日本血栓止血学会
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用語集
ADP受容体 (adenosine diphosphate receptor)
定義
血小板に発現するADP受容体としては、P2Y1とP2Y12が知られている.
どちらも、7回膜貫通型のG蛋白共有型受容体(G-protein-coupled receptors, GPCR)である.
ポイント
  1. P2Y1は1996年にクローニングされ、Gqと共役し、PLC、カルシウムを介したシグナルを惹起する。ヒトにおけるP2Y1欠損症の報告はないが、P2Y1欠損マウスの血小板はADP刺激によってほとんど凝集しない。
  2. P2Y12は2001年にクローニングされ、Giと共役し、adenylate cyclaseを阻害することにより、cyclic AMPの産生を抑制する。2008年現在、7家系のP2Y12欠損症が報告されている。この分子は抗血栓療法の代表的な分子標的であり、阻害剤としてはticlopidine(パナルジン)やclopidogrel(プラビックス)があるが、さらに多くの薬剤が開発されつつある。
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Bernard-Soulier(ベルナール・スーリエ)症候群(Bernard-Soulier syndrome, BSS)
定義
血小板膜糖蛋白GP I b/IX/V複合体を欠損することにより、重篤な出血症状と巨大血小板性血小板減少症を呈する先天性血小板異常症。
ポイント
  1. 常染色体劣性遺伝疾患であるために家系内に血族結婚を認めることが多く、GP I bα、GP I bβあるいはGPIX遺伝子にホモ接合性変異を認める。
  2. 出血症状は一次止血異常による粘膜出血が主で、関節や筋肉内への出血はまれ。重篤な出血時には血小板輸血で対応するが、頻回輸血により同種抗体が産生されることがある。
  3. 検査所見として、血液塗抹標本にて赤血球大の巨大血小板を認める。血小板数は2−5万であるが、自動血球計数装置では見かけ上さらに低下した血小板数を呈する。出血時間は延長し、リストセチンによる血小板凝集を欠如する。フローサイトメトリーあるいはウエスタンブロットによるGP I b/IX/V複合体欠損の証明が確定診断となる。
  4. ヘテロ接合性保因者は出血傾向を示さず、中等度の血小板減少(10万程度)を有する。しかし、血小板は大型であるために自動血球計数装置のみによる血球計測では見かけ上の血小板減少症となる。患者、保因者ともに特発性血小板減少性紫斑病と診断されることがある。
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CD36 (glycoprotein IV, GPIV)欠損症 (CD36 deficiency)
定義
CD36(別名血小板膜糖蛋白GP IV)はClass Bスカベンジャー受容体に属する膜貫通型の糖蛋白である。熱帯熱マラリア感染赤血球、トロンボスポンジン、酸化LDL、不飽和脂肪酸など多様な分子と結合する。血小板、単球、赤芽球、脂質細胞、心筋、一部の血管内皮細胞などに発現しており、全身のCD36が欠損しているタイプ I 欠損と血小板CD36のみが欠損しているタイプ II 欠損がある。
ポイント
  1. 日本人では健常人においてタイプ II 欠損が3%程度、タイプ I 欠損は0.3%程度存在している。他のモンゴロイド、アフリカンにも同程度の頻度で存在するとされるが、コーカソイドでは非常に少ない。
  2. タイプ I 欠損例では、血小板輸血や妊娠に伴い同種抗体(Naka抗体)が産生される可能性があり、血小板輸血不応、新生児血小板減少性紫斑病の原因となりうる。また、動脈硬化、インスリン抵抗性、心筋症との関連が示唆されている。BMIPPシンチの心筋無集積にて発見されることもある。
  3. タイプ II 欠損例では特に臨床症状は認めない。また、CD36欠損血小板も明らかな機能異常は認められない。
  4. 日本人においてはProline90→Serine変異の頻度が最も多い。
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Glanzmann(グランツマン)血小板無力症 (Glanzmann thrombasthenia)
定義
先天性血小板機能異常症の一つ。1918年にスイスのGlanzmann博士により血小板数が正常で血餅退縮能に異常を伴う出血性疾患群として初めて報告された。本疾患では、血小板凝集に必要なフィブリノゲンおよびフォンウィルブランド因子の受容体であるGP II b/III aが欠損(あるいは機能障害)している。
ポイント
  1. 常染色体劣性遺伝形式である。両親は出血傾向を示さない。本疾患はGP II b/ III aの量的異常と質的異常(variant型)に分類される。
  2. 幼少時より紫斑、点状出血などの皮膚症状、鼻血や消化管出血などの粘膜出血が見られ、大人になるに従って症状が軽くなる傾向にある。血小板数は正常であり、出血時間は著明に延長する(15分以上)。血小板凝集検査において、リストセチン凝集を除く、ADP、コラーゲン、エピネフリンなどで惹起されるフィブリノーゲン依存性の血小板凝集がすべて欠如する。血餅退縮能は低下あるいは欠如している。
  3. 遺伝子異常はGP II bあるいはGP III a遺伝子のどちらか一方のみに存在。GP II bとGP III aは複合体を形成するため、どちらかの一方の異常により複合体として発現されない結果、GP II bとGP III aの両者が欠損する。
  4. 治療法としては、重篤な出血や手術の時などには血小板輸血を行なう。保険適応外であるが、リコンビナント活性型血液凝固第 VII 因子(F VII a)製剤が有効との報告あり。
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GP II b/III a (glycoprotein II b/III a、αIIbβ3)
定義
血小板膜糖蛋白(glycoprotein, GP)II b/IIIa(別名インテグリンαIIbβ3)は接着蛋白受容体ファミリーであるインテグリンに属し、GP II b (αIIb)とGP III a (β3)が Caイオン依存性に1:1の比率にて複合体を形成している。血小板凝集に必要不可欠な分子である。
ポイント
  1. 血小板あたり約80,000分子と最も豊富に存在する接着蛋白受容体である。
  2. 血小板におけるフィブリノゲンおよびフォンウィルブランド因子の受容体であり、血栓形成の最終段階である血小板凝集に必要不可欠である。
  3. GP II b/IIIaは細胞を接着させるだけでなくシグナル伝達分子として機能しており、この分子を介して細胞内から細胞外へ(inside-outシグナル)、また細胞外から細胞内へ(outside-inシグナル)と、シグナルを双方向に伝達する。
  4. 血小板上のGP II b/III aは通常非活性化状態にあり、活性化シグナル(inside-outシグナル)により活性化型に構造を変え、接着蛋白受容体として機能する。
  5. GP II b/III aの先天的な欠損症がGlanzmann(グランツマン)血小板無力症である。
  6. Abciximab(ReoProTM)で代表されるようにGP II b/III aを分子標的とした注射薬により、PTCA術後の冠動脈の急性再狭窄が有意に抑制されるなど血栓の急性期治療に関して良好な成績が得られている。しかしながら、一方では経口GP II b/III aインヒビターによる血栓の長期予防効果に関しては良好な成績は得られていない。
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GP I b/IX/V複合体(glycoprotein I b/IX/V complex)
