡大が必要である。
      – APSに伴う脳梗塞は多発性であり、恐らく塞栓症の可能性が高い。また、APSに伴う脳梗塞では。ワーファリンやアスピリンの予防効果が低い場合がある。今後の対策が必要。

      2)APS診断の現状および問題点
      – 様々な抗リン脂質抗体測定用のELISAキットがあり、しかも現状では基準値が不明瞭である。今年度は、野島先生方(山口大)により、抗カルジオリピン抗体(aCL)-IgG: 10.0 U/mL、-IgM: 10.7 U/mL、ホスファチジルセリン依存性抗プロトロビン抗体(aPS/PT)-IgG: 17.2 U/mL, -IgM: 38.7 U/mL、およびb2GPI依存性aCL: 2.9 U/mLと判定した。
      – Lupus anticoagulant(LA)は、サンプル中の残存血小板数に影響され偽陰性になる事が多い。国際血栓止血学会標準化委員会では2重遠心処理血漿をLA用サンプルと推奨しているが、診療現場では困難な事が多い。今年度は、1回遠心処理でバフィーコート付近を採取しないサンプルでも良好な結果が得られる事を確認した。
      – LAスクリーニング用のAPTT試薬に関しても国際血栓止血学会で推奨するシリカ活性化剤試薬が必ずしも有用ではなく、LA測定に重要なのはリン脂質の組成と濃度であることも確認した。

      3)今後の標準化に向けた取り組み
      平成25年1月12日:今年度の標準化委員会学術シンポジウムの際にミーティング行い下記の話し合いを行った。
      – 抗リン脂質抗体測定の標準化を行うために、日本血栓止血学会標準化委員会抗リン脂質抗体部会と日本検査血液学会標準化委員会止血血栓検査小委員会のメンバーが合同で、ELISAで測定される抗リン脂質抗体の標準化(ELISAグループ)、ループスアンチコアグラントの標準化(LAグループ)およびAPS患者の診断方法の標準化(APSグループ)の3グループに分かれて行う事を確認した。

  • 平成21年度活動報告書
    抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome, APS)は抗リン脂質抗体の存在により,血栓症,不育症をきたす自己免疫疾患である.国際血栓止血学会SSC「抗リン脂質抗体」部会および,国際抗リン脂質抗体学会による診断分類基準案(Sydney Criteria)では本症候群の診断に際して,IgG型またはIgM型抗カルジオリピン抗体(aCL),抗β2-glycoprotein抗体(aβ2-GP I),ループスアンチコアグラント(LA)のいずれか1つ以上が陽性であること,とされているが,我が国ではIgM-aCLは保険収載されておらず,aβ2-GP測定キットは市販されていない,という問題がある.さらにLAの診断については世界的にも指針が定まっていない.
    治療法についても特に動脈血栓再発予防のための抗血栓療法についてのコンセンサスは得られていない.
    本部会では,我が国におけるAPS診断のための検査項目の標準化,およびアジア人種の特性にあった治療法の標準化を目指し,以下の研究を進めていく予定である.特にLA診断基準の標準化のためには実際にLA測定を行なう,検査部の方々の協力が必要であり,この分野の研究者,医師,技師の方々の参加を希望する.I. 抗リン脂質抗体の標準化案の作成
    (1) 我が国におけるIgG-aCL, IgG-aCL/β2GPIの99パーセンタイル値の設定
    (2)LA診断基準の作成
    (ア) LAスクリーニング検査
    (イ) クロスミキシング試験の標準化
    (ウ) クロスミキシング用標準血漿の標準化
    (エ) 確認試験の標準化
    (3)aβ2-GPの導入
    (4)フォアスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体(aPS/PT)の臨床的意義の確立
    II. 抗リン脂質抗体症候群治療方針の標準化案の作成

    (文責:抗リン脂質抗体部会長 山崎雅英
  • 平成16年度活動報告書

    血栓止血学会・学術専門委員会抗リン脂質抗体標準化検討部会

    部会長 北海道大学大学院医学研究科第二内科 渥美達也
    副部会長 金沢大学医学部第三内科 山崎雅英
    副部会長 東海大学医学部産婦人科 松林秀彦
    副部会長 浜松医科大学産婦人科 西口富三

