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PT(プロトロンビン時間)
クエン酸加血漿に組織トロンボプラスチンを添加して凝固時間を測定したもので、外因系(FZ)と共通因子系(FT、FU、FX、FX)の活性を反映し、特に外因系凝固能の評価に有用である。先天性凝固因子欠損症(頻度は少ない)のスクリーニング、播種性血管内凝固症(DIC)の診断、肝機能のチェックや抗凝固薬であるワーファリン投与時のモニターとして使用される。秒表示の他に、PT比、PT%で表示されることがあり、近年標準化のためINRで表示されるようになりつつある。
相談相手
最寄りの大学病院の臨床検査医学教室あるいは病院の中央検査室・三重大学医学部附属病院中央検査室 阿部泰典 主任技師 ・三重大学医学部附属病院中央検査室 西岡淳二 技師長 ・三重大学医学部臨床検査医学 和田英夫 助教授 (文責:三重大学医学部臨床検査医学 和田英夫) aPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)
内因系を活性化させる部分トロンボプラスチン(リン脂質分画)を、クエン酸加血漿に添加して凝固時間を測定したもので、内因系(FXII、FXI、FIX、F[)と共通因子系(FT、FU、FX、FX)の活性を反映し、特に内因系凝固能の評価に有用である。止血能のルーチン検査、凝固因子欠損症(血友病AならびにBなど)の診断、体外循環やヘパリン療法のモニター、抗リン脂質抗体の検出などに用いられている。それ以外にも、肝障害やビタミンK欠乏ならびに播種性血管内凝固症(DIC)でも延長する。
相談相手
最寄りの大学病院の臨床検査医学教室あるいは病院の中央検査室・三重大学医学部附属病院中央検査室 阿部泰典 主任技師 ・三重大学医学部附属病院中央検査室 西岡淳二 技師長 ・三重大学医学部臨床検査医学 和田英夫 助教授 (文責:三重大学医学部臨床検査医学 和田英夫) FDP(フィブリンならびにフィブリノゲン分解産物)
凝固反応により生成されたフィブリン(および直近?のフィブリノゲン)は、生成されたプラスミンにより分解される。これらの分解産物を総称してFDPと呼ぶ。測定は抗フィブリノゲン抗体を用いてラテックス凝集法で行い、検体は抗プラスミン剤添加で作成された血清を用いるが、最近は血漿でもFDPの測定が可能になった。FDPの増加は播種性血管内凝固症(DIC)の診断に有用であるが、その他の血栓症や線溶療法後にもFDPは増加する。
相談相手
最寄りの大学病院の臨床検査医学教室あるいは病院の中央検査室・三重大学医学部附属病院中央検査室 阿部泰典 主任技師 ・三重大学医学部附属病院中央検査室 西岡淳二 技師長 ・三重大学医学部臨床検査医学 和田英夫 (文責:三重大学医学部臨床検査医学 和田英夫) 凝固第X因子
凝固第X因子は、肝で合成される血漿ビタミンK依存性のセリンプロテアーゼ前駆体で、血液凝固カスケードにおいて内因系および外因系凝固経路の合流点に位置し、血液凝固の中心的役割を果たしている。第X因子はtenase complex(活性化IX因子・活性化VIII因子複合体)により効率よく活性化され(FXa)、FXaはプロトロンビンを活性化し、トロンビンを産生する。第X因子の先天性欠乏症はまれな出血性疾患で、ヘテロ接合体では無症状が多いが、ホモ接合体あるいは複合へテロ接合体では出血傾向を示す。一方、FXaを阻害することはトロンビンそのものを阻害するより効率的に血液凝固を阻害できると考えられ、近年FXaの特異的合成阻害剤の開発が盛んに行われ、抗血栓薬として注目されている。
相談相手
・国立循環器病センター研究部病因部 宮田敏行 部長・鳥取大学医学部附属病院検査部 飯島憲司 講師 ・金沢大学医学部保健学科 森下英理子 助教授 参考資料
鎌田健司, 宮田敏行:凝固第Xa因子の立体構造. 日本血栓止血学会誌 10 : 181-188, 1999.・James HL: Physiology and biochemistry of factor X. In: Haemostasis and Thrombosis. Bloom AL et al, eds. Edinburgh: Churchill Livingstone 1994; 439-464. ・Cooper DN, et al: Inherited factor X deficiency: molecular genetics and pathophysiology. Thromb Haemost 78: 161-172, 1997. ・Human Gene Mutation Database at the Institute of Medical Genetics in Cardiff. http://archive.uwcm.ac.uk/uwcm/mg/hgmd0.html ・Tan KT, et al: Factor X inhibitors. Expert Opin Investig Drugs 12: 799-804, 2003. (文責:金沢大学医学部保健学科 森下英理子) トロンビン
トロンビン(α-トロンビン)は、血漿プロトロンビンが限定分解されることによって産生されるセリンプロテアーゼである。生理作用としては、フィブリノゲンを活性化してフィブリンを生成する血栓形成が極めて重要であるが、そのほかにも血小板や凝固V, VIII, XI, XIII因子の活性化、プロテインCの活性化、thrombin-activable fibrinolysis inhibitor(TAFI)の活性化などを行い、血液凝固・凝固阻止・線溶阻止など多彩な生理作用を示す。トロンビンは、アンチトロンビンで阻害されると複合体(TAT)を形成し、血漿中を循環し代謝される。血漿中半減期は、プロトロンビンとして60時間、トロンビンはTATとして3〜12分である。先天性のプロトロンビンの欠損あるいは分子異常は、出血性素因を示す。またループスアンチコアグラント陽性症例で、抗プロトロンビン抗体による後天性低プロトロンビン血症を合併し、出血傾向をきたす場合がある。
相談相手
・国立循環器病センター研究部病因部 宮田敏行 部長・金沢大学医学部保健学科 森下英理子 助教授 参考資料
・鈴木宏治, 上村みどり: トロンビン. 日本血栓止血学会誌 10: 195-203, 1999.・siang M, et al: Functional mapping of the surface residues of human thrombin. J Biol Chem 270: 16854-16863, 1995. ・Guillin M-N, et al: Thrombin specificity. Thromb Haemost 74: 129-133, 1995. ・Human Gene Mutation Database at the Institute of Medical Genetics in Cardiff. http://archive.uwcm.ac.uk/uwcm/mg/hgmd0.html ・Galli M, et al: Antiprothrombin antibodies: detection and clinical significance in the antiphospholipid syndrome. Blood 93: 2149-2157, 1999. (文責:金沢大学医学部保健学科 森下英理子) 組織因子
組織因子(Tissue Factor;TF, CD142)は、第1染色体短腕上(1p21.1-p22.2)に存在し、IFN-g 受容体類似の分子構造を示す。TFは細胞表面あるいはリン脂質層上でVII因子との複合体を形成し、VIIa因子生成とX因子活性化など凝固反応の初期相を始動する。TFの単球・内皮細胞での発現誘導に加え、最近、好中球での発現誘導も認められた。TFが血管新生、ガン転移・浸潤、細胞接着あるいは炎症・免疫応答など、止血凝固系を越えた多機能性を示すことから、その生物学的・生理学的意義が注目されている。TFの遺伝子発現制御機序についても新たな側面が明らかにされつつある。
相談相手
・京都大学霊長類研究所 分子病理 中村 伸
参考資料
・中村 伸:組織因子(tissue factor)研究の新展開. 血栓止血誌,4,203-217,1993.・Morrissey, J.H., Agis, H., Albrecht,S., Dignat-George, F., Edgington, T.S., Luther, T., Muller, M., Mutin, M., Nakamura, S., Valent, P., Vercellotti, G.M.(Morrissey以外は、アルファベット順) : CD142 (tissue factor ) Workshop panel report, Leukocyte Typing IV, White Cell Differentiation Antigens (eds. Kishimoto, T. et al) pp.742-746 (1997). ・中村 伸、菊池有純:血中組織因子の測定ーーm-TFの臨床的意義、医学のあゆみ, 別冊・「血液疾患、Ver.2」:346-348 (1998) . ・Nakamura S, Imamura T, Okamoto K: Tissue factor in neutrophils (polymorphonuclear leukocytes)- J Thromb Haemost, 2: (2004). (文責:京都大学霊長類研究所 中村 伸) アスピリン
アスピリンは解熱・消炎・鎮痛薬として100年以上用いられている薬剤であるが、血小板凝集抑制作用もあることから安価で、医療経済効果に優れた抗血小板薬として世界中で広く用いられている。アスピリンは血小板のシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害してトロンボキサン(TX)A2の合成を抑制することにより血小板凝集を抑制する。アスピリンは脳梗塞、心筋梗塞、末梢動脈閉塞症などの閉塞性血管障害の高リスク患者において血管イベント(脳卒中、心筋梗塞、血管死)を有意に減少させる効果がある。解熱・消炎・鎮痛薬としては1回に300mg、1日1000mg前後を内服する必要があるが、血小板凝集抑制薬としては75〜150mgの少量が血管イベント低減効果の大きさと、副作用としての胃腸障害の少なさから推奨される。大量のアスピリンは血管内皮のCOXも阻害し、TXA2と拮抗するプロスタサイクリンの合成も抑制するため抗血栓作用が相殺されてしまうアスピリンジレンマ現象を生じやすい。
相談相手
・東京女子医大 神経内科 内山真一郎 教授
参考資料
・Francesca CL et al. N Engl J Med 2001;345:1809-17.・Antithrombotic Trialists' Collaboration. Br Med J 2002;324:71-96.・内山真一郎. 日本医事新報 2003;4101:43-49. ・内山真一郎. 血栓止血誌 2003;14:316-325. ・Uchiyama S et al. International Congress Series 1251, Elsevier Science, Amsterdam, 2003, pp57-70. (文責:東京女子医大 神経内科 内山真一郎) α2プラスミンインヒビタ
α2プラスミンインヒビタはフィブリン血栓を溶解するセリン蛋白分解酵素、プラスミンの最も重要な生理的阻害因子である。即時的阻害には、プラスミンと2カ所で特異的に結合することが重要であることが知られている。肝臓で産生され、分子量は約67kDa,血漿中に約1μM存在する。遺伝子は17番染色体上に存在し、10個のエクソンと9個のイントロンよりなる。その先天性欠損症は世界で数家系報告されており*、生下時に臍帯出血が見られるのが特徴である。また欠乏すると、外傷後、いったん止血した部位に数時間後に再出血してくる"後出血"と呼ばれる特異的な出血傾向が見られる。
相談相手
・自治医科大学分子病態治療研究センター、止血血栓部門 坂田洋一 教授
参考資料
・広沢信作:α2-plasmin inhibitor欠損症、日本血栓止血会誌、11(3):301-303,2000
(文責:自治医科大学分子病態治療研究センター 坂田洋一) アポトーシス
1972年、病理学Kerrらによって提唱されたapo(off)とptosis(falling)を合わせた合成語。「枯葉や花びらが散る」様子を表すギリシャ語が語源。個体の生命を維持するための制御された細胞死。オタマジャクシの発生に伴う尾の消失、手指形成過程における水かきの消失、免疫細胞の成熟過程における自己認識免疫細胞の除去、抗癌剤による癌細胞死などが例。動脈硬化症や虚血性疾患に見られる内皮細胞死の一つの原因と指摘されている。アポトーシスのスイッチが入ると様々な遺伝子や酵素の発現・活性化の調節が起こり、特にデスレセプター-カスパーゼ8活性化経路や種々のストレスの結果生じるミトコンドリア膜の不安定化の結果活性化されるカスパーゼ9を介する経路によってカスパーゼ3が活性化され、その結果核の凝集やクロマチンの断片化などの形態学的特徴が現れる。通常、発生段階のアポトーシスでは免疫細胞に貪食され周囲に炎症や瘢痕形成が起きない。
相談相手
・東京大学大学院薬学系研究科生命薬学専攻細胞情報学教室 一條秀憲 教授・理化学研究所分子細胞病態学研究ユニット 小嶋聡一 ユニットリーダー 参考資料