定義
血小板膜糖蛋白(glycoprotein, GP) I b/IX/V複合体は一次止血においてはじめに働きかつ最も重要な膜受容体である。(動脈)血管損傷時に内皮下のコラーゲンが露出すると、コラーゲンにvon Willebrand 因子(VWF)が結合し、ついで血小板がGP I b/IX/V複合体を介してVWFに結合する。この粘着を契機に血小板は活性化され血栓が形成される。GP I b/IV/V複合体が欠損するとBernard-Soulier 症候群(BSS)と呼ばれる、巨大血小板を伴う出血性疾患となる(BSSの項参照)。
ポイント
  1. 細動脈に相当する高ズリ速度(1,000-10,000s-1)の状態では血小板の粘着、凝集はVWF-GP I b相互作用で始まり、ADPによる活性化や活性化 インテグリンαIIbβ3とフィブリノゲンの結合等が関与するが、高度狭窄細動脈や狭窄冠状動脈で見られる極めて高いズリ速度下(10,000-40,000s-1以上)では血栓形成はVWF-GP I b相互作用にのみ依存しており血小板の活性化も必要無いことが明らかとなった。出血のリスクの少ない抗血小板薬のターゲットしてVWF-GP I b軸は注目を集めている。
  2. Leucine Rich Repeat (LRR)構造を持つGP I bα (143kDa), GP I bβ (22kDa), GP IX(20kDa), GPV(83kDa)の4つのサブユニットが2:4:2:1の比率で複合体を形成している。GP I baとGP I bbは共有結合で他のサブユニットとは非共有結合で複合体を形成。複合体は血小板1個あたり約2.5万個存在する。
  3. GP I b/IX/V複合体の主要なリガンドはVWFであり、結合部位はGP I aのN末にある。それ以外にもthrombin, Protein C, Mac-1, P-selectin, FXI, FXII、High-molecular-weight kininogen, b2-GPIとの結合が報告されている。
  4. GPVはthrombinの基質である。またcollagenと結合するとの報告もある。
    GPV knock out mouseではBSSの表現型をとらない。
  5. GP I bαの細胞内ドメインにはfilamin,14-3-3ζ, PI3-kinase, calmodulin等が結合する。BSSではfilaminとの結合を欠くことにより血小板が大きくちぎれ巨大血小板となる。VWF-GP I bによる血小板の活性化にはSrc familyのLynが重要である。
  6. (冷却)保存血小板は体内で迅速に排除されることが知られているが、これにはシアル酸を多く持つGP I b/IX/V 複合体(GP I bα,GPV)の糖鎖、そのsheddingに関わるmetalloproteinase (ADAM17)の関与が示唆されている。
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GPVI欠損症 (glycoprotein VI deficiency)
定義
血管新生 (angiogenesis) は既存の血管から血管を構築している細胞(特に血管管腔の内壁を裏打ちしている血管内皮細胞)の増殖、遊走により新しい血管ネットワークが形成される現象のことである。
ポイント
  1. 遺伝的なGPVIの欠損によると思われる患者もいるが、多くはITPなどの自己免疫疾患によるGPVIに対する自己抗体の出現によりGPVIの欠損に至った患者である。抗体による欠損の機構は現在不明であり、患者の中には血清中に抗GPVI抗体の検出されない例も存在する。
  2. コラーゲンによる血小板凝集反応が特異的に欠損していることが診断のポイントとなり、GPVIの欠損を免疫学的手法により示すことで確定される。
  3. 他の血小板活性化経路、あるいはインテグリンαβなどの他のコラーゲン受容体によって補償されるため、GPVI欠損による出血傾向は弱く、血小板減少などの他のストレスが加わったときにより強い出血傾向が出ると考えられる。
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Gray platelet症候群 (gray platelet syndrome, GPS)
定義
α顆粒が欠損した大型血小板が出現する遺伝性疾患。
ポイント
  1. 遺伝形式は多くの症例では常染色体劣性遺伝であるが、我が国で報告されている家系を含め常染色体優性遺伝の家系、あるいは孤発例の報告もある。
  2. 出血症状は軽度から中等度まで、症例により様々である。
  3. 血小板数は軽度ないし中等度低下、末梢血塗抹標本では光顕上顆粒が欠損した大型、灰白色の血小板がみられる。電顕では血小板α顆粒の欠損がみられる。
  4. 血小板凝集能の結果は症例により様々であり、一定しない。
  5. 骨髄生検では軽度の線維化がみられることが多い 。
  6. GPSは多様性のある疾患であり、発症に関与する遺伝子異常も単一ではない、と考えられている。GPS発症の原因となる遺伝子変異の探索が行われてきているが、現時点ではGPS発症との関連が報告されている遺伝子変異は、X染色体関連のGPS症例でみられたGATA1 Arg216Gln変異のみである。
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May-Hegglin(メイ・ヘグリン)異常(May-Hegglin anomaly, MHA)/MYH9異常症(MYH9 disorders)
定義
非筋ミオシン重鎖(nonmuscle myosin heavy chain II A, NMMHC- II A)蛋白をコードするMYH9遺伝子変異が原因である、巨大血小板、血小板減少および白血球封入体を特徴とする常染色体優性遺伝疾患。
ポイント
  1. 本疾患群にはMay-Hegglin異常の他に、Sebastian症候群、Fechtner症候群およびEpstein症候群が含まれ、包括したMYH9異常症が提唱されている。Sebastian症候群はMay-Hegglin異常と白血球封入体の形態が異なる。Fechtner症候群は血液学的三徴に加えてAlport症状である腎炎・難聴・白内障を合併する。Epstein症候群は巨大血小板性血小板減少症とAlport症状を呈するが、白血球封入体は観察されない。
  2. 臨床症状は、血小板数(数万〜10万以下)に比例する軽度の出血傾向であるが、全く出血傾向を示さないこともある。Fechtner症候群やEpstein症候群ではAlport症状である進行性腎炎・感音性難聴・白内障を合併する。
  3. 常染色体優性遺伝疾患であるが、約20%の症例が孤発例である。
  4. 検査所見として、巨大血小板、血小板減少およびギムザ染色標本にて顆粒球にデーレ様封入体を認める。自動血球計数装置による計測では見かけ上さらに低下した血小板数を呈する。顆粒球封入体が不明瞭あるいは認識されない症例では、原因不明の血小板減少症あるいは特発性血小板減少性紫斑病と診断されることがある。
  5. 末梢血塗抹標本上において顆粒球のNMMHC- II A局在を解析することにより確定診断が可能である。
  6. Alport症状を合併する病因は明らかでないが、特定のMYH9変異ではAlport症状を合併する頻度が高い。診断時には血液学的異常のみを呈するMay-Hegglin異常でも、Fechtner症候群へと移行する可能性がある。MYH9遺伝子検査は予後判定に有用である。
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P2Y12欠損症 (P2Y12 deficiency)
定義
P2Y12は血小板に発現するADP受容体の一つで、7回膜貫通型のGPCR(G-protein-coupled receptors)である.