    担当理事 山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝

    1. ループスアンチコアグラント標準化

    学術専門委員会抗リン脂質抗体標準化検討部会の活動の中心は、ループスアンチコアグラント(LA)標準化である。現在日本検査血液学会、厚生科学特定疾患対策研究事業「自己免疫疾患に関する調査研究」との共同のプロジェクトとして標準化をすすめている。
    抗リン脂質抗体、特に凝固アッセイであるLAの検出法は極めて多様であり、アッセイの標準化の欠如が抗リン脂質抗体症候群の診断の大きな弊害となっている。そこで、全国の主要施設にLAの実施法についてサーベイをおこない、その結果にもとづいてLAスクリーニング用の試薬を選定、11施設に試薬とサンプルを送付して一致率の高い試薬を選定した(ループスアンチコアグラント標準化について中間報告を参照)。これをスクリーニングの標準品とした。ただしこのことは、他の試薬を排除するものでなく、あくまである試薬を「LAスクリーニングの標準品」とすることによって検査の標準化をはかる、ということであり、他の試薬を用いる場合は標準品との比較検討をふまえたうえでおこなうのであればLAの診断に何ら問題がないものと考える。昨年までの検討の結果、ロシュ社のPTT-LAが標準品として適しているという結果となった。この報告書は本学会ホームページ上で公開された。
    本年度以降の作業として、確認試験のプロトコールの標準化をおこなう。ミキシングテストおよびリン脂質添加試験がLA確認のステップとされているが、サーベイの結果から比較的多くの施設でおこなわれている方法をいくつかとりあげて、ひきつづき多施設による検討をおこなう。

    2. コンセンサスシンポジウムなど

    本年度は本学会総会においてはコンセンサスシンポジウムを開催する予定はないが、本学会、または他学会、研究会、研究班会議等で本検討部会の活動と関連するテーマがある場合は十分な協力をおこなう。

    3. 第11回国際抗リン脂質抗体会議の報告

    2004年11月14-18日、オーストラリアのシドニーにおいて、第11回国際抗リン脂質抗体会議がおこなわれる。本検討部会では同会議のエッセンスにつき報告、ホームページ等で公開する予定である。
  • 平成15年度活動報告書
    ループスアンチコアグラントの標準化について(中間報告)
    血栓止血学会・学術専門委員会抗リン脂質抗体標準化検討部会部会長 北海道大学大学院医学研究科第二内科 渥美達也
    副部会長 金沢大学医学部第三内科 山崎雅英
    副部会長 東海大学医学部産婦人科 松林秀彦
    副部会長 浜松医科大学産婦人科 西口富三担当理事 山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝

    要 旨

    抗リン脂質抗体症候群(APS)は血栓症/妊娠合併症などの臨床症状と、抗リン脂質抗体の存在によって診断される。抗リン脂質抗体は免疫学的検出法(ELISA)と凝血学的検出法(ループスアンチコアグラント:LA)とがあるが、特にLAは疾患を定義する検査でありながら、その標準化は困難でありこの分野の長期の課題であった。本検討部会では、厚生科学特定疾患対策研究事業「自己免疫疾患に関する調査研究」および検査血液学会との合同でLAのわが国での標準化にとりくんでいる。全国の主要施設にLAの実施法についてサーベイをおこない、その結果にもとづいてLAスクリーニング用の候補試薬を選定した。11施設に試薬とLAサンプルを送付して凝固検査をやっていただきその結果を集計した。スクリーニング試薬の標準品としの条件は、(1)廉価である、(2)入手しやすい、(3)感度が高い、(4)測定結果の施設間差が少なくて判定の一致率の高いこと、である。6試薬の比較から、PTT-LAをスクリーニング標準品とした。ただしこのことは、他の試薬を排除するものでなく、あくまである試薬を「LAスクリーニングの標準品」とすることによって検査の標準化をはかる、ということであり、他の試薬を用いる場合は標準品との比較検討をふまえたうえでおこなうのであればLAの診断に何ら問題がないものと考える。今後は、さらに多施設による検討、また確認試験の標準化をすすめる予定である。

    1. 目的

    APSは血栓症/妊娠合併症などの臨床症状と、抗リン脂質抗体の存在によって診断される。抗リン脂質抗体は免疫学的検出法(ELISA)と凝血学的検出法(ループスアンチコアグラント:LA)とがある。国際的に利用されているAPSの分類基準案(Sapporo Criteria)では、IgGまたはM型β2-グリコプロテインI依存性抗カルジオリピン抗体陽性またはLA陽性が検査項目として必須となっている。前者は比較的標準化がすすんでおり、測定キットが普及している。一方、LAは1995年に国際血栓止血学会の標準化委員会が、(1)リン脂質依存性凝固時間でスクリーニング、(2)ミキシングテストでインヒビターであることを確認、(3)リン脂質添加試験で凝固時間異常が是正されることを確認、という手順で検出することを推薦しているが、用いる凝固時間試薬や測定条件によって結果が大きくことなり、施設間差が極めて大きい難しい臨床検査と認識されている。
    本検討部会では、厚生科学特定疾患対策研究事業「自己免疫疾患に関する調査研究」および検査血液学会との合同でLAのわが国での標準化にとりくんでいる。その途中経過を報告する。

