血小板部会

部会長: 横山健次
副部会長: 佐藤金夫 冨山佳昭
部会員: 尾崎由基男 清水美衣 田村典子 西川政勝 野村昌作
羽藤高明 堀内久徳 松原由美子 矢冨 裕 山崎昌子

詳細情報

  • 平成28年度活動報告書
    1. 「血小板減少時の抗血小板療法・抗凝固療法のマネージメント」

    部会長 横山 健次 (東海大学医学部付属八王子病院血液腫瘍内科)

     血小板部会では「血小板減少時の抗血小板療法・抗凝固療法のマネージメント」をテーマに取り上げてシンポジウムを開催した。抗血小板薬・抗凝固薬は血栓症の治療、再発予防に重要な役割を果たしている薬剤であり、多くの人に処方されている。抗血小板薬・抗凝固薬のもっとも頻度の多い副作用は出血傾向であるが、血小板減少症患者でも血栓症治療ないし予防目的でこれらの薬剤を使用する場合がある。しかし血小板数がいくつまではこれらの薬剤を使用可能か、血小板減少時にはこれらの薬剤を減量すべきか、など血小板減少時に抗血小板療法・抗凝固療法をいかに行うべきか、コンセンサスはない。本シンポジウムでは現在までに報告されてきたこと、各発表者が発表した新規のデータに基づいて活発な討論を行なった。
     最初に大阪大学の冨山佳昭先生に「血小板減少症の病態と診断」について発表していただいた。血小板減少症の成因は、血小板の産生低下、破壊の亢進、もしくは分布異常(もしくは希釈)のいずれかに分類されること、血小板の破壊の亢進による血小板減少ではその成因により、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)のような出血性疾患と、血栓性血小板減少性紫斑病、抗リン脂質抗体症候群のような血栓性疾患が存在すること、さらにITPとそのほかの血小板減少症を鑑別するために網状血小板、トロンボポエチンの測定が有用であることなどを報告した。その上で血小板減少時の抗血小板療法・抗凝固療法を論じる場合、血小板減少の病態や成因を常に念頭に置く必要があることを提言した。
     続いて愛媛大学の羽藤高明先生に「血小板減少と出血傾向」について発表していただいた。再生不良性患者を対象とした研究、および最近の大規模臨床研究から血小板数が5000/μl未満に低下すると出血の頻度が有意に増加すること、マウスの実験でも血小板数が正常の2.5%(ヒトでは5000/μlに相当)まで低下すると止血不能になることを紹介した。さらに感染、炎症などでは好中球が血管外に遊走することにより出血を増強することを示した。また血栓症を合併したITP症例を提示して、抗血栓療法を必要とする血小板減少患者の治療方針を確立することの重要性を提言した。
     3番目に循環器内科の立場から小倉記念病院の安藤献児先生に「冠動脈インターベンションに関する血小板・抗血小板剤に関して」を発表していただいた。冠動脈インターベンション(PCI)後のステント血栓症予防のためにはアスピリンとチエノピリジン系の2剤抗血小板剤(DAPT)投与が標準治療となっているが、DAPT療法施行患者では1年以内に出血性消化性潰瘍などの出血イベントを起こすことが少なくないこと、自施設での検討の結果消化管出血を起こして入院した症例の10%は死亡退院したことを報告した。また血小板低値のPCI施行患者では入院中の死亡率が高くなると報告されていることを紹介して、血小板数とPCI、DAPT、および予後につき考察した。
     4番目に神経内科の立場から九州大学の脇坂義信先生に「血小板低値と脳梗塞後の重篤な出血性合併症また短期・長期予後との関連:Fukuoka Stroke Registry」を発表していただいた。多施設共同前向き登録研究であるFukuoka Stroke Registry (FSR) のデータを用いて脳梗塞患者の血小板数と予後の関連について検討した結果、血小板低値群(血小板数100,000/μl未満)は非低値群と比較して入院中に重篤出血や入院経過不良となる頻度が有意に高かったが、抗血栓療法の有無など交絡因子を調整すると、血小板低値は重篤出血や入院中経過不良と有意に関連しなかったこと、一方死亡退院例を除外して血小板低値と脳梗塞発症1年後までの複合イベント(全死亡、脳卒中、虚血性心疾患)発症の関連を検討した結果では、血小板低値群は非低値群と比較して複合イベント発症頻度が有意に高値であり交絡因子調整後も血小板低値は複合イベント発症と有意に関連していたことを報告した。その結果血小板低値は抗血栓療法の有無に関わらずに重篤出血や入院経過不良に影響しないが長期予後に影響を及ぼす可能性が示唆された。
     最後に血液内科の立場から横山が「造血器腫瘍患者に対する抗血小板および抗凝固療法」について発表した。自施設でのびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者、および多発性骨髄腫(MM)患者を対象として後方視的解析を行い、DLBCL患者では抗血小板薬・抗凝固薬投与群で非投与患者と有意に多く出血性合併症がみられたがMM患者では両群で差がなかったこと、DLBCL患者の治療経過中の血小板最低値と出血性合併症の発症に関連はなかったことを報告した。
     今回のSSCを通して血小板減少時の抗血小板療法・抗凝固療法には多くの課題があることが再認識された。今後SSC血小板部会として何らかの提言を出すことを目標に活動を行なっていく予定である。

