血友病部会

部会長: 藤井輝久
副部会長: 福武勝幸 酒井道生
部会員: 天野景裕 岡 敏明 小倉妙美 嶋 緑倫 白幡 聡 鈴木隆史 瀧 正志 竹谷英之 徳川多津子
長江千愛 西田恭治 野上恵嗣 日笠 聡 堀越泰雄 松下 正 松本剛史 窓岩清治

 

活動状況

近年、血友病および類縁疾患の医療状況は大幅な改善や進歩が見られています。一方で、臨床現場ではそれに見合った治療法の標準化やガイドラインが求められています。血友病標準化検討部会では随時、部会内でコンセンサスの得られた事項を、「医療指針」や「部会会告」の形で情報発信いたします。

 

詳細情報

  • 平成28年度活動報告書

    1.平成28年度の活動報告

    a)SSCシンポジウム

    テーマ:我が国の血友病診療の向上を目指して
    第1部では、「進化する関節評価法〜ADL向上を目指して」で主に血友病性関節症に関する最近の知見や試みられている評価法について、2人の学会外の医師よりご講演いただいた。評価法については、今後標準化され主な診療施設では導入されるものと思われる。第2部では、「より正確な止血機能の測定のために〜合成基質法導入WGから」をテーマに、後述するWGの活動報告があった。最後に現在の様々な測定法のうちどれが最も適しているか、知見を含めて紹介があった。

    b)ガイドライン、診断基準、共同研究などの成果
    ◆血友病診療関連ガイドラインの補遺版について
    2016年は補遺版を作成せず、2018年に大改訂を行うこととした。但し、新規治療薬が次々に上市されていることを踏まえ、学会HPに現在使用できる製剤一覧表をアップデートすることとした。
    ◆後天性血友病ガイドライン改定に関して
    酒井部会員を委員長とした「後天性血友病診療ガイドライン改定委員会」が発足した。部会内委員を中心に改定案が作成されメール稟議された。その後部会外委員に対してメール稟議を行い、いくつかの修正点を踏まえて改定案が作成された。早ければ6月の理事会に提出して承認を頂く予定。


    c)その他の活動 
    ◆患者会との連携
    医療従事者と患者団体との連携を図る目的で、2017年2月26日に「第14回 患者―医療者間の血友病診療連携についての懇談会」を開催した。
    患者側より、一昨年の化血研の凝固医に製剤出荷停止問題や、昨年のバイエル製品自主回収問題の件を踏まえ、速やかにかつ正確な情報を医療者より発信してほしいとの要望があった。それを受けて、現在行われているロシュ社の治験中の重篤な有害事象について、速やかに情報提供を行った。
    ◆厚労省血液対策課へ要望書提出
    本邦のVWD患者にVWFを補充して止血治療を行うには化血研製造のコンファクトFしかない現状が続いている。一昨年に起きた化血研の問題により、「製剤不足」不安が起きているため、国に対して新規VWF含有製剤の早期導入に関する要望書を作成し、提出した。
    ◆HCV治療薬ソフォスブビル+リバビリン併用療法24週に関する要望に関して
    昨年日本肝臓学会から、上記要望に関して日本血栓止血学会も連名してもらえないかという依頼があり、要望書に連名し提出した。2017年2月にソフォスビル製造会社のギリヤド社から再度依頼があり、日本血栓止血学会として再度働きかけた。成果として2017年4月より、上記治療が保険収載された。
    ◆血友病センター化に向けた取り組み
    血友病センターとしての施設基準設定や血友病診療関連診療報酬改訂のために、平成28年度内保連への申請書を作成して内保連へ提出したが、採択されなかった。今後は、下記の通り、まず部会内に、患者をメンバーとして入れた日本血友病診療施設連携協議会を設置した形で継続して取り組むこととした。
    ◆血友病診療連携ネットワーク構築のためのワーキンググループ結成
    血液製剤機構の研究班の報告書「我が国における血友病診療連携体制構築へ向けての提言」を受けて、その後のロードマップ作成のために部会でワーキンググループ(WG)が結成された。2017年1月14日のWGでは、部会の中に「日本血友病診療施設連携協議会」を作り、メンバーに部会員以外の看護師や患者会メンバーを入れる方針が確認された。
    ◆凝固因子活性測定の合成基質法導入ワーキンググループの活動
    本学会の研究助成をいただき、それに伴い現在多施設で検討を行うためのスパイク検体の作成を行っている。それまでの成果はSSCにて発表があった。

    *血友病部会会議
     1)第1回会議
       2016年7月10日 ANAクラウンプラザホテル神戸(神戸)
     2)第2回会議
       2016年10月3日 AP大阪駅前梅田1丁目(大阪)
     3)第3回会議
       2017年2月26日 東京医科大学病院(東京)

    2.平成29年度の活動計画

    ◆血友病診療関連ガイドライン改訂のための準備を開始する。
    ◆後天性血友病診療ガイドライン改訂版を作成し、血栓止血学会誌に公表する。
    ◆日本血友病診療施設連携協議会を発足させる。
    ◆TTP/VWF部会が作成予定である「VWD診療ガイドライン」に協力する。


    *次年度血友病部会会議の予定
     1)第1回会議
       2017年4月22日 リファレンス新有楽町ビル貸し会議室(東京)
     2)第2回会議
       2017年9月30日 広島ホテルグランヴィア(広島)
     3)第3回会議
       2018年1月or 2月 東京医科大学病院(東京)

    文責 日本血栓止血学会 学術標準化委員会 血友病部会

    部会長 広島大学 病院輸血部 藤井 輝久


  • 平成27年度活動報告書

    1.今年度の活動報告

    a)SSCシンポジウムの内容

    テーマ:血友病保因者のケアを考える
    第1部では、血友病保因者のケアのための以下の基礎的事項について知識を共有した。血友病保因者診断の検査の意義、保因者健診の概念と普及、保因者の心理的支援のポイント。第2部では、現在作成中の血友病周産期管理指針2015年(案)について、「産科医の立場から」と「小児科医の立場から」紹介した。
    第3部では、血友病の保因者ケアのための診療ガイドライン作成に向けてのパネルディスカッションが行われた。

    b)その他の活動
    ◆14日処方制限に関する意見書提出(内閣府へ)
    内閣府ではすべての薬剤に関して、14日処方制限撤廃の方向で動いているため、各学会などから要望・意見があれば内閣府に提出してほしいという話があり、血友病部会で意見書を作成し、血栓止血学会として内閣府に提出した。
    ◆化血研問題に対する対応
    2015年6月に起こった化血研の凝固因子製剤出荷停止問題に関して、情報整理、血友病診療従事者への情報周知など各種の対応を行った。
    ◆HCV治療薬ソフォスブビル+リバビリン併用療法24週に関する要望に関して
    日本肝臓学会から、上記要望に関して日本血栓止血学会も連名してもらえないかという依頼があり、理事会にメール審議を諮っていただいた。メール審議で承認が得られたため、一般社団法人 日本血栓止血学会 理事長 尾崎 由基男とHCV Genotype 3に対するSofosbuvir/Ribavirin併用療法24週間適応に賛同する血友病診療従事者有志(天野景裕以下血友病部会員20名)の形で要望書に連名した。
    ◆血友病センター化に向けた取り組み
    血友病センターとしての施設基準設定や血友病診療関連診療報酬改訂のために、平成28年度内保連への申請書を作成して、血栓止血学会理事長の了承を得て、内保連へ提出された。内保連からのヒアリングに対応した。
    ◆第6回EAHF(East Asia Hemophilia Forum)について
    2015年11月13日(金)~15日(日)日本血栓止血学会SSC主催で行う活動として、奈良県東大寺文化センターにて開催された。参加者は216人で大盛況であり、運営は予算内で収まった。海外の参加者からは、お褒めの言葉をいただいた。
    ◆患者会との連携
    医療従事者と患者団体との連携を図る目的で、2016年1月24日に「第13回 患者―医療者間の血友病診療連携についての懇談会」を開催した。
    ◆凝固因子活性測定の合成基質法導入ワーキンググループの組織

    c)ガイドライン、診断基準、共同研究などの成果 
    ◆血友病診療関連ガイドラインの補遺版の発表
    2015年補遺版を準備し、理事会承認の後、血栓止血学会誌2016年1号に掲載となった。
    ◆免疫寛容導入療法(ITI)に関して
    血液製剤調査機構の研究班として日本におけるITIの実態調査が承認されており、血友病部会員が班長・班員となっている。現在二次調査が進行している。今後、その調査の結果を受けて、血友病部会としてはガイドラインにそのデータを反映していくこととなる。
    ◆血友病診療連携ネットワーク構築の研究班
    血友病診療における地域医療機関との連携ネットワーク構築について血液製剤調査機構の研究班が承認され血友病部会員が班長・班員となっている。最終報告書が「我が国における血友病診療連携体制構築へ向けての提言」としてまとめられた。
    ◆血友病関連の周産期管理について
    日本産婦人科・新生児血液学会と合同で血友病周産期管理指針案を作成した。今回のシンポジウムでの討議を受けて、本部会でさらに検討を行う予定である。

    2.来年度の活動計画

    ◆血友病診療関連ガイドラインの2016年補遺版の作成を行う。
    ◆後天性血友病診療ガイドライン改訂のための準備を開始する。
    ◆「我が国における血友病診療連携体制構築へ向けての提言」を受けて、血友病部会として診療体制構築のためのワーキンググループを組織して準備を開始する。
    ◆血友病周産期管理指針案について
    2015年度のシンポジウムでの討議を受けての検討を行い、血栓止血学会誌にて公表する。

    血友病部会会議
     1)第1回会議
       2015年5月22日 甲府市総合市民会館(山梨)
     2)第2回会議
       2015年10月3日 シェラトン都ホテル東京(東京)
     3)第3回会議
       2016年1月24日 東京医科大学病院(東京)

    文責 日本血栓止血学会 学術標準化委員会 血友病部会

    部会長 東京医科大学 臨床検査医学分野 天野 景裕


  • 平成26年度活動報告書

    1.学会への参加

    第9回日本血栓止血学会学術標準化委員会シンポジウム

    2015年2月28日に開催された第9回日本血栓止血学会学術標準化委員会シンポジウムに「長時間作用型凝固因子製剤をどう使うか?」をテーマに参加した。各製剤メーカーにそれぞれの製剤の特徴を紹介いただき、情報共有の後、内科の立場と小児科の立場からの問題提起、モニタリングの問題点などの発表を行い、今後のガイドライン作成への有意義なディスカッションが行われた。

    2.血友病診療標準化への取り組み

    ◆血友病診療関連ガイドラインの補遺版の発表

    毎年年末をめどに、補遺版をだすことになり、2014年補遺版を準備し、理事会承認の後、血栓止血学会誌2015年1号に掲載となった。

     

    ◆免疫寛容導入療法(ITI)に関して

    血液製剤調査機構の研究班として日本におけるITIの実態調査が承認されており、血友病部会員が班長・班員となっている。現在二次調査が進行している。今後、その調査の結果を受けて、血友病部会としてはガイドラインにそのデータを反映していくこととなる。

    3.血友病センター化に向けた取り組み

    2009年から血友病センター整備案について議論・検討を重ねてきた。

    【血友病センター化体制構築作業小部会】

    この小部会にて、今後、血友病センターの施設認定をどのように行うべきか検討している。血友病センターとしての施設基準や血友病診療関連診療報酬改訂のための平成28年度内保連への申請書を作成して、2014/11/26に担当理事へ提出した。血栓止血学会理事長の了承を得て、内保連へ提出された。

    【血友病診療連携ネットワーク構築の研究班】

    血友病診療における地域医療機関との連携ネットワーク構築について血液製剤調査機構の研究班が承認され血友病部会員が班長・班員となっている。最終報告書のまとめに入っており、今後、その結果を受けて、血友病部会として活動を反映していく予定である。

    4.血液製剤に関する取組

    血友病治療製剤全般の取り扱いについて、診療がスムーズに行われ、患者の利益が損なわれないようにするために、早期承認や保険適応に関して要望書を作成し厚生労働省に提出した。FEIBA適応追加、バイクロット、オルプロリクス承認に関する、意見聴取に関する対応を行った。

    5.患者会との連携

    患者様と医療者との血友病診療連携についての懇談会

    医療従事者と患者団体との連携を図る目的で、2015年3月1日に「患者様と医療者との血友病診療連携についての懇談会」を開催した。

    6.第6回EAHF(East Asia Hemophilia Forum)について

    2015年11月13日(金)~15日(日)奈良県東大寺文化センターにて開催予定。

    事務局は奈良医大が担当する。日本血栓止血学会SSC主催で行う活動として承認いただき、血友病部会として開催準備中である。

    7.血友病関連の周産期管理について

    日本産婦人科・新生児血液学会へ血友病関連周産期管理についての整備依頼を行っており、当部会のワーキンググループと合同で診療ガイドを作成するための会議を行い、現在作成中である。今後、答申を受けて、本部会でさらに検討を行う予定である。

    8.血友病部会会議

    1)第1回会議

    2014年5月29日 大阪国際交流センター(大阪)

    2)第2回会議

    2014年9月28日 ホテルニューオータニ大阪(大阪)

    3)第3回会議

    2015年3月1日 東京医科大学病院(東京)

    文責 日本血栓止血学会 学術標準化委員会 血友病部会

    部会長 東京医科大学 臨床検査医学分野 天野 景裕

    【日本血栓止血学会学術標準化委員会血友病部会 部会員】(2015年3月1日現在)

    天野景裕(部会長) 東京医科大学 臨床検査医学分野 教授
    岡 敏明 札幌徳洲会病院 小児科部長
    酒井道生 宗像水光会総合病院 小児科 部長
    嶋 緑倫 奈良県立医科大学 小児科 教授
    白幡 聡 北九州八幡東病院 院長
    瀧 正志(副部会長) 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 小児科 教授
    竹谷英之 東京大学医科学研究所附属病院 関節外科講師
    西田恭治 国立病院機構 大阪医療センター 感染症内科
    野上恵嗣 奈良県立医科大学 小児科 准教授
    花房秀次 荻窪病院 理事長、内科・小児科部長
    日笠 聡 兵庫医科大学 血液内科 講師
    福武勝幸 東京医科大学 臨床検査医学分野 主任教授
    藤井輝久(副部会長) 広島大学 輸血部 准教授
    堀越泰雄 静岡県立こども病院 血液腫瘍科医長、輸血管理室 室長
    松下 正 名古屋大学医学部附属病院 輸血部 教授
    松本剛史 三重大学医学部附属病院 輸血部・血液内科
    窓岩清治 自治医科大学 分子病態研究部、附属病院血液内科
  • 平成25年度活動報告書

    1.学会への参加

    第7回日本血栓止血学会学術標準化委員会シンポジウム

    平成26年2月22日に開催された第8回日本血栓止血学会学術標準化委員会シンポジウムに「わが国の血友病診療 -グローバリゼーションに向けて-」をテーマに参加した。 World Federation of Haemophilia (WFH)のVice-president である Dr. Alok Srivastava をゲストスピーカーに迎えて有意義なディスカッションが行われた。

    2.血友病診療標準化への取り組み

    ◆血友病診療関係ガイドラインの改定

    ・平成25年1月26日の理事会にてガイドライン作成委員会が正式に発足した。ガイドライン作成委員会と血友病部会が連携して、ガイドラインをブラッシュアップした。

    ・ガイドラインのタイトルを止血治療ガイドラインとして統一し、以下の二つに変更して、改定作業を行った。

    「インヒビターのない血友病患者の止血治療ガイドライン:2013年改訂版」

    「インヒビター保有先天性血友病患者に対する止血治療ガイドライン:2013年改訂版」

    ・平成26年9月26日の理事会にて承認され、日本血栓止血学会誌2013年第6号に発表した。

    ・別刷りをガイドラインとして学会から販売している。

    ◆免疫寛容導入療法(ITI)に関して

    血液製剤調査機構の研究班として日本におけるITIの実態調査が承認されており、血友病部会員が班長・班員となっている。今後、その調査の結果を受けて、血友病部会としてはガイドラインにそのデータを反映していくこととなる。

    3.血友病センター化に向けた取り組み

    平成21年から血友病センター整備案について議論・検討を重ねてきた。

    【血友病センター化体制構築作業小部会】

    この小部会にて、今後、血友病センターの施設認定をどのように行うべきかを血栓止血学会と恊働で検討するための準備を行っている。血友病センターとしての施設基準や血友病診療関連診療報酬改定のための平成26年度内保連への申請書を作成して、平成25年5月30日の理事会にて審議をお願いしたが、今後の検討事項となった。

    【血友病診療連携ネットワーク構築の研究班】

    血友病診療における地域医療機関との連携ネットワーク構築について血液製剤調査機構の研究班が承認され血友病部会員が班長・班員となっている。今後、その検討の結果を受けて、血友病部会として活動を反映していくこととなる。

    4.血液製剤に関する取組

    化血研のMC710やバクスターのFEIBAなどの血友病インヒビター製剤に関して、診療がスムーズに行われ、患者の利益が損なわれないようにするために、早期承認や保険適応に関して要望書を作成し厚生労働省に提出した。

    5.患者会との連携

    患者様と医療者との血友病診療連携についての懇談会

    医療従事者と患者団体との連携を図る目的で、平成26年1月13日に「患者様と医療者との血友病診療連携についての懇談会」を開催した。

    6.血友病部会会議

    1)第1回会議

    平成25年5月30日 山形国際ホテル(山形)

    2)第2回会議

    平成25年10月6日 ANA クラウンプラザホテルグランコート(名古屋)

    3)第3回会議

    平成26年1月13日 東京医科大学病院(東京)

    【日本血栓止血学会学術標準化委員会血友病部会 部会員】(平成26年4月30日現在)

    天野景裕(部会長) 東京医科大学 臨床検査医学分野 教授
    岡 敏明 札幌徳洲会病院 小児科部長
    酒井道生 宗像水光会総合病院 小児科 部長
    嶋 緑倫 奈良県立医科大学 小児科 教授
    白幡 聡 北九州八幡東病院 院長
    瀧 正志(副部会長) 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 小児科 教授
    竹谷英之 東京大学医科学研究所附属病院 関節外科講師
    西田恭治 国立病院機構 大阪医療センター 感染症内科
    野上恵嗣 奈良県立医科大学 小児科 准教授
    花房秀次 荻窪病院 理事長、内科・小児科部長
    日笠 聡 兵庫医科大学 血液内科 講師
    福武勝幸 東京医科大学 臨床検査医学分野 主任教授
    藤井輝久(副部会長) 広島大学 輸血部 准教授
    堀越泰雄 静岡県立こども病院 血液腫瘍科医長、輸血管理室 室長
    松下 正 名古屋大学医学部附属病院 輸血部 教授
    松本剛史 三重大学医学部附属病院 輸血部・血液内科
    窓岩清治 自治医科大学 分子病態研究部、附属病院輸血内科
  • 平成24年度活動報告書

    1.学会への参加

    1)世界血友病連盟国際会議2012
    平成24年7月8日~12日にフランスのパリで開催されたWFH 2012に参加した。
    2)第7回日本血栓止血学会学術標準化委員会シンポジウム
    平成25年1月12日に東医健保会館で開催された第7回日本血栓止血学会学術標準化委員会シンポジウムに「血友病包括医療とセンター化構想を考える」をテーマに参加した。

    2.血友病診療標準化への取り組み

    ・血友病治療ガイドラインの改訂
    平成20年に作成した「インヒビターのない血友病患者の急性出血、処置・手術における凝固因子補充療法のガイドライン」と「インヒビター保有先天性血友病患者に対する止血治療ガイドライン」の改訂に着手した。ガイドライン検証アンケートで要望の多かった定期補充療法や免疫寛容導入などを網羅した、より総合的なガイドラインを目指し、日本血栓止血学会理事会にそれぞれのガイドライン作成委員会の設置を申請した。平成25年1月26日の理事会にてガイドライン作成委員会が正式に発足した。
    ・免疫寛容導入療法(ITI)に関して
    血液製剤調査機構の研究として日本におけるITIの実態調査が申請されており、血友病部会員が班員の候補者となっている。今後、その調査の結果を受けて、血友病部会としてはガイドラインにそのデータを反映していくこととなる。