・Adams JM. Ways of dying: multiple pathways to apoptosis. Genes Dev. 2003 Oct 15;17(20):2481-95.・田沼靖一編 アポトーシスが分かる 羊土社 2001 ・http://www-personal.umich.edu/~ino/si.htm (ミシガン大学医学部病理学教室・附属癌センター研究員 猪原直弘先生) (文責:理化学研究所分子細胞病態学研究ユニット 小嶋聡一) ウロキナーゼ(urokinase, UK)(初級)
文字通り尿(urine)に分泌される酵素です。我が国では尿から精製した製剤が20年以上前から血栓溶解の治療目的で使用されてきました。UKの前駆体(元になる蛋白質)が血中にもあり、プロUKと呼ばれています。411個のアミノ酸残基からなる約54kDの一本鎖蛋白質であり、プラスミンやカリクレインという酵素によって二本鎖に切断されて活性型になります。UKは腎臓でも産生され、尿中には二本鎖(活性型)の高分子型とそれが一部分解された低分子型が存在しています。重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルスは尿に排出されるので、SARS流行期に尿から精製したUK製剤の製造が中断し、供給不足が社会問題となっています。
相談相手
・笠岡市民病院 新谷憲治・山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝 教授 参考資料
・UKの概説;一瀬白帝、プラスミノゲンアクチベータ (PA)、キーワード1998ー2 000血液、先端医学社、東京、1998, 196-197.・UKの概説;新谷憲治、線溶療法、内科、86(6); 972-980, 1997. ・Pro-UKの臨床応用;米田行宏ら、線溶療法、別冊医学のあゆみ「脳血管障害」、86(6); 109-112, 201. ・UK欠損症;嘉悦洋ら、プラスミノゲン/プラスミン系因子の欠損マウス、日本血栓 止血学会誌 9(2); 146-152, 1998. ・UKの構造;前田浩明ら; クリングルドメインの立体構造、日本血栓止血学会誌 11(1); 24-39, 2000. (文責:山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝) ウロキナーゼ(urokinase, UK)(中級)
文字通り尿に分泌される分子量約54,000(411アミノ酸残基)の酵素であり、低分子、高分子の成分が混在した製剤が20年以上前から血栓溶解の目的で臨床的に使用されてきた。血中にあるプロUKはUKの前駆体で、一本鎖蛋白質であり、プラスミンや血漿カリクレインによって二本鎖に切断され活性型となる。N末端側のA鎖は上皮成長因子ドメインとクリングルドメインからできており、C末端側のB鎖はセリンプロテアーゼ領域で3つの活性アミノ酸残基を含む。組織プラスミノゲンアクチベータ−(tPA)と異なりフィブリンに結合する機能が無いので、液相でプラスミノゲンを活性化する。従って、大量に投与するとプラスミノゲンの消費性の減少、プラスミン/a2-プラスミンインヒビター複合体形成のためのa2-プラスミンインヒビターの減少が起きる結果、出血の可能性がある。半減期は約7分程度である。2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)流行期に、コロナウイルスは尿に排出されるためにUK製剤の製造が中断され、供給不足が問題となった。
相談相手
・笠岡市民病院 新谷憲治・山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝 教授 参考資料
・UKの概説;一瀬白帝、プラスミノゲンアクチベータ (PA)、キーワード1998ー2 000血液、先端医学社、東京、1998, 196-197.・UKの概説;新谷憲治、線溶療法、内科、86(6); 972-980, 1997. ・Pro-UKの臨床応用;米田行宏ら、線溶療法、別冊医学のあゆみ「脳血管障害」、86(6); 109-112, 201. ・UK欠損症;嘉悦洋ら、プラスミノゲン/プラスミン系因子の欠損マウス、日本血栓 止血学会誌 9(2); 146-152, 1998. ・UKの構造;前田浩明ら; クリングルドメインの立体構造、日本血栓止血学会誌 11(1); 24-39, 2000. (文責:山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝) 凝固XIII因子
凝固第XIII因子は、血が固まる(血液凝固)反応の最終段階で繊維状タンパク質 (フィブリン) 分子同士を結び付けて(架橋結合)、フィブリン血栓を強固にする酵素です。
酵素(トランスグルタミナーゼ)本体である分子(Aサブユニット)と、その安定化に働く他の分子(Bサブユニット)からなる複合体として血漿中に存在します。 主に止血や組織修復のために働くので、XIII因子が欠損すると、出血しやすい、傷の治りが悪い、女性の患者さんでは自然流産を繰り返すなどの症状が出ます。 出生後の過剰な臍帯出血や原因不明の頭蓋内出 血の患者さんでは、XIII因子を検査してみる価値があります。 相談相手
・山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝 教授
参考資料
・XIII因子欠損症:一瀬白帝ら、各種の凝固第XIII因子欠乏症の分子病態学的解析、日本血栓止血学会誌 7(3); 193-198, 1996.・XIII因子欠損症:惣宇利正善ら、第XIII因子AおよびBサブユニット欠損症、日本臨床、血液症候群、日本臨床社、東京、1998, 464-467. ・XIII因子Aサブユニットの構造:一瀬白帝、凝固XIII因子の立体構造、日本血栓止血 学会誌、11(4); 377-384, 2000. ・XIII因子Bサブユニットの構造、後藤裕児ら、立体構造から見たスシドメイン、日本血栓止血学会誌 10(6); 457-462,1999. ・遺伝子ファミリーの機能:小嶋聡一ら;トランスグルタミナーゼによるタンパク質の架橋反応とその生理機能、細胞工学、18(7); 1030-1038, 1999. ・遺伝子ファミリーと病態:一瀬白帝ら、トランスグルタミナーゼ関連疾患の分子病態、実験医学、18(10); 1421-1425, 2000. ・遺伝子ファミリーと病態:山本哲郎、トランスグルタミナーゼ依存性に産生される単 球走化因子の生体防御機能、日本血栓止血学会誌 10(4); 233-242,1999. (文責:山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝) 血友病A
血友病Aは血液凝固第VIII因子の欠乏に基づく先天性の出血性疾患です。
血友病Aは通常男性に発症し、発生率は男子出生5千〜1万人に1人です。 出血症状は乳児期以降から始まることが多く、一般に皮下、関節内、筋肉内、血尿、口腔内、頭蓋内などに出現します。関節内出血を繰り返すと関節障害が進行し、関節の可動制限を伴う 慢性の血友病性関節症をきたします。血友病Aの治療は第VIII因子製剤の静脈注射が原則です。 相談相手
(敬称略)
参考資料
・嶋 緑倫、吉岡 章 第・因子欠乏症(血友病A)小児慢性特定疾患治療マニュアル 442-446、1999・田中 一郎、嶋 緑倫 血友病A 日本血栓止血学会誌 11巻 397-405、2000 ・嶋 緑倫 先天性出血性疾患の病態と治療 - 最近の進歩- 血友病A 血液フロンティア 11巻 21-32、2001 (文責:奈良県立医科大学小児科学講座 嶋 緑倫) 第VIII因子
第VIII因子は血液を固める一連の血液凝固反応において、活性型第\因子が第X因子を活性化する反応を 約20万倍増幅する重要な凝固因子です。第VIII因子が欠乏すると重篤な出血傾向をきたすことになり、これは血友病Aとして知られています(別項参照)。
第VIII因子は血液中では巨大な糖蛋白であるフォン・ヴィレブランド因子 (vWF)と複合体を形成して 存在しており、第VIII因子の機能が保護されています。 相談相手
・奈良県立医科大学 小児科 嶋 緑倫
参考資料
・嶋 緑倫、吉岡 章 動脈硬化 von Willebrand因子/第VIII因子と第V因子 23 525-531、1996・嶋 緑倫、吉岡 章 凝固のコファクター;第V因子、VIII因子 血液病学-第2版 359-365、1994 (文責:奈良県立医科大学小児科学講座 嶋 緑倫) 血友病B
血友病Bは血液凝固第\因子のもつ凝固活性の欠乏に起因するX連鎖劣性遺伝性の出血性疾患です。
通常保因者である女性(無症状)を介して男児に発症します(もちろん突然変異もあります)。 発症頻度は、血友病Aの約5分の1で男児出生約2万5千人に1人です。 出血症状は、血友病Aとほぼ同じで、症状と遺伝形式からは血友病 AとBの区別 は困難です。 具体的な出血症状は血友病Aの項を参照して下さい。治療は、定期(出血予防)・不定期(出血時) の第IX因子製剤の静脈内注射を行います。 相談相手
【近畿地区】・奈良県立医科大学小児科 吉岡 章 教授 ・嶋 緑倫 助教授 参考資料
・中 宏之、嶋 緑倫 血友病B 日本血栓止血学会誌 11;406-410、2000・中 宏之、吉岡 章 第IX因子欠乏症(血友病B) 小児慢性特定疾患治療マニュアル 447-448 (文責:奈良県立医科大学小児科学講座 中 宏之) 第IX因子
第IX因子は肝臓で合成されるビタミン K依存性の蛋白質です。
止血に関わる血液凝固反応の中で、第X因子を活性化に関わる重要な働きをしています。 第IX因子が欠乏すると血液凝固反応が十分に進まないので、血友病Bと呼ばれる出血性疾患を発症します。 第\因子の遺伝子はX染色体上に存在するため、血友病BはX連鎖劣性の遺伝形式を示します。 血友病Bは多くの場合、この第IX因子遺伝子上の点変異に基づく、第IX因子蛋白レベルの異常を伴っています。 相談相手
・名古屋大学医学部保健学科 小嶋哲人 教授・国立循環器病センター研究部病因部 宮田敏行 部長 ・奈良県立医科大学小児科 吉岡 章 教授 参考資料
・吉岡 章 血友病 最新内科学大系21 中山書店 1992 185-200・中 宏之、吉岡 章 血友病B第IX因子の遺伝子解析 Biomedical Perspective 4;175-181 1995 (文責:奈良県立医科大学小児科学講座 中 宏之) 凝固第VII因子
凝固第VII因子は組織因子(血管組織などで生成され、血管壁が障害された際などに血液中に流入する)と 複合体を形成して、血液凝固反応の開始段階で酵素として働く凝固因子です。
血液凝固反応にはこの反応経路(外因系)ともう一つの反応経路(内因系)がありますが、途中で合流して 最終的に血栓の本体となるフィブリンを形成します。 VII因子はこれらの2つの反応系に関与します。従って、VII因子が著しく低下している場合には出血を起こすことがあります。 参考資料
先天性第VII因子欠乏症:・高宮 脩ら、日本血栓止血学会誌、12 (4): 320-327, 2001 小児慢性特定疾患治療マニアル、 (・)血友病等血液疾患、30 第VII因子乏症: ・高宮 脩、441, 1999 血液症候群 (・)凝固・線溶異常による出血傾向 血友病及び類縁疾患VII因子欠損症/異常症: ・一瀬白帝、日本臨床 別冊血液症候群II 460-463 1998 病態生理に関する基礎的 ・臨床的研究 血液凝固第VII因子 構造と機能
・東昌市 医学のあゆみ 別冊血液疾患 194-199 1998
(文責:信州大学医療技術短期大学部 高宮 脩) フィブリノゲン
フィブリノゲンは血が固まる時の"かたまり"の素となっている蛋白質で、血液中には比較的多量 に存在します。凝固反応で生じた酵素(トロンビン)がフィブリノゲン分子の一部を切り離すと、水溶性フィブリンとなり、それらが重合反応して細いフィブリン線維ができ、さらに線維は寄り集り太くなり、また所々枝分かれして、次第に不溶性(ゲル状)のフィブリン網となると血は固まります。フィブリノゲンが欠損すると、軽い出血症状を示しますが、低フィブリノゲン症では症状はありません。異常フィブリノゲン症では、出血しやすい、血栓ができやすい、傷の治りが悪い、などの症状を示す場合もありますが、無症状の場合も多いです。
相談相手
・自治医科大学分子病態研究治療センター 坂田洋一 教授・山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝 教授 参考資料
フィブリノゲン;・松田道生、フィブリノゲン:その構造、機能および生理的役割、日本産婦人科・新生児血液学会誌 9 (2); 1-10, 2000. フィブリノゲン欠損症; ・松田道生ら、遺伝性異常フィブリノゲン血症、血栓止血学会誌 12 (1); 47-56,2001. ・諏合輝子、フィブリノゲンの立体構造からみた異常フィブリノゲン 日本血栓止血学会誌 10(1); 100-105, 1999. (文責:自治医科大学分子病態研究治療センター 諏合輝子 講師) Antithrombin(アンチトロンビン)
アンチトロンビンは、血液を凝固させるトロンビンなどの蛋白分解酵素を特異的に阻害する物質で、肝臓でつくられ血中に分泌され、ヘパリンに結合するたいへん重要な凝固制御因子です。
本因子の欠損は、家族性に発生する血栓症の原因となり、思春期以降に、外傷や手術、妊娠と云った 外的ストレスが加わった時、深部静脈などに血栓症が発症します。 相談相手
・京都府立医科大学付属病院輸血・細胞医療部 辻 肇 部長・名古屋大学医学部輸血部 高松純樹 教授 ・笠岡市民病院 新谷憲治 参考文献