ポイント
  1. P2Y12は、Giと共役し、adenylate cyclaseを阻害することにより、cyclic AMPの産生を抑制する.
  2. この受容体は、抗血栓薬であるticlopidine(パナルジン)、やclopidogrel(プラビックス)の治療標的分子である。
  3. 現時点までに、7家系のP2Y12欠損症が報告されている。P2Y12欠損症患者は、出血傾向を示し、血小板数や止血データは正常であるにもかかわらず、出血時間は延長している。
  4. P2Y12欠損症患者の血小板凝集は、ADP刺激による凝集が一過性であるだけでなく、PAR1刺激やU46619による刺激でも一過性の凝集を示す。
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P2Y12 受容体拮抗薬
定義
ADP受容体であるP2Y12 を阻害する薬剤であり抗血栓剤として広く使用されている。
ポイント
  1. 現在、チエノピリジン系に属するticlopidine(パナルジン)とclopidogrel(プラビックス)が使用可能であり、急性冠症候群に対する有効性が示されている。いずれもprodrugでありp450 systemによる代謝を受けたのち薬効を発揮する。
  2. ticlopidineは下痢、悪心、嘔吐などの消化器系症状や発疹の副作用が多く、また血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)や肝障害などの重篤な副作用が認められる。clopidogrelの副作用はticlopidineより低頻度であることが示されている。
  3. 頻度や機序は不明であるが、いずれの薬剤においても治療抵抗性あるいは低反応性症例の存在が指摘されている。
  4. チエノピリジン系であるprasugrelや、P2Y12の直接的阻害薬であるcangrelorなど多くの薬剤が臨床治験あるいは開発中である。
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Platelet-associated IgG(PAIgG)
定義
PAIgGは血小板膜表面に附着しているIgGを意味している。通常は血小板表面に結合しているIgGは抗血小板自己抗体であると考えられている。
ポイント
  1. 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の病態は、1)抗血小板自己抗体が自己の血小板に結合しており、2)PAIgGが結合している血小板は早期に破壊され、3)血小板減少をきたす、と考えられている
  2. ITP患者血小板の表面に結合している微量IgGをPAIgGと称し、酵素抗体法などにより微量測定している
  3. ITP患者の過半数の症例でPAIgGは上昇している。そのためPAIgG測定はITP診断のための検査として有用であるとして保険にも採用されている
  4. しかしながら血小板減少をきたす他の非免疫学な血小板減少症例(例えば再生不良性貧血や骨髄異形成症候群など)においても高率に陽性を示すためPAIgG検査のITP診断における特異性に疑問がもたれている
  5. PAIgG検査はあくまでITP診断のための補助検査法であり、PAIgG陽性でもってITPと確定診断できるものではないことに留意する必要がある。
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Upshaw-Schulman症候群(Upshaw-Schulman syndrome, USS
定義
第9染色体長腕に位置するADAMTS13(a disintegrin-like and metalloproteinase with thrombospondin type 1 motifs 13)遺伝子変異により先天性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)を生じる疾患。
ポイント
  1. 常染色体劣性遺伝形式をとるが、de novo発症例も報告されている。
  2. 幼小児期からの反復性TTP様症状を繰り返す例から、妊娠時における血小板減少にてはじめて診断される例まで臨床像は多様である。ADAMTS13活性低値、インヒビター活性陰性、乳幼児発症、家族性発症などが特徴であるが、診断には遺伝子診断が必要であることが多い。
  3. 新鮮凍結血漿(FFP)の定期輸注によるADAMTS13補充療法が有効である。
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Wiskott-Aldrich症候群 (Wiskott-Aldrich syndrome, WAS)
定義
血小板減少、易感染性、難治性湿疹を3主徴とする先天性免疫不全症候群。X染色体短腕に位置するWASP(Wiskott-Aldrich syndrome protein)遺伝子の異常が原因であり、伴性劣性遺伝形式を示す。
ポイント
  1. WASPの異常が原因となる遺伝性疾患としては、前記3主徴のすべてを備える古典的WAS、免疫不全を伴わないWASの軽症型であるX連鎖性血小板減少症(X-linked thrombocytopenia, XLT)およびWASPの恒常的活性化変異によるX連鎖性好中球減少症(X-linked neuropenia, XLN)が知られている。
  2. WASPは血球系に特異的に発現しており、アクチン細胞骨格系とシグナル伝達を制御することが知られている。
  3. WASの重症度はリンパ球におけるWASPの発現と相関しており、重症例ではWASPがほとんど発現しておらず、nonsense変異、frameshiftを伴う挿入、欠失、large deletionが多い。XLTを含む軽症例ではリンパ球にはWASPを発現していることが多く、missense変異、splice変異例が多い。血小板においてはWASP蛋白の発現は全例著明に減少している。
  4. 血小板減少だけでなく、血小板サイズの低下も伴っている。出血の頻度はITPより高頻度であり、血小板機能の異常も報告されている。
  5. 易感染性の程度は症例により異なる。古典的WASでは乳幼児期から中耳炎、肺炎、副鼻腔炎、皮膚感染症、髄膜炎などを繰り返す。
  6. 自己免疫疾患や悪性腫瘍(ほとんどが悪性リンパ腫)を合併しやすい。
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アスピリン(Aspirin, Acetylsalicylic acid)
定義
アスピリンは1897年に開発された歴史のある薬剤で消炎鎮痛剤として使用されていたが,現在では抗血小板薬として主に使用されている.内服したアスピリンは消化管で吸収され,腸肝循環で速やかに血小板cyclooxygenase (COX)に不可逆的に結合することで酵素活性を阻害し,血小板活性化に伴うトロンボキサンA2の産生を抑制する.この血小板COX阻害には消炎鎮痛目的で用いるよりも少量のアスピリンで十分であることが知られており,81-100 mgが実際の臨床で抗血小板薬として使用されている.
ポイント
  1. アスピリンの半減期は20-30分と短いが,血小板COXと不可逆的に結合するため,一度暴露された血小板機能の抑制は血小板寿命まで持続する.大手術の際には術前1週間程度前から中止する必要がある.一方,抜歯などの小外科の際にはアスピリン内服のまま処置を行うことも多い.
  2. 二次予防投与においてアスピリンは動脈血栓再発の20-25%を抑制しうる.
  3. アスピリンの副作用として消化性潰瘍,気管支喘息発作誘発などが挙げられる.またアスピリン投与による出血合併症の頻度は年間0.4%程度である.
  4. 一次予防効果は出血合併症の頻度とほぼ同レベルであり,全ての患者に一次予防投与が適応とならず,個々の症例に応じてその適応を決定する必要がある.
  5. 消化器症状等でアスピリン内服を中断している患者も存在すると考えられ,内服コンプライアンスに留意する必要がある.