  • 平成27年度活動報告書
    1. 今年度の活動報告

    a) SSCシンポジウムの内容
    平成24年度に「抗血小板薬モニター検査の現状と課題」、平成26年度に「抗血小板薬の分子標的とそのリスクベネフィット」でシンポジウムを開催してきた。血小板部会では2年に一度のシンポジウムを企画しており、今年度は部会主催のシンポジウムを開催しなかったが、来年度は開催の予定である。

    b) その他の活動
    血小板凝集能検査に用いられているADP試薬の試薬間較差が清水委員によって検討され、その結果が本部会で報告された。日本国内で使用されているADP試薬のうち、使用頻度の高い4社の製品についてHPLCを用いて純度や不純物の同定が行われた。その結果、試薬間で純度に差があり、また同じ試薬でも溶解に用いる溶媒によって性状が異なってくるとの結果が得られた。さらに実際のADP凝集を透過光血小板凝集計で測定してみると、純度の低い試薬では凝集率が他の試薬と比べて低かった。これらの検討結果は大変興味深く、試薬間較差が血小板凝集能のばらつきの一要因とも考えられ、今後、本部会でこの問題を広く取り上げていくのか検討する。

    c) ガイドライン、診断基準、共同研究などの成果
    透過光血小板凝集検査法(light transmission aggregometry; LTA)は血小板機能解析における標準的な検査法であり、世界で最も普及した方法であるにもかかわらず、操作手順にばらつきがあり、その手技の標準化が行われていなかった。2013年に国際血栓止血学会の血小板機能標準化部会において専門家作業部会からのコンセンサスの形で、透過光血小板凝集検査法の検査手技に関する提言がなされた。これを受けて、本部会において本邦における透過光血小板凝集検査法の検査手技の標準化を目指し、上記の国際血栓止血学会の提言に関し若干の補足を加えるとともに、この提言の内容を紹介することにした。なお、この提言を啓蒙するにあたり、本部会において検討委員会を開催し、原文の内容を本邦の実情に照らして吟味したが、特に修正を加えるべき点はないとの結論になった。この内容は、「透過光血小板凝集検査法の標準化:国際血栓止血学会 血小板機能標準化部会からの提言の紹介と解説」としてまとめられ、本学会誌27巻3号に掲載される。

    2. 来年度の活動計画

    次年度は血小板部会長の交代があり、新部会長のもとで新たなプロジェクトが開始される予定である。また、SSCシンポジウムも企画される予定である。

  • 平成26年度活動報告書
    1. 血小板凝集能検査標準化推奨案の作成について

    ISTH SSCの platelet physiology subcommitteeからLTAの標準化に関する推奨案が報告された(Cattaneo M et al. J Thromb Haemost 11:1183-1189, 2013)。これを基に部会員(冨山、佐藤)が日本語版を作成した。日本語版は本邦の事情を補足した文書とするため、追記事項について部会で検討を重ねており、平成27年発行の本学会誌に投稿を予定している。

    2. 血小板凝集能検査用ADP試薬間差の検討について

    ADP試薬をHPLCで解析して試薬間差を比較する研究を部会員(清水)が行っており、部会としてより大規模で行う研究として取り上げることを検討したが、多施設での検討はばらつき要因が大きくなることと部会として特定の試薬推奨に関わることには問題もあるため、本部会としての研究活動はしないこととした。

    3. シンポジウムの開催について

    第9回SSCシンポジウム(東京、2015.2.28)において以下の発表を行った。
    テーマ「抗血小板薬の分子標的とそのリスクベネフィット」

    ①オーバービュー(堀内)

    ②cyclo-oxygenase阻害薬(松原)

    ③P2Y12阻害薬(西川)

    ④PDE3阻害薬(山之内、佐藤)

    ⑤GPIIb-IIIa阻害薬(冨山)

    ⑥PAR-1阻害薬(山崎、田村、清水)

    4. 今後の活動方針について

    血小板関連検査の現状と課題、血栓症の診療現場からみた抗血小板療法の有用性と課題、血小板減少症などをテーマに活動することが検討されてきたが、結論はまだ出ていない状況にある。