アンチトロンビン欠損症の概説;・辻 肇、先天性アンチトロンビンIII (ATII)欠損症、日本血栓止血学誌 200112(1): 74-77. 先天性血栓性素因患者の治療; ・高松純樹、血栓症に関するQ & A 10.合併症と抗凝固療法Q48先天性血栓性素因患者の妊娠および 分娩における抗凝固療法について、血栓と循環、1997, 5(4)397-398. アンチトロンビンの測定法; ・新谷憲治、技術総説・凝固線溶系測定・AT(III)、臨床検査 2001, 45: 972-976. アンチトロンビン欠損症の総説; ・Bauer KA, Inherited and acquired hypercoagulable states. Thrombosis and Hemorrhage, 2nd edition, edited by Loscalzo J & Schafer AI, Williams & Wilkins, 1998, 868-900. (文責:笠岡市民病院 新谷憲治) Heparin cofactor II(ヘパリンコファクターII)
血液中には、二種類のヘパリンに結合してトロンビンを阻害する生理的物質が存在し、一つがアンチトロンビンで、もう一つがヘパリンコファクターII(HCII)です。
HCIIも、肝臓で作られますが、血液中にはアンチトロンビンの約1/3量しか存在せず、アンチトロンビンと異なって、凝固因子ではトロンビンしか阻害できません。 しかし、HCIIの抗トロンビン活性は、ヘパリン以外に血管壁に存在するデルマタン硫酸により 増強されますので、HCIIは、血管壁での血栓形成を阻害し、動脈硬化を防いでいるので はないかと考えられています。 相談相手
・兵庫県淡路病院 松尾武文 名誉院長・徳島大学医学部第一内科 東 博之 助教授 ・笠岡市民病院 新谷憲治 参考文献
HCII 欠損症の症例:・Matsuo T, et al: Hereditary heparin cofactor II deficiency and coronary artery disease. Thromb Res 1992; 65: 495-505. HCII 欠損症の症例: ・Villa P, et al: Hereditary homozygous heparin cofactor II deficiency and the risk of developing venous thrombosis. Thromb Haemost. 1999; 82: 1011-4. HCII 欠損症の遺伝子解析: ・Kanagawa Y, et al: Molecular mechanism of type I congenital heparin cofactor (HC)II deficiency caused by a missense mutation at reactive P2 site: HC II Tokushima. Thromb Haemost 2001; 85: 101-7. (文責:笠岡市民病院 新谷憲治) プロテインC
生体は様々な系で恒常性(ホメオスターシス)を保つように作用しています。 血液 凝固系も例外ではなく、凝固が開始されるとそれにブレーキをかける凝固制御系が存 在しています。
プロテインCは重要な凝固制御系の一つで、凝固系が作動すると、別の項で述べる プロテインSと一緒になって、凝固系の重要な因子である第V因子や第 VIII因子を切断し 凝固系にブレーキをかける役割を担っています。 この系に異常があると、必要以上に血液が凝固して血栓症を発症しやすくなります。 相談相手
・長崎国際大学薬学部 濱崎直孝 教授
参考文献
・Aich M, Borgel D, Gaussen P et al.: Protein C and Protein S Deficiencies. Semi. Hematol. 34, 205-216 (1997)・濱崎直孝:血栓症患者における凝固関連因子の異常:予防および治療への探索。日本血栓止血学会誌 11, 347-357 (2000) (文責:長崎国際大学薬学部 濱崎直孝 教授) プロテインC異常症(欠損症)
大勢の健康な人々を検査すると、0.5%以下の頻度でプロテインCの活性が極端に低下しているヒトが存在します。 深部静脈血栓症の患者について調べてみると、この頻度は約10倍程度に上昇します。このことから、プロテインC活性低下は血栓症発症の危険因子とみなされており、プロテインC異常症(欠損症)と呼ばれています。
相談相手
・長崎国際大学薬学部 濱崎直孝 教授
参考文献
・Rosendaal FR: Risk Factors for Venous Thrombosis: Prevalence, Risk, and Interaction. Semi. Hematol. 34, 171-187 (1997) ・Aich M, Borgel D, Gaussen P et al.: Protein C and Protein S Deficiencies. Semi. Hematol. 34, 205-216 (1997) ・濱崎直孝:血栓症患者における凝固関連因子の異常:予防および治療への探索。日本血栓止血学会誌 11, 347-357 (2000) (文責:長崎国際大学薬学部 濱崎直孝 教授) プロテインS
プロテインCと共に作用する凝固制御系の一つであり、活性化されたプロテインCの補助因子として作用してプロテインCの凝固制御作用を増強させます。血中のプロテインS濃度は女性の性周期や妊娠などで変化しますが、その原因は,女性ホルモンエストロゲンがプロテインSの産生(を転写段階で)を制御しているからです。
経口避妊薬や妊娠中に血栓形成傾向が強くなるのは血中エストロゲンの上昇が原因で血中のプロテインS濃度が低下するためであると言われています。 妊婦の血中プロテインS濃度は正常の20%程度まで低下します。 この系に異常があると、必要以上に血液が凝固して血栓症を発症しやすくなります。 相談相手
・長崎国際大学薬学部 濱崎直孝 教授
参考文献
・Aich M, Borgel D, Gaussen P et al.: Protein C and Protein S Deficiencies. Semi. Hematol. 34, 205-216 (1997)・濱崎直孝:血栓症患者における凝固関連因子の異常:予防および治療への探索。日本血栓止血学会誌 11, 347-357 (2000) (文責:長崎国際大学薬学部 濱崎直孝 教授) プロテインS異常症(欠損症)
プロテインC異常症(欠損症)と同じくプロテインSの活性低下は血栓症発症の危険要因です。
欧米の調査では血栓症患者におけるプロテインS異常症(欠損症)の頻度とプロテインC異常症(欠損症)の頻度はほぼ同程度でそれぞれ約2-3%程度ですが、我々の調査では日本人血栓症患者におけるプロテインS異常症(欠損症)の頻度は異常に高い結果がでました。
もう少し広範囲な調査をする必要がありますが、プロテインSの活性低下は日本人には高頻度で起こる血栓症の危険因子である可能性があります。
相談相手
・長崎国際大学薬学部 濱崎直孝 教授
参考文献
・Aich M, Borgel D, Gaussen P et al.: Protein C and Protein S Deficiencies. Semi. Hematol. 34, 205-216 (1997)・Tsuda H, Hattori S, Tanabe S et al.: Screening for aetiology of thrombophilia; A high prevalence of protein S abnormality. Ann. Clin. Biochem. 36, 423-432 (1999) ・濱崎直孝:血栓症患者における凝固関連因子の異常:予防および治療への探索。日本血栓止血学会誌 11, 347-357 (2000) ・濱崎直孝、木下幸子、脇山マチ子、中原睦子、飯田広子:プロテインS異常症。臨床検査 43, 1025-1031 (1999) (文責:長崎国際大学薬学部 濱崎直孝 教授) 血小板膜蛋白
血小板は出血を止める止血栓のみならず病的血栓を形成する場合の中心をなす細胞成分である。
血小板は血管障害部に粘着しその後血小板同士が結合(凝集)し血栓を形成するが、血小板膜に存在する様々な蛋白がこれらの機能を司っている。これらは糖蛋白であるため GP(Glycoprotein)と呼ばれており、先天性血小板機能異常症である血小板無力症や ベルナール・スーリエ症候群ではそれぞれ血小板に特異的に発現しているGPIIb-IIIaとGPIb-IXが 欠損していることが明らかにされている。 相談相手
大阪大学大学院医学系研究科 分子制御内科学(第二内科)冨山佳昭 講師
参考資料
・Kieffer N and Phillips DR: Platelet membrane glycoproteins: functions in cellular interactions. Annu. Rev. Cell Biol. 6:329-357, 1990・冨山佳昭:血小板膜糖蛋白異常症. 臨床医25:24-28, 1999 ・冨山佳昭:先天性血小板機能異常症の遺伝子解析. 日本内科学会雑誌89:41-47, 2000 (文責:大阪大学大学院医学系研究科 分子制御内科学(第二内科)冨山佳昭) 血小板無力症
血小板は、出血を止めるために重要な働きをしており、出血するとその部位 に血小板がはり付き(粘着)、さらに多数の血小板どうしが塊を作り(凝集)出血部位をふさぎます。
血小板無力症は、先天性に、凝集に必要な血小板表面の蛋白が欠損しているために出血症状が見られる病気です。 幼少時から紫斑、点状出血などの皮膚の出血、口の中や鼻血などの粘膜面 からの出血が多く見られますが、大人になるに従って症状が軽くなる傾向にあります。 重篤な出血や手術の時などには血小板の輸血が必要となる場合があります。 相談相手
・大阪大学大学院医学系研究科分子制御内科学、冨山佳昭 講師・慶応義塾大学輸血センター、半田 誠 講師 ・独立行政法人国立病院機構 広島西医療センター内科 藤元貴啓 参考資料
・血小板無力症.本田繁則、冨山佳昭.日本血栓止血学会誌 11(3): 296-300, 2000・本邦における血小板無力症の遺伝子変異.安保浩伸、半田誠、日本血栓止血学会誌 10(4): 243-250, 1999 ・Glanzmann thrombasthenia: integrin alpha IIb beta 3 deficiency. Tomiyama,-Y Int. J. Hematol. 72: 448-54, 2000 ・Glanzmann thrombasthenia: the spectrum of clinical disease. George JN, Caen JP, Nurden AT. Blood 75:1383-1395, 1990・Glanzmann Thrombasthenia Database: http://med.mssm.edu/glanzmannDB/menu.html (文責:独立行政法人国立病院機構 広島西医療センター内科 藤元貴啓) ベルナール・スーリエ症候群
血小板は、出血を止めるために重要な働きをしており、出血すると血小板がはり付き(粘着)、出血部位をふさぎます。ベルナール・スーリエ症候群は、先天性に、粘着に必要な血小板表面の蛋白が 欠損しているために出血症状が見られる病気です。
血小板の大きさが巨大になるために正確な血小板の数が測定されにくくなり、血小板減少症として 治療を受けている場合もよくあります。 重篤な出血や手術の時などには血小板の輸血が必要となる場合があります。 相談相手
・独立行政法人国立病院機構 広島西医療センター内科 藤元貴啓・慶応義塾大学輸血センター、半田 誠 講師 ・国立病院機構名古屋医療センター臨床研究センター止血血栓研究部 国島伸治 参考資料
・藤村欣吾,藤元貴啓,下村壮司:Bernard-Soulier 症候群.日本血栓止血学会誌 11(4):411-419, 2000.・Bernard-Soulier syndrome. Lopez JA, Andrews RK, Afshar-Khargham V, Berndt MC. Blood 91: 4397-4418, 1998 ・Bernard-Soulier Syndrome Website and Registry: http://www.bernard-soulier.org (文責:独立行政法人国立病院機構 広島西医療センター内科 藤元貴啓) プラスミノゲン
プラスミノゲンは、固まった血(フィブリン血栓)を溶かす(線溶反応)酵素プラ スミンの前駆体です。 主に肝臓で合成されて血中に分泌され、組織プラスミノゲンア クチベーター(tPA)やウロキナーゼ、ストレプトキナーゼなどによって活性型であ るプラスミンにされます。このタンパク質が欠乏すると、フィブリン血栓が溶けずに 残りやすいので、やや血管が詰まりやすくなります(血栓症)。
また、血管以外の場所にもフィブリン塊が溜まるので、偽膜性結膜炎や水頭症になることが、先天的欠損 症で報告されています。 相談相手
・山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝 教授・西宮市立中央病院 外科 左近賢人 参考資料