    3.血友病センター化に向けた取り組み

    平成21年から血友病センター整備案について議論・検討を重ねてきた。参議院議員との血友病診療に関する勉強会を行った。今年度のSSCシンポジウムにおいても血友病センターについての議論を行い、患者との連携懇談会でもその概念と必要性と利点・欠点などを医療者-患者相互に確認した。患者会からの意見としては血友病センター化を否定する意見はほとんどなく、むしろ早期の実現を望む声が多く相互理解は深まったと考えられる。
    今後の具体的方策については以下の体制で行う。
    【血友病センター化体制構築作業小部会】
    この小部会にて、今後、血友病センターの施設認定をどのように行うべきかを血栓止血学会と恊働で検討するための準備を行っていく。
    【血友病診療連携ネットワーク構築の研究班】
    血友病診療における地域医療機関との連携ネットワーク構築について血液製剤調査機構の研究として申請している。

    4.血液製剤安定供給への取り組み

     フィブリノゲン製剤の現状について日本血液製剤機構の担当者に血友病部会にて説明を受けた。今後も安定供給のために製造コスト削減に努力しつつ、薬価引き上げ、適応拡大(大量出血による低フィブリノゲン血症へ)について企業努力をしていくとのこと。当部会としては先天性フィブリノゲン欠乏症・異常症のために、安定供給を強く望むことを伝えた。

    5.継続中の臨床研究

    すでに実施している下記の臨床研究を2011年度も引き続き実施する。
    ・血友病患者血中のAAV8、AAV9ウイルス抗体価の調査研究
    部会員の所属する施設で収集された血友病患者の検体を用いて、自治医科大学分子病態治療研究センターにおいて血中のAAVウイルス抗体価を検討継続中である。

    6.患者会との連携

    患者様と医療者との血友病診療連携についての懇談会
    医療従事者と患者団体との連携を図る目的で、平成25年2月24日に「患者様と医療者との血友病診療連携についての懇談会」を開催した。

    7.血友病部会会議

    1)第1回会議
    平成24年6月8日、ハイアットリージェンシー東京(東京)
    2)第2回会議
    平成24年9月30日、ホテルオークラ神戸(神戸)天候不順により中止
    3)第3回会議
    平成24年12月22日、ホテルグランヴィア京都(京都)
    4)第4回会議
    平成25年2月24日、東京医科大学病院(東京)

     

  • 平成23年度活動計画書

    1.学会への参加

    1)XXIII Congress of the International Society on Thrombosis and Haemostasis
    平成23年7月23日~28日に京都で開催されるISTH 2011に参加する。
    2)2011 East Asia Hemophilia Forum
    平成23年6月11日~12日に中国の天津で開催される2011 East Asia Hemophilia Forum を積極的に参加支援し、東アジアにおける血友病診療の発展ならびに相互協力を行う。
    3)第6回日本血栓止血学会学術標準化委員会シンポジウム
    2012年1月に予定されている日本血栓止血学会術標準化委員会シンポジウムに当部会も参加予定である。

    2.血友病診療標準化への取り組み

    1)後天性血友病診療ガイドラインの作成
    後天性血友病診療ガイドライン作成委員会において、今年度中にガイドラインが作成され、理事会に提出される予定である。
    2)血友病止血治療ガイドラインの改訂
    定期補充療法や免疫寛容導入などを網羅した、より総合的なガイドラインを目指し、改訂作業を行う。

    3.血友病センター化に向けた取り組み

    血友病センター案を整備し、センター認定制度設立を理事会に諮る予定である。同時に平成24年度診療報酬改定に関する要望実現に向けて継続して努力する。

    4.東日本大震災に対する対応

    1)相談窓口の開設
    震災後の4月6日に「被災された血友病患者の方々への相談窓口」を開設し、学会ホームページ上に「Q&A」とともに掲載したが、事態が収束するまで相談業務を継続する予定である。
    2)治療製剤入手可能施設リストの公開
    「岩手、宮城、福島3県における血友病等治療製剤の入手可能施設リスト」を作成し、4月22日に学会ホームページ上に掲載したが、今後の起こりうる災害に備えて、全国版の施設リスト作成を検討する。

    5.継続中の臨床研究

    すでに実施している下記の臨床研究を2011年度も引き続き実施する。
    1)血友病患者の出血エピソードと関節症に関する臨床研究
    2)血友病患者血中のAAV8、AAV9ウイルス抗体価の調査研究

    6.患者会との連携

    1) 全国ヘモフィリアフォーラム
    平成23年4月16日~17日に千里ライフサイエンスセンターで開催された全国ヘモフィリアフォーラムに参加するとともに、今後も同フォーラム開催を支援していく予定である。
    2)患者様と医療者との血友病診療連携についての懇談会
    医療従事者と患者団体との連携を図る目的で、本年度も「患者様と医療者との血友病診療連携についての懇談会」を開催する予定である【日本血栓止血学会学術標準化委員会血友病部会 部会員】(平成23年5月1日現在)

    天野景裕(副部会長) 東京医科大学 臨床検査医学講座准教授
    岡 敏明 札幌徳州会病院 小児科・血液科部長
    酒井道生 産業医科大学 小児科助教
    嶋 緑倫 奈良県立医科大学 小児科教授
    白幡 聡 北九州八幡東病院 院長
    瀧 正志(副部会長) 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 小児科教授
    竹谷英之 東京大学医科学研究所附属病院 関節外科講師
    田中一郎(部会長) 奈良県立医科大学 小児科准教授
    花房秀次 荻窪病院 理事長、小児科・血液科部長
    日笠 聡 兵庫医科大学 血液内科講師
    福武 勝幸 東京医科大学 臨床検査医学講座主任教授
    藤井輝久 広島大学病院 輸血部准教授
    堀越泰雄 静岡県立こども病院 血液腫瘍科医長
    松下 正 名古屋大学医学部附属病院 輸血部教授
    松本剛史 三重大学医学部附属病院輸血部・血液内科
    三室 淳 自治医科大学分子病態治療研究センター 分病態研究部准教授
    吉岡 章 奈良県立医科大学 理事長・学長
  • 平成22年度活動報告書

    1.学会への参加

    1)2010 East Asia Hemophilia Forum
    平成22年6月19日~20日に台北市で2010 East Asia Hemophilia Forumが開催され、血友病部会として参加支援した。  2)The Hemophilia 2010 World Congress
    平成22年7月10日~14日にブエノスアイレスで開催されたWorld Federation of Hemophilia (WFH)に参加し、”Inter-observer reliability of three different radiographic evaluation systems for haemophilic arthropathy”および”Relationship between haemarthrosis and haemophilic arthropathy”の2題のポスター発表を行った。
    3) 第5回日本血栓止血学会学術標準化委員会シンポジウム
    2010年10月30日に東医健保会館で開催された日本血栓止血学会術標準化委員会シンポジウムに「血友病センター構想の現状と問題点」をテーマに参加した。

    2.血友病診療標準化への取り組み

    1)血友病止血治療ガイドラインの検証ならびに改訂
    血友病患者の診療を行っている全国571施設に対してアンケート調査によるガイドラインの検証作業を行った。この結果をもとに、ガイドライン改訂に向けた準備作業を開始した。
    2)後天性血友病診療ガイドラインの作成
    後天性血友病診療ガイドライン作成委員会が設置され、部会員6名が作成作業に携わった。

    3.血友病センター化に向けた取り組み

    「血友病センター化に向けた作業グループ」を立ち上げ、2010年2月27日および6月12日の2回にわたり、検討会議を開催した。また、血友病センター化に関連して、平成24年度診療報酬改定に関する要望書を作成し、厚生労働省に提出した。

    4.継続中の臨床研究

    1)血友病患者の出血エピソードと関節症に関する臨床研究
    アンケート調査およびX線関節評価をもとにした「出血エピソードと関節症に関する臨床研究」の成果はThe Hemophilia 2010 World Congressにおいて発表した。
    2)血友病患者血中のAAV8、AAV9ウイルス抗体価の調査研究
    部会員の所属する施設で収集された血友病患者の検体を用いて、自治医科大学分子病態治療研究センターにおいて血中のAAVウイルス抗体価の検討を行っている。

    5.患者会との連携

    1) 全国ヘモフィリアフォーラム
    平成22年4月17日~18日に東京灘尾ホールで開催された全国ヘモフィリアフォーラムへの参加ならびに支援を行った。
    2)患者様と医療者との血友病診療連携についての懇談会
    平成23年3月13日に第8回目となる「患者様と医療者との血友病診療連携についての懇談会」を開催する予定であったが、震災のため延期となった。

    6.血友病部会会議

    1)第1回会議
    平成22年4月23日、城山観光ホテル(鹿児島市)
    2)第2回会議
    平成22年9月18日、グランドパーク小樽(小樽市)
    3)第3回会議(震災のため中止)
    平成23年3月13日、東京医科大学病院(東京都)【日本血栓止血学会学術標準化委員会血友病部会 部会員】(平成23年5月1日現在)

    天野景裕(副部会長) 東京医科大学 臨床検査医学講座准教授
    岡 敏明 札幌徳州会病院 小児科・血液科部長
    酒井道生 産業医科大学 小児科助教
    嶋 緑倫 奈良県立医科大学 小児科教授
    白幡 聡 北九州八幡東病院 院長
    瀧 正志(副部会長) 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 小児科教授
    竹谷英之 東京大学医科学研究所附属病院 関節外科講師
    田中一郎(部会長) 奈良県立医科大学 小児科准教授
    花房秀次 荻窪病院 理事長、小児科・血液科部長
    日笠 聡 兵庫医科大学 血液内科講師
    福武 勝幸 東京医科大学 臨床検査医学講座主任教授
    藤井輝久 広島大学病院 輸血部准教授
    堀越泰雄 静岡県立こども病院 血液腫瘍科医長
    松下 正 名古屋大学医学部附属病院 輸血部教授
    松本剛史 三重大学医学部附属病院輸血部・血液内科
    三室 淳 自治医科大学分子病態治療研究センター 分病態研究部准教授
    吉岡 章 奈良県立医科大学 理事長・学長
  • 平成21年度活動報告書

    1.学会への参加

    1)第32回日本血栓止血学会学術集会
    平成21年6月4日~6日に北九州市で開催された日本血栓止血学会学術集会において「後天性血友病Aの診断ガイドライン案」、「後天性血友病Aの止血療法ガイドライン(案)」、「後天性血友病Aの免疫抑制療法ガイドライン案」の3題の口演と「血友病患者の出血エピソードと関節症に関する臨床研究~アンケート調査より(第一報)」と「血友病患者の出血エピソードと関節症に関する臨床研究~年齢と可動域からみたX線関節評価」の2題のポスター発表を行った。
    2)2009 East Asia Hemophilia Forum
    平成21年6月6日~7日にかけて北九州国際会議場において2009 East Asia Hemophilia Forumが開催され、血友病部会として全面的に参加協力した。期間中、日本、韓国、台湾、中国の4か国から総勢102名の参加者があり、知識や経験、技術の共有だけでなく、東アジアの血友病診療に携わる医療関係者にとって貴重な交流の場となった。
    3)第22回国際血栓止血学会(ISTH)
    平成21年7月11日~16日に米国ボストンで開催された国際血栓止血学会において「The Japanese guideline for the hemostatic therapy of patients with congenital hemophilia and inhibitors」および「The Japanese guideline for the practical replacement therapy for acute bleeding and surgical prophylaxis in hemophilia without inhibitors」の2題のポスター発表を行った。
    4) 第4回日本血栓止血学会学術標準化委員会シンポジウム
    2009年11月21日に慶應義塾大学で開催された日本血栓止血学会術標準化委員会シンポジウムに「わが国における血友病治療センター構想」をテーマに参加した。米国や韓国での現状報告とともに、医師、患者会、行政の立場から発表が行われ、活発な議論が行われた。

    2.血友病診療標準化への取り組み

    1)血友病止血療法ガイドラインの普及促進
    昨年度に発表した「インヒビターのない血友病患者の急性出血、処置・手術における凝固因子補充療法のガイドライン」と「インヒビター保有先天性血友病患者に対する止血治療ガイドライン」の2篇について更なる普及促進を図るために、関係者にガイドライン小冊子の配布を行うとともに講演などの積極的な普及活動を行った。
    2)後天性血友病診療ガイドライン作成の申請
    「後天性血友病診療ガイドライン」作成のための申請書を日本血栓止血学会の理事会に提出した。

    3.行政への働きかけ

    1)活性型凝固第VII因子製剤の適応外使用に関する要望書の提出
    平成21年10月6日にインヒビター治療製剤である活性型凝固第VII因子製剤(ノボセブン)の高用量単回投与に関する要望書を厚生労働大臣あてに提出した。
    2)血友病センター化に向けた作業グループの立ち上げ
    昨年の学術標準化委員会シンポジウムでの議論を踏まえて「血友病センター化に向けた作業グループ」を立ち上げ、平成22年2月27日に第1回の会合を開催した。
    今後、患者会とも密接に連携し、行政に働きかけていく予定である。

    4.継続中の臨床研究

    1)血友病患者の出血エピソードと関節症に関する臨床研究
    アンケート調査およびX線関節評価をもとにした「出血エピソードと関節症に関する臨床研究」を継続中である。その成果の一部は第32回日本血栓止血学会学術集会において発表した。
    2)血友病患者血中のAAV8、AAV9ウイルス抗体価の調査研究
    「血友病患者血中のAAV8、AAV9ウイルス抗体価の調査研究」を開始した。部会員の所属する施設において患者検体を収集し、AAVベクターを用いた遺伝子治療の基礎データに供する予定である

    5.患者様と医療者との血友病診療連携についての懇談会

     医療従事者と患者団体との連携を図る目的で、本年度も平成22年3月7日に第7回目となる「患者様と医療者との血友病診療連携についての懇談会」を開催した。
    6.血友病部会会議
    1)第1回会議
    平成21年6月5日、リーガロイヤルホテル小倉(北九州市)
    2)第2回会議
    平成21年10月3日、横浜ロイヤルパークホテル(横浜市)
    3)第3回会議
    平成22年3月7日、新宿オークタワー(東京都)【日本血栓止血学会学術標準化委員会血友病部会 部会員】(平成22年3月1日現在)

    天野景裕(副部会長) 東京医科大学 臨床検査医学講座准教授
    岡 敏明 札幌徳州会病院 小児科・血液科部長
    酒井道生 産業医科大学 小児科助教
    嶋 緑倫 奈良県立医科大学 小児科教授
    白幡 聡 北九州総合病院 副院長
    高田 昇 広島大学病院 輸血部准教授
    高松純樹 愛知県赤十字血液センター 所長
    瀧 正志(副部会長) 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 小児科教授
    竹谷英之 東京大学医科学研究所附属病院 関節外科講師
    田中一郎(部会長) 奈良県立医科大学 小児科准教授
    花房秀次 荻窪病院 小児科・血液科部長
    日笠 聡 兵庫医科大学 血液内科講師
    福武 勝幸(診療連携幹事) 東京医科大学 臨床検査医学講座主任教授
    藤井輝久 広島大学病院 輸血部講師
    堀越泰雄 静岡県立こども病院 血液腫瘍科
    松下 正 名古屋大学医学部附属病院 輸血部教授
    松本剛史 三重大学医学部附属病院輸血部・血液内科
    三室 淳 自治医科大学分子病態治療研究センター 分病態研究部准教授
    吉岡 章 奈良県立医科大学 理事長・学長
  • J-HIS

    国立研究法人 日本医療研究開発機構 感染症実用化研究事業
    エイズ対策実用化研究事業「血友病とその治療に伴う種々の合併症克服に関する研究」坂田班分担研究
    J-HIS(ジェーヒス)(Japan Hemophilia Inhibitor Study)
    「第VIII因子、第IX因子製剤のインヒビター発生要因に関する研究」

    本研究班では、平成19年より厚生労働科学研究費補助金(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業)をうけまして、『血友病における第VIII因子、第IX因子製剤のインヒビター発生要因に関する研究』を行って参りました。平成19年度からの3年間では、多くの先生方のご協力のお蔭で、本邦においては、血漿由来製剤と遺伝子組み換え製剤におけるインヒビター発生の差はないとの結論を得ることができ、更に家族歴がインヒビターに大きく寄与していることが示唆されました。
    平成22年度からは厚生労働科学研究費補助金(エイズ対策研究事業)「血友病とその治療に伴う合併症の克服に関する研究」坂田班分担研究の一つとして継続し、平成27年度からは国立研究法人 日本医療研究開発機構 感染症実用化研究事業 エイズ対策実用化研究事業「血友病とその治療に伴う種々の合併症克服に関する研究」(坂田班分担研究)【第Ⅷ、第Ⅸ因子製剤のインヒビター発生要因に関する研究】として実施して参ります。本研究班では、遺伝子検査研究「第VIII因子、第IX因子、サイトカイン遺伝子異常に関する研究」とJ-HIS2「新規血友病患者のデータベース構築によるコホート研究」により得られる臨床情報を合わせて、nation-wideなデータベースを構築しインヒビター発生要因の解明を進めております。
    現在、J-HIS2は42施設から256名が登録されております。(平成27年3月末現在)。
    遺伝子検査研究におきましては、37施設から276例の検体が集まっており、解析作業を進めております。研究期間も平成30年3月まで延長致しましたので、是非ともご協力頂けますよう宜しくお願い申し上げます。

    坂田班分担研究 代表:奈良県立医科大学 小児科学教室 嶋緑倫

    J-HIS2 「新規血友病患者のデータベース構築によるコホート研究」

    第VIII因子、第IX因子、サイトカイン遺伝子異常に関する研究

    J-HIS研究参加をご希望の方は

    施設登録用紙を、J-HIS研究事務局宛FAX(052-846-2888)にてお送り頂けますよう宜しくお願い申し上げます。受領後、新規症例登録用紙(様式1)をお送りさせて頂きます。ご不明な点がございましたら、何なりとお問い合わせ頂けますよう宜しくお願い申し上げます。

    J-HIS(ジェーヒス)研究事務局
    株式会社名古屋臨床薬理研究所
    〒464-0856 名古屋市千種区吹上1-2-15
    サンライズ吹上ビル5F
    TEL:052-733-7601 FAX:052-846-2888
    E-mail:j-his@nicp.jp
  • 平成19年度 活動計画書

    1.血友病止血療法のガイドライン案の作成

     血友病止血療法のガイドライン最終案について、本検討部会では、内外の止血補充療法の現状を調査し、止血補充療法の臨床的・基礎的エビデンスを集積することにより、わが国における血友病止血補充療法のガイドライン案を作成することを目的として活動を実施し、議論を重ねてきた。
    その結果、『インヒビターのない血友病患者の急性出血、処置・手術における凝固因子補充療法のガイドライン』と『インヒビター保有先天性血友病患者に対する止血治療ガイドライン』の最終案を、それぞれ平成19年2月23日、平成19年4月19日付で日本血栓止血学会理事会に提出した。現在、評価委員会で審議中である。承認後は、両ガイドラインを日本血栓止血学会誌に発表するが、さらに全国の医療従事者や患者に配布することを予定している。

    2.後天性インヒビターに関する前方視および後方視的調査研究

     本邦における後天性凝固因子インヒビター症例の実態を把握する目的でアンケート形式による前方視的調査研究を行い、2003年10月1日から2006年5月末現在で、40施設53例の登録があった。うち、51例が第VIII因子、1例が第V因子、1例が第VIII, IX, XI, XII因子に対するインヒビターであった。
    調査は本年9月末で終了とし、その調査内容については、第29回日本血栓止血学会学術集会で発表するとともに学会誌に投稿の予定である

    3.後天性インヒビターの治療に関するガイドラインの作成

     近年、後天性血友病患者の報告例が増加している。本疾患の治療は、出血症状に対する止血療法とインヒビターの消失をはかる免疫抑制療法に大別されるが、治療に抵抗する例も多い。
    血友病部会では、わが国における後天性血友病の実態に関する調査を実施した。さらに、2006年度のSSCで後天性血友病の診断と治療に関するシンポジウムを開催した。本年度は今までの活動をもとに、『後天性血友病の診断と治療に関するガイドライン』の作成を目的に、1)診断と抗リン脂質抗体症候群との鑑別、2)止血治療、3)免疫学的治療、4)疫学、EBMのワーキンググループを立ち上げた。今後、ワーキンググループ別に検討を重ね、ガイドラインを作成する予定である。

    4.患者様と医療者との血友病診療連携についての懇談会

     2006年度懇談会では、患者会の連携について提案がされた。2007年度も引き続き、患者グループと血友病診療医師・看護師との交流の場を設定することを計画する。

    5.血友病部会コンセンサスシンポジウム

     2008年実施予定の日本血栓止血学会学術標準化委員会(SSC)のコンセンサスシンポジウムに参加する。
    テーマは、後天性血友病治療に関するガイドライン作成を予定している。