    2. 研究方法

    血栓止血学会および検査血液学会評議員、また上記研究班員の計284人に、LAのスクリーニング試薬として何を使用しているか、という設問を含めたアンケート調査をおこなった。返答のあった59施設で使用されている試薬のうち、多く使用されている、入手しやすい、廉価である、を条件として4試薬を選定した。サンプルとともにこれらの試薬を11施設に送付し、凝固時間を測定いただいた。
    標準化で用いたサンプルを表1に示す。いずれもインフォームドコンセントの得られた患者あるいは健常人から採取、調整した。人工的LA血漿は、強いLA活性をもつホスファチジルセリン依存性モノクローナル抗プロトロンビン抗体(aPS/PT)である23-1Dを正常血漿に加えて作成した。高力価LA血漿は50mg/ml、低力価LA血漿は10 mg/mlに23-1Dを調製した。
    APTTについては、スクリーニング時に施行されている希釈APTT(オーレンバッファーを同時に送付してAPTT試薬を25倍希釈して凝固時間を測定)を施行いただいたが、PTT-LAはすでにリン脂質濃度が低く設定されているためPTT-LAを用いた希釈APTTはおこなわなかった。表2に示すように、4試薬6アッセイで結果を比較した。
    凝固時間の正常値は健常人22人の平均プラス2SDで定義した。11施設で測定したそれぞれのサンプルの凝固時間を集計し、パラメータとして、1) それぞれの試薬ごとに感度(LAサンプルすべて、低力価2サンプル、高力価3サンプルでそれぞれ計算)、2) 特異度、3) 平均正答率:A-Hのサンプル毎の11施設における正答率を平均した数値(高いほど正確)、4)SD index: A-Hのサンプルの11施設での凝固時間SD/凝固時間平均×100を8サンプルで平均した数値(施設間での当該サンプルの凝固時間測定値のばらつきをあらわす)、を計算した。

    3. 結果

    サンプルごとの11施設で測定した凝固時間を試薬別にまとめた(表3)。凝固時間の平均とSD、また括弧内には11施設での正答率を示した。
    試薬ごとの感度、特異度、平均正答率、SD-indexを表4に示した。

    4. 考察

    スクリーニング試薬の標準品としの条件は、(1)廉価である、(2)入手しやすい、(3)感度が高い、(4)測定結果の施設間差が少なくて判定の一致率の高いこと、と考えられる。基本的に凝固検査はLAのスクリーニング検査としては現時点で健保適応はない。各施設で検討のうえLAスクリーニング検査を施行していると考えられる。実際に使用されている試薬をアンケート調査でしらべて、廉価で入手しやすい試薬を標準試薬の候補として選定した。
    ラッセル蛇毒時間はかつては試薬の調整が煩雑であったが、現在はキットとして発売され、そのうちのひとつはLA確認試験として保険適応となっている。キットは入手が容易であり、その中にある試薬のひとつはスクリーニングとしても適している可能性があるが、本試薬はきわめて高価であること、ラッセル蛇毒試薬間での比較ができないことから、今回は検討しなかった。
    カオリン凝固時間はAPTTと同様に内因系凝固反応のインヒビターを検出する。しかし試薬にリン脂質が含まれず、血漿に内因性のリン脂質をもちいて反応がすすむので反応は遅くて不安定である。今回の検討でも施設間差が大きく、標準品にはむかないと考えられる。
    APTT試薬についても、われわれの予想よりかなり施設間差がみられた。希釈するとLA検出感度があがるはずであるが、試薬に含まれる凝固安定剤も希釈されてしまうため反応が不安定になりやすい。そのため健常人の凝固時間のばらつきが大きくなって正常値の設定がむずかしくなる。結果として、希釈APTTはかならずしも感度があがらず、施設間差が大きいという結果となった。
    今回の検討で、上記の条件をもっとも満たすのがPTT-LA試薬と考えられる。そこでPTT-LAをLAスクリーニングと標準品として設定し、アッセイのプロトコール、および確認試験の標準化へと検討をすすめていきたい。

    5. 結論

    PTT-LA試薬をLAスクリーニングのための標準試薬として、より標準化されたLA検査の確立をめざす。

    6. 謝辞

    本研究のアッセイにご協力いただいた以下の皆様に深謝いたします。

    川合陽子先生、島田舞先生(慶應義塾大学中央臨床検査部)
    阪田敏幸先生(国立循環器センター臨床検査部)
    佐野雅之先生(佐賀医科大学血液内科)
    程原佳子先生(滋賀医科大学輸血部)
    吉田 孝先生(同検査部血液部門)
    瀧 正志先生(聖マリアンナ大学小児科)
    山崎 哲先生(同臨床検査部)
    松林秀彦先生(東海大学産婦人科)
    川田 勉先生(同臨床検査科)
    杉浦真弓先生(名古屋市立大学産婦人科)
    家子正裕先生(北海道医療大学内科)
    内藤澄悦先生(同検査部)
    和田英夫先生(三重大学臨床検査医学)

    表1~4

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