・プラスミノゲン分子異常症;一瀬白帝、プラスミノゲン異常症、Molecular Medicine 32; 遺伝子病マニュアル、垂井清一郎、多田啓也編、中山書 店、東京、394-395, 1995.・プラスミノゲン欠損症;嘉悦洋ら、プラスミノゲン/プラスミン系因子の欠損マウス、日本血栓止血学会誌 9(2);146-152, 1998. ・プラスミノゲンの構造;宮田敏行ら; ストレプトキナーゼ-プラスミノゲン複合体の立体構造、日本血栓止血学会誌 11(3); 276-282, 2000. ・プラスミノゲンの活性化;一瀬白帝、プラスミノゲンアクチベータ(PA)、キーワード 1998ー2000血液、先端医学社、東京、1998, 196-197. ・プラスミノゲンの活性化;吉武新次、組織プラスミノゲン活性化因子、日本血栓止血 学会誌 11(1); 95-102, 2000. ・プラスミノゲンの機能;浦野哲盟、アンギオスタチン、プラスミノゲンの活性化;日本血栓止血学会誌 9(3); 196-200, 1998 (文責:山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝) tPA(組織型プラスミノゲンアクチベーター)
組織型プラスミノゲンアクチベーター(tPA)は、血中のタンパク質プラスミノゲ ンを 酵素プラスミンに活性化する酵素です。できたプラスミンが固まった血(フィブ リン血栓) を溶かします(線溶反応)。tPAは、血管の内側に並んでいる内皮細胞で 主に合成されて血中に分泌され、プラスミノゲンとともにフィブリン血栓に付着して 効率良くプラスミンを作ります。
心筋梗塞や脳梗塞などの血栓症では、この性質を利 用して血管を閉塞したフィブリン塊を溶かす治療(線溶療法)に使われています。 相談相手
・笠岡市民病院 新谷憲治・山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝 教授 参考資料
・tPAの概説;一瀬白帝、プラスミノゲンアクチベータ (PA)、キーワード1998ー2 000血液、先端医学社、東京、1998, 196-197.・tPAの概説;新谷憲治、線溶療法、内科、86(6); 972-980, 1997. ・tPA欠損症;嘉悦洋ら、プラスミノゲン/プラスミン系因子の欠損マウス、日本血栓 止血学会誌 9(2); 146-152, 1998. ・tPAの構造;吉武新次、組織プラスミノゲン活性化因子、日本血栓止血学会誌 11(1); 95-102, 2000. ・tPAの構造;前田浩明ら; クリングルドメインの立体構造、日本血栓止血学会誌 11(1); 24-39, 2000. (文責:山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝) スタフィロキナーゼ
スタフィロキナーゼ(以下SAKと略)は 黄色ブドウ球菌が産生、分泌する蛋白質で、それ単独では何ら酵素活性を示すことはありません。ところが、ヒトの血液中では、プラスミンと複合体を形成してプラスミノゲンをプラスミンに変換する プラスミノゲンアクチベーター活性を発現します。プラスミンは血栓の主要成分である フィブリンを分解することから、SAKは心筋梗塞症などの血栓症の治療への応用が可能です。
単独では酵素活性を示さず、プラスミン(プラスミノゲン)と反応して初めて酵素活性を 発現する生物学的特徴は溶血性レンサ球菌の産生するストレプトキナーゼに似ています。 しかし、ストレプトキナーゼによるプラスミノゲンのプラスミンへの活性化は循環血液中で 進行して出血傾向を示すのに対し、SAKによるプラスミノゲンアクチベーター活性は フィブリンのない状態での循環血液中では観察されず、フィブリン(血栓)の 存在下においてのみ発現します。したがって、SAKは血栓を効率良く溶解する薬剤として 期待されています。 相談相手
・近畿大学農学部食品栄養学科生体機能学教室 上嶋 繁 教授
参考資料
・上嶋 繁ら、血栓溶解療法ーその種類と比較、medicina 37(5):769-772,2000.・Collen D et al.、Recent developments in thrombolytic therapy、Fibrinolysis & Proteolysis 14(2/3):66-72, 2000. ・Collen D、The plasminogen (fibrinolytic system), Thromb Haemost 82(2) 259-270,1999. ・上嶋 繁ら、新しい血栓症治療薬、血栓と循環 6(2):67-73, 1998. ・Ueshima S et al.、Staphylokinase as a new thrombolytic agent,Current topics in pharmacology, 3:77-83, 1997. ・松尾 理、線溶療法薬、in 血栓症治療(池田康夫 編)pp125-139、メディカルレビュー社、東京、1996. (文責:近畿大学農学部食品栄養学科生体機能学教室 上嶋 繁 教授) Plasminogen activator inhibitor type-1 (PAI-1)
PAI-1はtPA、uPAなどのプラスミノゲン活性化酵素の活性を阻害するタンパク質であり、プラスミンによるフィブリン(血栓)の溶解、すなわち線溶を抑制します。正常血中には 約20ng/mlのPAI-1が存在しますがPAI-1の欠乏は出血傾向を示し、逆に増加は 深部静脈血栓症や心筋梗塞のリスクファクターであります。血中のPAI-1量 は内臓脂肪や BMIと相関することも知られており、肥満症における血栓性疾患とPAI-1の関連も 注目されています。
相談相手
・Professor Paul Declerck;Faculty of Pharmaceutical Sciences,Katholieke Universiteit Leuven, Belgium・日本大学大学院 応用生命科学 関 泰一郎 助教授 参考資料
・関 泰一郎、宇野茂之、有賀豊彦:線溶と肝再生、生化学、1999、71(5)、350-353.・濱本高義、岩永貞昭:PAI-1の欠損マウス、血栓止血誌、1997,8:410-413. ・高橋雅彦、船橋徹、松澤佑次:アディポサイトカインと内臓脂肪症候群、Mebio(特集:アディポサイエンス肥満細胞の機能と病態への関与)、1997,11、84-89. (文責:日本大学大学院・応用生命科学専攻・生体機能科学分野 関 泰一郎) α2プラスミンインヒビタ
α2プラスミンインヒビタ(α2-PI)は生理的に最も重要なプラスミンの阻害因子である。失血を防ぐために生じた止血栓も長期に存在すると、血流が遮断され、組織に虚血性変化を惹起する。また、情報の伝達路として血管の機能も失われる。血栓形成時には、プラスミンによる血栓溶解反応が亢進する。このプラスミンに速やかに結合し、活性を中和して止血の目的が達成されるまで血栓を維持し、さらに、過剰のプラスミンによる血管壁傷害や血中タンパク質分解を抑制するのがα2-PIの主たる役割である。
相談相手
・Professor Paul Declerck;Faculty of Pharmaceutical Sciences,Katholieke Universiteit Leuven, Belgium・日本大学大学院 応用生命科学 関 泰一郎 助教授 参考資料
・関 泰一郎、宇野茂之、有賀豊彦:線溶と肝再生、生化学、1999、71(5)、350-353.・濱本高義、岩永貞昭:PAI-1の欠損マウス、血栓止血誌、1997,8:410-413. ・高橋雅彦、船橋徹、松澤佑次:アディポサイトカインと内臓脂肪症候群、Mebio(特集:アディポサイエンス肥満細胞の機能と病態への関与)、1997,11、84-89. (文責:日本大学大学院・応用生命科学専攻・生体機能科学分野 関 泰一郎) 内臓脂肪症候群
肥満は糖尿病、高脂血症、高血圧、さらには心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患発症の基盤となっている。
しかしながら、これらの病気は必ずしも全身の肥満度の増加に関連するわけではない。
最近の解析にて上記の疾患発症は腹腔内内臓脂肪の蓄積に関連していることが明らかになり、様々な代謝異常を伴う内臓脂肪症候群として認識されている。 相撲の関取衆では皮下脂肪が増加した肥満であり、内臓脂肪の蓄積は少ないため上記の疾患の発症は少ない。 相談相手
・大阪大学大学院医学系研究科 分子制御内科学(第二内科) 船橋 徹 講師
参考資料
・松沢祐次:肥満分子医学総論. pp62-66 最新内科学体系 プログレス2 内分泌・代謝疾患. 中山書店 1997 ・船橋 徹:Multiple risk factor症候群と内臓脂肪症候群. TG EPOCH 17:2-7,1999 (文責:大阪大学大学院医学系研究科 分子制御内科学(第二内科)冨山佳昭) レプチン
肥満の原因の一つに食欲コントロールの異常があげられる。
レプチン遺伝子(ob遺伝子)は、遺伝性肥満マウス(obマウス)の病因遺伝子として発見された 脂肪組織に特異的に発現する遺伝子である。この遺伝子産物レプチンが主に視床下部に存在する レプチン受容体を介して食欲制御を行っていると考えられるが、obマウスでは正常に機能するレプチンが 作られないため「もう食べなくて良い」という指令が中枢に伝達されず、その結果 過食と肥満が持続する。 ヒトでも稀であるがレプチンやレプチン受容体遺伝子異常に起因する肥満が報告されている。 相談相手
・大阪大学大学院医学系研究科 分子制御内科学(第二内科) 船橋 徹 講師
参考資料
・Zhang Y, Proenca R, Maffei M, Barone M, Leopold L, Friedman JM: Positional cloning of the mouse obese gene and its human homologue. Nature 372:425-432, 1994・松澤佑次:肥満と肥満症. Molecular Medicine臨時増刊号35:388-389, 1998 ・細田公則、中尾一和:ob, db遺伝子異常と肥満. pp80-84, 最新内科学体系 プログレス2 内分泌 ・代謝疾患. 中山書店 1997 (文責:大阪大学大学院医学系研究科 分子制御内科学(第二内科)冨山佳昭) LDL(低比重リポタンパク質)
低比重リポタンパク質(LDL)とは、肝臓で合成されて血中に分泌された超低密度リポタンパク質(VLDL)という脂肪粒子が、リポタンパクリパーゼという酵素によって一部分解されてできるやや小さい脂肪粒子です。細胞表面のタンパク質(LDL受容体)に結合して細胞内に取り込まれます。コレステロールを多く含むため末梢組織に細胞膜や生理活性物質の材料を送るという大事な働きがありますが、これが多過ぎると血管壁の細胞内に蓄積して、動脈硬化、血栓症(心筋梗塞、脳梗塞など)を合併し易くなります。
相談相手
・日本動脈硬化学会のhomepageを参照 http://jas.umin.ac.jp/top.html
参考資料
・家族性高脂血症の概説;馬淵宏、家族性高脂血症、キーワード1998ー2000 高脂血症・動脈硬化、先端医学社、東京、1998, 36-37.・家族性高コレステロール血症の概説;馬淵宏、LDL受容体異常症、Atherothrombosis、3(1); 2-6、2000. ・LDL受容体の概説;石橋俊、LDL受容体経路、キーワード998ー2000高脂血症・動脈硬化、先端医学社、東京、1998, 32-33. (文責:山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝) HDL(高比重リポタンパク質)
高比重リポタンパク質(HDL)は、末梢組織で余ったコレステロールを受け取って肝臓に送り戻して処理するための、特別な脂肪粒子です(コレステロール逆転送系)。
従って、動脈硬化を抑える働きがあり、善玉コレステロールと呼ばれています。 その血中濃度が低いと末梢組織にコレステロールが蓄積され、動脈硬化、血栓症(心筋梗塞、脳梗塞など)を合併し易くなります。 逆に、血中HDL-コレステロール濃度の高い人は長生きする(長寿症候群)と言われてきましたが、最近異論も出されています。すなわち、HDLのコレステロールを転送するコレステロールエステル転送蛋白(CETP)欠損症に起因する高HDL血症では動脈硬化が起こりやすいことが示されています。 相談相手
・日本動脈硬化学会のhomepageを参照 http://jas.umin.ac.jp/top.html
参考資料
・家族性高脂血症の概説;馬淵宏、家族性高脂血症、キーワード1998ー2000高脂血症・動脈硬化、先端医学社、東京、1998, 36-37.・高HDL血症の概説;平野賢一ら、コレステリルエステル転送タンパク(CETP)欠損 症、キーワード1998ー2000高脂血症・動脈硬化、先端医学社、東京、1998, 90-91. ・低HDL血症の治療;山下静也、低HDL-コレステロール血症の治療、キーワード199 8ー2000高脂血症・動脈硬化、先端医学社、東京、1998, 132-133. (文責:山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝) アポ(a)
アポリポプロテイン(a)[アポ(a)]は,リポプロテイン(a)[リポ(a)]という脂肪粒子に含まれる、巨大なタンパク質です。プラスミノゲンによく似た構造を持つので、線溶反応を抑制すると考えられています。個人によって、アポ(a)の分子量もリポ(a)の血中濃度も大きく異なり、それらは遺伝します。
リポ(a)血中濃度が25-30mg/dl以上あると高リポ(a)血症と診断され、動脈硬化、血栓症(心筋梗塞、脳梗塞など)になり易いので、注意が必要です。 相談相手
・国際医療福祉大学大学院 佐々木淳 教授・山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝 教授 参考資料