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アラキドン酸カスケード (arachidonate cascade)
定義
アラキドン酸は不飽和脂肪酸のひとつで、4つの二重結合を含む20個の炭素鎖からなるカルボン酸である。動物の細胞にはアラキドン酸カスケードなる代謝系あり、アラキドン酸のような多価不飽和脂肪酸を材料として種々の生理活性物質がつくられる。これら生理活性物質は産生細胞自体、あるいは周辺の細胞を刺激することにより組織、臓器あるいは生体に対する種々の調節機能を発揮する。代謝経路は数多くに分岐し、それぞれが特有の生理活性物質を産生するが、細胞によって有する代謝経路は異なる。
ポイント
  1. アラキドン酸は、ホスホリパーゼA2の作用で膜に存在するリン脂質より遊離する。
  2. アラキドン酸カスケードによって産生される代表的な物質としては、プロスタグランジン(prostaglandin, PG)、トロンボキサン(thromboxane, TX)、ロイコトリエン(leukotrien)、リポキシン、ヘポキシリンなどが知られる。
  3. シクロオキシゲナーゼ(COX)経路によるトロンボキサンA2(TXA2)合成は、種々の刺激に応じて血小板が凝集する際に重要である。血管収縮作用も有する。血小板ではCOXによりPGG2を経てPGH2が産生される。PGH2からTX合成酵素の働きでTXA2が産生される。抗血小板薬アスピリンはCOX-1を阻害することにより、その抗血栓作用を発揮する。
  4. 12-リポキシゲナーゼ経路の生成物12−ヒドロペルオキシエイコサテトラエン酸(12-HPETE)や12-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(12-HETE)は血管平滑筋遊走亢進などに関与するが血小板での機能は不明な点が多い。
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家族性異形成貧血・血小板減少症(GATA-1異常症)(familial dyserythropoietic anemia and thrombocytopenia)

定義
GATA-1遺伝子のpoint mutationにより転写因子としての作用が阻害され、赤芽球系、巨核球系造血の異常を来す先天性造血障害。
ポイント
  1. GATA-1は赤芽球造血および巨核球造血に必須の転写因子である。
  2. GATA-1には2つのZnフィンガー構造が存在し、それぞれDNA上のGATA配列と結合し転写活性を発揮するが、本疾患ではN末端に近い方のZnフィンガー構造に変異を来す。この領域は、DNAとの結合以外に、GATAのco-factorであるFOG-1 (friend of GATA-1)との結合に重要であり、FOG-1がGATA-1に結合しないとGATA-1は充分な転写活性を持つことができない。多くの患者では、1アミノ酸置換によりGATA-1とFOG-1の結合が障害されている。
  3. GATA-1遺伝子はX染色体上に存在するため、本疾患は伴性劣性遺伝形式をとる。
  4. 生下時より貧血、血小板減少を来すが、通常は血小板減少の方がより重度である。
  5. 血小板のサイズは正常である(normothrombocytic thrombocytopenia) 。骨髄中に小型の巨核球を認めるが、成熟巨核球は著しく減少している。様々な程度の顆粒形成不全、demarcation membrane systemの発達障害など、巨核球の形態異常を認める。
  6. 赤芽球系造血障害の他、サラセミアを合併することがある。
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肝中心静脈閉塞症(hepatic veno-occlusive disease, VOD)
定義
有痛性肝腫大、黄疸、水分貯留を特徴とする症候群である。当初ピロリジジンアルカロイドを含む植物の摂取との関連で報告されたが、現在は造血幹細胞移植後早期(多くは30日以内)の致死的合併症として重視されている。
ポイント
  1. 肝静脈系の明らかな閉塞を伴わない症例もあるため、最近ではsinusoidal obstruction syndrome(SOS)という呼び方も提唱されている。
  2. 自家・同種いずれの移植にも発生し、発生頻度は10-60%程度と報告されており、移植後早期の血小板輸血不応は本症を疑う重要な所見である。
  3. 造血幹細胞移植時の前処置として行われる大量の放射線照射や抗がん剤投与によって肝静脈系の内皮細胞が障害され、肝中心静脈の狭窄・閉塞をきたして、肝障害を起こすと考えられている。
  4. 確立された治療法は無く、予防が重要である。最近、本症においてADAMTS13活性が低下するとの報告があり、新鮮凍結血漿(FFP)の予防投与によって発症が予防できることが示された.
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偽性血小板減少 (psudothrombocytopenia)
定義
血球数算定時には,抗凝固剤としてEDTA塩が入った採血管を用いるのが通常である.まれに,このEDTAにより血小板凝集が惹起され,血小板数が真値より低値を示すことがあり,これを偽性血小板減少(EDTA依存血小板減少)という.EDTA塩による二価陽イオンのキレート作用により,血小板膜蛋白質(GP)II b/III a上のエピトープが変化し,これに本症の血中に存在する免疫グロブリンが反応するのが本態である.
ポイント
  1. 原因としては抗生物質,てんかん薬の投与後や自己免疫性疾患などの免疫刺激状態にある基礎疾患を有する症例に発生する報告が多いが,基礎疾患がない場合もある.
  2. EDTA依存性偽性血小板減少症患者に対しては,EDTA塩採血管にカナマイシン,コリマイシンの抗生物質の添加,過剰量のEDTA塩の添加,硫酸マグネシウム(MgSO4)の添加,GP II b/ III aやGP I bに対するモノクローナル抗体の添加,抗血小板剤の添加,クエン酸NaやACD(acid-citrate-dextrose)液などの抗凝固剤を用いる方法などが行われ測定されている.
  3. 検査に携わる者としては,血小板数の減少がみられた場合,真に血小板数が減少しているのか偽性血小板減少あるいは検体凝固なのかをすばやく鑑別する必要がある.自動血球計数器のヒストグラムや塗抹標本を作成し鏡検することにより,真の血小板減少なのか検体凝固または偽性血小板減少なのかを,鑑別することが可能である.
  4. 検査を依頼する医師としては,出血傾向がないのに血小板減少を認めた場合に,まず,これを疑うことが重要である.本症は治療不要であり,不必要な治療を避ける上でもたいへん重要なことである.
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血小板コラーゲン受容体 (platelet collagen receptors)
定義
血小板にはコラーゲンと特異的に結合するコラーゲン受容体が存在する。Glycoprotein VI(GPVI)とインテグリンαβ(GP I a/ II a)が現在生理的に働いているコラーゲン受容体として一般的に認められている。type I collagen receptorなど他のコラーゲン受容体の報告もあるがこれらの生理的機能はまだ明らかではなく、生理的に働いているとしてもその寄与は小さいものと考えられる。
ポイント
  1. GPVIは血小板特異的蛋白であり、コラーゲン繊維に結合して血小板を活性化する。すなわちコラーゲンによる血小板の活性化は主にGPVIを介して引き起こされる。一方αβは他の細胞でもコラーゲン受容体として発現している。他のインテグリン蛋白と同様通常は不活性型として存在し、血小板の活性化に伴って活性型に変換され強い結合活性を示すようになる。
  2. 流血下に起こるコラーゲンへの血小板の粘着凝集反応では、αβは粘着反応に、GPVIはその後に起こる大きな凝集塊の形成に主に関与している。生体内では両者が血栓形成に関与しているものと考えられる。
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血小板マイクロパーティクル (platelet-derived microparticle, PDMP)
定義
血小板の活性化に伴って生成される微小な血小板膜小胞体であり、プロコアグラント活性を所有し血栓形成において重要な役割を果たしている。
ポイント
  1. ADP・コラーゲンなどのアゴニストによっても生成されるが、生理的な生成要因としては、ずり応力が重要である。
  2. プロコアグラント活性が主体であるが、多くの機能をもっている。たとえば、白血球と血管内皮細胞の接着を亢進させる。
  3. 血小板活性化マーカーとしても重要であり、フローサイトメトリー法によって測定されることが多いが、最近ELISA法も開発されている。
  4. マイクロパーティクルは、血小板以外の血球成分(単球、リンパ球、赤血球)や血管の構成因子(血管内皮細胞、血管平滑筋細胞)からも生成され、生体にとって重要な物質の輸送システムとして機能している。
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血小板活性化マーカー (platelet activation marker)
定義
血小板の活性化に伴って起こる血小板の表面膜を中心とした膜の変化や、血小板から生成・放出される蛋白成分や可溶性分子などを指す。
ポイント