    6.継続中の臨床研究

     すでに実施している下記の研究を2007年度も引き続き実施する。
    1)免疫寛容導入療法に関する国際的無作為化比較対照試験
    2)乳幼児重症血友病に対する凝固因子製の定期補充療法に関する前方視的研究
    3)血友病患者の出血エピソードと関節症に関する臨床研究
    4)活性型第VII因子製剤高用量投与に関する研究

    7.ファイバ使用制限撤廃に関する運動

     ファイバの使用において、3日以内の使用制限は依然残っている。本年4月に、日本血栓止血学会血友病部会より日本血液学会・日本臨床血液学会の内保連委員会宛へ文書を提出し、5月に日本血液学会・日本臨床血液学会より順番2位で厚生労働省保険局へ再評価希望書が出された。本年も部会として要望活動を続ける予定である。

    8.新たなプロジェクト

    血友病保因者は、通常出血症状はみられないが、一部、中等度-軽症血友病のフェノタイプを呈する。かかる場合、女性血友病とみなされるが、周産期を含めて全生涯における止血治療の指針は確立されていない。さらに、出血傾向のない保因者における男児分娩に関する指針もない。そこで、血友病保因者に関するガイドラインの作成を開始する。本プロジェクトにあたっては、産婦人科領域の専門医と共同で実施する予定である。

    【日本血栓止血学会学術標準化委員会血友病部会 部会員】

    天野 景裕(副部会長) 東京医科大学 臨床検査医学講座講師
    岡 敏明 札幌徳州会病院 小児科・血液科部長
    嶋 緑倫(部会長) 奈良県立医科大学 小児科准教授
    白幡 聡 産業医科大学 小児科教授
    高田 昇 広島大学病院 輸血部准教授
    高松 純樹 名古屋大学医学部附属病院 輸血部教授
    瀧 正志(副部会長) 聖マリアンナ医科大学横浜西部病院 小児科・周産期センター 准教授
    竹谷 英之 東京大学医科学研究所付属病院 関節外科講師
    花房 秀次 荻窪病院 小児科・血液科部長
    日笠 聡 兵庫医科大学 血液内科講師
    福武 勝幸(診療連携幹事) 東京医科大学 臨床検査医学講座主任教授
    松下 正 名古屋大学医学部附属病院 血液内科講師
    三間屋 純一 静岡県立こども病院 血液腫瘍科 副院長兼医療安全室長
    吉岡 章(担当理事) 奈良県立医科大学 小児科教授
  • 平成18年度 活動報告書

    1.血友病止血療法のガイドライン案の作成

     血友病の出血症状に対する止血治療の基本は、第VIII因子あるいは第IX因子製剤を用いる補充療法、あるいはインヒビター保有症例ではバイパス止血療法である。止血療法の実施にあたっては、出血部位や重症度を考慮し、製剤の選択・投与量・投与期間を決定することが必要である。しかしながら、わが国に確立されたガイドラインはなく、専門施設を中心とした経験的な指針に基づいて実施されているのが現状である。したがって、施設間や医師間で差があることは否定できない。
    そこで、本検討部会では、内外の止血補充療法の現状を調査し、止血補充療法の臨床的・基礎的エビデンスを集積することにより、わが国における血友病止血補充療法のガイドライン案を作成することを目的として活動を実施し、議論を重ねてきた。その結果、『インヒビターのない血友病患者の急性出血、処置・手術における凝固因子補充療法のガイドライン』と、『インヒビター保有先天性血友病患者に対する止血治療ガイドライン』の最終案をそれぞれ平成19年2月23日、平成19年4月19日付で日本血栓止血学会理事会に提出した。現在、審査委員会で審議中である。

    2.後天性インヒビターに関する前方視的調査研究

     本邦における後天性凝固因子インヒビター症例の実態を把握する目的で、アンケート形式による前方視的調査研究を2003年10月1日から実施し、2006年9月末で終了した。 現在で40施設57例の登録があった。うち、55例が第VIII因子、1例が第V因子、1例が第VIII, IX, XI, XII因子に対するインヒビターであった。調査内容については、第29回日本血栓止血学会学術集会において発表した。さらに日本血栓止血学会誌へも投稿の予定である。

    3.患者様と医療者との血友病診療連携についての懇談会

     2007年3月11日、東京医科大学病院本館会議室にて「第4回 患者様と医療者との血友病診療連携についての懇談会」を開催した。今回も全国の血友病患者会からの代表と血友病部会部会員が集まり、血友病の医療について議論を行った。

    4.血友病標準化検討部会コンセンサスシンポジウム

     2007年2月に慶應義塾大学医学部にて実施された日本血栓止血学会学術標準化委員会(SSC)シンポジウムにおいて、瀧 正志(聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院)・福武勝幸(東京医科大学)を座長とし、「後天性血友病の診断と治療」のテーマで下記のシンポジウムを開催した。

    1)本邦における後天性凝固因子インヒビターの前方視的調査
    田中一郎(奈良県立医科大学小児科)
    2)岡山近隣で経験した後天性血友病症例の臨床病態
    新谷憲治(笠岡市立市民病院内科)
    3)後天性血友病の診断
    天野景裕(東京医科大学臨床検査医学講座)
    4)後天性血友病の凝血学的特性
    嶋 緑倫(奈良県立医科大学小児科)
    5)後天性血友病の診断と治療-抗リン脂質抗体症候群との鑑別-
    山崎雅英[金沢大学大学院医学系研究科細胞移植学(血液内科)]
    「追加発言」
     トロンビン生成に対する抗第?ヲ因子抗体と抗リン脂質抗体の相違
    山崎 哲(聖マリアンナ医科大学病院臨床検査部),
    瀧 正志(聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院小児科)
    6)後天性血友病におけるリツキサンの役割
    毛利 博(藤枝市立総合病院血液内科)
    田邊寿一(藤枝市立総合病院血液内科)
    村田 興(同 化学療法科)
    立花宗孝(静岡日本赤十字病院血液内科)
    田口 淳(静岡日本赤十字病院血液内科)

    5.継続中の調査研究

    1)免疫寛容導入療法に関する国際的無作為化比較対照試験〔研究代表者:吉岡 章〕
    (1)国際研究で登録例50例中研究実施例が38例で、その中で日本での実施例は7例と国際ITI研究のなかでも日本が貢献している。さらに、国際研究対象患者の基準の変更(インヒビター発生後12ヶ月以内が24ヶ月以内に)された。国内実施例の臨床経過も良好である。
    (2)ITIの製剤についてバクスター社(4-6症例)、バイエル社(2症例)、化血研(4症例)から正式に申し出があり、国際ITIの研究参加が可能となった。
    2)乳幼児重症血友病に対する凝固因子製の定期補充療法に関する前方視的研究 〔瀧 正志〕
    すでに倫理委員会で承認された施設は多いものの、患者登録例が予想を大幅に下回っている。最近、定期補充実施例が増加しており、すでに実施している症例が多いことも原因と考えられる。引き続き積極的な参加が望まれる。
    3)血友病患者の出血エピソードと関節症に関する臨床研究 〔竹谷英之〕
    現在、まだ症例数も少なく積極的な参加が望まれている。
    4)活性型第VII因子製剤高用量投与に関する研究 〔白幡 聡〕
    目標登録症例26例に対して、登録済み症例19例、phase1;終了19例、phase2;1回目終了6例、2回目終了3名で登録症例が不足している。さらにphase2実施例が少ない。

    6.血友病医療に関する運動

    1)ファイバの使用制限の撤廃に関する運動
    平成15年3月10日、日本血栓止血学会、血友病部会から厚生労働省医政局長・医薬局長宛に、ファイバの使用について1)インヒビター力価10Bethesda単位以上の患者への使用制限の解除、2)原則として3日以内の投与の解除、3)1日の総投与量を200単位/Kgへ制限の追加、について要望書を提出した。
    その後、平成17年6月30日に、日本血液学会の要望により内保連経由にて厚生労働省へ医薬品再評価希望書を提出、同年12月22日、日本血栓止血学会血友病部会代表(嶋 緑倫部会長)が厚生労働省保険局長宛要望書を提出した。平成18年5月22日、保険局長通知(保発第0522001号)が出され、インヒビター力価10Bethesda単位以上の患者への使用制限が解除され、1日の総投与量を200単位/Kgへ制限が追加された。
    2)血液製剤とインヒビター発生率に関する提言
    Goudemand J らの論文(Influence of the type of factor VIII concentrateon the incidence of factor VIII inhibitors in previously untreated patients with severe hemophilia A. Blood 107:46-51, 2006)がきっかけとなり、血友病A治療製剤とインヒビター発生率に関する理解について混乱が生じた。
    そこで、本部会は本論文を詳細にレビューし、日本血栓止血学会誌18巻第1号に提言「凝固因子製剤の種類がインヒビター発現に及ぼす影響」を発表した(p87-88,2007年)。【日本血栓止血学会学術標準化委員会血友病部会 部会員】

    天野 景裕(副部会長) 東京医科大学 臨床検査医学講座講師
    岡 敏明 札幌徳州会病院 小児科・血液科部長
    嶋 緑倫(部会長) 奈良県立医科大学 小児科准教授
    白幡 聡 産業医科大学 小児科教授
    高田 昇 広島大学病院 輸血部准教授
    高松 純樹 名古屋大学医学部附属病院 輸血部教授
    瀧 正志(副部会長) 聖マリアンナ医科大学横浜西部病院 小児科・周産期センター 准教授
    竹谷 英之 東京大学医科学研究所付属病院 関節外科講師
    花房 秀次 荻窪病院 小児科・血液科部長
    日笠 聡 兵庫医科大学 血液内科講師
    福武 勝幸(診療連携幹事) 東京医科大学 臨床検査医学講座主任教授
    松下 正 名古屋大学医学部附属病院 血液内科講師
    三間屋 純一 静岡県立こども病院 血液腫瘍科 副院長兼医療安全室長
    吉岡 章(担当理事) 奈良県立医科大学 小児科教授
  • 平成18年度 活動計画書

    1.血友病止血療法のガイドライン案の作成

     血友病の出血症状に対する止血治療の基本は、第VIII因子あるいは第IX因子製剤を用いる補充療法、あるいはインヒビター保有症例ではバイパス止血療法である。止血療法の実施にあたっては、出血部位や重症度を考慮し、製剤の選択・投与量・投与期間を決定することが必要である。しかしながら、わが国に確立されたガイドラインはなく、専門施設を中心とした経験的な指針に基づいて実施されているのが現状である。したがって、施設間や医師間で差があることは否定できない。
    そこで、本検討部会では、内外の止血補充療法の現状を調査し、止血補充療法の臨床的・基礎的エビデンスを集積することにより、わが国における血友病止血補充療法のガイドライン案を作成することを目的として活動を実施し、議論を重ねてきた。その結果、『インヒビターのない血友病患者の急性出血、処置・手術における凝固因子補充療法のガイドライン』と、『インヒビター保有先天性血友病患者に対する止血治療ガイドライン』の最終案をそれぞれ平成19年2月23日、平成19年4月19日付で日本血栓止血学会理事会に提出した。現在、審査委員会で審議中である。

    2.後天性インヒビターに関する前方視的調査研究

     本邦における後天性凝固因子インヒビター症例の実態を把握する目的で、アンケート形式による前方視的調査研究を2003年10月1日から実施し、2006年9月末で終了した。 現在で40施設57例の登録があった。うち、55例が第VIII因子、1例が第V因子、1例が第VIII, IX, XI, XII因子に対するインヒビターであった。調査内容については、第29回日本血栓止血学会学術集会において発表した。さらに日本血栓止血学会誌へも投稿の予定である。

    3.患者様と医療者との血友病診療連携についての懇談会

     2007年3月11日、東京医科大学病院本館会議室にて「第4回 患者様と医療者との血友病診療連携についての懇談会」を開催した。今回も全国の血友病患者会からの代表と血友病部会部会員が集まり、血友病の医療について議論を行った。

    4.血友病標準化検討部会コンセンサスシンポジウム

     2007年2月に慶應義塾大学医学部にて実施された日本血栓止血学会学術標準化委員会(SSC)シンポジウムにおいて、瀧 正志(聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院)・福武勝幸(東京医科大学)を座長とし、「後天性血友病の診断と治療」のテーマで下記のシンポジウムを開催した。

    1)本邦における後天性凝固因子インヒビターの前方視的調査
    田中一郎(奈良県立医科大学小児科)
    2)岡山近隣で経験した後天性血友病症例の臨床病態
    新谷憲治(笠岡市立市民病院内科)
    3)後天性血友病の診断
    天野景裕(東京医科大学臨床検査医学講座)
    4)後天性血友病の凝血学的特性
    嶋 緑倫(奈良県立医科大学小児科)
    5)後天性血友病の診断と治療-抗リン脂質抗体症候群との鑑別-
    山崎雅英[金沢大学大学院医学系研究科細胞移植学(血液内科)]
    「追加発言」
     トロンビン生成に対する抗第?ヲ因子抗体と抗リン脂質抗体の相違
    山崎 哲(聖マリアンナ医科大学病院臨床検査部),
    瀧 正志(聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院小児科)
    6)後天性血友病におけるリツキサンの役割
    毛利 博(藤枝市立総合病院血液内科)
    田邊寿一(藤枝市立総合病院血液内科)
    村田 興(同 化学療法科)
    立花宗孝(静岡日本赤十字病院血液内科)
    田口 淳(静岡日本赤十字病院血液内科)

    5.継続中の調査研究

    1)免疫寛容導入療法に関する国際的無作為化比較対照試験〔研究代表者:吉岡 章〕
    (1)国際研究で登録例50例中研究実施例が38例で、その中で日本での実施例は7例と国際ITI研究のなかでも日本が貢献している。さらに、国際研究対象患者の基準の変更(インヒビター発生後12ヶ月以内が24ヶ月以内に)された。国内実施例の臨床経過も良好である。
    (2)ITIの製剤についてバクスター社(4-6症例)、バイエル社(2症例)、化血研(4症例)から正式に申し出があり、国際ITIの研究参加が可能となった。
    2)乳幼児重症血友病に対する凝固因子製の定期補充療法に関する前方視的研究 〔瀧 正志〕
    すでに倫理委員会で承認された施設は多いものの、患者登録例が予想を大幅に下回っている。最近、定期補充実施例が増加しており、すでに実施している症例が多いことも原因と考えられる。引き続き積極的な参加が望まれる。
    3)血友病患者の出血エピソードと関節症に関する臨床研究 〔竹谷英之〕
    現在、まだ症例数も少なく積極的な参加が望まれている。
    4)活性型第VII因子製剤高用量投与に関する研究 〔白幡 聡〕
    目標登録症例26例に対して、登録済み症例19例、phase1;終了19例、phase2;1回目終了6例、2回目終了3名で登録症例が不足している。さらにphase2実施例が少ない。

    6.血友病医療に関する運動

    1)ファイバの使用制限の撤廃に関する運動
    平成15年3月10日、日本血栓止血学会、血友病部会から厚生労働省医政局長・医薬局長宛に、ファイバの使用について1)インヒビター力価10Bethesda単位以上の患者への使用制限の解除、2)原則として3日以内の投与の解除、3)1日の総投与量を200単位/Kgへ制限の追加、について要望書を提出した。
    その後、平成17年6月30日に、日本血液学会の要望により内保連経由にて厚生労働省へ医薬品再評価希望書を提出、同年12月22日、日本血栓止血学会血友病部会代表(嶋 緑倫部会長)が厚生労働省保険局長宛要望書を提出した。平成18年5月22日、保険局長通知(保発第0522001号)が出され、インヒビター力価10Bethesda単位以上の患者への使用制限が解除され、1日の総投与量を200単位/Kgへ制限が追加された。
    2)血液製剤とインヒビター発生率に関する提言
    Goudemand J らの論文(Influence of the type of factor VIII concentrateon the incidence of factor VIII inhibitors in previously untreated patients with severe hemophilia A. Blood 107:46-51, 2006)がきっかけとなり、血友病A治療製剤とインヒビター発生率に関する理解について混乱が生じた。
    そこで、本部会は本論文を詳細にレビューし、日本血栓止血学会誌18巻第1号に提言「凝固因子製剤の種類がインヒビター発現に及ぼす影響」を発表した(p87-88,2007年)。【日本血栓止血学会学術標準化委員会血友病部会 部会員】

    天野 景裕(副部会長) 東京医科大学 臨床検査医学講座講師
    岡 敏明 札幌徳州会病院 小児科・血液科部長
    嶋 緑倫(部会長) 奈良県立医科大学 小児科准教授
    白幡 聡 産業医科大学 小児科教授
    高田 昇 広島大学病院 輸血部准教授
    高松 純樹 名古屋大学医学部附属病院 輸血部教授
    瀧 正志(副部会長) 聖マリアンナ医科大学横浜西部病院 小児科・周産期センター 准教授
    竹谷 英之 東京大学医科学研究所付属病院 関節外科講師
    花房 秀次 荻窪病院 小児科・血液科部長
    日笠 聡 兵庫医科大学 血液内科講師
    福武 勝幸(診療連携幹事) 東京医科大学 臨床検査医学講座主任教授
    松下 正 名古屋大学医学部附属病院 血液内科講師
    三間屋 純一 静岡県立こども病院 血液腫瘍科 副院長兼医療安全室長
    吉岡 章(担当理事) 奈良県立医科大学 小児科教授
  • 平成16年度 活動報告書

    1.血友病標準化検討部会会議

     2004年4月16日に、福岡ソフトリサーチパークにて血友病標準化検討部会会議を開催し、以下の議題につき報告・審議された。

    議題: 1) ITIの現況に関して
    2) 血友病診療費の包括評価(DPC)の問題と今後の対策
    3) 最近の血友病診療報酬の査定状況について
    4) IFN自己注射の方向性
    5) ファイバの適応外使用における特定療養費扱いについて
    6) プロプレックスSTの供給不足問題
    7) BeneFIXの臨床開発の動向
    8) クリスマシン-Mの現況
    9)本年度のコンセンサスシンポジウムの内容に関して

    2.血友病診療ネットワーク構築

     2002年度までに、全国の主だった血友病診療施設82か所の医師132名のデータベースと、電子メーリングリスト(血友病診療ネットワーク)を作成した。2004年度には、更にデータベースの登録医師を増やし、2004年4月16日現在、105医療施設の医師192名(内、メールアドレス登録者は145名)となっている。2003年10月7日から、血友病診療ネットワークを通して血友病に関する医療指針の配信を開始した。

    3.血友病患者グループとの意見交換会

     ※別紙(『第2回 患者様と医療者との血友病診療連携についての懇談会』)参照

    4.ノボセブンの後天性血友病の適応追加

     2002年11月16日に日本血栓止血学会でのコンセンサスシンポジウム「血友病家庭療法の再評価と保険適応外治療の方向性」が開催され、医師・看護師(60名)、患者(11名)、製薬企業(94名)、行政(4名)の担当者が参加した。本会議において、後天性血友病がノボセブンの適応症として明確に用法・用量に示されるべきとするコンセンサスが得られた。2003年3月10日、同学会から添付文書の改訂に関する要望書が厚生労働省に提出された。また2003年4月25日には、ノボノルディスクファーマ社より、学会に同調する形で厚生労働省に「効能・効果」の一部変更承認申請が提出された。これらに対し、行政からの要請で、2004年10月14日に、厚生労働省審査管理課から林氏、医薬品総合機構から国枝氏・前田氏・小池氏、ノボノルディスクファーマから中野氏・関口氏・荻原氏、そして本学会血友病検討部会を代表して新井が医学専門家として参集し、医薬品機構において話し合いがもたれた。その結果、2004年11月19日付けで本件は承認され、ノボセブン添付文書中の効能・効果は、「血液凝固第VIII因子又は第IX因子に対するインヒビターを保有する先天性血友病及び後天性血友病患者の出血抑制」と変更された。

    5.血友病標準化検討部会コンセンサスシンポジウム

     インヒビター保有血友病のバイパス止血治療には、(活性型)プロトロンビン複合体製剤に加え、遺伝子組み換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)が用いられている。近年、FVIIaを中心に新しい止血機序が提唱され、臨床モニターとしても、より有用な検査パラメーターが開発されてきた。臨床実地においては、インヒビター保有症例の大手術における止血管理の経験が蓄積されてきた。他方では、rFVIIaの一般的止血効果が着目され、血友病以外の出血性疾患をはじめ、外傷、外科手術などの止血管理への利用が模索され始めている。第27回日本血栓止血学会学術集会において「バイパス止血治療の展望」と題して血友病検討部会コンセンサスシンポジウムを開催した。本シンポジウムにおいて、基礎的、臨床的側面から活性型凝固因子製剤が展望され、最新の治療現況が紹介された。