・アポ(a)の概説;一瀬白帝、アポリポプロテイン(a):動脈硬化と血栓症、日本血栓止血学会誌 4(6); 363-371, 1993.・リポ(a)の臨床;奥村太郎ほか、Lp(a)の臨床的意義、臨床検査、44(10); 1085-1090, 2000. ・高リポ(a)血症の遺伝子診断;一瀬白帝、高Lp(a)血症とApo(a)遺伝子の多型性、Atherothrombosis、3(1); 19-23, 2000. ・高リポ(a)血症の治療;藤井秀比古ら、高リポ蛋白(a)血症の治療、キーワード1998ー2000高脂血症・動脈硬化、先端医学社、東京、1998, 88-89. (文責:山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝) 家族性高コレステロール血圧
家族性高コレステロール血症とは、特に低比重リポタンパク質(LDL)という脂肪粒子を結合して細胞内に取り込むタンパク質(LDL受容体)が先天的に欠損していいるために、血中にLDLが異常に増加する病気です。このLDL受容体遺伝子の一方に欠陥があると軽症の、両方に欠陥があると重症の本疾患になり、動脈硬化、血栓症(心筋梗塞、脳梗塞など)を合併し易いので、治療が必要です。
相談相手
・日本動脈硬化学会のhomepageを参照 http://jas.umin.ac.jp/top.html
参考資料
・家族性高脂血症の概説;馬淵宏、家族性高脂血症、キーワード1998ー2000高脂血症・動脈硬化、先端医学社、東京、1998, 36-37.・家族性高コレステロール血症の概説;馬淵宏、LDL受容体異常症、Atherothrombosis、3(1); 2-6、2000. ・LDL受容体の概説;石橋俊、LDL受容体、キーワード1998ー2000高脂血症・動脈硬化、先端医学社、東京、1998, 32-33. (文責:山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝) 単一遺伝子病
ヒトゲノム(遺伝子の総体)に3万数千個あまり存在する遺伝子の内およそ数千個は、その遺伝子の突然変異(塩基配列の異常な変化)が特定の遺伝性の病気を引き起こすので、「疾患原因遺伝子」と呼ばれます。全ての病気は多かれ少なかれ遺伝要因と環境要因が関与して成立しますが、重症の先天性の病気の多くは、一つの遺伝子に重大な異常が存在するとほぼ100%病気が引き起こされるので、「単一遺伝子病」と呼ばれます。
環境要因の関与は少なく、いわゆるメンデル型遺伝形式をとります。 相談相手
・山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝 教授
参考資料
・遺伝と疾患:図説・分子病態学、一瀬白帝、鈴木宏治編著, 中外医学社、1998.・遺伝と疾患:一瀬白帝、ゲノム時代の遺伝子診断・遺伝子治療、心臓病の最新 医療、永井良三ら編、先端医療技術研究所、東京、2001、pp.4-16. (文責:山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝) 多因子疾患
単一遺伝子病の種類は多いけれども出生時の頻度は低く、遺伝要因が関与する病気全体から考えると、複数の遺伝子が原因となる「多遺伝子病」の方がはるかに多いのです。
糖尿病、高血圧、高脂血症などを代表とするこれらの病気を一般人が持っている率が非常に高いところから「ありふれた病気(日常の病気)」と呼ばれ、発病に環境要因が強く関与するので「生活習慣病(嘗ての成人病)」とも呼ばれます。 複数の遺伝要因と複数の環境要因が重なって発病するので「多因子疾患」と呼ぶ方が相応しいでしょう。 相談相手
・山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝 教授
参考資料
・遺伝と疾患:図説・分子病態学、一瀬白帝、鈴木宏治編著, 中外医学社、1998.・遺伝と疾患:一瀬白帝、ゲノム時代の遺伝子診断 ・遺伝子治療、心臓病の最新 医療、永井良三ら編、先端医療技術研究所、東京、2001、pp.4-16. (文責:山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝) 遺伝的多型性
「遺伝的多型性」とは、同一の生物種あるいはその集団の中で異なる遺伝的性質が共存していることです。
ある遺伝子のある部位の塩基配列が置き換えられたり、失われたり、新たに加えられたり、短い繰り返し配列の反復数が違うなどの個人差が存在し、その頻度が一般人の中で1%以上である場合は「DNA多型」と呼びます。 個々人のゲノムDNAにはおよそ数100塩基に1ケ所の割合で多型(配列の違い)があります。 従って、DNA多型は個人間の区別のマーカーとして疾患原因遺伝子の分析、親子鑑定、個体識別などに広く用いられています。 相談相手
・山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝 教授
参考資料
・遺伝と疾患:図説・分子病態学、一瀬白帝、鈴木宏治編著, 中外医学社、1998.・遺伝と疾患:一瀬白帝、ゲノム時代の遺伝子診断・遺伝子治療、心臓病の最新医療、永井良三ら編、先端医療技術研究所、東京、2001、pp.4-16. (文責:山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝) 単一塩基多型(Single Nucleotide polymorphism、SNP)
ヒトゲノム30億塩基中には数100万個の塩基配列に、一塩基の配列が置き換えられたり、失われたり、加えられたりという個人による違い(多型)があり、これを単一塩基多型(SNP:singlenucleotidepolymorphism)と呼びます。
SNPは、遺伝子の産物であるタンパク質が産生される量を調節する領域、タンパク質のアミノ酸配列を決めている領域、その間にあるアミノ酸配列と関係のない領域、隣接した遺伝子の間の領域などに散在していますが、特に前2者の場合はしばしばタンパク質の産生量やその構造/機能の違いを引き起こし、それが病気の原因やなり易さと関係する可能性もあります。 従って、SNPsは病気に関連した遺伝子の検索に絶大な威力を発揮すると期待され、注目を集めています。 相談相手
・山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝 教授
参考資料
・遺伝と疾患:図説・分子病態学、一瀬白帝、鈴木宏治編著, 中外医学社、1998.・遺伝と疾患:一瀬白帝、ゲノム時代の遺伝子診断・遺伝子治療、心臓病の最新医療、永井良三ら編、先端医療技術研究所、東京、2001、pp.4-16. (文責:山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝) 遺伝子診断
遺伝子診断とは、個人のゲノムにおける単一遺伝子病の原因である遺伝子や多因子疾患に関係する遺伝子における突然変異の存否、数100万個に上るDNA多型のタイプなどを検査して判定することです。
単一遺伝子病は遺伝子診断も単純で比較的容易であり、その結果は診断や治療に直結するので既に多くの病気に応用されています。 一方、多因子疾患は要因が極めて複雑で多岐にわたり、現時点で明らかになっていないものが多いため、その検索が進められています。 遺伝子診断の一部も始められたばかりです。 相談相手
・山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝 教授
参考資料
・遺伝と疾患:図説・分子病態学、一瀬白帝、鈴木宏治編著, 中外医学社、1998.・遺伝と疾患:一瀬白帝、ゲノム時代の遺伝子診断・遺伝子治療、心臓病の最新医療、永井良三ら編、先端医療技術研究所、東京、2001、pp.4-16. (文責:山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝) テーラーメイド医療
DNA多型は遺伝子産物であるタンパク質の量と質に影響を与えうるので、これが薬剤の輸送/代謝経路、作用機構に関わる遺伝子に存在すると投与薬剤に対する個人の反応性(薬剤応答性)の違いを生みます。
そのため、個人によっては少量の投与で充分な効果が得られ、通常量では副作用が出る危険性があります。 従って、予め薬剤に関係する遺伝子診断を実施して、個人の遺伝型に応じて投与量を決定したり、別の薬剤を選択したりするのがいわゆる「テーラーメイド医療」です。 相談相手
・山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝 教授
参考資料
・遺伝と疾患:図説・分子病態学、一瀬白帝、鈴木宏治編著, 中外医学社、1998.・遺伝と疾患:一瀬白帝、ゲノム時代の遺伝子診断・遺伝子治療、心臓病の最新医療、永井良三ら編、先端医療技術研究所、東京、2001、pp.4-16. (文責:山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝) 遺伝子治療
遺伝子治療とは、外から遺伝子を患者の細胞内に入れて病気を治すあるいは改善することです。その方法としては、もともと存在しない遺伝子を新たに付与/付加したり、過不足している因子の遺伝子を制御/補充したり、正常な遺伝子によって異常な遺伝子を修復したり、置き換えることなどが考えられます。
前2者は、患者自身の遺伝子はそのまま存続するので「遺伝子を変えない遺伝子治療」であり、後2者では患者自身の遺伝子に変更を加えるので「遺伝子を変える遺伝子治療」であるといえます。 最初は致死性で他の治療法が無い単一遺伝子病にのみ適用されていましたが、やがて「生命を脅かす難治疾患」としての癌、エイズなどへも拡大され、最近では動脈硬化性疾患のような「生活習慣病」にも実施されるようになりました。 何らかの遺伝子の投与を受けた症例は既に世界中で数千人を超え、遺伝子治療は着実に進展しつつあります。 相談相手
・山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝 教授
参考資料
・遺伝と疾患:図説・分子病態学、一瀬白帝、鈴木宏治編著, 中外医学社、1998.・遺伝と疾患:一瀬白帝、ゲノム時代の遺伝子診断・遺伝子治療、心臓病の最新医療、永井良三ら編、先端医療技術研究所、東京、2001、pp.4-16. (文責:山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝) Akitada Ichinose, M.D., Ph.D. Professor and Chairman of Dept. of Molecular Pathological Biochemistry, Yamagata University School of Medicine, Iida-Nishi 2-2-2, Yamagata, 990-9585, JAPAN Phone: 81(23) 633-1122 ext. 5275; direct 81(23) 628-5275 FAX: 81(23) 628-5280; プロテインZ
プロテインZは、ビタミンK依存性に肝臓で合成されて血中に分泌されるタンパク質の一つです。
その生理的な役割は不明ですが、試験管内の実験では凝固X因子に結合して凝固反応をやや阻害するというデータがあります。ドイツから出血症状のあるプロテインZ欠損症の症例が複数報告されていますが、問題点があります。 また、プロテインZ遺伝子を破壊されたマウス(ノックアウト)は何ら症状を示しません。 相談相手
・山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝 教授
参考資料
・プロテインZの概説;鈴木宏治、プロテインZ 、日本臨床 57(増刊); 645-647, 1999.・プロテインZの構造;K. Fujimakiら、The Gene for Human Protein Z Is Localized to Chromosome 13 at Band q34 and Coded by 8 Regular and One Alternative Exons. Biochemistry 37(19); 6838-6846, 1998. ・プロテインZの生合成;杉浦勇、ビタミンK依存性カルボキシラーゼ、日本血栓止血学 会誌 10(1); 22-35, 1999. (文責:山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝) 心筋梗塞
心筋梗塞は、心筋に酸素や栄養分を供給する冠動脈が詰まって心筋が壊死する病気です。
締めつけられるような強い胸痛が30分以上持続します。痛みが肩から首に広がったり、冷や汗や吐き気を伴うこともあります。心不全や不整脈の合併などで30%の死亡率があります。 近年、集中治療や詰まった血管を再び開通させる治療(PTCAなど)の発達により、病院に搬送された人の死亡率は10%以下にまで改善してきました。 相談相手
・自治医科大学循環器内科 島田和幸 教授
参考資料
・新臨床内科学:高久史麿ら監修 医学書院・循環器疾患最新の治療 2000-2001: 篠山重威ら編集 南江堂 (文責:自治医科大学循環器内科 松井圭二 医師) 狭心症
狭心症は、心筋に酸素や栄養分を供給する冠動脈が動脈硬化によって狭くなり、運動したときなどに胸が痛くなる病気です。
重いものを持ったり急いで階段を昇ったりしたときに、胸を圧迫されるような痛みが出現しますが安静にしていると3分くらいで改善するのが特徴です。
一方、血管攣縮性狭心症といって夜間睡眠時に冠動脈が強く収縮し(攣縮)15分ほど胸痛が持続するという種類のものもあります。