  1. ADP・コラーゲンなどのアゴニストによっても生成されるが、生理的な生成要因としては、ずり応力が重要である。
  2. 活性化された血小板に表面に新たに出現する分子としては、活性化αII bβ3、Pセレクチン(CD62P)、CD63、CD40Lが重要であり、このうちPセレクチンとCD40Lは可溶性分子として存在するものも多い。
  3. ある種のリン脂質も活性化血小板の表面に出現する。代表的なものは、ホスファチジルセリンであり、活性化された凝固因子の結合部位として機能する。
  4. 凝固促進物質であるマイクロパーティクルも血小板活性化に伴って生成される。マイクロパーティクルと前記のホスファチジルセリンはアネキシンVによって検出できる。
  5. βトロンボグロブリン、血小板第4因子、可溶性血小板膜糖蛋白V(sGPV)なども血小板活性化マーカーとして利用されている。血小板活性化マーカーは血栓準備状態のマーカーとして利用されている。
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血小板凝集能検査
定義
血小板を各種血小板活性化物質で活性化させ、血小板凝集反応の程度から、血小板機能を評価する検査。血小板機能検査として最も広く用いられている。
ポイント
  1. クエン酸ナトリウムにて採血後、遠心によりえられた多血小板血漿(platelet-rich plasma, PRP)に、37℃、攪拌下でADP, コラーゲン、エピネフリン、リストセチンなどの血小板活性化物質(アゴニスト)を加えると血小板凝集が生じ、PRPの濁度が変化する。この濁度の変化を光の透過率の変化としてとらえ、吸光度を経時的に測定し、凝集曲線として描出する(Bornの比濁法)。
  2. 凝集曲線の解析から、血小板形態変化、一次凝集(アゴニスト自体による凝集反応)、二次凝集(活性化された血小板より放出されたADP、トロンボキサンなどによる凝集)など多くの情報を得ることが可能である。
  3. 一般的には血小板機能低下症の診断に用いられ、血小板無力症においてはADP, コラーゲン凝集の欠如、放出異常症ではそれら活性化物質による二次凝集の欠如、Bernard-Soulier症候群やvon Willebrand病ではリストセチン凝集能が欠如している。
  4. 血小板数低下例では評価が困難である。また乳び検体においても測定困難である。
  5. 散乱強度の変化を利用して血小板凝集能を測定する粒子計測法や全血を用いた方法なども開発されてきているが、今後の評価が必要である。
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血小板粘着能検査
定義
血小板粘着能のみを評価する検査法は一般化されておらず、通常、ガラスビーズやガラスフィルタに血液を通過させ、通過前後の血小板数の変化をもって、血小板粘着能検査とすることが多い。
ポイント
  1. ガラスビーズ等への血小板粘着は血小板粘着能と凝集能の両方の影響を受ける。
  2. von Willebrand病やBernald-Soulier症候群の診断に有用されてきたが、最近はより特異的な検査(vWF因子定量など)が行われること、血小板粘着能検査の精度がよくないことなどから、あまり行われなくなってきている。
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血小板膜糖蛋白(platelet membrane glycoproteins)
定義
血小板は生理的な止血のみならず病的な血栓形成の中核をなしている。血小板膜には様々な糖蛋白(glycoprotein, GP)が発現しており、これらの膜糖蛋白を介して血小板の粘着反応や凝集反応が惹起される。これら血小板膜糖蛋白の多くはインテグリンなどの接着蛋白受容体に属する。
ポイント
  1. 血小板膜には十数種類の糖蛋白が存在する。
  2. GP I b/IX/V複合体は血小板に特異的に発現する糖蛋白であり、フォンウィルブランド因子の受容体である。ベルナール・スーリエ症候群(Bernard-Soulier症候群)は先天的にGP I b/IX/Vが欠損していることに起因する先天性血小板機能異常症である。
  3. GP II b/ IIIaも血小板に特異的に発現する糖蛋白であり、フィブリノゲンやフォンウィルブランド因子の受容体である。血小板無力症はGP II b/ III aが先天的に欠損していることに起因する先天性血小板機能異常症である
  4. 血小板におけるコラーゲン受容体はGP I a/ II aおよびGPVI である。GP I a/ II aはコラーゲンとの粘着反応に関与し、GPVIはFc受容体g鎖と複合体を形成し、コラーゲンによる血小板活性化シグナルを細胞内に伝達する。
  5. GPIV(CD36) は血小板特異的な蛋白ではなく、血小板以外にも単球や心筋などにも発現している。CD36はマクロファージ上の酸化LDL受容体や心筋での長鎖脂肪酸のトランスポーターとして機能する。さらにはインスリン抵抗性との関連性も注目されている。本邦では正常献血者の約3%において血小板上のGPIV(CD36)のみが欠損しており(Type II欠損)、さらに約0.3%では単球を含む全身のCD36が欠損している(Type I欠損)。
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血小板由来生理活性脂質(platelet-derived bioactive lipids)
定義
特異的受容体などに作用して種々の生理活性を発揮する脂質のうち,血小板由来のものを指す.トロンボキサンA2がその代表である.
ポイント
  1. 血小板は精緻な情報伝達システムを備えており,アゴニスト刺激,ずり応力刺激等に敏感に反応して,種々の情報伝達酵素が活性化され,それに伴い細胞膜脂質二重層もダイナミックに変化する.その過程で,生理活性脂質が放出される.
  2. 血小板由来生理活性脂質の代表はトロンボキサンA2である.血小板刺激に伴って活性化されるホスホリパーゼA2の作用により細胞膜から切り出されたアラキドン酸が,シクロオキシゲナーゼ,トロンボキサン合成酵素の作用を受けて産生される.血小板から放出されたトロンボキサンA2は,血小板自身や平滑筋細胞上に発現している特異的受容体に作用して,それぞれ,血小板活性化の増幅や平滑筋の収縮に関与する.
  3. トロンボキサンA2は,上記のように向動脈硬化作用を有するわけであるが,アスピリンは,シクロオキシゲナーゼを不可逆的に阻害することにより,動脈硬化性疾患の治療に広く用いられている.アスピリンは,最も使用頻度の高い抗血小板薬である.
  4. スフィンゴシン1-リン酸は,血管生物学,免疫学における重要な知見が相次いで報告されている,スフィンゴ脂質であると同時にリゾリン脂質構造を有する生理活性脂質である.血小板は,この新規生理活性脂質を豊富に含み,その活性化に伴い放出する.今後,その(病態)生理学的意義の解明が待たれる.
  5. リゾホスファチジン酸は,スフィンゴシン1-リン酸類似のリゾリン脂質構造を有する生理活性脂質であり,血清中の脂質性増殖因子として以前より注目されていた.これまで,リゾホスファチジン酸は活性化血小板から産生されるとされていたが,現在では,血漿(血清)に存在するオートタキシン/リゾホスホリパーゼDが最も重要な規定因子であることが明らかとなっている。
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血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)
定義
細血管障害性溶血性貧血(microangiopathic hemolytic anemia, MAHA)、破壊性血小板減少、細血管内血小板血栓を3徴候とする血栓性微小血管障害症(thrombotic microangiopathy, TMA)に発熱、動揺性神経障害を加え、これらを古典的5徴候とする症候群。多くの場合後天性に生じるが、先天性素因に基づくものもある。
ポイント
  1. 臨床的には溶血性尿毒症症候群(HUS)との鑑別は困難であり、両者の病理学的診断名であるTMAが多用される傾向にある。
  2. 「定型的」TTPはADAMTS13(a disintegrin-like and metalloproteinase with thrombospondin type 1 motifs 13)活性著減により特徴づけられる。ADAMTS13はvon Willebrand因子(VWF)特異的切断酵素であり、ADAMTS活性低下により超巨大分子量VWFマルチマーが増加し、細小血管内など高ずり応力が生じるところで過剰な血小板凝集・血栓が生じ、微小循環が障害されることがその病態と考えられている。
  3. 先天性TTP(Upshaw-Schulman症候群)はADAMTS13遺伝子異常による。後天性TTPの多くはADAMTS13に対する自己抗体(インヒビター)によりその活性が著減することが原因である。一方、HUSではADAMTS13活性は概ね正常である。
  4. 後天性TTPの治療の基本は血漿交換によるADAMTS13の補充とインヒビターの除去である。ステロイド禁忌の基礎疾患を有する患者を除いては、ステロイド(パルス)療法が併用される。軽症例あるいは先天性TTPでは新鮮凍結血漿(FFP)輸注が行われる。
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巨大血小板(giant platelet)
定義
血小板は径2-4μmの無核の細胞である.正常血小板の径を大きく逸脱する8-10 mm以上の血小板を巨大血小板と呼ぶ.通常,小リンパ球以上の大きさとされる.