    【日時・場所】平成16年11月18日(木)午後3:30~5:00、奈良県新公会堂
    【座   長】産業医科大学小児科 白幡 聡教授
    【シンポジウムの概容】

    1) 活性型凝固因子の止血機序:友清和彦(化学及血清療法研究所)
    FVIIaは、TF依存性の外因系凝固機転の開始以外に、高濃度ではTF非依存性に活性化血小板膜上で直接第X因子を活性化する。また、高濃度のFVIIaは余剰の第X因子の存在下でトロンビン生成能をさらに促進させる。一方で、FVIIaは第Va因子の存在下に、酸性リン脂質上で新しいプロトロンビナーゼ複合体を形成しトロンビンを生成する。これらのFVIIaの凝固系における多機能性が論じられた。
    2) バイパス止血治療の新しい臨床モニター:嶋 緑倫(奈良県立医科大学小児科)
    rFVIIaの止血治療モニターとしては、血漿第VII因子活性の10 U/ml以上の上昇やPTの8秒以下の短縮などが一般に用いられている。しかし、これらの指標は臨床的止血効果が十分に反映されないことがある。演者らは、自動血液凝固解析装置を用いたフィブリン生成過程の精密な数学的解析により、APCCやrFVIIa投与中の止血能を解析した。また、従来のトロンボエラストグラム(TEG)の利便性を向上させてデータのコンピューター解析を可能にした機器(RoTEM)を利用し、同様に、バイパス止血治療中の止血モニターとしての有用性を検討した。これらの新しい指標とトロンビン生成能などとの関連から、臨床モニターとしての有用性が論じられた。
    3) バイパス止血製剤による整形外科手術の止血管理:竹谷英之(国立病院機構福井病院 リハビリテーション科)
    インヒビター保有血友病患者の大手術の止血管理は大きな難関とされてきた。演者は、近年経験した整形外科手術におけるバイパス止血製剤を用いた止血管理の成績を通して、インヒビター保有血友病症例の外科手術の普及の可能性を論じた。
    4) 救命医療におけるrFVIIaの止血効果:野田真理子、太田祥一、三島史朗、行岡哲男(東京医科大学救急医学)
    rFVIIaは、大きな外傷の救命治療における一般的止血剤としても期待がもたれている。骨盤骨折に伴う腸骨動脈出血に対しては一般的に経動脈カテーテルによりエンボリゼーションによる止血を行う。本症例では、その代わりに末梢静脈からrFVIIaが投与された。講演では、rFVIIa投与後の止血過程が動脈造影画像により提示された。

    日本血栓止血学会
    血友病検討部会

    新井 盛夫※1 東京医科大学 臨床検査医学客員助教授
    嶋 緑倫(幹事) 奈良県立医科大学 小児科助教授
    白幡 聡※2 産業医科大学 小児科教授
    高田 昇 広島大学 輸血部助教授
    高松 純樹 名古屋大学 輸血部教授
    瀧 正志(幹事) 聖マリアンナ医科大学 小児科助教授
    花房 秀次 荻窪病院 小児科部長
    日笠 聡 兵庫医科大学 総合内科
    福武 勝幸(診療連携幹事) 東京医科大学 臨床検査医学教授
    三間屋 純一 静岡県立こども病院 血液腫瘍科科長
    吉岡 章(ITI小委員長) 奈良県立医科大学 小児科教授

    ※1部会長就任期間:2004年4月1日~2004年10月31日
    ※2部会長就任期間:2004年11月1日~2005年3月31日
    新井盛夫は、2004年10月31日付けで東京医科大学を辞し、11月1日よりノボノルディスクファーマ(株)のノボセブン臨床開発部長に就任した。11月1日付けで、吉岡章教授(血友病検討部会担当理事)より、2004年11月1日から2005年3月31日までの期間の部会長は白幡聡教授に委嘱された。

    【※別紙】第2回 患者様と医療者との血友病診療連携についての懇談会

     血友病検討部会では、平成17年3月20日(日)午前10時から午後4時まで、東京医科大学病院本館6階の第2第3会議室において、『第2回患者様と医療者との血友病診療連携についての懇談会』を開催した。参加者は全国の患者会関係者33名、医療関係者13名であった。

    午前10時から 「開会の挨拶」を産業医科大学の白幡聡教授が行い、続いて、血友病検討部会からの話題提供として、東京医科大学の福武勝幸が司会を務め、1)血友病患者数の動向(瀧正志)2)最近の血友病の治療薬の動向(白幡聡)3)定期補充療法(瀧正志)4)インヒビターと治療 全般(嶋緑倫)、ITI(吉岡章)5)HIV感染症の治療(花房秀次)6)HCV慢性肝炎の治療(福武勝幸)7)血友病医療事情について(三間屋純一)8)専門医の役割・連絡体制の整備(高田昇)9)患者様と製薬会社との関係、その他(福武勝幸)について、各テーマ5分間程度のプレゼンテーションを行った。

    午前11時から、患者と専門部会の二つに分かれ、患者懇談会は第2第3会議室、専門部会は特別会議室にて各々の話し合いの時間を設けた。午後1時からの昼食を挟み、そのまま続いて、午後1時30分より第2第3会議室にて合同懇談会を行った。患者さんに司会をお願いし、次のような仮のテーマをもとに質疑を行った。1)各地域の血友病医療のために、「いわゆる専門医」にしてもらいたいことがあるか。例えば、各地域で定期的に専門医と懇談する場を作る(実際には各地で行われているかもしれない)。2)各地域の血友病医療で不足しているものが何かあるか。3)定期補充療法についてどう考えて取り組むべきと思うか。4)C型肝炎の治療を普及させるにはどうしたら良いと思うか。何が治療を滞らせる原因か(通院時間、自己注射など)。5)全国規模で、医療側と患者側との連絡体制を密接にする方法はどうしたらよいか(医療側の連絡網、患者側の連絡網、両者合同の連絡網の整備の可能性など)。6)世界の患者会との連携についてどう考えるか。7)小児慢性特定疾患療養費への今後の対応について。8)その他の希望。以上のテーマについて、活発な議論が行われた。

    午後3時55分に閉会挨拶を奈良県立医科大学の吉岡章教授が行い、午後4時に閉会した。

    詳細は議事録に記載するが、この懇談会のように直接話し合う機会は大切であるとする認識は、患者さんの間でも医療者の間でも同じであり、今後とも継続して更に緊密な関係作りをすることを望むとの方向性で意見が一致した。

    (福武 勝幸)
  • 平成14年度 コンセンサスシンポジウム

    日本血栓止血学会 学術専門部会 血友病標準化検討部会
    コンセンサスシンポジウム 議事録
    血友病家庭療法の再評価と保険適応外治療の方向性

    開催日:平成14年11月16日 午後3:00~5:00
    神戸国際会議場 メインホール
    座長:吉岡 章 (奈良県立医科大学 小児科教授)連絡先:新井盛夫
    東京医科大学 臨床検査医学
    〒160-0023 東京都新宿区西新宿6-7-1
    電話:03-5339-3770
    FAX:03-5320-8816血友病標準化検討部会のコンセンサスシンポジウム「血友病家庭療法の再評価と保険適応外治療の方向性」は、医療者、患者、製薬企業、行政の4者が参加して開催された。参加者総計は170名(表1)と、昨年の88名を大きく上回り、各方面から活発な意見が交わされた。血友病医療に革新をもたらした家庭療法は、広く普及するにつれて、患者の管理や教育の充実を求める声が出ている。今回、本療法の定着と標準化を目的として本部会が作成した「ガイドライン新案」が紹介された。後半では、医学的必要性から行われている凝固因子製剤の「適応外使用」に焦点を当て、現状と問題点が製薬企業から提示され、今後の方向性が明確にされた。

    発表の概要

    1. 血友病家庭療法の再評価

    I. ガイドライン新案 兵庫医科大学 総合内科 日笠 聡
    II. 家庭バイパス治療のガイドライン案 静岡県立こども病院 血液腫瘍科 三間屋 純一

    2. 血友病および類縁疾患における保険適応外の治療法の評価

    I. 保険適応外治療の現状 東京医科大学 臨床検査医学 新井 盛夫
    II. ファイバ、プロプレックスSTに関する問題点 バクスター株式会社 バイオサイエンス事業部 白石 睦
    III. ノボセブンに関する問題点 ノボ ノルディスク ファーマ(株)小松 京子

    1. 血友病家庭療法の再評価
    I. ガイドライン新案 兵庫医科大学 総合内科 日笠 聡(スライド21枚)

    血友病の在宅自己注射療法(家庭療法)は1983年に認可されて以来、全国に広く普及している。しかし、家庭療法の基準、教育項目、遵守事項、管理項目に関しては施設間での相違があり、患者の移動に伴う不都合が生じている。今回、血友病標準化検討部会では、家庭療法の標準化の推進、医療者側の管理基準などに重点を置いた新ガイドライン案を作成した。現在まで使用された各種のガイドラインやマニュアルと兵庫医科大学での自己注射の状況が報告され、患者により教育の指導者や内容にばらつきがあることや補充量が適切でない症例などが示された。新ガイドライン案では、従来からの家庭注射療法の目的、意義、方法、適応基準、認可、遵守事項が更改された。さらに新たな項目として、教育項目、記録表、継続・管理、教育の評価、実施医療機関のありかたに関する事項が提示され、継続にあたっては5年を目安に教育や治療方法の見直しが必要だとした。

    II. 家庭バイパス治療のガイドライン案 静岡県立こども病院 血液腫瘍科 三間屋 純一(スライド16枚)

    インヒビター保有患者の止血治療はバイパス製剤の副作用や止血効果の不確実性の問題があり、永らく家庭療法の適応とはみなされなかった。一方で、出血症状を繰り返し、バイパス製剤の早期輸注効果のあるインヒビター症例などには家庭療法を導入するニーズが高まっていた。平成11年には、インヒビター保有患者のバイパス治療の家庭療法が、一般の家庭療法に16年遅れて事実上認められた。インヒビター保有患者の家庭療法の導入の際には、非インヒビター患者の家庭療法の基準や教育項目に加えて、インヒビターの基本的知識や止血治療の特殊性の理解が求められる。しかし、開始年齢や出血頻度・重症度、インヒビター力価などには自由度をもたせる必要があるとした。バイパス療法に用いられるプロプレックスST、ファイバ、ノボセブンの3製剤に関して、血友病標準化検討部会が検討中の家庭療法時のプロトコール案が提示された。また、止血効果を高める使い方の提案として、ノボセブンと抗線溶剤の併用やノボセブンとプロプレックスSTを少量同時投与する方法が紹介された。

    2. 血友病および類縁疾患における保険適応外の治療法の評価
    I. 保険適応外治療の現状 東京医科大学 臨床検査医学 新井盛夫 (スライド16枚)

    医療上の様々な理由や必要性から、薬剤が本来の「効能・効果」の枠を超えて使用されることがある。これらの所謂、「適応外使用」は、1)適応や用法の追加、変更が望まれるもの、2)臨床試験を必要とするもの、3)学会で指針を出すべきもの、4)警鐘を鳴らすべきものに大きく分類されることが示された。血友病および類縁疾患において適応外使用されている製剤に関しては、今後、適応外使用に係わる医薬用医薬品の取り扱いについて定めた厚生省の指針(医薬審104号、平成11年)に沿って方向性を打ち出す必要がある。その中で学会が担うべき役割が提起された。専門部会から使用指針を作成して公表し、さらにその後国内での適応外使用の状況と成績を吸い上げることにより、前向きに使用指針の改定と安全性情報の更新が可能であるとした。

    II. ファイバ、プロプレックスSTに関する問題点
    バクスター株式会社 バイオサイエンス事業部 白石 睦(スライド12枚)

    ファイバの「効能・効果」は、血液凝固第VIII又は第IX因子インヒビター力価が10ベセスダ単位(BU)以上の患者が対象とされている。この設定には科学的根拠はなく海外の添付文書にはインヒビター力価による使用基準は設けられていない。国内で10BU未満のインヒビター症例にファイバが有効に使用された13症例が紹介され、「効能・効果」の10BUの使用制限は合理的ではない旨が提示された。また、ファイバの使用にあたっては、「頭蓋内出血等緊急の場合又は、他の療法が奏効しないとき」「原則として連続3日以内投与する」などの保険局長通知もあり、臨床使用上の制限として問題になっていることも挙げられた。今後メーカーとして、10BU未満のインヒビター症例の適応について厚生労働省と相談するとした。プロプレックスSTはプロトロンビン複合体製剤であるが、「効能・効果」は血友病Bの補充療法及び第VIII因子インヒビター保有患者のみとなっている。国内では、第VII因子や第X因子の欠乏症・低下症の治療薬として承認された薬剤はないが、「血液製剤の使用指針(厚生省医薬安全局長通知、平成11年)」には、濃縮プロトロンビン複合体製剤を用いる旨の記載があるために矛盾が生じている。国内では、プロプレックスSTが第VII因子欠損症に実際に適応外使用され、11症例の有効例が報告されている。米国では同製剤が第VII因子欠乏症の治療製剤として認められていることも紹介され、今後、学会等から使用指針などによる指導を希望するとした。

    質疑応答

    長尾(前神奈川県立小児医療センター長)白石さんは、ファイバの認可の治験のときに、10ベセスダ単位という縛りはなかったとおっしゃいましたが、私の記憶では、当時の治験のデザインが、血友病Aで、10ベセスダ単位以上の患者さんを対象としていたと理解しています。実際には、私どもの血友病Bの患者さんで10ベセスダ未満の方の重症出血にも治験薬を使わせて頂きました。東京医科大学の藤巻先生がそのとき、中央薬事審議委員会で審査して、「症例があったので血友病Bのインヒビターも適応に入れました」とおっしゃった記憶もありますので、藤巻先生の御記憶がどうなのか確認できればと思います。白石さんが言われたように、10ベセスダ単位未満の症例のきちんとしたデータを蓄積して、改めて厚生労働省にお願いするというのが筋だろうと思っております。
    白石 当時実際に治験にあたっていたのは、日本臓器製薬株式会社でしたので、私どもで入手している資料は限られています。しかし、その中で治験のプロトコールに関しましては、ベセスダ単位についての縛りはなかったと理解しています。それ以上の詳細の情報につきましては、私どもで開発をしてきたものではないので、わかりかねる部分がございます注)。
    藤巻(東京医科大学名誉教授)ファイバの有効性を知るには、10ベセスダ単位以上の症例の方がいいだろうということで、そのようなデザインになったというように私は記憶しています。
    吉岡 同時に連続使用は3日間までという縛りがかかったかと思いますが、これについても当時、具体的にプロトコール上に記載があったのかについても、御記憶があればお話しいただきたいと思いますが。
    長尾 認可がおりる際に、私どもが(旧)厚生省に呼ばれまして、「こういう条件で認可しようと思う、どう思いますか」というお話がありました。その時に初めて3日間という縛りをつけることを聞きました。ファイバを3日間使用しますと当時の計算で1000万円かかりました。ですから、(高額な薬剤の許認可にあたっての経済的、)政治的配慮であるというふうに理解いたしました。
    吉岡 今おっしゃいました1000万円というのは、おそらく、体重を50kgと考えて、最大限の投与量、100単位/kgを1日に3回まで投与した場合の3日間の総額が約1000万円になるということですね。
    藤巻 長尾先生と私ともう一人の先生、3人で、(旧)厚生省の方に呼ばれまして、その時に保険の点数を決める担当の技官が、用量・用法を最大限3日間用いた場合に、約1000万円かかるということを非常に強調されました。私達3人の医師は、それ(3日間の使用制限)に相当反発しましたが、どうしても担当技官が折れないで、そのまま話が流れていってしまったということを記憶しています。
    長尾 思い出しましたが、3日間の制限に関して、「原則として」という言葉を入れていただくのが、精一杯だったということです。現在の添付文書には「原則として」というのが入っているはずです。注)バクスター社が後日確認したところ、当時のファイバ(非加熱製剤)の臨床試験のプロトコール上、対象患者のインヒビター力価の制限はなかった。実際に10BU未満のインヒビター保有患者も臨床試験に参加し、その結果は申請書類に含まれている。

    III. ノボセブンに関する問題点 ノボ ノルディスク ファーマ(株)小松 京子(スライド12枚)

    ノボセブンの「効能・効果」は、”インヒビターを保有する第VIII因子欠乏症(血友病A)または第IX因子欠乏症(血友病B)の出血抑制”であるが、この表現に後天性血友病が含まれるか否かが問題点として提起された。第VIII因子インヒビターは非血友病者にも自然発生する場合があり、後天性血友病と呼ばれる。海外でノボセブンが後天性血友病患者の止血治療に有効に用いられた成績が示された。またEUでは、申請審査過程で当局からの指導に基づき、ノボセブンの適応に「後天性血友病」と具体的に明記された経緯がある。本邦ではノボセブンが後天性血友病患者に処方できるかについて、「効能・効果」に括弧で示される(血友病A)(血友病B)という表現のために解釈が不明瞭になっている。また、インヒビター製剤の「効能・効果」の表現は、製剤により大きく異なっているが、特に科学的な根拠はないと考えられることから、これらを整合性のある妥当な表現とするよう学会での検討が要望された。一方、市販後調査の登録症例と学会報告より、ノボセブンが「適応外」で使用された各種の出血性疾患が報告された。しかし、血小板異常症や第VII因子欠乏症は非常に稀な疾患であり、各々の適応症に対して臨床試験を実施していくことは現実的ではない。現時点では、これらの症例にノボセブンを使用した場合には、保険審査の査定も問題になる。このため、学会で臨床試験に代わる方法で臨床的な有効性や安全性を評価し、治療指針が打ち出されることを希望するとした。

    質疑応答

    一瀬(山形大学 分子病態学)ドイツの大学と共同研究をしている関係で、毎年ドイツに行っていますが、そこでノボセブンの研究会にいつも出席して話を聞いています。その中で、今話されたようなノボセブンの適応外使用の症例の報告もたくさんありますが、交通事故で大量出血した場合や、イスラエルなどでは頭や腹を撃たれたときにも止血治療として使っています。あれは治験であったり、緊急事態だから医師の判断で使っているというわけですね。現在もEUにおけるノボセブンの適応というのは、先程示された通りと理解してよろしいですか。
    小松 はい。現時点でのEUの適応症は先程示したとおりですし、米国におきましても国内の適応症の表現とほぼ同様のものです。
    一瀬 日本の国内で、先程言ったような使い方はされておりませんか。
    小松 外傷につきましてはございません。