相談相手
・自治医科大学循環器内科 島田和幸 教授
参考資料
・新臨床内科学:高久史麿ら監修 医学書院・循環器疾患最新の治療 2000-2001: 篠山重威ら編集 南江堂 (文責:自治医科大学循環器内科 松井圭二 医師) 骨髄幹細胞
骨を輪切りにしたときに、中に詰まっている赤いものが骨髄です。
骨髄中に含まれる骨髄幹細胞は血液(赤血球、白血球、血小板)の元になっています。 近年、骨髄幹細胞は血液だけでなく骨、軟骨、筋肉、脂肪、血管、神経など色々な臓器の元になっていることがわかってきました。そこで、骨髄幹細胞から新しい血管や心筋をつくり出す研究(再生医学)が盛んになっています。 相談相手
・信州大学医学部循環器内科 池田宇一 教授
参考資料
・最新医学 1999年 12月号 54巻 特集 再生医学・医学のあゆみ 2000年 9月号 vol. 194 No. 10 特集 血管新生研究の新しい展開 (文責:自治医科大学循環器内科 松井圭二 医師) 放射線傷害と凝固・線溶
放射線には直接遺伝子(DNA)を傷害する直接作用と生体の60%を占める水に作用してできたフリーラジカルが傷害する間接作用があります。よって、放射線傷害はタバコや公害で出るフリーラジカルと同様の傷害です。
また、放射線は、分裂・増殖している造血器、生殖器、消化器の細胞を強く傷害します。
(癌も分裂・増殖しており放射線で傷害される。癌治療) 放射線傷害は数週間以内に起こる急性障害と数年後に起こる晩発障害(癌、遺伝障害)があります。 凝固・線溶系への影響は、造血器傷害で血小板が減少し止血が障害されます。 動物照射実験では凝固時間が延長しました。 また、消化器傷害では出血などがあり、総じて出血し易くなりますが、照射線量、照射部位で傷害は異なります。 相談相手
・愛知医科大学 放射線医学 伊藤要子 講師
参考資料
放射線障害:・金子昌生、放射線障害、標準放射線医学(医学書院) 放射線傷害と凝固・線溶: ・伊藤要子他、全身照射家兎の凝固・線溶、日本医学放射線学会誌 44(1); 73-87, 1984 ・伊藤要子他、肝照射家兎の凝固・線溶活性と放射線障害、日本血栓止血学会誌2(4); 293-301, 1991 (文責:愛知医科大学放射線医学講座 伊藤要子) 温熱傷害と凝固・線溶
細胞は、42から43℃を境に死にます。40℃では殆ど死にませんから1〜2℃の差が細胞の生死を左右します。
この温度差を利用して43℃の熱で癌を殺す療法をハイパーサーミア(温熱療法)と言います。 血液だけを40℃で加温しても正常に凝固しますが、43℃以上では血液は凝固しなくなり、43℃は細胞同様血液凝固の臨界温度といえます。 異常気象などでの高温環境下での生体の障害を熱中症(日射病や熱射病)といい、熱の放散がうまく出来ず熱が体内にこもって起こります。 体温が41℃を越えると臓器障害が起こり、42℃になると全身で血液凝固異常(DIC)となり多臓器障害で死亡します。 相談相手
・愛知医科大学 放射線医学 伊藤要子 講師
参考文献
熱による凝固・線溶:・伊藤要子他、温熱による血液凝固・線溶に及ぼす影響 -in vitro における検討- 日本ハイパーサーミア誌 7(4): 409-419, 1991 温熱による家兎の血液凝固: ・伊藤要子他、Hyperthermiaによる血液凝固の温熱耐性 日本ハイパーサーミア誌 8(4): 287-290, 1992 (文責:愛知医科大学放射線医学講座 伊藤要子) プラスミン療法(初級)
プラスミンというヒトの体に元々ある酵素を使って体の中の様々な蛋白質をバラバラにして取り除く、新しい治療法です。最近、眼の真ん中にある硝子体(ガラス)という部分を一番奥にある網膜という部分から引き離す手術に使われ始めており、特に糖尿病に多い眼の病気(網膜症)や若い人がひどく眼を打った時に起きる視力低下(外傷性黄斑穿孔)などの治療に良く効くことが確かめられています。これは、眼に太い管を差し込んで引っ張っていたこれまでの手術法に比べて、出血させたり網膜を傷つけたりする心配の少ない方法であり、手術の後何週間も上(か下のどちらか)を向き続ける必要も無いので、患者さんの痛みや辛さは断然軽くなります。また、外来通院しながら短い間に治療できるので、本人にとっても国の医療にとっても経済的です。プラスミンは、他の外科手術にも応用される可能性があります。
相談相手
順天堂大学浦安病院眼科 田中稔 教授山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝 教授 参考資料
・プラスミノゲン分子異常症;一瀬白帝、プラスミノゲン異常症、Molecular Medicine 32; 遺伝子病マニュアル、垂井清一郎、多田啓也編、中山書店、東京、394-395, 1995.・プラスミノゲン欠損症;嘉悦洋ら、プラスミノゲン/プラスミン系因子の欠損マウス、日本血栓止血学会誌 9(2); 146-152, 1998. ・プラスミノゲンの構造;宮田敏行ら; ストレプトキナーゼ-プラスミノゲン複合体の立体構造、日本血栓止血学会誌 11(3); 276-282, 2000. ・プラスミノゲンの活性化;一瀬白帝、プラスミノゲンアクチベータ(PA)、キーワード1998ー2000血液、先端医学社、東京、1998, 196-197. ・プラスミノゲンの活性化;吉武新次、組織プラスミノゲン活性化因子、日本血栓止血学会誌 11(1); 95-102, 2000. ・プラスミノゲンの機能;小林浩、癌転移と線溶ーーとくに癌転移抑制について、日本血栓止血学会誌 9(1); 2-12, 1998. ・プラスミノゲンの機能;浦野哲盟、アンギオスタチン、プラスミノゲンの活性化;日本血栓止血学会誌 9(3); 196-200, 1998. ・プラスミノゲンの臨床応用;田中稔ら、プラスミノゲンアクチベータ(PA)、キーワード1998ー2000血液、先端医学社、東京、1998,196-197. ・プラスミノゲンの臨床応用;一瀬白帝、凝固/線溶/血小板関係の血液製剤、臨床薬理学、先端医学社、東京、2002, 印刷中. (文責:山形大学医学部分子病態学 一瀬白帝) 脳梗塞(初級向け)
脳の血管が閉塞してしまうことにより、その血管に栄養されていた脳の機能低下により麻痺や言語障害などの症状をきたす疾患です。動脈硬化がその原因となる場合が最も多く、脳の血管に血の塊り(血栓)ができて徐々に狭くなり最終的に閉塞してしまう場合(脳血栓)と、心臓あるいは頚動脈の動脈硬化性病変(例えば血栓)がちぎれて脳の血管に到達し突然閉塞してしまう場合(脳塞栓)等があります。動脈硬化をきたす種々の生活習慣病(糖尿病、高血圧、高脂血症など)は脳梗塞の危険因子となります。
相談相手
・『日本脳卒中協会』のホームページを参照 http://www.patos.one.ne.jp/public/jsa/index.ssi
参考資料
・『国立循環器病センター: 循環器病情報サービス』のサイトを参照 http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/cvdinfo.htm
(文責:鹿児島大学医学部臨床検査医学講座 橋口照人) HIV(初級)
HIVはヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus)の略であり、HIV感染症とはHIVによる慢性感染症の状態を指します.HIV感染症ではウイルスが体の免疫を司るリンパ球に感染し、感染したリンパ球を破壊するため、患者さんは感染症に対する抵抗力が極端に低下してしまいます。HIV感染症の状態においてカリニ肺炎やサイトメガロウイルス感染症などの日和見感染症*を併発した状態がエイズ(AIDS:acquired immunodeficiency syndrome)です。
相談相手
・エイズ治療拠点病院リストを参照 http://www.acc.go.jp/mlhw/mlhw_frame.htm
参考資料
・国立国際医療センター エイズ治療・研究開発センター』のホームページを参照 http://www.acc.go.jp/
(文責:鹿児島大学医学部臨床検査医学講座 橋口照人) DIC:播種性血管内凝固症候群(Disseminated intravascular coagulation:DIC)
播種性に全身の微小血管内に血栓形成が起こり、虚血などによる血管内皮細胞障害により臓器障害を呈するとともに、止血系因子の消費性低下および二次線溶亢進による著明な出血傾向を生ずる症候群で、悪性腫瘍、感染症や産婦人科疾患などに高頻度に合併する。
治療にはAT|||、ヘパリンやプロテアーゼインヒビターが用いられ、予後は基礎疾患の状態に左右されるが、DICの改善率は50-60%である。 このため、更に新しい治療薬が開発されつつある。 相談相手
・三重大学臨床検査医学 和田英夫 助教授・金沢大学高密度無菌治療部 朝倉英策 助教授 ・順天堂大学医学部救急災害医学 射場敏明 助教授 参考文献
・DIC ology、丸山征郎編著、メデイカルレビュー社、東京、1997年・DICの病態・診断とその対策、中川雅夫編、医薬ジャーナル社、大阪、1996 ・和田英夫他:国内外における播種性血管内凝固症候群(DIC)の診断基準作成の動きについて、日本血栓止血学会誌、11:3-15、2000 ・和田英夫他:厚生省DIC診断基準を用いたDIC診断におけるGlobal Testの評価、日本血栓止血学会誌、12:197--205、2001 ・Levi M, ten Cate H: Disseminated intravascular coagulation. N Engl J Med, 341:586-592, 1999 (文責:三重大学臨床検査医学 和田英夫 助教授) 凝固第VII因子
凝固第VII因子は肝細胞でビタミンK依存性に生合成され、分子量50KDaの1本鎖糖蛋白質として血中を循環するセリン蛋白質分解前駆酵素である。
血管障害によって生じ組織因子とカルシウムの存在下で複合体を形成して、外因系凝固の開始反応に関与するとともに、内因系凝固過程のIX因子にも作用してフィブリン形成を導く。 したがって、この因子の欠如あるいは機能異常は凝固障害の原因となる。 血漿中には500ng/ml含まれ、半減期は3-4時間である。 参考資料
先天性第VII因子欠乏症:・高宮 脩ら、日本血栓止血学会誌、12 (4): 320-327, 2001 病態生理に関する基礎的・臨床的研究 血液凝固第VII因子 その構造と機能: ・東昌市 医学のあゆみ 別冊血液疾患 194-199 1998 ・Williams WJ, Ernest B,A llan JE, Marshall AL:Hematology.3rd ed, New York, McGraw-Hill, 1393-1394, 1983. ・Haemostasis Research Group Database Resource Site, WWW document, Complete list of FVII mutations, http://europium.csc.mrc.ac.uk ・Cooper DNら.Inherited factor VII deficiency: molecular genetics and pathophysiology : Thromb Haemost. 78:151-160, 1997. ・O'Hara PJら Nucleotide sequence of the gene coding for human factor VII, a vitamin K-dependent protein participating in blood coagulation. Proc Natl Acad Sci USA,84:5158-5162, 1987. (文責:信州大学医学部保健学科病因・病態検査学 高宮 脩) Antithrombin(アンチトロンビン)
アンチトロンビンは、凝固反応に関わるXaやトロンビンなどのセリンプロテアーゼと反応して、1対1の複合体を形成し、凝固反応を制御するたいへん重要な生理的セリンプロテアーゼインヒビターです。
ヘパリンは、アンチトロンビンに結合してアンチトロンビンの抗トロンビン活性を約1000倍も増強します。 アンチトロンビンが完全に欠損した個体は、致死的となって生まれてこない。アンチトロンビンの分子上、ヘパリン結合ドメインはN端に、トロンビンとの反応部位はC端にあるので、ヘテロ接合体の アンチトロンビン分子欠損症以外に、ヘパリン結合ドメインあるいはトロンビンとの反応部位 に 分子構造異常を示すアンチトロンビン分子異常症も報告されています。 アンチトロンビンの欠損ないし分子異常は、静脈血栓症の発症要因となります。 また、肝硬変では産生の低下により、DICでは消費により血中のアンチトロンビン値が減少します。 相談相手
・京都府立医科大学付属病院輸血・細胞医療部 辻 肇 部長・名古屋大学医学部輸血部 高松純樹 教授 ・笠岡市民病院 新谷憲治 参考文献
アンチトロンビン欠損症の概説;・辻 肇、先天性アンチトロンビンIII (ATII)欠損症、日本血栓止血学誌 2001 12(1): 74-77. 先天性血栓性素因患者の治療; ・高松純樹、血栓症に関するQ & A 10.合併症と抗凝固療法Q48先天性血栓性素因患者の妊娠および分娩における抗凝固療法について、血栓と循環、1997, 5(4)397-398. アンチトロンビンの測定法; ・新谷憲治、技術総説・凝固線溶系測定・AT(III)、臨床検査 2001, 45: 972-976. アンチトロンビン欠損症の総説; ・Bauer KA, Inherited and acquired hypercoagulable states. Thrombosis and Hemorrhage, 2nd edition, edited by Loscalzo J & Schafer AI, Williams & Wilkins, 1998, 868-900. (文責:笠岡市民病院 新谷憲治) Heparin cofactor II(ヘパリンコファクターII)