ポイント
  1. 巨大血小板を呈する代表的疾患・病態として,先天性疾患では,ベルナール・スーリエ症候群(Bernard-Soulier Syndrome,BSS)とメイ・ヘグリン異常(May-Hegglin anomaly)類縁疾患があり,血小板減少を示すことが多い.後天性疾患としては,慢性骨髄増殖性疾患,骨髄異形成症候群などが代表的である.
  2. 巨大血小板が出現する場合,自動血球計数器による血小板数の算定において,偽低値を示すことが多く,注意が必要である.
  3. BSSでは,一次止血の異常に伴う出血傾向が出現する.血小板数はやや減少することが多く(5〜8万/μL位が多い.時にさらに減少),血小板膜糖蛋白GP I b/IX/V複合体(CD42)が減少もしくは欠損するのがその本態である.この膜異常をフローサイトメトリーで検出することが診断に重要である.リストセチン惹起血小板凝集能の欠如も,診断的に有用である.
  4. メイ・ヘグリン異常症は,巨大血小板性血小板減少症および顆粒球のデーレ小体様封入体を特徴とする,稀な常染色体遺伝性疾患である.近年,本症,そして,その類縁疾患はMYH9遺伝子異常により引き起こされることが判明した.
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抗血小板療法
定義
血小板機能を抑制することにより病的血栓形成を抑制することを目的として行われる治療。
ポイント
  1. 一般的に血流速度の速い動脈系では血小板の活性化が血栓形成に重要な役割を果たしている。従って、通常、動脈硬化を基盤として発症する心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症などの動脈血栓症では抗血小板療法が適応となる。
  2. Cyclooxygenase阻害剤であるアスピリン、ADP受容体P2Y12阻害剤であるチクロピジン、クロビドグレルが広く用いられている。その他にphosphodiesterase(PDE)3阻害剤であるシロスタゾール、セロトニン受容体5-HT2阻害剤であるサルボグレラート、経口のPGI2誘導体であるベラプロスト、本邦では認可されていないが、GPIIb/IIIa阻害剤などがある。
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出血時間
定義
皮膚にメス等で創傷をつくり、そこから湧出する血液が自然に止血するまでの時間を測定する方法。血小板数および血小板機能が関与する一次止血のスクリーニング検査として行われる。
ポイント
  1. 耳朶を穿刺するDuke法と前腕部に一定の圧をかけて出血を観察するIvy法があるが、いずれの方法(特にDuke法)も精度、再現性がよくないことから、血小板機能異常が疑われる場合以外は行われなくなりつつある。
  2. 術前検査としての意義は否定されている。
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新生児血小板減少症(neonatal thrombocytopenia)
定義
新生児が血小板減少をきたす原因は多岐にわたるが、このうち、妊婦が胎児の血小板特異抗原(HPA)に対する同種抗体を産生し、その抗体が経胎盤性に胎児に移行して胎児ないし新生児の血小板が破壊される病態をneonatal alloimmune thrombocytopenia(NAIT)という。また、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の妊婦から生まれた新生児の血小板減少症も自己抗体による同様の機序で生じる。
ポイント
  1. 抗HPA-1a抗体によるNAITは、10-20%で脳出血をきたすほど重篤であり、白人では最も多くみられる。しかし、日本人の99.9%以上はHPA-1a抗原を発現しているため、本邦での抗HPA-1a抗体によるNAITは極めてまれである。
  2. 日本人では、抗HPA-5b抗体の検出例が最も多く、ついで抗HPA-4b、抗HPA-5a、抗CD36抗体の順にみられるが、これらの抗体によるNAITでは、血小板減少と出血症状は軽微なことが多い。抗HLA抗体によるNAITの存在には議論がある。
  3. 同種抗体は、父親(または新生児)の血小板と母親の血清をインキュベートして、血小板に結合した抗体をflow cytometryやELISAで測定する。また、抗HPA抗体の検出やHPA抗原タイピング用のキットが市販されている。
  4. 軽症例は経過観察でよいが、血小板数が3万以下で、出血症状のある症例では脳出血のリスクがあり、HPA適合血小板輸血が適応となる。母親の血小板はHPA適合なので照射後、輸血可能である。この場合、洗浄血小板の輸血が望ましいが、洗浄しなくても臨床的には問題ないとの報告がある。さらに、免疫グロブリン大量療法を併用する。
  5. ITP合併妊娠において、約14%に新生児血小板減少症がみられるが、その90%以上は血小板数5万/μL以上である。また、帝王切開で新生児脳出血を回避できるエビデンスはない。
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先天性無巨核球性血小板減少症 (congenital amegakaryocytic thrombocytopenia, CAMT)
定義
巨核球系統特異的サイトカインであるトロンボポエチン(TPO)のレセプター、c-mplのpoint mutationにより、重症の血小板減少を来す先天性造血障害。
ポイント
  1. c-mpl遺伝子の異常により、TPOシグナルが細胞内へと伝達されないため、巨核球系造血が著しく障害される。
  2. 常染色体劣性遺伝形式をとる。
  3. 血中のトロンボポエチン濃度は高値を示す。
  4. 骨髄中に巨核球はほとんど存在しない。
  5. 生下時より重症の血小板減少を来たし(normothrombocytic thrombocytopenia)、脳出血を来すことも少なくない。
  6. TPOは巨核球増殖・成熟のみならず、造血幹細胞の生存・増殖にも必須のサイトカインであるため、生下時に脳出血などの合併症を来たさず成長したとしても、次第に巨核球系のみならず造血能全般が低下し造血不全に陥る。唯一の根治的治療は、造血幹細胞移植である。
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特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura, ITP)
定義
ITPは血小板減少をきたす他の疾患がなく、血球3系統のうち血小板のみが特異的に減少している疾患である。
ポイント
  1. ITPは自己の血小板に対する自己抗体、すなわち抗血小板自己抗体により血小板が早期に破壊され、血小板減少をきたす疾患である
  2. 血小板減少のための出血傾向が唯一の臨床症状である。出血は紫斑や鼻出血、性器出血などの粘膜出血が多く、関節内出血や深部出血はない
  3. 血液検査では白血球系や赤血球系、血液生化学検査などに異常なく、血小板数のみ減少している。
  4. ITP診断に網状血小板(幼若な血小板)、血中トロンボポエチン、抗GP II b/ III a抗体の測定などが有用であるが、特殊検査のため普及するには至っていない
  5. 治療はピロリ菌感染例ではまず除菌療法、除菌無効例やピロリ菌陰性例では副腎皮質ホルモン療法、これらの療法にて寛解しない例は摘脾療法を行う。
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トロンボポエチン(thrombopoietin, TPO)
定義
トロンボポエチン(thrombopoietin, TPO)は巨核球系造血を制御する主要造血因子である。主に肝臓で産生され、その受容体はc-Mplである。
ポイント