    総合討論

    吉岡 それでは、これから討論に入りたいと思います。まず前半の家庭療法のガイドラインにつきまして、ご発言があればお願いいたします。家庭療法は現在では定着してきておりますが、えてして、時間がたつと医療者も患者さん側もルーズになることとか、もう一つは、体重や関節の状態が5年を経ますと状況が当然変わってきます。必ず再評価をすべきであるということが、日笠先生の御提案の中で新しい視点だったと思います。この点について、日笠先生、強調されることはございますか。
    日笠 はい、慣れてきますと、だんだん洗練されてきますが、一部はルーズになってきます。一定時期に、ある一定の基準で再教育することが必要だと考えております。
    河ア(福井病院) 家庭自己注射の、特に追加注射の事でコメントいたします。関節内出血で関節が腫れている患者さんは、補充療法さえすれば腫れも引くというような感覚をお持ちの方が結構いらっしゃいます。止血のためには当然、製剤の注射が必要ですが、注射したから腫れも引くというわけではなくて、局所に対する治療も合わせてするべきだということを、内科系の先生方のご理解とご指導も合わせてお願いしたいと思っております。
    吉岡 大変大事な視点です。局所が改善しないまま、あるいは、なんとなく腫れているからという程度で輸注を続けることについては、やはりきちんとした教育や訓練が必要ですね。それではインヒビター症例のバイパス療法の家庭治療に関してはいかがでしょうか。世界的な流れとして、ハイレスポンダーとローレスポンダーという分類の考え方が少し変わってきたというように思っていますが、いかがでしょうか。
    三間屋 最近では5単位以上がハイレスポンダーとされていますが、臨床的にはそれにあまり固執する必要はないと思います。ハイレスポンダーであれ、ローレスポンダーであれ出血症状は同様に出てくる場合があります。たしかに、かなりベセスダ単位が高い人では止血困難な場合もあると思いますけれども、基本的には治療方針は同じだと思います。
    吉岡 線を引くとすれば、5ベセスダ単位が一応のラインになってきているということが一つと、バイパス治療を考えるときに、いわゆるバイパスするわけですから、インヒビターの力価は極端に言えば1であっても、100であっても、1000であっても、理論的にはあまり意味がないという理解でよろしいでしょうか。
    三間屋 それでよろしいと思います。それから、インヒビターのある患者さんの場合に、どこまで家庭でバイパス治療をするべきかをきちんと説明しておきませんと、漫然と投与されて(医療費も)かなり高額になってしまいます。ある程度基準を決めておいて家庭治療で止血が不十分な時には病院に連絡していただくということが大切です。
    高田(広島大学 輸血部) 私達のインヒビター患者さんの中で、家庭療法用にノボセブンとファイバを両方使われるかたがいらしゃいます。出血だと気がついて非常に早い時期にはノボセブンが良く効き、少し遅れてしまったと考えた時にはファイバが効果的だとおっしゃっています。あるいはまずノボセブンを注射し、止血効果がないときにファイバに変えるという使い分けをされています。私は、これは合理的だと思いました。ベセスダ単位には関係なく、そのような使い方もあるということをご紹介しました。
    吉岡 インヒビターの患者さんについては、御自身の御経験や主治医と患者さんしかわからない、「あうんの呼吸」のような面もありますので、一人一人のテーラーメードの方法もあるのかと思います。学会で作るガイドラインは、こういう方法もある、ああいうことも可能だということに配慮することも必要だと思われます。
    三間屋 現実的には病院によってノボセブンを(納入されていないので)処方できないこともありますので、地域によって治療法の対応が違ってくることがあります。しかし、最低限のガイドラインは確かに必要かと思っております。
    新井 高田先生のご発言とは違う意見ですが、必ずしも出血してから時間が経ってしまうとノボセブンは効かないというものではなく、そのような根拠もありません。実際、我々の経験した中でも陳旧性の血腫に効いた症例があります。また、ベセスダの力価とバイパス療法の製剤の選択は関連づけられないと考えていいと思います。1000単位ある患者さんでも、プロプレックスSTで効く患者は効きます。また、1単位であっても、ファイバ、ノボセブンが必要な患者さんもいます。やはり、使える製剤のオプションは多いに越したことはないですね。すべての患者さんのすべての出血をカバーできる製剤は1剤もありません。治療製剤はすべて同じような条件下で使えるのが一番いいと思います。
    吉岡 もうひとつ大事なoff-labelの問題について議論を深めたいと思います。まず、プロプレックスとファイバについてバクスターの方からお話がございました。ファイバの使用についてはインヒビター力価が10ベセスダ単位以上の症例に限定されていることは大きな問題だと思います。それから「原則3日間の使用」という縛りについてご意見はありますでしょうか。
    森戸(患者) 患者の森戸と申します。ファイバの使用に3日間の縛りがあることは、あまり合理的ではないと思います。特に重篤な頭蓋内出血等の場合、3日間で出血が止まらなければ、患者にとっては命の危機に直面する問題です。この件に関しては本学会の(血友病標準化検討)部会が強力にコメントして頂きたいと思います。もちろん、我々患者も運動して(意見を厚生労働省に)訴えかけていきたいと思いますので宜しくお願い致します。
    吉岡 例えば、インヒビターのない患者さんが頭蓋内出血した場合に、3日間で止血治療をやめていいかといいますと、大多数の先生方は大変危険だとおっしゃると思います。止血を完全にするためや、(経過中に起こり得る)微出血とか後出血の予防のために最低1週間は補充療法が必要になります。そうしますと、(ましてや)インヒビターの患者さんは、3日間の治療だけでその重大出血に対応できるというわけではないので、無理のある設定であろうと思います。「原則3日間の使用」というこの縛りを今後是正していただくには、どういう方法があるかということを、厚生労働省から来ていただいている先生方にお伺いしたいと思います。
    山田(厚生労働省、医薬局 審査管理課)ファイバの「原則3日間の使用」というのは、薬事法上の添付文書の記載ではなく、医療保険の適用上の縛りです。私は、直接所管しておりませんので、詳しくは保険局の方にお尋ねいただきたいのですが、学会の方で保険収載、あるいは保険で取り扱う内容について要望がある場合にはその保険当局の方に、出来るだけエビデンスになるような資料を一緒につけていただいて要望していただく方法があると思います。
    吉岡 ありがとうございました。私どもでもエビデンスに基づくデータがあるわけですから、これは学会としても、また、メーカー側としても、是非要望を提出したいと思います。しかし、一方漫然と使っていいという問題ではありません。この縛りがある意味では安全性を担保したという面もあるかと思いますが、どうしても必要な患者さんにとっては、命にかかわることもあるという理解で進めたいと思います。「インヒビター力価が10ベセスダ単位以上の症例」という縛りの廃止についても、エビデンスに基づくデータをつけて、同様に要望を上げていけばよろしいのでしょうか。
    山田 10単位という縛りは、添付文書の効能・効果の方に書いてありまして、これは薬事法上の承認事項です。これは先程、新井先生の御発表の中でございましたけれども、やはり何らかの有効性等を示すような臨床データをつけていただいて、効能・効果の一部変更の承認申請をしていただかなければならないかと思います。インヒビターを発現しているような稀少疾病で症例数が集まりにくい場合には、いろいろな施設での使用経験や文献データなども活用していただいて、データを集めていただき、学会で評価をいただいた上で、学会として御要望いただくというプロセスだと思います。
    吉岡 どうもありがとうございました。プロプレックスSTについては、第IX因子の補充療法以外に第VII因子欠乏症その他に使われている実態があるということでしたが、これについて新井先生、いかがでしょうか。
    新井 我々も先天性第VII因子欠損症の手術にプロプレックスSTを使用した症例報告を出しておりますが、本製剤を使って良好な止血管理がされたという症例は、他の施設でも経験されていると思います。そういった症例報告や海外のデータを集めれば、十分に説得力のあるものになると思いますので、学会の方から、まず指針を出すことは出来ると思います。適応症に追加を要望するかどうかは、次のステップでもよろしいかと考えます。
    吉岡 プロトロンビン、第VII因子、第X因子の先天性欠乏症は極めて少ない疾患ですので、やはりこのようなプロセスでお願いをするという形になろうかと思います。我が国のプロトロンビン複合体製剤にはもう1剤、日本製薬のPPSBがあります。これについても同じ議論が必要ですが、日本製薬のかたにご意見をお伺いします。
    田中(日本製薬) 大変申し訳ありませんが、私は研究に所属しておりまして、本日責任をもってお答えできる立場の者はきておりません。
    吉岡 効能効果に書かれていない、稀少症例の止血効果に関する適用拡大の申請については、どなたにお聞きしたらよろしいでしょうか。
    別井(厚生労働省、医政局 研究開発振興課) 医政局の研究開発振興課では、関係企業に学会からの御要望をお伝えしていくという使命を持っております。このような(希少症例に薬剤を適応外使用する)ケースにつきましては、過去の薬害(の事例)を考えますと、今の段階で誰も責任をとらないような状況で使われ続けるということは、適切ではありません。当局の立場から言えば、やはり適応外使用でずっと使われるのでなく、申請をしていただく必要があると思います。もちろん、今、山田補佐の方が言いました通り、稀少疾病の場合には、そのデータ(の解釈)については(審査において)配慮できるかと思います。今日、担当の審査センターの永田が来ておりますが、審査におけるコメントが彼の方からあると思います。
    吉岡 具体的にこういうものの申請を受ける立場としては、永田先生の方から、いかがでしょうか。
    永田(国立医薬品食品衛生研究所 医薬品医療機器審査センター審査第3部) 適応外使用に関して、先程の通知(医薬審104号)に基づいて申請されるものは、社会的あるいは臨床現場でのニーズが高いものだと思いますので、審査センターとしても迅速に審査を進めて、可能な限り承認する方向で対応をしていきたいと考えており、実際にそうしております。しかしながら、そういう審査の際におきましても、申請時に出される資料が充実していますと審査も順調に進みますが、申請者の方で調べきれていない部分が多かったり、データのまとめ方が悪い時にはどうしても審査の過程でその点が問題になり、不必要に時間を要し、結果的に医療現場の方にとっても良くない状況となります。申請に際して申請者の方には資料に不備がないよう重々お願いしておきたいと存じます。
    吉岡 ご指導いただきましてありがとうございました。それでは、最後にノボセブンの問題に移ります。ノボセブンの「効能・効果」の文言ですが、血友病というのは、一般には先天性の血友病を考えますが、「後天性血友病」という名前がある限り、それも含まれないわけではないという考え方と、やはり一般的に先天性を考えるのであれば、後天性というのは改めて「効能・効果」に明記した方が良いという考え方の議論だったかと思います。ヨーロッパではノボセブンの申請の時に、「後天性」も加えるべきだということを行政の方から指導されて、「効能・効果」に入っているようです。日本では、会社として「効能・効果」の文言を決めるとき、あるいは、治験にたずさわった者としてはもっと慎重にあるべきだったと言われればその通りだと思います。現実には「血友病」ということで、広く解釈していただくことは可能でしょうか。「血友病は先天性も後天性も含まれる」とは、言っていただけないとしても、実際、それしか止血方法がない場合には、(ノボセブンの後天性血友病に対する使用を)認めていただけるという希望もありますが。山田先生、お立場上難しいと思いますが、一言お願い致します。
    山田 薬事法上は、医薬品の承認事項として設定される「効能・効果」というのは、どういう効能があるかということを示すというだけで、書き方について一定のルールがあるというわけではありません。ですから、学会や国際的基準で認められた疾患名とか症状名が一般的にどのような範囲で認識をされるかということだと思います。ノボセブンの場合については、主たる「効能・効果」の表現としては、血液凝固第VIII因子欠乏症、それから第IX因子欠乏症となっておりまして、括弧書きで書いてあるのは、いわば例示というふうに認識をしております。ですから、血友病Aそれから血友病Bという括弧書きがふさわしいかどうかは、先生方、あるいは専門の学会のほうで、御見解を出していただければ、それでよろしいかもしれません。それから、必要であればふさわしい表現に読み替えるとかいうことは可能だと思います。読み替えという場合には、承認事項の変更になりますので、製薬メーカーから(一部変更承認)申請をしていただくことになりますけれども、特段、特別なデータ等はなくても、申請を受け付けるような取り扱いはしたいと思っております。
    吉岡 本当にありがとうございます。時間も押し迫っておりますけれども、off-labelの問題につきまして、さらに御質問なり御追加ございますか。
    新井 一つだけコメントしますが、稀な疾患の患者さんは本当にマイノリティなのです。血友病、特に血友病Aの患者さんは(先天性凝固異常症の中では)多数派で治療法にはむしろ恵まれています。凝固異常症の中で、たまたま第XI因子欠損症で生まれた方には凝固因子製剤がありません。我々は、血友病Aの治療で補充療法がほぼ究極に達した今は、そういったマイノリティの方に目を向ける時代になってきていると思います。血友病患者さんの間でも、血友病Bは常に血友病Aの後を追わされてきました。製剤の加熱の時期も遅れましたし、高度精製製剤の登場も遅れました。今でも、第IX因子の遺伝子組換え製剤が海外では使われているのに、日本では認められていない状況です。そういったことを、これから十分に考えていく必要があると思います。
    吉岡 ありがとうございます。今日は医薬局から血液対策課の課長補佐でいらっしゃる田中先生もおみえいただいております。皆さんにとって、大事な第VIII因子の供給不足問題につきまして、11月初めに行われました血液事業部会で、大体のコンセンサスが出たとお聞きしておりますので、田中先生よろしければそのあたりにつきまして御説明いただいてもいいでしょうか。
    田中(厚生労働省、医薬局 血液対策課) 今のところの見通しですが、12月末には第VIII因子製剤の在庫量は6.2か月分が見込まれている状況です。したがいまして、いろいろと成分献血の推進などを進めてきたわけですけれども、そういった緊急対応すべき状況というのは解消されつつあるということを報告させていただきました。今後は、もう少し安定供給の状況を見極めたいということと、この(第VIII因子供給不足の)原因となりました米国の工場の現状などにつきまして、もう少し情報を集めまして、結論を出していきたいと思います。
    吉岡 ありがとうございました。今、お話をお伺いして、かなり安心できる状況に近づいていると思いました。最後になりますけれども、国際的なITI(免疫寛容療法)研究にスタンバイは出来ていましたが、(それに必要な第VIII因子製剤供給不足の問題が発生したため)実際には開始できる状況ではありませんでした。田中先生の今のご発言がありましたので、その点につきまして、御協力をお約束していただいておりました日赤として、見通しはいかがなものでしょうか。
    鈴木(日本赤十字社) お答えします。日本赤十字社がITI国際研究に協力するということにつきまして、平成12年の12月に、日本赤十字社の社長が、日本血栓止血学会の理事長に対してお約束させていただいております。今日もその考えは全く変わりありません。昨年来から、クロスエイトMの(出庫の)月別変動が大きいということから、先を見通すということが非常に困難でした。ただ、最近になりまして、供給状況の見通しができるようになってまいりました。本年10月現在のクロスエイトMの在庫は3ヶ月弱です。危機管理を考慮した適正在庫としての4ヶ月分には至っていませんが、安定供給のための適正在庫にはほぼ近づいているという状況です。今後も、直近数ヶ月の平均実績で供給が継続するならば、平成15年度も同様の在庫をほぼ維持できる見込みがあると考えております。日本赤十字社では、現時点におきまして、安定供給に必要な在庫を今後も維持できる見込みがたったと判断しております。したがいまして、ITI療法の臨床研究用として、適切な時期にクロスエイトMを提供することが可能だと判断しております。具体的な製品の提供時期、あるいは提供方法につきましては、今後ITI小委員会の先生方と御相談させていただきたいと思います。
    吉岡 鈴木さん、本当にありがとうございました。非常に力強いお言葉をいただきまして、今日は最後にホッとすることになりました。これですべての血友病、off-labelを含める治療の問題が解決したというほど簡単ではありませんけれども、いろいろ紆余曲折がある中で、将来に向けての方向性は十分に整いつつあるという力強い印象を感じました。5人の先生方、御発言ありがとうございました。また、フロアは患者さん、企業の方、そして厚生労働省からも遠いところお忙しい中を参加していだきましたことを、司会者として非常にうれしく思っております。改めて御礼申し上げます。
  • 平成13年度 ミニシンポジウム

    日本血栓止血学会 学術専門委員会 血友病標準化検討部会
    ミニシンポジウム 「血友病補充療法の方向性」
    開催日:平成13年11月22日 国立京都国際会館、午後4:30~6:30

    -議事録-
    血友病標準化検討部会のミニシンポジウムは、表1に示すように88名の参加者により、活発な討議が行われた。 今回は、最近の第VIII因子製剤の供給不足問題に関連した血友病補充療法の方向性について5題の演題が報告され、意見が取り交わされた。

    発表の概要

    1. 血友病標準化検討部会の目的と活動状況(東京医科大学 臨床検査医学助教授 新井盛夫)
    2. 本邦における第VIII因子製剤の供給状況(東京医科大学 臨床検査医学主任教授 福武勝幸)
    3. 免疫寛容導入療法の動向(奈良県立医科大学小児科教授 吉岡 章)
    4. 血友病予防投与の現状(聖マリアンナ医科大学小児科助教授 瀧 正志)
    5. 血友病補充療法における適正投与量の考え方(奈良県立医科大学小児科助教授 嶋 緑倫)

    1. 血友病標準化検討部会の目的と活動状況(東京医科大学 臨床検査医学助教授 新井盛夫)

    本検討部会の設置の経緯活動目的、活動方法が示された。 ワーキンググループとして、血友病ITI小委員会(委員長:奈良県立医科大学小児科の吉岡章教授) と血友病診療連携(幹事:東京医科大学臨床検査医学の福武勝幸教授)が挙げられた。今後の血友病医療においては、 医療者、製薬企業、患者、行政の4者間のオープンでバランスのとれた相互関係の構築が重要であるとした。

    2. 本邦における第VIII因子製剤の供給状況(東京医科大学 臨床検査医学主任教授 福武勝幸)

    厚生労働省の資料などから4社の第VIII因子製剤について供給状況の推移と推定在庫量が示された。 コージネイトの不足分をどの製剤へ振り分けるかによって平成14年以降の各社の在庫量がどう変化 するかについての推測が示された。コージネイトの在庫が完全に無くなった場合の毎月200万単位の 不足は全体の使用量の10%に相当し、現状の予測ではコンファクトFに切り替えていくことができれば 最も市場への影響が少ない方法であるとした。また現状の第VIII因子製剤の消費を続けると製剤の 備蓄量が減少するため使用量は削減していく必要性があることが述べられた。

    質疑応答

    白幡 今日の福武先生の前半の資料を中心になっておまとめ頂いた、厚生労働省の血液対策課の西田先生がいらしています。何かコメントはございませんでしょうか。
    西田(厚労省) ご説明がありました通りで、現段階では、バイエル社の製品が入ってくる見こみはないと いう状況が続いております。厚労省からは、国内のメーカー、主に日赤と化血研に最大限の増産をお願いしております。 献血のほうも、9月には大臣自ら街頭に立って成分献血のお願いをするなど、原料血漿の確保にも最大限の努力をしております。 現在、日本赤十字社の分画センターでは、ほぼ最大限の生産量を出して頂いております。または、化血研でも、 できるかぎりの生産をして頂いている状況にあります。したがいまして、これ以上の量を供給することは、 なかなかむずかしいと思われます。生産開始してから製品化されるのには約半年かかりますので、ある程度の増減はあります。 この先の供給量については日赤のクロスエイトMをこれ以上出すのは無理なので、安定供給という観点から、 現段階ではコンファクトFにシフトしないと乗り切れないのではないかと思います。私どもの推計では、来年中は、 4社合わせた全体の量はなんとか維持できると考えておりますが、あくまでも4社合わせた供給量と需要量を予測した場合の話で ございますので、 各社個別にいきますと、かなりタイトな状況がくると思われます。 解決策としては、化血研の製品がまだ余裕がございますので、 コンファクトFにシフトしていただくしかないのではないかと考えております。
    白幡 今日は製薬会社の方にも御参加いただいておりますが、今後の在庫量のシミュレーションに関して何か御追加ありますでしょうか。
    横山(バイエル薬品) バイエル薬品でコージネイトのプロダクトマネージャーしております横山と申します。 福武先生からご提示いただきました内容、また、厚生労働省からいただきました資料に加えまして、 11月以降でございますけれども、コージネイト500単位が1万本、追加で入荷致しましたので、 ここでご報告させていただきます。
    福武 確認させていただきたいことですが、500単位が1万本で、500万単位ということですね? 今のコージネイトの出荷は300万単位/月ですから、1.5ヶ月分くらいの量が追加されるということですが、これは確定と考えてよろしいでしょうか。
    横山 現在国内の試験中でございまして、結果はまだ頂いておりません。
    福武 それでは確定するだろうという程度に理解いたします。そうすると来年の5月、6月というのが1.5ヶ月位は、猶予が伸びて、 6月、7月になる感覚です。今から半年くらい先の話を、今日の時点でどこまで考えておけるかということになりますね。
    白幡 細かいディスカッションは、総合討論でしたいと思います。福武先生、どうもありがとうございました。

    免疫寛容導入療法の動向(奈良県立医科大学小児科教授 吉岡 章)

    血友病Aに発生するインヒビターの概要の説明があり、免疫寛容導入療法の各種プロトコールと 近年の国際登録研究の成績が示された。現在進められている国際無作為コントロール研究のプロトコールと、 日本における研究への参加方法が紹介された。

    4. 血友病予防投与の現状(聖マリアンナ医科大学小児科助教授 瀧 正志)

    予防投与の定義とスエーデンのグループの予防投与の方法と成績が示された。 聖マリアンナ医科大学での一次予防投与の導入と成績が紹介された。 また、血友病予防投与に関する多施設のアンケート調査結果から、 二次予防投与は50%以上の施設で導入されているが、一次予防投与は他施設では行われていないことが示された。 コージネイトの供給不足問題以降に予防投与の減量や中止が行われた施設は2施設のみであった。 一次予防投与の導入に関しては、今後本邦においても検討する必要性が述べられた。