ヘパリンコファクターII(HCII)は、上述しましたようにアンチトロンビンと同様に、ヘパリンに結合して抗トロンビン活性を示す凝固反応の生理的阻害物質ですが、HCIIがホモ接合性で完全に欠損した場合は明らかに静脈血栓の発症が観察されています。
しかし、ヘテロ接合体異常では、アンチトロンビンの場合ように血栓症の発症要因になるという確たる証拠は、示されておりません。 本邦で遺伝子解析を含め詳細に検討された二家系のHCII欠損症では、興味あることに静脈血栓ではなく、動脈系の血栓症が認められています。今後の症例の集積が待たれます。 相談相手
・兵庫県淡路病院 松尾武文 名誉院長・徳島大学医学部第一内科 東 博之 助教授 ・笠岡市民病院 新谷憲治 参考文献
HCII 欠損症の症例:・Matsuo T, et al: Hereditary heparin cofactor II deficiency and coronary artery disease. Thromb Res 1992; 65: 495-505. HCII 欠損症の症例: ・Villa P, et al: Hereditary homozygous heparin cofactor II deficiency and the risk of developing venous thrombosis. Thromb Haemost. 1999; 82: 1011-4. HCII 欠損症の遺伝子解析: ・Kanagawa Y, et al: Molecular mechanism of type I congenital heparin cofactor (HC) II deficiency caused by a missense mutation at reactive P2 site: HC II Tokushima. Thromb Haemost 2001; 85: 101-7. (文責:笠岡市民病院 新谷憲治) ヘパリン
ヘパリンはウロン酸とグルコサミンの繰り返し構造からなる酸性ムコ多糖類で、ウシ肺またはブタ腸粘膜などから作製され,分子量も約3,000-35,000と種々のものが混在する(未分画ヘパリン)。
それ自体に抗凝固作用はないが、生理的凝固阻止因子のアンチトロンビンによるトロンビン,Xaなどの不活性化作用を促進する。 近年では、抗Xa作用が優位なため出血の副作用が少ない、低分子ヘパリンが使用されつつある。 相談相手
・三重大学臨床検査医学 和田英夫・新潟リハビリテーション病院院長 櫻川信男先生 ・立命館大学 保健センター 中川 克先生 参考文献
・櫻川信男:低分子量ヘパリンの臨床、止血・血栓・線溶、松田道生、鈴木宏治編、中外医学社、東京都、1994年、pp458-463・Rosenberg RD, et al: The purification and mechanism of action of human antithrombin-heparin cofactor. J Biol Chem, 248: 6490-6505, 1973 ・中川克、辻 肇:ヘパリン、DICの病態・診断とその対策、中川雅夫編、医薬 ジャーナル社、大阪市、pp104-105、1996年 参考資料
・風間睦美、安部英:経口抗凝固薬療法ガイドライン、国際血液学標準化委員会、血 液と脈管、16:431-440、1985・青木延雄、長谷川淳:DIC診断基準の『診断のための補助的検査成績、所見』の項の 改訂について、厚生省特定疾患血液凝固異常症調査研究班、昭和62年度研究報告書、1988、37-41 ・和田英夫、登 勉、森 美貴ほか: 厚生省DIC診断基準を用いたDIC診断における Global testの評価、血栓止血誌、12:2001(印刷中) ・Wada H, Minamkawa K,Wakita Y et al. Hemostatlc study before onset of disseminated intravascular coagulation. Am J Hematol,48:190-194,1998 ・森美貴、和田英夫:DICの治療.綜合臨床、48(10):2375-2380,1999. ・中川雅夫:本邦における播種性血管内凝固(DIC)の発症頻度・原因疾患に関する 調査報告。厚生省特定疾患血液系疾患調査研究班血液凝固異常症分科会、平成10年度 研究業績報告書。57-64,1999. ・中川雅夫:播種性血管内凝固(DIC)診断基準の利用に関する調査報告。厚生省特 定疾患血液系疾患調査研究班血液凝固異常症分科会、平成10年度研究業績報告書。 65-72,1999. ・松田保:現在の診断基準の問題点と緊急時の診断、DICology−その分子病態/診断/ 臨床スペクトラム/治療―、丸山征郎編、メデイカルレビュー社、227-238、1997. ・Fletcher B, Taylor Jr, Cheng-Hock Toh, W Keith Hoots, Hideo Wada, Marcel Levi. Towards a definition, clinical and laboratory criteria, and a scoring system for disseminated intravascular coagulation. (submitting) ・和田英夫:国内外における播種性血管内凝固症候群(DIC)の診断基準作成の動き について.血栓止血誌.11(1):3-15,2000. ・Wada H, Wakita Y, Nakase T, et al:Outcome of disseminated intravascular coagulation in relation to the score when treatment was began. Thromb Haemost 74:848-852,1995. ・和田英夫、中崎隆弘:凝血学的診断、TOKYO TANABE QUARTERLY, No41, 175-185, 1997. ・Vincent JL, Moreno R, Takala J, et al: The SOFA (sepsis-related organ failure Assessment) score to describe organ dysfunction/failure. Intensive Care Med, 22: 707-710, 1996. (文責:三重大学臨床検査医学 和田英夫 助教授) Factor V Leiden (R506Q)
凝固系第V因子の一種の多型です。
506番目のアルギニンがグルタミンへ変異して いる第V因子変異分子(R506Q)でFactor V Leidenと 呼ばれています。この変異分 子は正常の第V因子と同等の凝固活性がありますが、506番目のアルギニンが グル タミンへと変異したために、プロテインC/プロテインS凝固制御系に抵抗性になって、必要以上に凝固系が進行し血栓形成傾向が強くなります。 北欧系の人々の 約10%弱がこの多型を持っているといわれており、血栓症患者では20-60%の頻度で Factor V Leiden (R506Q)遺伝子を持っているという調査結果が出ています。 黒人やアジア人はこの多型は持っていません。 その代わりに、日本人の血栓 症患者ではプロテインC/プロテインS凝固制御系の活性低下が多い調査結果が出ています。 欧米人と日本人血栓症患者における、このような調査結果は、体内に おける適切な血栓形成に果たしている プロテインC/プロテインS凝固制御系の重要さを示唆していると考えられます。 相談相手
・長崎国際大学薬学部 濱崎直孝 教授
参考文献
・Dahlback B: Resistance to Activate Protein C as Risk Factor for Thrombosis: Molecular Mechanisms, Laboratory Investigation, and Clinical Management. Semi. Hematol. 34, 217-234 (1997)・Tsuda H, Hattori S, Tanabe S et al.: Screening for aetiology of thrombophilia; A high prevalence of protein S abnormality. Ann. Clin. Biochem. 36, 423-432 (1999) ・濱崎直孝:血栓症患者における凝固関連因子の異常:予防および治療への探索。日本血栓止血学会誌 11, 347-357 (2000) ・濱崎直孝、木下幸子、脇山マチ子、中原睦子、飯田広子:プロテインS異常症。臨床検査 43, 1025-1031 (1999) (文責:長崎国際大学薬学部 濱崎直孝) 血管新生(angiogenesis)
血管新生 (angiogenesis) は既存の血管から血管を構築している細胞 (特に血管管腔の内壁を裏打ちしている血管内皮細胞)の増殖、遊走により 新しい血管ネットワークが形成される現象のことであり以下の2つに分類される。
1つは、生体内でごく 普通に起こる生理的現象 (physiological angiogenesis) は、創傷治癒の機転や炎症によ る肉芽形成・胎児や胎盤の形成・子宮内膜における性周期などでみられる。 一方、病態生理の進展と密接に関連した血管新生 (pathological angiogenesis) として、糖尿病性網膜症・黄斑変性・乾癬・関節性リュウマチ炎・動脈硬化のプラーク形成、そして悪性固形腫瘍の増殖がある。Physiological angiogenesis は生体防御反応の一種 であり、病気の治癒・組織の発生・再生に与するものであるのに対し、pathological angiogenesis は 病因そのものであり、特に悪性固形腫瘍の増殖・再発・遠隔転移に血管新生が深くかかわっていることは 近年数多く報告されてきている。 (文責:東京慈恵会医大付属柏病院 田中俊英) 血管内皮細胞
血管の内壁を裏打ちしている一層の扁平な細胞であり、生体防御にかかわる様々なサイトカインを産生することが知られている。血管の収縮弛緩反応や血栓形成予防のために大切な機能を司っている。
血管が損傷されたり局所で炎症反応により組織損傷がが生じた際に血小板やリンパ球と接着し組織修復に関与することが知られている。また創傷治癒や炎症による肉芽形成、さらに糖尿病性網膜症,黄斑変性,乾癬,関節性リュウマチ炎,動脈硬化のプラーク形成、悪性固形腫瘍増殖の際に認められる血管新生、血管発生の際、増殖、遊走することにより新たな血管形成の主役を担っている。 また最近この内皮細胞の前駆細胞も発見され、骨髄由来の細胞や末梢血液から単離することも可能となり、血管外科領域や血管新生を介した臓器再生医学への応用が期待されている。 (文責:東京慈恵会医大付属柏病院 田中俊英) アテローム動脈硬化
動脈の内膜下に斑点状の肥厚を特徴とする血管病変で、脂質を貪食したマクロファージの集まりである泡沫細胞により形成され線維性プラークに発展する。
その成因として血漿低比重リポ蛋白(LDL)濃度の上昇によりLDLが動脈壁内へ透過し脂質の蓄積が平滑筋細胞内に生じると考えられている。LDLは平滑筋細胞過形成、内膜下領域への細胞遊走を促進させることも知られている。またさらに血管内皮の損傷も加わり血管内皮の喪失、血小板の内皮下層への接着、血小板の凝集、単球、Tリンパ球走化性、血小板由来増殖因子、単球由来増殖因子の遊離を促し、これら増殖因子により平滑筋細胞が中膜から内膜へ遊走し、そこで分裂増殖し、結合組織を合成し、線維性プラークを形成するといった機序も考えられている。 危険因子として、高血圧、喫煙、糖尿病、肥満、運動不足、家族歴などがあげられる。 (文責:東京慈恵会医大付属柏病院田中俊英) Vascular endothelial growth factor(VEGF)(血管内皮細胞増殖因子)
1983年 Ferrara らにより発見された血管内皮細胞に特異的な増殖因子である。
同年Senger, Dvorak らにより血管透過性作用を有する因子が発見され VPF (vascula r permeability factor) と名付けられた。タンパク質のアミノ酸配列解析の結果、2つは同一のものであることがわかった。VEGFは血管の内側にある内皮細胞の受容体に結合して増殖を促す。がんがある程度大きくなって酸素不足になると、VEGFとその受容体が増加して血管新生が起こる。胎児期に血管をつくるだけではなく、病的な血管をつくるときにも作用している。 また血管透過性亢進作用により癌性腹水の原因になるとも考えられている。 糖尿病が進行すると網膜に新生血管ができるが、これにもVEGFが働いている。 つまり、新しい血管をつくるタンパクである。低酸素状態によりその発現が誘導されることにより血管新生への重要な役割を担っているといえる。 また血管新生のみならず、腫瘍、炎症性病変などにみられる浮腫のメカニズムを説明するうえで本因子の関与が強く示唆されている。 (文責:東京慈恵会医大付属柏病院 田中俊英) 血管内手術
従来、血管病変の検索のために行われている血管撮影の技術の応用として血管カテーテルを挿入し、塞栓術や血管形成術を行なう一連の手技をいう。