  1. 血小板/巨核球系の細胞にはc-Mplが発現しており、これを介して細胞内にTPOを取り込む。肝臓におけるTPOの産生は血小板数に関わりなく一定であると考えられており、血小板/巨核球数の両者が減少する再生不良性貧血などでは血中TPO濃度が高くなる。しかし、巨核球数が保たれている特発性血小板減少性紫斑病(ITP)などでは血中TPO濃度はあまり上昇しない。
  2. TPO受容体c-Mplに結合し、TPO様作用を持つ薬剤が複数開発されてきており、ITPにおいて有効であることが報告されている。
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トロンボキサンA2受容体 [Thromboxane A2 (TXA2) receptor]
定義
トロンボキサンA2 (TXA2)は血小板の活性化に伴って産生される生理活性物質で、血小板凝集作用や血管収縮作用など一次止血に重要な役割を果たす。TXA2受容体はこのTXA2と結合しうる受容体であり、血小板や血管平滑筋、血管内皮細胞に発現している。
ポイント
  1. すべてのG蛋白共役型受容体に共通の膜7回貫通型の構造をしている。
  2. α型、β型の2つのisoformが存在するが、血小板における主要な受容体はα型であり、血管内皮細胞ではβ型、血管平滑筋では両者が発現している。
  3. TXA2は血小板が種々の刺激を受けた際に産生されるアラキドン酸代謝物であり、放出反応を伴う二次凝集を惹起する際の重要なsecond messengerである。
  4. TXA2が血小板膜上のα型TXA2受容体に結合すると、三量体G蛋白であるGqとPLC(phospholipase C)βの活性化を介して、Ca動員やprotein kinase Cの活性化が起きる。これによりADPやepinephrineが血小板から放出され、これらがGiと連関しているP2Y12受容体やα2A-adrenergic受容体とそれぞれ結合してadenylate cyclase活性を抑制し、α II bβ3(血小板膜糖蛋白GP II b/ III a)の活性化を惹起してTXA2による血小板凝集を増幅する。
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トロンボキサンA2 受容体異常症 [Thromboxane A2(TXA2) receptor abnormality]
定義
血小板自身のアラキドン酸代謝, すなわちTXA2産生能は正常だが、TXA2受容体に異常があるために、TXA2による血小板活性化が生じない先天的な血小板機能異常症である。
ポイント
  1. 軽度〜中等度の出血傾向を有する常染色体性優性遺伝の疾患である。
  2. 出血時間の延長と血小板凝集能検査でTXA2アナログによる凝集欠損、及び内因性TXA2産生に依存した凝集(ADP二次凝集、コラーゲン凝集、アラキドン酸凝集など)の欠如を特徴とする。
  3. α型TXA2受容体の膜7回貫通構造のうち、first cytoplasmic loopに存在するArg60のLeuへの変異が病因であることが報告されているが、それ以外の変異報告はない。
  4. 上記の変異が存在すると、TXA2と血小板膜上のa型TXA2受容体の結合は正常に認められるが、三量体G蛋白であるGqの活性化やphospholipase Cβ (PLCβ)の活性化が惹起されず、その結果Ca動員やprotein kinase Cの活性化も認められない。したがって、本症は血小板a型TXA2受容体-Gq-PLCb間の刺激伝達異常症である。
  5. 診断の糸口はアラキドン酸凝集とTXA2アナログ凝集の両者の欠如であり、cyclooxygenase(COX)-1欠損症や解熱・鎮痛剤服用などによる二次的COX-1阻害ではアラキドン酸凝集は欠損するが、TXA2アナログ凝集は正常に出現する。
  6. 治療は、出血時ないしは出血予想時に血小板輸注を行うが、一部の症例ではDDAVP (1-deamino-8-D-arginine-vasopressin)が有効である。
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プロスタサイクリン
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プロスタサイクリン[プロスタグランジンI2、prostacycline(prostaglandin I2, PGI2)]誘導体 (PGI2 analogues)
定義
プロスタサイクリン(PGI2)は強力な血管拡張物質で抗血栓、抗炎症、抗細胞増殖作用を有する。誘導体(PGI2 analogues、プロスタノイド)としてはベラプロスト(beraprost)、イロプロスト(Iloprost)、エポプロステノール(Epoprostenol)、トレプロステニル(treprostinil)などが代表的である。PGI2は体内に入るとすぐに分解されてしまうため、治療薬として使用する場合は持続静注の必要があるが、PGI2誘導体の投与方法としては静注のほか吸入、経口投与が可能である。
ポイント
  1. PGI2はアラキドン酸カスケード代謝経路のひとつとして、主に血管内皮細胞で産生される。血小板活性化を抑制、また血管平滑筋弛緩作用を有する。
  2. PGI2はPGI2受容体を介して細胞内 cyclic AMP を増加させ細胞内シグナルの制御することにより、血小板凝集を強く抑制、血管を拡張、血管平滑筋増殖抑制作用を発揮する。これら作用により血行動態の改善に貢献する一方、血圧低下、顔面紅潮などの副作用がある。代謝され6-keto-PGF1αとして排出される。
  3. ベラプロストは日本で開発された経口薬であり迅速に吸収されて効果を発揮し、肝臓および腎臓において代謝・排泄される。
  4. PGI2誘導体は原発性肺高血圧症の治療薬として開発されてきたが慢性動脈閉塞症についても承認されている。強皮症に対する効果も知られている。
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平均血小板容積(Mean platelet volume, MPV)
血小板分布幅(Platelet distribution width, PDW)
定義
a) MPV:血小板の平均容積であり,基準範囲はおよそ7-11 flである.
b) PDW:血小板の大きさの分布幅を反映しており,数値が大きいほど,血小板容積に不均一性があることになる.機種により,分布幅の算出法が異なるので,基準範囲も異なる.
ポイント
  1. MPVは,血小板の粒度分布ヒストグラムから求めることができる血小板容積の平均値のことであり,赤血球におけるMCVに相当する.
  2. 一般に,MPVは血小板産生のターンオーバーを知る指標となる.すなわちターンオーバーが亢進していればMPVは大きくなり,逆にターンオーバーが低下していればMPVは小さくなる.例えば,骨髄での血小板産生が低下している再生不良性貧血ではMPVは低下しているが,末梢での破壊・消費の亢進がある特発性血小板減少性紫斑病などではMPVは高値の傾向となる.
  3. PDWの算出法には,主にSD法とCV法がある.SD法では,分布幅の絶対値で表すので,単位はflである.一方,CV法では,単位のない無名数であるCV(変動係数)で表すので,単位は%である.
  4. 通常,MPVが大きいとPDWも大きくなる.例えば,特発性血小板減少性紫斑病では,MPV・PDWともに大きい.
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ヘパリン起因性血小板減少症(heparin-induced thrombocytopenia, HIT)
定義
抗凝固薬であるヘパリンの投与が誘引となり、免疫学的機序(HIT抗体の産生)により、血小板減少ならびに血栓塞栓症を引き起こすヘパリンの重篤な副作用.