    質疑応答

    白幡 瀧先生のところは我が国で唯一、一次予防投与を積極的に進めている施設ですけれども、貴重なご経験を含めてご報告いただきました。御質疑ございますか。
    河ア(福井病院) 福井病院の河アです。今お示しいただきましたのは、週に2回から3回、1回25~40単位/kgですと、かなり多い量で手術もできるくらいの量だと思いました。我々の症例では10単位/1回、それ以下でも十分予防効果があるのを経験しましたが、20~40単位/kgが必要だということでしょうか。それとも、小児ですから、最小単位の250単位製剤を使用したときにその量になってしまうのでしょうか。
     最初のスエーデンのグループの発想では、トラフレベルを最低1%以上に保つような条件として投与量が設定されたようです。最低25~40単位/kgが、血友病AでもBでも推奨されていまして、多少トラフをみながら調節してくださいというのが基本だと思います。ご指摘のように最小単位は250単位、次の単位は500単位が基本ですので、ある程度幅があるのだと思いますが、私自身は、それが本当に出血の予防に必要な最低限の量かというと、おそらく違うのではないかと思っています。我々の施設では、血友病A患者に対しても週3回ではなく2回の注射を行っておりまして、VIII因子のトラフレベルは1%未満となっていますが、それでも関節出血はほとんどありません。

    5. 血友病補充療法における適正投与量の考え方(奈良県立医科大学小児科助教授 嶋 緑倫)

    適正投与量を考える際の要素として製剤の供給量、患者のQOL、投与量・止血レベルの経験的および科学的根拠などが挙げられた。奈良県立医大の補充療法の指針や過去の自験例を示しながら、必要時の補充療法、予防投与、外科手術時の止血療法に関してそれぞれ製剤使用量の適正化に関する方策の提言がなされた。

    質疑応答

    白幡 コンファクトFの溶解後の室温での安定性は如何でしょうか?
    化血研 申請時にはそのようなデータも含まれていると思いますので確認いたしたいと思います。

    総合討論

    新井 製剤の供給問題はコージネイトだけでなく、血漿由来製剤も含めて今後どこのメーカーにも起こりうることであろうと思います。我々は、供給不足に直面していますが、翻って考えますと、免疫寛容療法や予防投与などの高度な治療法を再考する良い機会でもあります。福武先生のご発表は本シンポジウムのキーとなるプレゼンテーションだと思いますが、企業の方からも、医療者の方々からも、是非御意見をいただきたいと思います。
    吉岡 福武先生のお話の中で、このままいきますとクロスエイトMが相対的に少なくなる、もう無理があるので、コンファクトFをできるかぎり使えばなんとか持つだろうということが大事なキーだったと思います。コンファクトFのような中間型濃縮製剤の切れ味、副作用、手術中の使いやすさは、近年のモノクローナル抗体精製製剤やリコンビナント製剤に比較していかがでしょうか。整形外科の河ア先生や竹谷先生がいらしておりますので、手術時に中間型製剤を使った御経験などをお聞かせいただきたいと思います。
    河ア 昭和40年代ですと中間型濃縮製剤はまだできていなかったので、クリオ等で手術をしていました。その当時は手術時の最高レベルを50%、術後は20%を目標にしました。20%を下回ると後出血が認められました。手術中に50%あるいは100%、それで出血量が多いとか、手術がしにくい例は、ほとんどなかったように思っております。手術に関しては、それまでは最高レベルを50%にして、1日3回補充することによって20%レベルを保とうとしていましたが、中間型濃縮製剤が使えるようになると、血中濃度を100%に上げれば24時間たっても20%を保っていますので1日1回投与ですみました。最近のように持続輸注が使えるとなると、もっと下げたレベルでの検討ができるかと思います。
    新井 当初、クリオから中間型濃縮製剤が出てきた時は「これで手術もできる、持続投与もできる」と大変にありがたいものだという認識があったと思います。当時の製剤はフィブリノゲンがまだかなり含有されていたと思いますが、今のコンファクトFはその問題はクリアになったと思いますし、やはり現況を考えましてコンファクトFを使うことは十分可能ではないかと思います。
     現在のコンファクトFではありませんが、1980年代の濃縮製剤は大量に使った場合に抗A抗B凝集素で溶血性貧血をきたす問題がありました。ただ、コンファクトFは、日本人由来の血漿で作られておりますので、おそらく外国の血漿由来製剤と比べて抗A抗B凝集素が少ないと思います。最近のコンファクトFの抗A抗B凝集素価について会社のかたに確認していただきたいと思います。
    河ア 我々のところでは、数年前にリコンビナント製剤がよく出回る以前は、ほとんどの手術例はコンファクトFを使っておりましたが、なんら問題ないと思っております。
    新井 当初は中間型濃縮製剤の中に血漿由来の血液型抗体が混入していました。そのため大量に投与すると、溶血性貧血をきたす可能性がありました。それを避けるために当時は血液型別製剤というものもありました。おそらく、今のコンファクトFには血液型抗体の問題はないと想像しますが、化血研の方にデータがありましたら、教えていただきたいと思います。
     パルボウイルスのチェックは、化血研のコンファクトFはどのようになさっていますか。
    化血研 献血の血液については、日赤の方でRHA法というパルボウイルスのスクリーニングがなされております。そういう血漿を使っていますので、原料の段階でパルボウイルスの高いものは排除されております。また、最終製品のロットを調べますとすべて陰性であることは確認しております。
     最終段階で、たとえばPCRとかでも陰性ですか?
    化血研 はい、陰性です。
     コンファクトFに関して確認したいことがあります。現在の2倍の供給量が可能だということですが、例えば今から患者さんにコンファクトFが使用できることをお話ししますと、使用量が増えていきます。それにすぐ対応できますでしょうか。
    化血研 すでに製造量については私どもが持っている製造能力をフルに活かして製造しております。また在庫状況としても充分な量がありますので、直ちに2倍の需要があっても供給できる状況でございます。
    白幡 もう一つ、1000単位、500単位、250単位の各製剤の比率はどうですか。
    化血研 在庫状況も含めまして、250単位製剤が単位で申しますと20万単位ぐらいで、500単位がだいたい100万単位、1000単位が60万単位で、2:10:6程度の比率です。
    福武 それは今の供給量のバランスのことですか?全部足すと、180万単位ですね、これは月々の供給状況ですか?
    化血研 はい、現在の供給状況のことです。
    福武 それを2ヶ月分、出荷していっても問題ないという意味ですか?
    化血研 はい、そうです。
    新井 今年の3月にコージネイトの供給問題が発生してから4月にはこの標準化検討部会で話し合いをしました。そこで、基本的にはコージネイトからクロスエイトMに変わっていただけるボランティアの患者さんを募ってまいりました。その結果、そのクロスエイトMも余裕がなくなってきたということで、これからは、ある程度コンファクトFのほうに移行していただく患者さんを御願いするということが一つの方策であろうということになりましたが、この件に関しましては、いかがでしょうか?
    福江(東京医科大学) 今日集まっている先生のような主要な血友病診療施設での使用量と、患者さんの少ない施設での使用量では、トータルでいったいどのくらいの割合でしょうか。例えば我々の施設は患者さんが少ないところですが、そういった施設では協力を得にくいのではないかと思います。主要な血友病診療施設だけで200万単位を他の製剤に移行していくのか、それとも小さい施設まで強くアピールしていくのか教えていただきたいのですが。
    福武 50人以上の患者さんを診ている施設で診療を受けている患者数は、全国の患者総数の1/3くらいだったと思います。ですから月に2000万単位の10%の200万単位の変更を、主要施設だけで対応しようとすると、なかなかこれは難しい話です。多くの施設の協力がないとできないと思います。ただ、問題は、少人数の患者さんの施設では他の製剤が納入されていないような状況がありますので、薬剤の変更をどういうふうにやりくりできるかというのが難しいですね。
     患者さんの数ですけれども、血栓止血学会の血友病標準化検討部会と小児血液学会の小委員会のメンバーの施設の患者さんを足しますと、約1200人の血友病の患者さんがいらっしゃいます。したがって、日本の患者さんの総数が4500人ぐらいだとすると、1/4くらいの患者さんは、今回のメンバーの施設で管理されているということになります。
    新井 本検討部会が中心となって、ある程度のガイドラインを打ち出していくことが必要になると思います。学会が主体となったガイドラインができれば、それはメーカーのMRの方を通して、あるいは我々のネットワークを通じて、全国の施設の先生方に伝えていく方向になると思いますが、いかがでしょうか。
    白幡 血液製剤調査機構では、毎年血友病製剤の需給調査をしております。これは、1400位の施設が対象ですので、患者さんの少ない施設もカバーできています。今回の需給調査では厚生労働省の西田先生が作られた資料をお配りしましたので、もう少し具体的な方針がでれば、そこを通じてさらにお願いするというのもひとつの方策だと思います。また、コージネイトの供給不足の問題が起きた時に、リコネイトに移行したいといった施設に、バクスターの方がこれ以上増やせないということを一生懸命お願いして歩かれましたが、それと同じようなことを、これからは日赤の方にもしていただかなければならないという気がいたします。
    鈴木(日赤) 今回、厚生労働省の方から各社の供給状況、グラフを含めて情報提供していただきましたので、日赤のMRが現在クロスエイトMを供給させていただいている医療機関にご説明にあがるということにしております。
    白幡 クロスエイトMを供給している医療機関はそのまま提供できるわけです。むしろ、それ以外のコージネイトを使っている医療施設からクロスエイトMを使いたいと言ってきた時に適切に説明をすることが大事だと思います。
    鈴木(日赤) 従来クロスエイトMが納入されていなくて、コージネイトからクロスエイトMに切り替わった場合にはそうさせていただきます。
    福武 このコージネイトの問題が起きた後に、一時、日赤のクロスエイトMは地域によってはかなり供給が難しい状況になり、すぐにはコージネイトからの切り替えに応じられないような事態もおきていたようです。実際、分画センターには製剤の在庫があったようですが、地方のセンターにはないというようなことがあって、日赤に頼んだら、断られてしまったという問い合わせをいただいた覚えがあります。この厚労省の資料と、ここで議論してきた内容も含めたアドバイスを日赤のMRさんから出していただきたいと思います。
    新井 4社の製剤の在庫状況に関しましては、ある程度リアルタイムな情報として、厚労省のほうから発信していただけるのでしょうか。
    西田 厚労省として、安定供給のための情報入手は非常に重要で、定期的に各製剤メーカーと会合を行うようにしております。今回、クロスエイトMが足らなくなって、コンファクトFのほうに移さなければならない状況になりましたので、その情報を提供してまいりました。今後、在庫状況の情報をどれくらいの間隔で公開するかというのは、まだ、決めておりませんが、節目節目にある程度定期的な間隔で状況をお知らせするということは続けていきたいと思っております。先程、白幡先生からご指摘がありましたように、血液製剤調査機構のホームページからも情報提供をしていきたいと考えております。
    吉岡 こういった物の供給不足の場合には、昔の石油ショックの時のトイレットペーパーの買い占めの心理のように、どうしても抱え込みたいという気持ちというのが、病院あるいは医師、メーカーあるいは問屋さん、そして患者さんのレベルまで、全くないとは言えない状況だと思っております。厚労省が少なくとも来年の12月まで、全体の供給は大丈夫なんだと言って頂くことが大きいと思います。また、そうして頂ければ、各メーカーも各病院も各医師も各患者さんも、冷静に、あまり抱え込むことのないようにお互いに戒めていかなければならないと思っております。
     製剤の適正使用に関連したこととしましては、今回の標準化検討部会の活動目的の4番目に家庭療法基準の作成という項目があります。家庭注射療法が1983年に始まって約20年たちますけれども、我々医療者、あるいは患者さんにこの際もう一度、本当に適正に行われているのかどうかということを、この時期に各施設で考え直すにはいい機会だと思います。
    新井 早期輸注、適正な使用法、使用量ということを、家庭療法の適正化のなかで行なっていけると思います。続いて、吉岡先生の発表された免疫寛容療法に関しまして何か追加、ご討議はございますでしょうか。ITIはインヒビターの治療に関して我々が大変期待するところで、やっと始められるという時に使用製剤の供給がタイトになりました。それを念頭においてこれから進める上で準備はこのまま維持していく必要はあると思いますが、吉岡先生いかがでしょうか。
    吉岡 皆様の施設で、あるいは現在ITIを進めている施設で、どのようにしたら良いのかということですね。低用量で週に3回のプロトコールは、免疫寛容療法であると同時に、止血予防があるというデータがありますので、これを今、止めるのは推奨できないと思っております。一方高用量で、しかもかなり長期に、例えば1年とか2年に渡ってやっている場合にどうしたらよいかということがあります。これは国際ITIのルールでいきますと、3ヶ月とか6ヶ月ごとに定期的に評価して、これまでのハイタイターのインヒビターがそれまでよりも20%以上減弱しているということで、次の6ヶ月やっていくことに決まっております。そういう傾向のないものについては、不成功である可能性が高いと、私どもは考えております。したがって、この時期ですので、そのような症例をお持ちならば、徐々に中止の方向にもっていくというのも、ひとつの考え方だと思っております。
    新井 近年の国際登録研究と北米の登録研究の2つの研究解析から、ITIの成功に関与する要素がわかってきました。それを踏まえて、さらに前向きな対照研究に入って行こうという重要な時期になっていますので、対象条件に合うインヒビター患者さんに関しましては、是非とも吉岡先生に連絡をしていただいてITIの登録はしていただきたいと思います。さて、次の血友病の予防治療に関しまして、こちらも製剤の安全性、使い勝手がよくなったことから、血友病患者さんのQOLをあげるために、とても重要な治療法であると思いますが、御意見はありますでしょうか。
    白幡 重症の血友病患者さんの場合は、もし血液製剤が潤沢に供給されるようになれば全員に一次予防を導入する方針なのかどうかを瀧先生にお伺いしたいと思います。現在、重症で1%未満といっても、凝固因子活性の測定限界を改良したとき、それが0.9%なのか0.6%なのかということもひとつの予測になると思います。あるいは関節症になる前にレントゲンをみておりますと微細な変化がきてそれから始めても遅くはないような印象を受けています。一次予防療法を実施する患者さんを選択するための何らかの方法を考えていかなければならないと思いますが。
     正確にはお答えできませんが、少なくともレトロスペクティブなMalmoの結果では、予防投与を少し遅らせて始めると関節の変化が生じ、将来も関節症の進行を防止できないというデータがでておりますので、少なくとも早く始める必要はあると思います。凝固因子活性が1%未満の患者さんすべてが対象になるかどうかというのは、1%未満の測定が正確にできるようになればまた議論になると思います。
    吉岡 一次予防の場合の投与量や投与回数については、エビデンスとなるデータはまだ不足していると思っています。したがって、仮に一次予防を始めるとして、たいていは1歳時前後のお子さんですから250 単位でいいと思いますけれども、週1回くらいから始めて、それが半年でもあるいは3年であれ、それでも出血するということがわかったら週2回に増やすという、ステップアップで増やしていく方法がより個々の患者に則した方法だと考えています。
     しかし、少ない回数でスタートして関節症が防止できるというエビデンスもありません。そうしますと週1回で始めた場合、結構早い時期にステップアップするような方法が必要だと思います。1歳から2歳にかけてはあまり出血がないので、週に1回でも良いかもしれません。しかし2歳ぐらいで活動量が増えてきますと週に2回は必要だという印象があります。実際、私どもでは、最初は1回の練習で始めて、それで少し動きが活発になる時点から週2回にしております。また、今回の供給不足問題が起き、4歳半くらいの年齢で体重が18 Kgの患者さんでも投与量を増量せず、一回投与量は250単位(13単位/kg)のままですが、出血の増加はみられていません。Malmoのグループが提唱する体重当たりの投与量(25-40 単位/kg)が本当に必要なのかどうなのかわかりませんが、しかし、一応そこが予防投与を考える上で規準になる投与量だとは思います。
    河ア 一次予防投与は別と致しまして、二次予防投与に関しまして、当然次の出血を予防してやろうということで、因子レベルを上げるというのは意義あることだと思いますが、いったん出血したものはいくら因子レベルを上げても吸収が早まることはないと思います。そうしますと、炎症が起こってそこに二次性に出血をきたしたときには、できるだけ出血以前の状態に早く戻す必要があります。そのために、血液を抜いてやる、洗ってやる、あるいはステロイドを投与して少しでも炎症を抑えようと、そういうことを合わせ行うほうが、より有効であると思いますが、いかがでしょうか。
     先生のおっしゃる通りだと思います。そういう状況の時は、製剤を週に3回注射して因子レベルを上げるということだけではだめだと思います。特に二次的な投与のSPBで、標的関節ができている場合というのは、まさに先生のおっしゃる通りだと思います。
    新井 最後に、嶋先生のご発表に関しまして、何かご討議はございませんでしょうか。いくつか重要な提案をなされています。以前は、製剤投与による治療だけではなく、トランサミンとかDDAVP(デスモプレシン)の投与も補助療法として結構行っていました。近年、安全な製剤が潤沢にあった時期は、止血治療は基本的には補充療法を中心と考えていました。補助療法を適切に併用していくことは、もう1回考え直す時期だと思います。
    吉岡 デスモプレシンの投与で中等症あるいは軽症の患者さんの出血予防が非常にうまくいった例があります。これはお父さんの関係で中国に行かれた家族ですけれども、製剤を長く持つことができなかったのでデスモプレシンを週に2~3度投与してうまくいきました。デスモプレシンは使える症例には効果的であるという印象を持っておりますので、是非お試しいただければと思います。同時にトランスサミンを併用するというのもコツでございます。
    福武 軽症血友病あるいはフォンヴィレブランド病の治療として、高濃度のデスモプレシン点鼻薬があります。うまく使えば製剤の節約につながるかと思いますが、残念ながらこれはまだ日本で承認されていませんので、我々の中で検討していきたと思います。
    新井 もう一つ、製剤の単位数に関してですが、我々の施設のように大人の患者さん中心に治療していますと通常1000単位を投与することが多く、それは大きな間違いはありません。ところが、若い先生ですと、少し多めに打つ場合には1000単位の次はもう2000単位と考えてしまうことが多いようで、1250 単位や1500 単位を使うことはあまりないようです。しかし、我々は体重当たりに何単位という、もう少し科学的な見立てをして投与量を決めなければならないと思いますので、適切に250あるいは500単位を使うべきであると思います。
    高田(広島大学) 少し話がそれるかもしれませんが、僕達は血液製剤の価格は、日本にいるからあまり意識はしないと思います。昔、日本で加熱製剤に変わる前は、日本とアメリカの第VIII因子製剤の価格は5倍も違っていて、メーカーは必死に日本に売りこんできて、僕達も喜んで使ったということもあるのです。それが加熱製剤になった時に、アメリカの値段が5倍ぐらいになって、また下がりました。そして、モノクローナル製剤になった時が日本と薬価が同じになった。さらに、遺伝子組換え製剤になって、日本に売りこむメリットが全然なくなったということが日本への供給に影響しているように思います。特に円とドルの比率がグルグル変わると、外資系のメーカーは、あまり日本には売りたくないと思っているのではないかというふうに私は思っております。そのようなことがこの日本の製剤供給に影響している可能性も考える必要があります。
    白石(バクスター社) 実際は欧米の価格と開いてきている(欧米での価格の方が日本でのそれよりも高い)のが現実です。1996年に遺伝子組み換え製剤を導入しましてから、毎年価格が開いていく中で、私どもは日本への供給を増やしてまいりました。しかし、現状で世界的に供給状態が非常に厳しいということを考えますと、日本だけ多くプラスαの供給というのは、正直申し上げまして、非常に難しいと考えております。来年も今年より多くの供給を目指して、製造部門と交渉しておりますので、バクスターとしての努力はご理解いただけるとありがたいと思います。
    新井 バクスターの製剤部門の責任者の方にその点の話を伺ったことがありますが、日本での薬価が低いことが輸出量の制限の条件になることはないと言っておられました。しかし、リコンビナント製剤や血漿由来製剤の薬価は見なおす時期にきていると思いますし、世界標準と同じように、薬価は実測値の1単位当たりの値段にすることがより公正な方法ではないかと、私は考えております。
    福武 バイアル中の実測の単位数を表示していただくことが必要です。例えば1000 単位のバイアルに1500 単位入っているロットもあります。その場合、見かけ上は1000 単位ですが、その患者さんに1500 単位必要だと思えば主治医は500 単位足して使うことになってしまいます。値段はともかくとして、実際の力価が書いてあれば、正しい使い方ができるし、節約につながる可能性が高いと思います。会社にしてみれば書いてある力価どおりの値段になればさらにいいことだと思います。それから、日本のバクスターの方も、バイエルの方も一生懸命努力して供給を続けていただいているわけですけれども、日本の値段が海外に比べて半分とかいうことになってきますと、たとえば、アメリカの患者さんは2倍の値段を出しても十分に必要なものだけが買えない状態なのに、日本の患者さんは半額で十分買えるのはおかしいという議論にもなりかねません。 あまりにも差が広くなりすぎてしまうと、今度は国際的な視野に立つと不平等になってくる可能性があるわけです。日本の中だけの物の考え方ではなくて、国際価格とか、国際的な物の考え方のなかでやっていかないと、これからのマネージメントはできないと思っています。よろしくお願い致します。
    堀越(県立静岡こども病院) 静岡こども病院の堀越と申します。今日の話の中で今後コンファクトFに変えていくとなるとインフォームドコンセントが大切になると思います。利点と欠点を説明する必要がありますが、私の理解では、欠点かどうかわかりませんが、フォンヴィレブランド因子が入っているとか、やや純度が悪いとか、溶解量が多いというところ、利点としては、しっかりとしたウィルス不活化であるとか、何よりもその患者さんにとって、それを使われることが安定供給の上で患者自身を守るんだということでよろしいでしょうか。
    新井 その通りだと思います。安全性に関しましては、まず問題ないと考えてよろしいと思います。
     インヒビターの治療に関して、免疫寛容ができない患者さんは結局、バイパス療法が必要です。用法・用量の点で、ノボセブンはインヒビター力価の制限がありませんが、ファイバの方は10 BU以上の患者さんでないと使えません。これは少し混乱する状況だと思います。厚労省の方がおられますので、この点について今後展望があるかどうかお伺いしたいと思いますが。
    西田 直接担当しておりませんので一般的な答えになりますけれども、用法・用量の変更については、基本的に製薬企業から申請を上げていただくことになります。したがって、学会の方で大きな問題点があるというのであれば、その旨を製薬メーカーから厚労省の方に積極的に上げていただければ、それに見合った対応ができると考えております。
    新井 今回のミニシンポジウムでは、医療者、製薬企業、厚生労働省、患者さんの4者が集まって討論をした始めての機会となりました。これを契機に、今後も定期的に会を開きたいと思っておりますので、皆様にはまたその中で忌憚のない御意見を出していただきたいと思います。そろそろ時間も過ぎておりますので、白幡先生にまとめていただきたいと思います。
    白幡 コンセンサスというところまでいった部分といかない部分があると思いますが、製剤の今後の使用については1つの方向は打ち出せたのではないかと思います。その意味で皆様方の御協力で今回のミニシンポジウムを開いた意義は大きかったと思います。また、先程の一次予防投与の問題、今までの薬価の問題を含めて行政的な問題やさらに大きな問題などは宿題として残された部分もあります。新井先生のおっしゃるように、こういった医療関係者、製薬会社、行政、さらには患者さんを交えて話し合いの場をもつことで、よりよい方向に血友病医療が更に発展していくことを祈念して、このシンポジウムを閉会にしたいと思います。どうもありがとうございました。