  • 平成25年度活動報告書
    1. 血小板凝集能検査標準化案の作成
    ISTH SSCの platelet physiology subcommitteeから世界で最も普及している光透過性血小板凝集能検査の標準化に関する推奨案が出された(Cattaneo M et al. J Thromb Haemost 11:1183-1189, 2013) 。これを基に本血小板部会から日本語版を出版することして準備を進めている。日本語版は本邦の事情を補足した啓蒙的文書として本学会誌に投稿する予定である。
    2. 血小板凝集能検査用 ADP 試薬間の検討
    各施設にADP試薬を配布して検討してもらう計画をしている。また、ADP試薬をHPLCで解析して試薬間差を検討する試みも部会員が行っている。
    3. 部会の開催
    平成26年1月25日 東京国際フォーラム
    第9回SSCシンポジウムの企画について話し合いが行われた。その結果、血小板部会シンポジウムのテーマと発表内容について討論し、以下のように決定した。
    テーマ「抗血小板薬の分子標的とそのリスクベネフィット」

    1)オーバービュー
    2)cyclo-oxygenase 阻害薬
    3)P2Y12 阻害薬
    4)PDE3 阻害薬
    5)GPIIb-IIIa 阻害薬
    6)PAR-1 阻害薬
  • 平成24年度活動報告書
    2013年3月13日
    報告者:羽藤高明

    1.組織
    委員長:羽藤高明(村田満から交代)、副委員長:佐藤金夫、冨山佳昭
    委員:尾崎由基男、清水美衣、田村典子、西川政勝、野村昌作、堀内久徳、松原由美子、矢冨裕、山崎昌子

    2.活動内容

    1) 血小板部会会議(2012年3月10日、東京)
    出席者:尾崎、佐藤、清水、田村、西川、野村、羽藤、堀内、松原、山崎
    (1)今年度の活動テーマ
    「抗血小板薬モニター検査」についての課題を検討し、標準化に向けた取り組みを行うこととした。
    (2)具体的活動方針
    a. 血小板凝集計に用いるADP試薬の標準化
    これまでの血小板部会の活動において血小板凝集計の実施状況に関するアンケート調査が行われ、様々な過程で測定条件が異なっている実態が明らかになった。そこで、チエノピリジン系抗血小板薬の効果判定に用いられている3種類のADP試薬について同一条件下で測定をしたところ、有意な試薬間差が確認された。そこで、ADP試薬の標準化を図ることを目指して検討を進めることとした。
    b. 血小板凝集能検査実施ガイドラインの作成
    ISTHの SSC on platelet physiologyにおいて透過光血小板凝集検査の標準化が検討されており、世界規模でのアンケート調査をもとに検査ガイドラインが作成されることになっている。そこで現在の状況を確認し、国際ガイドラインが発表されればいち早く本学会会員へ啓蒙活動を行い、さらにそれを参考にして日本のガイドラインを作成することとした。2012年3月15日にISTH SSCのMarco Cattaneo からガイドラインの原稿作成中との連絡あり。
    c. VerifyNow血小板機能測定機器の早期導入要望
    VerifyNowは世界的に普及している機器であるが、本機器は本邦では医療用機器として認可されていない。そのため、その早期認可を要望すべきかどうかについて議論された。討議内容は意見書としてまとめ、本学会理事会へ提出した。
    2)血小板部会活動に関する総説(2012年8月)
    羽藤高明:抗血小板薬モニター検査の臨床的異議 日本血栓止血学会誌 23:352-357, 2012.
    3) 第7回SSCシンポジウム(2013年1月12日、東京)
    「抗血小板薬モニター検査の現状と課題」のテーマで、6演題を発表。
  • 血小板凝集能検査実施状況のアンケート調査結果
    血小板凝集能検査は血小板無力症、ベルナール・スーリエ症候群などの血小板機能低下症の診断に有用な検査法です.また、心筋梗塞・脳梗塞などの動脈血栓性疾患の病態把握のために血小板凝集能検査を実施している施設が増えてきています(血小板機能亢進の検索).さらに、動脈血栓症の二次予防に使用されている抗血小板薬の薬効判定に血小板凝集能検査を利用している施設もあります.しかし、血小板凝集能検査の測定条件は施設によって異なっており、そのために、各施設で得られたデータを比較検討することは容易ではなく、正常値の設定も困難でありました.そこで、日本血栓止血学会 学術標準化委員会の血小板部会では血小板凝集能検査の標準化を進めるにあたり、本検査の実施状況を調査することにしました.
    2009年6月に協力企業の顧客リストをもとにアンケート用紙を送付し、2010年2月までに250施設から回答を得ました.ここにアンケートの集計結果を公開いたします.
    最後になりましたが、ご多忙中にも関わらずアンケートに回答いただきました施設の先生方に御礼申し上げますとともに、アンケートの送付・回収に協力いただいたアイエムアイ株式会社、株式会社エルエムエス、興和株式会社、アイエスケー株式会社、フィンガルリンク株式会社(順不同)に感謝申し上げます.

    日本血栓止血学会 学術標準化委員会 血小板部会