ポイント
  1. 血小板第4因子(PF4)とヘパリンの複合体に対する抗体(抗PF4/heparin抗体)が産生され、その一部に強い血小板活性化能を持つもの(HIT抗体)があり、この免疫複合体が、血小板、血管内皮細胞や単球の活性化を引き起こし、最終的にトロンビンの過剰産生を来たし、血小板減少、さらには血栓塞栓症を誘発する.
  2. 通常、ヘパリン投与開始後5日から10日の間に発症する。HIT抗体が陰性化するまで100日程度必要なため、ヘパリン中止後、しばらくしてからも発症し得る。また、最近のヘパリン投与によりHIT抗体を保持している患者にヘパリン再投与を行った場合、1日以内に急激に発症し得る。
  3. 適切な治療を行わなければHIT発症患者の約30〜50%が血栓塞栓症を伴い、死亡率は約10〜20%にのぼるとされている.
  4. 血小板減少症であるが、出血症状はまれで、逆に血栓塞栓症を発症することに留意が必要で、治療としては、全てのヘパリン投与を中止すると共に、抗トロンビン剤(アルガトロバンがHIT治療薬として保険承認されている)の投与が必要である.
  5. clinicopathologic syndromeとして認識し、臨床的診断(スコアリング法などを用いる)と血清学的診断(HIT抗体の検出)を組み合わせて十分に検討しHITを最終診断することが、過剰診断、過小診断を防ぐ上で重要である.
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本態性血小板血症 (essential thrombocythemia, ET)
定義
多能性幹細胞の腫瘍性増殖により骨髄巨核球の過形成をきたし、血小板増加をもたらす疾患。慢性骨髄増殖性疾患(chronic myeloproliferative disorders, CMPD)に分類される。
ポイント
  1. 45万/μL以上の持続的な血小板増加を認める場合に考慮するが、反応性(二次性)血小板増多症や他のCMPD (慢性骨髄性白血病、真性多血症, 骨髄線維症)を慎重に除外する。診断の基本は除外診断である。
  2. 急性白血病や骨髄線維症に転化することは稀であり、生命予後は血管イベントにより規定される。
  3. 60歳以上、あるいは血栓塞栓症や重大な出血の既往がある、もしくは血小板数150万以上の場合に骨髄抑制療法を行う。
  4. 骨髄抑制療法としては、ハイドレアが第1選択薬であるが、妊娠時あるいは若年者ではインターフェロンを優先する。
  5. 低用量アスピリンは禁忌でない限り、投与を考慮する。
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網状血小板 (reticulated platelets, RP)
定義
骨髄から新生した幼弱血小板であり、赤血球における網赤血球に相当すると考えられている。
ポイント
  1. 網状血小板(reticulated platelets)の血小板数に対する比率(RP%)および絶対数の測定は骨髄の血小板造血を間接的に知りうる指標となると考えられる。
  2. 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)では、RP%は増加していることが多いが、絶対数は必ずしも増加していないことが多い。再生不良性貧血では網状血小板比率、絶対数ともに低下している。
  3. チアゾールオレンジにて染色後、フローサイトメトリーにて測定する方法が一般的であるが、標準化されておらず、正常値は各施設によって異なる。最近、他項目自動血球分析装置を用いた測定の自動化が試みられている。
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薬剤性血小板減少症(drug-induced thrombocytopenia)
定義
薬剤が血小板の産生を障害するかもしくは血小板を破壊することによって血小板減少をきたす病態をいう。栄養補助食品(サプリメント)や特殊な食品によることもある。
ポイント
  1. 抗癌剤などの骨髄抑制をきたす薬剤を除くと、多くの薬剤性血小板減少症は免疫機序による血小板破壊が原因と考えられている。
  2. 患者血清に薬剤を添加して、正常血小板とインキュベートすることによって、薬剤の存在下でのみ血小板膜蛋白に結合する抗体を検出する方法があるが、検出できないことも多く、臨床検査としては行われていない。
  3. 原因薬剤を中止すると速やかに血小板数は回復するが、金製剤とα-メチルドーパは例外的に血小板減少が遷延する。
  4. 薬剤性血小板減少症例のデータベースがある(http://w3.ouhsc.edu/platelets/ditp.html)。以下の薬剤は症例報告が多い。
    Abciximab, Acetoaminophene, Carbamazepine, Chlorothiazide, Cimetidine, Danazol, Eptifibatide, Gold, Heparin, Interferon, Methyldopa, Nalidixic acid, Procainamide, Quinidine, Quinine, Rifampin, Sulfamethoxazole, Sulfisoxazole, Tirofiban, Valproic acid, Vancomycin
    このうち、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)は、出血でなく血栓症を誘発する病態である。
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輸血後血小板減少症(post-transfusion purpura; PTP)
定義
血小板成分を含む血液製剤(濃厚血小板、濃厚赤血球、まれには新鮮凍結血漿)の輸血をしてから平均1週間後に血小板減少をきたす稀な病態をいう。患者のほとんどは中年ないし老年の経産婦もしくは輸血歴を有する女性であり、過去の妊娠、輸血によって血小板特異抗原(HPA)に対する同種抗体が産生されていて、その人に輸血が行われると、anamnestic responseを生じて輸血血小板が破壊されるのに加えて、何らかの機序によって自己血小板も破壊されてしまうのが原因とされる。
ポイント
  1. 診断は、臨床経過に加えて、患者血清中の同種抗体(抗HPA抗体)の検出と、患者血小板にその抗体の対応抗原が欠如していることを確認することによって行う。HPA-1b抗原ホモ接合体の患者に抗HPA-1a抗体が検出されるのが大部分である。抗HPA抗体検出やHPA抗原DNAタイピング用のキットが市販されている。日本人は白人と違って、ほぼ全員がHPA-1a抗原を保有しているため、PTPの発症率は極めて低いと思われる。
  2. 手術などで輸血とヘパリンを投与された後に発症すると、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と鑑別を要することがあるが、HITの多くは血小板数2万/mL以上であるのに比し、PTPは1万/mL以下のことが多い。また、HITではHIT抗体が検出される。
  3. 治療は大量γグロブリン療法を行う。ステロイド単独は無効で、HPA適合血小板輸血は無効ばかりか増悪させるとの報告もある。
  4. 輸血製剤中に含まれている抗HPA抗体などの同種抗体が受動的に輸血患者に輸注され、血小板減少を引き起こす極めてまれな病態が知られている。この場合は、PTPと違って、輸血後数時間以内に血小板減少が生じる。
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溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome, HUS)
定義
血小板減少、溶血性貧血、急性腎不全を3徴候とする疾患である。腸管出血性大腸菌(主にE. coli O157:H7)感染後に発症する症例が多い。
ポイント
  1. 臨床的には血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)との鑑別が困難であるが、腸管出血性大腸菌感染やマイトマイシン、シスプラチンなどの薬剤性はHUSと診断される。
  2. ADAMTS13活性はTTPで著減することが多いが、本症では正常もしくは軽度の低下にとどまることが多い。
  3. 先天性HUSとして補体調節因子のfactor H, membrane cofactor protein (MCP, CD46)などの異常が海外から報告されているが、本邦では非常にまれであると考えられている。
  4. 腸管出血性大腸菌感染症の約1〜10%でHUSは発症し、同菌が産生する志賀毒素による血管内皮細胞障害が病因と考えられている。
  5. 腸管出血性大腸菌感染によるHUSは、輸液、血圧管理、血液透析などの支持療法で急性期を乗り切ると約90%が寛解となる予後良好な疾患である。
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