    討論の要約

    1. コンファクトFは現在の供給量の2倍の出荷が可能である。コージネイトの供給不足分をこれ以上クロスエイトMで賄うのは限界が予想されるため、今後、製剤を変更するときはコンファクトFの使用を考慮する。その旨は、各社のMR、血液製剤調査機構や血栓止血学会のホームページを通して標準化検討部会のコンセンサスとして全国の血友病診療施設に伝える

    2. コンファクトFの室温安定性や血液型抗体の混入の有無に関しては、化血研から情報を得る(後日得られた情報→ , )

    3. 製剤の適正使用に関連して、家庭療法の再評価と規準を作成する

    4. ITIに関しては、国際研究の患者登録は開始する。現在、低用量でITIを始めている症例はなるべく継続する。高用量で行っている症例は定期的な評価を行ったうえで、不成功の可能性が高ければ中止を検討する

    5. 一次予防投与療法は、将来的にその適応や導入方法を検討していく

    6. 血友病患者に対するデスモプレシンの点鼻薬の承認、バイパス療法製剤の用法・用量に関する問題、第VIII因子製剤の薬価や実力価表示の問題などは、血友病標準化検討部会と製薬企業が協力して厚労省に上申していく

    コージネート供給問題に関する血友病標準化検討委員会からのお知らせ

    2001年3月16日付のバイエル薬品からの情報によると、第V・因子製剤のコージネートは、米国の工場からの出荷が一時停止されています。日本全体の第V・因子製剤供給に関する混乱を防ぐために、主な血友病診療施設の有志がE-mailで問題を討議し、「血友病の患者様へ」と「治療担当医師の皆様へ」の文書を公開しました。

    下記のインターネットホームページ
    http://csws.tokyo-med.ac.jp/csws/hemophilia/ をご参照下さい。

    文書の発信元の血友病治療担当医師有志には、本学会の血友病標準化検討委員が含まれています。

  • 血友病家庭注射療法のガイドライン(2003)

    血友病家庭注射療法のガイドライン(2003年版)
    日本血栓止血学会 血友病標準化検討部会編

    日笠 聡、新井 盛夫、嶋 緑倫、白幡 聡、高田 昇、高松 純樹、
    瀧 正志、花房 秀次、福武 勝幸、三間屋 純一、吉岡 章連絡先:日笠聡
    兵庫医科大学血液内科
    〒663-8501 西宮市武庫川1-1
    電話:0798-45-6886
    FAX:0798-45-6887

    I. はじめに

    血友病の在宅自己注射療法(家庭療法)は、凝固因子製剤による早期止血や定期注射による血友病性関節症などの慢性障害を防止することを目的に1983年に認可され、現在では全国に広く普及している。しかし、家庭療法の導入基準はもとより、患者教育、遵守事項、管理項目に関して施設間に差違がある上、患者が備えるべき関連知識や注射技術の顕著な格差も生じている。また、認可当初に比較して、医療施設側の家庭療法に対する定期的な管理や評価が不十分になっている可能性も指摘されている。さらに1996年からは、インヒビター保有患者のバイパス止血療法に関しても家庭療法が認められており、バイパス止血療法の特殊性に留意した指針が求められている。日本血栓止血学会血友病標準化検討部会では、これらの問題点を再度整理し、標準化することで家庭療法からの脱落や逸脱を防ぎ、さらに安全で効果的な血友病止血治療を推進させるために、家庭療法の基本ガイドラインを作成した。本ガイドラインでは、臨床実地に即した対応ができるように、主に医療施設側の管理上の項目を箇条書きにして示した。なお、本ガイドラインは必要に応じて随時変更し、本誌上で更改される。

    II. 家庭療法に関する従来のマニュアル、ガイドラインおよび教育資料

    これまで血友病家庭療法の教育には、東京医科大学臨床検査医学科および荻窪病院小児科が中心となって編集し、バクスター株式会社1)あるいは日本赤十字社2)が発行するホームインフュージョン教育マニュアル(図1)が広く使用されてきた。また、1993年には厚生省健康政策局と日本医師会が監修し、在宅自己注射法マニュアル等作成委員会が編集した在宅自己注射(血友病・下垂体小人症)ガイドライン3)とマニュアル4)が発行されている(図2)。これらのマニュアルやガイドラインは、いずれも現在入手が困難となっており、また内容や体裁も古くなり改訂が望まれている。

    家庭療法が開始された1983年頃には、図3に示すような血友病教育プログラム、患者・家族テキストと、そのテキストに応じた自己評価問題とその解答5)をセットにした冊子も発行されていた。これは米国のNational Hemophilia Foundation(NHF)とThe World Federation of Hemophilia(WFH)のプログラムを参考に荻窪病院小児科で作成された。内容はかなり詳細で、当時慎重に家庭療法が導入されていたことが伺える。この冊子は現在入手が不可能であるが、広島県ヘモフィリア友の会のウェブサイト(http://www.aaieba.gr.jp/)には、血友病に関する様々な基礎知識あるいは補充療法・家庭療法に関する知識を問う問題とその解答が掲載されている。

    III. 家庭療法の現状と問題

    現在、家庭療法を行っている患者やその家族の中には、初期の教育を医師や看護師から受けていない例や、血友病の病態、臨床症状とその対応、遺伝形式、自己注射の手技等、教育内容の一部しか教育されていない例が見受けられる。このため、製剤の注射量が極端に少ない例、逆に多過ぎる例、出血部位や出血の程度に関わらず注射量や注射回数が固定されている例、出血してから輸注するまでの時間が長い例、必要な連続注射を行っていない例など、家庭療法の実際が不適切と思われる事例がある。中には家庭療法を管理していく上で必要な輸注記録をつける習慣すらない例も少なくない。

    一方、医療施設側の家庭療法上の管理や記録の保存が認可当初に比較して、不十分になっている可能性も指摘されている。家庭療法は一度開始すると、患者の生涯に渡り継続することが原則になる。その間には患者の成長や身体的ならびに環境の変化が予測される。また住居の移動に伴い医療施設を移る可能性もある。血友病医療における医療者と患者の関係は長期に渡り、時に両者間には、ある種の「馴れ」が生まれることもある。その結果、ともすると医療者は、患者の家庭療法を客観的に評価し記録することを省略しがちになる。長期に渡る、定期的な教育水準や注射技術の確認や再評価に関しては、当初は十分な配慮がなされておらず、基準なども設けられていなかった。

    製剤の安全性や取り扱い上の利便性が向上したことも相まって、幼少時から本療法を開始した若年層の血友病患者には、血友病性関節症等の慢性障害は着実に少なくなっている。しかしながら、現在の家庭療法は、以上のように不確実、不十分な問題点を抱えたまま行われているのも事実である。

    IV. 基本ガイドライン

    表1から表9に示す基本ガイドラインは、これまで使われてきたマニュアルやガイドラインの内容を大きく刷新するものではない。また、各施設で用いてられているマニュアルや教育資料、輸注記録表を統一させることを目的とはしていない(表1)

    むしろ、最小限必要な項目を列挙することで、標準化を進めていくことを第一義的に構成した。血友病診療施設においては、本ガイドラインの各項目を確認し、用いられている資料に適宜追加補足されることを期待したい。

    凝固因子補充療法の方法(表2)は、出血時の補充療法、定期補充療法、予備的補充療法に大別して記載した。現在わが国における家庭療法は、出血時の補充療法や予備的補充療法が主体である。今後は、一次定期注射も含めた効果的な定期補充療法が普及し、血友病患者が生涯にわたり合併症の危険から解放されることが望ましい。日本小児血液学会の血友病委員会(委員長:吉岡 章、奈良県立医科大学小児科教授)では、定期補充療法に関する前方視的研究の計画を進めている(担当:瀧 正志、聖マリアンナ医科大学小児科助教授)。今後は日本血栓止血学会の当検討部会が相互協力し、定期補充療法の普及に努めたい。

    家庭療法の教育(表5)に関しては、各施設で各種の資料や冊子が用いられていると想像される。本項目に関しては、教育内容の詳細はあえて省き、必要項目のキーワードの列挙に留めた。詳細に関しては、ある程度の自由度をもって、各施設で適宜既存の資料などを用いて教育されることを期待するものである。基本的知識は多項目に渡るため、患者の年齢によっては、すべての理解を求めるのは難しいこともある。また、2.の「注射の実技と製剤の管理」を習得した上で、家庭療法をまず導入し、追って1.の「基本的知識」の教育を深めていくことも考えられる。そこで、基本的知識の中の必要最低限の項目をアンダーラインで示した。注射の実技と製剤の管理はすべて必須項目とした。

    輸注記録表も施設ごとに様々な様式が用いられているが、本ガイドラインでは、記録表に記録すべき必要最低限の項目を列挙した(表7)。近年、各製剤の外箱には、ロット番号が示されたシールが3枚添付されている。輸注記録表のロット番号欄に書き写す代わりに、これらのシールを貼り付けることが可能である。新しい項目としては、処方された製剤量と家庭内の在庫量を記入する項目を設けた。これは既存の輸注記録表には、おそらく取り上げられることの少なかった項目である。患者や家族が、貴重な凝固因子製剤を自己管理する意識を高める上で必要であり、また、医療者側の薬剤の出納記録としても重要になる。

    家庭療法の継続と管理(表8)は新規の事項である。長い年月に渡って、家庭療法の質を維持するためには、医療者側が主体的に管理基準を遵守し、評価していく必要がある。患者の受診頻度は、一般的なものとして、「最低3か月毎」(表4)としたが、個々の患者の状況や実績に応じて適宜定められるものであろう。輸注記録表は定期受診時などに患者が持参する。そこで主治医は、個々の記録を遡って患者と共に確認し、評価やコメントを加えたうえで、その記録を患者と医師でそれぞれ保存することが望ましい。製剤の処方量は、製剤使用頻度、来院頻度、冷蔵庫の保存スペースなどにより、患者毎にある程度定まってくる。1ヶ月分の平均使用量を基準とし、多くとも定期受診の間に使用する量を限度とする。製剤の出納に関して、出庫量はカルテに記載した処方量で把握はできるが、家庭での在庫量はわかりにくい。したがって、出納管理は患者の輸注記録表などで行うことが望ましい。

    家庭療法の長期継続管理(表8)に関しては、5年を目安に、あるいは患者の発達段階に応じて見直す機会を設けることが望ましい。小学校入学時や中学校入学時など、あるいは父母などによる注射から自己注射に移行する時期などが見直す機会としては相応しい。それらの際には、改めて、適応基準(表3)、遵守事項(表4)、知識や技術(表5)の確認を行う。問題点があれば十分に説明と指導を行い、時には再教育も必要になる。近年、重症型の血友病の場合は家庭療法の導入を低年齢から開始することがある。この場合、家庭注射の教育は患者本人よりも母親あるいは父親を対象に行われることになる。患者の成長にともない、家庭療法は親から患者本人へと受け継がれていくことになるが、この時期に医療者による本人への教育がなされない場合は、教育項目の一部が抜け落ちる可能性がある。家庭療法の定期的な更新が必要な理由はここにもあり、その時の患者の年齢、理解度に合わせた教育が必要とされる。

    最後に、家庭療法を実施する医療機関のありかたにつき、大枠を示した(表9)。家庭療法実施医療機関としては、血友病患者を積極的に診療している医師と看護師がそれぞれ1名以上常勤しており、整形外科、リハビリテーション科、口腔外科を含む他科との医療連携により、血友病の合併症を包括的に診療できる体制の整った、入院施設のある総合病院(基幹病院)であることが望ましい。基幹病院では凝固因子製剤を常備し、外来処方ができ、家庭療法に関する教育プログラムを含めた管理体制が整っていることが必要である。また、患者の心理的・社会的な相談や遺伝相談に対し、医療ソーシャルワーカーや医師が対応できる体制をもつことが望ましい。患者団体との良好な連携を維持することも求められる。

    基幹病院で教育を受けて家庭療法が導入された患者は、基本的にその病院で治療管理を継続することになる。しかし、自宅が基幹病院の遠隔地にある場合などには、協力的な近医(協力医)に家庭療法の一部の機能を委託することがある。また、血友病の患者を初めに診断し治療を継続している診療所や病院(二次医療施設)では、家庭療法を導入する体制が整備されていない場合には、いったん基幹病院に教育などを委任し、その後の日常管理を二次医療施設で継続することもできる。これらの患者が、休日や夜間に診療が必要な際や緊急時には、直接基幹病院を受診するか、その担当医の指示を受けられる体制にしておくことが肝要である。また協力医や二次医療施設の担当医も、血友病診療上の疑問点や問題が生じた際には、基幹病院に遅滞なく連絡・相談できる関係を維持する必要がある。

    V. インヒビター保有患者の家庭バイパス療法

    インヒビター保有患者の止血管理は、未だすべての場合に対応できる方法はなく、血友病医療のなかでも難題とされる。家庭療法が認められた1983年の時点では、即時性の副作用が比較的少なく、用量依存性の止血効果が期待できる補充療法を、患者と家族に委嘱することが目的であった。インヒビター保有患者のバイパス療法に関しては、即時型のアレルギー反応や血栓性の副作用の可能性があり、止血効果の確実性に問題があったために、多くの施設では家庭療法には当面そぐわないと考えていた。ところが、ある種のバイパス製剤の止血効果が安定して期待できるインヒビター保有患者の中では、バイパス製剤の家庭療法の施行を求める声が高まって来た。それらを受けて、1996年にはバイパス製剤を用いた家庭療法も認可され、インヒビター保有患者の止血管理も現在では病院を離れて行うことのできる環境にある。

    現在わが国で使用可能なバイパス製剤は、プロプレックスST、ファイバ、オートプレックス、ノボセブンの4製剤である。これらの家庭療法導入に際しては、前述した家庭療法の基本ガイドラインを遵守した上で、上記の潜在的な問題点を十分に配慮する必要がある。表10には、すべてのバイパス製剤に共通する注意事項を掲げた。家庭でのバイパス療法では、止血効果が不十分であった時の判断と、基幹病院への連絡体制はさらに重要になる。止血効果を認めないまま、漫然とバイパス製剤を反復注射することは、出血症状が増悪する上、副作用を惹起する可能性があり、高価な製剤の空費を避けるうえでも好ましくない。各製剤の用法・用量を考慮した家庭療法での使用プロトコールを、表11から表14に示した。基幹病院の担当医には、これらを基準にした上で、各インヒビター保有患者に合わせた注射法を考案することが望まれる。

    文献

    1)TOHC・TMC GROUP:血友病教育プログラム(ホームインフュージョン教育マニュアル)、東京、株式会社ミクプランニング、1983
    2)福武勝幸、稲垣稔、福江英尚、西田恭治:血友病教育プログラム(ホームインフュージョン教育マニュアル)、東京、日本赤十字社、1994
    3)在宅自己注射法マニュアル等作成委員会:在宅自己注射法(血友病、下垂体性小人症)ガイドライン 医療者用、東京、財団法人 総合健康推進団、1993
    4)在宅自己注射法マニュアル等作成委員会:在宅自己注射法(血友病)マニュアル 患者・介護者用、東京、財団法人 総合健康推進団、1993
    5)稲垣稔:血友病教育プログラム 患者・家族テキスト NFH-WFH-TOHC MODEL、東京、武蔵野会出版部、1982図1.血友病教育プログラム(ホームインフュージョン教育マニュアル)
    図2.在宅自己注射法(血友病、下垂体性小人症)ガイドラインと在宅自己注射法(血友病)マニュアル
    図3.血友病教育プログラム 患者・家族テキスト NFH-WFH-TOHC MODEL

    表 1~9

    表1.家庭療法の目的、意義

    1. 出血時の早期補充療法あるいは定期補充療法を医療施設以外で効率よく行うことにより、出血の苦痛を予防・軽減させる
    2. 出血による後遺症および慢性障害の発生を予防・軽減させる
    3. 出血時に通院する際の身体的、時間的、経済的負担を減らす
    4. 出血症状に伴う学校生活や社会生活の質の低下を軽減させる
    5. 活動内容や行動範囲を広げ、社会適応をはかり、心身両面での自立を促す

    表2.凝固因子補充療法の方法(インヒビター保有症例を除く)

    1. 出血時の補充療法:
    I. 軽度から中等度の出血に対して;可及的早期に止血をはかり、慢性障害(関節症、偽腫瘍など)の発生を回避する
    II. 重度の出血(頭蓋内出血、消化管出血、外傷)に対して;早期に補充療法を開始することで生命予後を改善する
    2. 予備的補充療法:運動会や遠足などの身体活動の事前に凝固因子製剤を注射し、出血を回避する方法
    3. 定期補充療法:
    I. 一次定期注射;重症型の血友病患者を対象に2歳未満あるいは最初の関節出血後(2回目の関節出血以前)に定期的(例えば週に2あるいは3回)に凝固因子製剤の注射を開始し、これを長期間行うことにより関節症を未然に防止しようとする方法
    II. 二次定期注射
    a. 2歳以上あるいは2回以上関節出血を来した後から開始し、定期的(例えば週に2あるいは3回)に凝固因子製剤の注射を長期間行う方法
    b. 頻回の出血あるいは慢性滑膜炎などに対し、定期的(例えば週に2あるいは3回)に凝固因子製剤の注射を短期間(数週間から数年)行う方法

    表3.家庭療法の適応基準

    1. 本療法を患者ならびに家族が望んでいる
    2. 本療法の目的、意義、遵守事項を患者と家族が十分に理解している
    3. 本療法が患者の身体的、精神的苦痛を軽減し、生活の質を高めることが予想される
    4. 医師・医療スタッフと患者や家族との間に安定した信頼関係が築かれている
    5. 患者や家族が心理的に安定している 6. 患者は当該製剤による重篤な副作用の既往がない

    表4.患者や家族の遵守事項

    1. 定期的(最低3か月毎)に受診すること
    2. 家庭治療に関して主治医の評価と指導を受けること
    3. 治療経過や製剤の家庭内在庫状況を記録し、病院に定期的に提出すること
    4. 製剤は規定の方法で管理し、奨められた輸注量、輸注方法を守ること
    5. 製剤は、兄弟を含む患者の間で流用しないこと
    6. 針や注射器などの医療廃棄物を適切に処理すること
    7. 出血症状が強いときや判断に迷うときには主治医に連絡すること

    表5.家庭療法の教育項目(下線のは必須項目)

    1. 基本的知識
    I. 血液凝固と血友病に関する基本事項
    a. 止血の仕組みの基本;一次止血、二次止血、血管内皮細胞、血小板、凝固因子
    b. 血友病の病態;第VIII因子、第IX因子、APTT、X連鎖劣性遺伝、重症度、保因者、有病率
    II. 出血症状とその対応
    a. 急性出血部位と症状;関節内、筋肉内、腎・尿路、鼻、皮下、腸腰筋、消化管、外傷、頭蓋内、咽頭・喉頭・頸部
    b. 慢性障害と症状;関節症、偽腫瘍
    III. 補充療法
    a. 注射量と上昇期待値;半減期、回収率
    b. 注射方法と注射量;初回注射・連続注射、定期注射、出血部位と程度に対する補充量、副作用と対応
    IV. インヒビターとその治療
    a. インヒビターの基本;発生率と有病率、ベセスダ単位、ハイレスポンダー・ローレスポンダー、免疫寛容療法、バイパス止血療法、中和療法
    b. バイパス止血療法の実際(インヒビター保有患者においては必須)
    2. 注射の実技と製剤の管理
    I. 重篤出血時の対応方法
    II. 副作用出現時の対応方法
    III. 製剤の保管、管理方法
    IV. 製剤の溶解方法
    V. 静脈注射の実際
    VI. 効果の判定と繰り返し注射の方法
    VII. 止血管理の記録方法
    VIII. 廃棄物の取り扱い方法
    IX. 主治医あるいは病院との連絡方法
    X. 製剤の一回処方量
    XI. 家庭内での製剤の適正な在庫量
    XII. 定期受診の必要性

    表6.家庭療法の認可

    1. 適応規準(表3)を満たしている
    2. 各施設で規定の教育プログラムを受け、教育目標(表5)を達成している
    3. 担当医師が適当と認めている
    4. 遵守事項(表4)を守ることに同意できる

    表7.輸注記録表の記載項目

    1. 出血エピソード
    2. 輸注までの時間
    3. 製剤名、輸注量、製剤のロット番号(シール貼付)
    4. 輸注毎および全体の止血の評価
    5. 副作用
    6. 併用薬
    7. 製剤の処方量と在庫量(出納表)
    8. 気付いたことやメモ
    9. 主治医への質問事項
    10. 主治医からのコメント、指導

    表8.家庭療法の継続・管理:(以下の項目を定期的に確認してカルテに記載する)

    1. 定められた期間内に定期的に受診している
    2. 輸注記録表の回収、評価、保存がなされている
    3. 製剤の処方頻度、一回処方量が適切である
    4. 製剤の出納管理が適切になされている
    5. 家庭療法の更新:5年毎あるいは患者の発達段階(小学校入学時、中学校入学時など、あるいは父母などによる注射から自己注射に移行する場合)に応じて随時、適応規準・遵守事項・教育規準を確認し、必要に応じた再教育を行う

    表9. 家庭療法実施医療機関のありかた

    1. 血友病包括医療体制が整備されている(基幹病院)
    a. 血友病患者を積極的に診療している医師、看護師がそれぞれ1名以上常勤している
    b. 家庭療法の教育プログラムをもち、管理体制が整っている
    c. 各種の凝固因子製剤が院内薬剤部に常備され、外来処方が可能
    d. 各科(内科、小児科、整形外科、リハビリテーション科、歯科、脳外科など)の医療連携体制があり、血友病の合併症にも対応できる
    e. 入院施設がある
    f. 心理・社会的な相談に対応できる
    g. 患者団体と連携できる
    h. 遺伝相談に応じることができる
    i. 患者や他の医療施設からの連絡の受け入れ態勢が確立していること:休日・夜間の連絡方法、主治医
    2. 上記の体制が未整備な医療機関においては、基幹病院との医療連携を維持している
    3. 血友病医療の最新情報を入手し実践することに努めている

    表10.バイパス製剤による家庭療法に共通する留意事項

    1. 当該製剤による重篤な即時性の副作用の既往がないこと
    2. 原則として軽度あるいは中等度の出血を対象とする
    3. 出血症状が出てから可及的早期(2時間以内が望ましい)に注射を開始する
    4. 重度の出血(頭蓋内出血、消化管出血、外傷など)に対しては早期に注射を行った上で、基幹病院に連絡し指示を受ける

    表11.プロプレックスSTによる家庭療法のプロトコール

    1. 1回注射量 :50 ~100 単位/kg
    2. 注射間隔 :最低6時間
    3. 注射終了:2回注射後にも止血が不十分な時には病院に連絡する
    4. 自己評価のポイント:注射6時間後の止血の評価、注射終了24時間後の止血の評価

    表12.ファイバによる家庭療法のプロトコール

    1. 1回注射量 :50 ~100 単位/kg
    2. 1日最大注射量 :200単位/kgまで
    3. 注射間隔 :最低8時間
    4. 注射終了:2回注射後にも止血が不十分な時には病院に連絡する
    5. 自己評価のポイント:注射8時間後の止血の評価、注射終了24時間後の止血の評価

    表13.オートプレックスによる家庭療法のプロトコール

    1. 1回注射量 :25 ~100 単位/kg
    2. 注射間隔 :最低6時間
    3. 注射終了:2回注射後にも止血が不十分な時には病院に連絡する
    4. 自己評価のポイント:注射6時間後の止血の評価、注射終了24時間後の止血の評価

    表14.ノボセブンによる家庭療法のプロトコール

    1. 注射量 :90 ~120 mg/kg
    2. 注射間隔:2~3時間ごと
    3. 注射回数:1回の出血につき原則として3回まで
    4. 注射終了:止血効果がみられたら、さらに1回追加注射をする。2回連続して止血効果が感じられないときや3回注射しても止血が不十分な時にはいったん中止し、病院に連絡する。
    5. 自己評価のポイント:注射2~3時間ごとの止血の評価、注射終了24時間後の止血の評価
  • 医療指針No. 1(031007)「血友病患者にはB型肝炎ワクチンを接種することが望ましい」

    医療指針No. 1(031007)
    「血友病患者にはB型肝炎ワクチンを接種することが望ましい」

     現在わが国で血友病患者に使用されている凝固因子製剤は、遺伝子組換え製剤のみならず血漿由来製剤も、詳細なスクリーニング検査などに加えてウイルス不活化・除去処理が行われており、B型肝炎の感染性はないと考えられています。輸血に関しては、献血者のB型肝炎などのスクリーニング検査は高感度の核酸増幅試験(NAT)が行われており、血液製剤(赤血球濃厚液、新鮮凍結血漿、濃厚血小板)の輸血によるB型肝炎の感染は非常に少なくなっています。しかし、輸血用血液製剤では現在ウイルス不活化・除去処理がなされていないために、少数ながら輸血後B型肝炎の発症が報告されています。血友病患者は重篤な出血傾向を有するために輸血を必要とする可能性は健常者よりも高いと考えられます。したがって、確定診断後の血友病患者およびB型肝炎未感染でB型肝炎ワクチン未接種の血友病患者は、なるべく早い時期にB型肝炎ワクチンを接種しておくことが望ましいと考えます。

    なお、血友病患者に対するB型肝炎ワクチン接種は保険適応注)となっています。B型肝炎の予防のための用法・用量は、10歳以上:1回0.5 mlを4週間隔で2回、更に、20-24週後1回0.5 mlを皮下注、10歳未満:0.25 mlを同様の投与間隔で皮下注、3回目の数週後にはHBS抗体の陽性化を確認することとなっています。

    注)各B型肝炎ワクチンの添付文書の【保険給付上の注意】欄に以下の記載がある。
    1.「B型肝炎の予防」の目的で使用した場合は、保険給付の対象とはなりません。ただし、血友病患者に「B型肝炎の予防」の目的で使用した場合は、保険給付の対象となります。(平成2年3月30日付事務連絡)

  • 凝固因子製剤の種類がインヒビター発現に及ぼす影響

    凝固因子製剤の種類がインヒビター発現に及ぼす影響

    平成18年11月16日
    凝固因子製剤の種類がインヒビター発現に及ぼす影響
    日本血栓止血学会学術標準化委員会血友病部会
    嶋 緑倫(部会長)、瀧 正志(副部会長)、天野 景裕(副部会長)
    岡 敏明、高田 昇、高松 純樹、竹谷 英之、花房 秀次
    日笠 聡、福武 勝幸、松下 正、三間屋 純一
    吉岡 章(担当理事)、白幡 聡第VIII因子製剤とインヒビター発生の因果関係について、不正確な情報をもとにした推測により、過剰と思われる心配が患者さんや医療関係者に広がっていると見受けられるため、血友病専門医として現時点での情報を分析して見解を述べる。凝固因子製剤を輸注された血友病A(B)患者に、血液凝固第Ⅷ(Ⅸ)因子に対するインヒビターが発現することがある。ひとたびインヒビターが発現すると凝固因子製剤による補充療法の止血効果が減弱ないし消失するため、その後の止血管理が困難になる。これまで、インヒビターの発現にどのような要因が関与するか多くの研究が行われてきた。その結果、発現リスクは血友病Bより血友病A、中等症・軽症より重症型、人種では黒人、ヒスパニック、白人の順に、さらに、小さな遺伝子変異より大きな変異例に高いことなどが国内外の血友病専門医の一致した見解である。一方、使用された凝固因子製剤の影響については、わが国では使用されなかった二種類の特定の血漿由来製剤で明らかに高率にインヒビターが発現したという事実があるものの1,2)、これ以外の血漿由来製剤と遺伝子組換え製剤の間でインヒビター発現に差があるかについては、専門医の間で必ずしも見解が一致していない。両製剤間の差異の有無を明確にするためには、同一施設(群)において、同時期に、同間隔、同一方法でインヒビターの発現率と発現したインヒビターの性質(低反応型か高反応型かなど)を前方視的に比較検討した成績が必要であるが、これまでそのような成績の報告はない。従って、現時点で両製剤間でのインヒビター発現の差異を検討する場合、異なる研究で得られた成績を用いて比較せざるを得ない。それらの中で、比較的、患者背景や測定条件を揃え、患者数も多い調査成績をみると、ドイツの広範な疫学的研究など多くの比較研究で3)、両群間のインヒビター発現率に差がないと報告されている。これに対し、Wightら4)のレビューでは、単独の血漿由来製剤を輸注された患者群では、複数の血漿由来製剤や遺伝子組換え製剤を輸注された患者群と比べてインヒビター発現率が低かったと報告されている。しかし、単独の製剤輸注群として引用されている4文献で5~8)、輸注された製剤は全て異なっていて、高純度製剤での検討は1文献のみであり、他の文献では、クリオプレシピテートや中間型濃縮製剤が用いられている。また、本年フランスの研究グループが、血漿由来製剤は遺伝子組換え製剤に比べてインヒビターの発現が低いことを示唆する成績を報告したが9)、この論文の評価にあたっても下記の点に留意する必要がある。すなわち、(1)本論文は、遺伝子組換え第Ⅷ因子製剤とvon Willebrand因子含有血漿由来製剤を投与された、過去に凝固因子製剤を投与され たことのない患者に関して、別々に実施された調査報告の比較であり、調査条件が同等でない。(2)3つのエンドポイントで、全てのインヒビター発生率と、高力価のインヒビター発生および(あるいは)免疫寛容療法を行った患者の率、には有意差を認めたが、高力価インヒビターの発生率に限ると有意差はみられていない。(3)本調査は、遺伝子組換え第Ⅷ因子製剤とvon Willebrand因子含有製剤 の比較であり、von Willebrand因子を含有していない血漿由来第Ⅷ因子製剤は調査対象となっていない。従って、遺伝子組換え第Ⅷ因子製剤によるインヒビター発生率をモノクローナル抗体精製血漿由来第Ⅷ因子製剤による発生率と比較しているかのように考えるのは誤りである。高反応型(high responder type)のインヒビターが発現した血友病A(B)患者に対して、第Ⅷ(Ⅸ)因子製剤を頻回、大量に輸注してインヒビターの消失をはかる治療法(免疫寛容療法,ITI)がある。von Willebrand因子(V WF)を含まない第Ⅷ因子製剤による免疫寛容療法が失敗した患者にVWFを含む第VIII因子製剤で、再度、免疫寛容療法を施行したところ、インヒビターが消失した例があったという報告もあるが、比較研究ではない。製剤の投与方法と製剤間のITIの成功率の差異を厳密に比較する国際研究が現在進行中であるので、免疫寛容療法における製剤間の優劣の有無については、国際研究の結果を待って判断すべきである。以上、VWFがインヒビターの発現に抑制的に働く可能性を否定はできないものの、国外の多くの血友病専門医の見解と同様、インヒビターの発現に関して、「VWF含有第VIII因子製剤と遺伝子組換え第VIII因子製剤の間には差がある可能性は否定できないが、血漿由来製剤と遺伝子組換え製剤の間に、統計学的に明らかな差があるといえる信頼できる研究成果はなく、インヒビターの発生率に関して製剤の違いによる差異はわかっていない。」というのが、現時点での本部会の見解である。また、免疫寛容療法を実施するにあたって、どの製剤が優れているか、現時点では言及できない。文献

    1. Peerlinck K, Arnout J, Gilles JG, Saint-Remy J-M, Vermylen J.
      A higher than expected incidence of factor VIII inhibitors in
      multitransfused haemophilia A patients treated with an intermediate purity
      pasteurized factor VIII concentrate. Thromb Haemost 1993; 69: 115-8
    2. Rosendaal FR, Nieuwenhuis HK, van den Berg HM, Heijboer H,Mauser-Bunschoten EP, van der Meer J, Smit C, Strengers PFW, Briet E, and
      the Dutch Hemophilia Study Group. A sudden increase in factor VIII
      inhibitor development in multitransfused hemophilia A patients in The
      Netherlands.Blood 1993; 81: 2180-6.
    3. Kreuz W, Ettingshausen CE, Auerswald G et al: GTH PUP Study Group.Epidemiology of inhibitors and current treatment strategies. Haematologica
      2003, 88(Suppl.9):17-20.
    4. Wight J, Paisley S. The epidemiology of inhibitors in haemophilia A: a
      systematicreview. Haemophilia 2003,9: 418-435.
    5. Peerlinck K, Rosendaal FR, Vermylen J. Incidence of inhibitor development
      in a group of young hemophilia A patients treated exclusively with lyophilizedcryoprecipitate. Blood 1993, 81: 3332-3335.
    6. Guerois C, Laurian Y, Rothschild C et al. Incidence of factor VIII
      inhibitor development in severe hemophilia A patients treated only with one
      brand of highly purified plasma-derived concentrate. Thromb Haemost 1995,
      73: 215-218.
    7. Schimpf K, Schwarz P, Kunschak M. Zero incidence of inhibitors in
      previously untreated patients who received intermediate purity factor VIII
      concentrate or factor IX complex. Thromb Haemost 1995, 73: 553-555.
    8. Yee TT, Williams MD, Hill FG, Lee CA, Pasi KJ. Absence of inhibitors in
      previously untreated patients with severe haemophilia A after exposure to a
      single intermediate purity factor VIII product. Thromb Haemost 1997, 78:
      1027-1029.
    9. Goudemand J, Rothschild C, Demiguel V, Vinciguerrat C, Lambert T,
      Chambost H, Borel-Derlon A, Claeyssens S, Laurian Y,Calvez T; FVIII-LFB and
      Recombinant FVIII study groups. Influence of the type of factor VIII
      concentrate on the incidence of factor VIII inhibitors in previously
      untreated patients with severe hemophilia A. Blood 2006, 107: 46-51.
  • 免疫寛容導入療法に関する国際研究プロトコール改定のお知らせ

    平成18年9月28日
    免疫寛容導入療法に関する国際研究プロトコール改定のお知らせ

    拝啓 初秋の候、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
    さて、2006年1月26日付けでプロトコールが改定(第2版再改定)されましたので、ご案内申し上げます。主な変更箇所は、患者選択基準が「インヒビターが12ヶ月未満存在すること」から、「インヒビターが24ヶ月未満存在すること」に改正されたことです。他にも幾つか訂正箇所があります(一覧表参照)。すでに旧バージョンでIRB申請していただいている施設は、プロトコールの変更の申請をIRBに提出いただきたく何卒宜しくお願い申し上げます。奈良県立医科大学小児科
    日本血栓止血学会学術標準化委員会(SSC)血友病部会
    ITI小委員会委員長吉岡 章
    連絡先:嶋 緑倫 mshima@naramed-u.ac.jp
    免疫寛容導入療法に関する国際研究のご案内
    インヒビター陽性血友病症例の止血管理はきわめて困難であり、血友病の医療において重大な問題となっています。従来はバイパス製剤による止血療法が治療の主体でしたが、現在は第Ⅷ因子製剤あるいは第Ⅸ因子製剤を頻回に投与することによりインヒビターの消失又は抑制をはかる免疫寛容導入療法(ITI) が最も有効な治療法と考えられつつあります。欧米の報告ではITIの成功率は63-83%です。一般にITIの治療プロトコールには高用量法と低用量法の2法に分かれますが、製剤投与量がITI成功率に関係があるのかいまだに解決されていません。そこで、ITI成功率と製剤投与量との関連性について国際血栓止血学会(ISTH)/科学及び標準化委員会(SSC)の、第VIII・IX因子小委員会および北米血友病研究協会が中心になり国際的無作為化比較試験が開始されました。我が国でも本学会血友病標準化委員会(SSC)血友病部会ITI小委員会が日本小児血液学会血友病委員会の協力のもとに発足し、国際研究に参加しています。インヒビターが初めて診断された血友病Aあるいは対象患者の基準をみたす患者さんがすでにおられましたら、インヒビター例登録票にて御連絡いただければ国内登録をさせて頂きます。
  • 「血友病患者の出血エピソードと関節症に関する臨床研究」日本血栓止血学会学術標準化委員会血友病部会プロジェクト

    「血友病患者の出血エピソードと関節症に関する臨床研究」
    日本血栓止血学会学術標準化委員会血友病部会プロジェクト

    代表
    竹谷 英之(現 国立病院機構福井病院)
    (H18年4月以降 東京大学医科学研究所)
    副代表
    藤井 輝久(広島大学)2005年11月目次
    01: 研究の背景 ・・・・・・・・・p03
    02: 研究の目的 ・・・・・・・・・p03
    03: 研究の方法 ・・・・・・・・・p03
    3.1 研究手順 ・・・・・・・・・p04
    3.2 目標評価可能症例数 ・・・・・・・・・p05
    3.3 選択基準および選択基準の根拠 ・・・・・・・・・p05
    3.4 除外基準と除外基準設定の根拠 ・・・・・・・・・p05
    04:評価の方法 ・・・・・・・・・p05
    4.1 対象関節 ・・・・・・・・・p05
    4.2 研究期間 ・・・・・・・・・p05
    4.3 エックス線写真撮影方法 ・・・・・・・・・p05
    4.4 評価項目 ・・・・・・・・・p06
    4.4.1 患者情報
    4.4.2 関節情報
    4.4.3 エックス線写真情報
    05:同意取得の方法 ・・・・・・・・・p06
    06:解析方法 ・・・・・・・・・p07
    07:倫理 ・・・・・・・・・p07
    08:公表に関する取り決め ・・・・・・・・・p08
    09:組織 ・・・・・・・・・p08
    10:研究費 ・・・・・・・・・p08
    図1:手順フローチャート ・・・・・・・・・p09
    附1:アンケート用紙01 ・・・・・・・・・p11
    附2:アンケート用紙02-1~02-6 ・・・・・・・・・p15
    附3:エックス線写真報告用紙 ・・・・・・・・・p27
    附4:同意説明書 ・・・・・・・・・p31
    附5:同意書 ・・・・・・・・・p33
    附6:参加申込用紙 ・・・・・・・・・p35
    附7:エックス線写真情報用紙 ・・・・・・・・・p37
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    NO.1