脳神経外科領域では近年、脳動脈瘤に対して血管内よりプラチナ製のコイルを瘤の中に詰めてパッキングし動脈瘤破裂に対して予防を試みたり、著しい血管ネットワークを形成する血管奇形に対して塞栓物質を注入することにより血管奇形からの破裂出血を治療する方法が臨床応用されている。また脳梗塞急性期に閉塞血管に対して血栓溶解物質を注入し、血管の再開通させる治療も行われている。また血管形成用バルーンカテーテルを用いて狭窄部に誘導し、バルーンを加圧し膨らませることにより狭窄部を広げることが可能である。
(文責:東京慈恵会医大付属柏病院 田中俊英) 内因性血管新生抑制因子
生体内に存在するタンパク質のうちある種の切断酵素により元の分子とは全く生物学的活性を異にする血管新生抑制因子となり得るものがある。
例えば、フィブロネクチン、プロラクチン16kDのフラグメント、アンジオスタチンの前駆体としてのプラスミノーゲン、エンドスタチンの前駆体としての18型コラーゲンなどである。 こうして特定の酵素により切断されたフラグメントは血管新生終結の際、スイッチをOFFにすると考えられる。こうした内因性の血管新生抑制因子を用いた治療は、副作用を考慮することなく長期間にわたり治療を続けられると考えられ新しい癌の治療法として期待される。 (文責:神奈川県立厚木病院脳神経外科 田中俊英) 血小板膜蛋白
血小板は止血栓形成さらには病的血栓形成の中核をなす。
血小板粘着や血小板凝集は、血小板膜に存在する様々な蛋白により制御されている。 これらは糖蛋白であるためGP(Glycoprotein)と呼ばれており、主としてインテグリンなどの 接着蛋白受容体である。 先天性血小板機能異常症である血小板無力症やベルナール・スーリエ症候群ではそれぞれ血小板に 特異的に発現しているGPIIb-IIIaとGPIb-IXが欠損していることが明らかにされている。 相談相手
大阪大学大学院医学系研究科 分子制御内科学(第二内科)冨山佳昭 講師
参考資料
・Kieffer N and Phillips DR: Platelet membrane glycoproteins: functions in cellular interactions. Annu. Rev. Cell Biol. 6:329-357, 1990・冨山佳昭:血小板膜糖蛋白異常症. 臨床医25:24-28, 1999 ・冨山佳昭:先天性血小板機能異常症の遺伝子解析. 日本内科学会雑誌89:41-47, 2000 (文責:大阪大学大学院医学系研究科 分子制御内科学(第二内科)冨山佳昭) 血小板無力症
先天性血小板機能異常症の1つ。
血小板凝集に重要な、フィブリノーゲン受容体である膜糖蛋白GPUb-Va複合体(インテグリンαIIbβ3)の欠損、低下がその本質である。 常染色体劣性遺伝を示し、家族歴で血族結婚が認められる事が多い。 幼少時より出血傾向をきたし、検査上、出血時間延長、血小板凝集や血餅退縮の低下、欠如が見られる。 遺伝子解析ではGPUb及びGPVaに種々の異常が報告されている。 本質的な治療法は無く、重篤な出血時には血小板輸血で対応するが、GPUb-Va複合体に対する血小板抗体の出現が問題となることがある。 相談相手
・大阪大学大学院医学系研究科分子制御内科学、冨山佳昭 講師・慶応義塾大学輸血センター、半田誠 講師 ・独立行政法人国立病院機構 広島西医療センター内科 藤元貴啓 参考資料
・血小板無力症.本田繁則、冨山佳昭.日本血栓止血学会誌 11(3): 296-300, 2000・本邦における血小板無力症の遺伝子変異.安保浩伸、半田誠.日本血栓止血学会誌 10(4): 243-250, 1999 ・Glanzmann thrombasthenia: integrin alpha IIb beta 3 deficiency. Tomiyama,-Y Int. J. Hematol. 72: 448-54, 2000 ・Glanzmann thrombasthenia: the spectrum of clinical disease. George JN, Caen JP, Nurden AT. Blood 75:1383-1395, 1990 ・Glanzmann Thrombasthenia Database: http://med.mssm.edu/glanzmannDB/menu.html (文責:独立行政法人国立病院機構 広島西医療センター内科 藤元貴啓) ベルナール・スーリエ症候群
先天性血小板機能異常症の1つ。
血小板粘着やTethering(つなぎとめること)に重要な、フォンビルブランド因子受容体である膜糖蛋白GPIb-IX-V複合体の欠損、低下がその本質である。 常染色体劣性遺伝を示す。幼少時より出血傾向をきたし、検査上、出血時間延長、血小板粘着能低下、リストセチン凝集の欠如が見られるがADPやコラーゲン凝集は正常。巨大血小板が見られ、血球計算機では血小板減少となり、ITPとして治療を受けている事が意外に多い。 遺伝子解析ではGPIbα、GPIXの異常が多く、GPIbβの異常も報告されている。 重篤な出血時には血小板輸血で対応する。 相談相手
・独立行政法人国立病院機構 広島西医療センター内科 藤元貴啓・慶応義塾大学輸血センター、半田誠 講師 ・国立病院機構名古屋医療センター臨床研究センター止血血栓研究部 國島伸治 参考資料
・藤村欣吾,藤元貴啓,下村壮司:Bernard-Soulier 症候群.日本血栓止血学会誌 11(4):411-419, 2000.・Bernard-Soulier syndrome. Lopez JA, Andrews RK, Afshar-Khargham V, Berndt MC. Blood 91: 4397-4418, 1998 ・Bernard-Soulier Syndrome Website and Registry: http://www.bernard-soulier.org/ (文責:独立行政法人国立病院機構 広島西医療センター内科 藤元貴啓) 特発性血小板減少性紫斑病(Idiopathic Thrombocytopenic Purpura : ITP)
ITPは抗血小板自己抗体(抗血小板膜糖タンパクIIb/IIIa抗体、抗血小板膜糖タンパクIb抗体など)で感作された血小板が流血中で破壊あるいは細網内皮系で捕捉され循環中から消失するため血小板減少症をきたす自己免疫疾患であり、厚生労働省特定疾患に指定されている。
わが国の年間発症数は1500人前後、男女比は約1:2である。 急性型と慢性型に分類され、急性型(6カ月以内に自然治癒)は小児に多く見られ、ウイルス感染症後に発症し、免疫複合体が関与し、慢性型は成人女子に多く見られ、自己抗体によると考えられている。 最近ではhericobacterpyroriiの除菌により、血小板の増加がみられるとの注目される報告がみられている。 皮膚・粘膜の紫斑を主徴とし、その他の出血症状としては鼻出血、歯肉出血、月経過多などがあるが、頭蓋内出血、筋肉内出血、関節内出血などはまれである。 出血で死亡することはまれであるが、外傷、緊急手術時には出血が問題となる。 診断は厚生労働省特定疾患特発性造血障害調査研究班の診断基準に従い、血液検査には血小板減少以外に異常がない(赤血球、白血球数は正常)、骨髄穿刺では巨核球数は増加あるいは正常(巨核球減少がない)、他に血小板減少をきたす原因(脾腫、血管腫、消費性凝固障害、他の自己免疫疾患など)を除外し、診断する。 血小板数2万以下では出血症状にかかわりなく治療を開始する。 初回治療例では第1選択はステロイド療法であるが、ステロイド療法無効例では脾摘の選択を考慮すべきである。 治療効果は血小板数5万/μl以上をめざす。 ステロイド療法、脾摘、免疫抑制療法無効例を難治性ITPとしている。 全症例の15%前後である。 その他の療法としてはダナゾール療法、ビタミンC大量療法、ビンクリスチン緩速静注療法、漢方薬など20種類以上のレジメンがあるが、一定の効果は期待できない。 最近ではトロンボポイエチンが臨床治験に供されている。 参考文献
・日本医師会雑誌 特別号 血液疾患診療マニュアル(2000年)p.246ー2 51
(文責:筑波大学血液内科 長澤俊郎) VWF-CP/ADAMTS-13(中級向け)
血管内皮細胞で産生されて間も無い止血因子フォンビルブランド 因子(VWF)は、分子量約250kDの単一サブユニットが、それぞれのアミノまたカルボキシ末端同士でジスルフィド結合した超巨大分子構造を持ち、ultra large VWFマルチマ−(UL-VWFM)と呼ばれている。このUL-VWFMは、高いずり応力下にさらされると 血小板凝集を引き起こす。かかるUL-VWFM 依存性の血小板凝集、血栓を防止するために、UL-VWFMを分解して マルチマーサイズを減じる働きをするのがVWF切断酵素(VWF-CP)で、別ADAMTS(adisintegrin and metalloproteinase withthrombospondin type 1 motif)-13と呼ばれている。分子量約200kDの糖蛋白質 からなるメタロプロテア−ゼで1427アミノ酸残基からなる。産生細胞は肝臓の類洞壁細胞(伊東細胞との説あり) で、その遺伝子は9q34にある。この遺伝子異常や、後天性にこの酵素に対するインヒビターができると 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)を引き起こす。
相談相手
・奈良県立医科大学輸血部教授 藤村吉博(MD)・慶応義塾大学医学部中央臨床検査部教授 村田満(MD) ・化学及血清療法研究所 副島見事(PhD) ・国立循環器病センター研究所部長 宮田敏行(PhD) 参考文献
Soejima et al. J Biochem 2001;130:475-480.Fujimura et al. Int J Hematol 2001;75:25-34. Levy et al. Nature 2001;413:488-494. Kokame K, et al. PNAS USA 2002;99:11902-11907. Mori Y, et al. Transfusion 2002;42:572-580. Matsumoto, et al. Blood 2004 (in press). (文責:奈良県立医科大学輸血部 藤村吉博) 血栓性血小板減少性紫斑病 (TTP)(中級向け)
末梢の細小動脈(特に脳、腎臓、そして冠状動脈など)が血小板血栓で閉塞する事によって、・血小板減少、・溶血性貧血、・腎機能障害、・動揺性精神神経症状、・発熱の5症状が見られる全身性重篤疾患です。頻度は0.0004%と推計されています。発見者の名を冠して"Moschcowitz病"と記載している成書も有ります。一方、前記・〜・の3症状を持つ疾患で溶血性尿毒症症候群(HUS)というのがあります。両者は類似症状のため、TTP/HUSあるいは血栓性細小血管障害症(TMA)と記載されています。両者に対して以下の二つの原因が推定されています。
(1)細小動脈の内壁が何らかの原因で障害され、血管内皮細胞の抗血小板機能が失われ、同所で血小板の凝集、消費が進む場合(HUS型)、 (2)互いの血小板をくっつける"分子糊"として知られている血漿フォンビルブランド因子(VWF)、これを分解する肝由来酵素の活性(VWF-CP)が無いと、非常に分子量の大きなVWFマルチマーが血中に蓄積し、血小板血栓がどんどんできる状態となるもの(TTP型)。 TTPには稀にVWF-CPの遺伝子異常にもとづく先天性TTPがあり、これは生後間もなく重症黄疸と血小板減少で発症するUpshaw-Schulman症候群(USS)という病名で知られています。USSの遺伝形式は見かけ上常染色体劣性を示します。 相談相手
奈良県立医科大学輸血部教授 藤村吉博
参考資料
TTPとADAMTS13変異;藤村吉博、Annual Review 2003血液.
(文責:奈良県立医科大学輸血部 藤村吉博) フォンビルブランド因子 (VWF)(中級向け)
VWFは主に血管内皮細胞で産生される止血因子で、分子量約250kDの単一サブユニットがSS結合で両アミノ末端同士、両カルボキシ末端同士で結合をした多重合体構造(マルチマー)を示す。細胞内に蓄積された後、循環血液中に放出されるが、この際血漿中のVWF特異的分解酵素(VWF-CP)にて切断を受け、様々なサイズのマルチマーとして血液中に出現するようになる。VWF遺伝子は第12常染色体上にあり、この遺伝子の異常に基づく遺伝性出血性疾患がフォンビルブランド病である。VWFの機能は"分子糊"として障害血管壁での血小板の粘着・凝集促進による血小板血栓の形成を促すが、一方で凝固VIII因子(VIII)と結合しVIII/vWF複合体を形成し、凝固血栓誘導作用を、また複合体形成によるVIIIの生体内分解を防御する作用も合わせ持つ。VWFにはその全質量の18.7%にあたる糖側鎖が付着しているが、この中には各個人に特有のABO血液型糖鎖が含まれており、血漿蛋白質として大変ユニークとされている。
相談相手
藤田保健衛生大学総合医科学研究所千谷晃一 名誉教授奈良県立医科大学輸血部藤村吉博 教授 参考資料
Fujimura Y, Titani K: Structure and function of von Willebrand factor.Haemostasis and Thrombosis、3rd ed, (Churchill- Livingstone), p379-395, 1994. (文責:奈良県立医科大学輸血部 藤村吉博) tPA(組織型プラスミノゲンアクチベータ−)
プラスミノゲンは、固まった血(血栓)を溶かす(線溶)反応の最終段階で血栓の主成分である フィブリンを限定分解するプロテアーゼ、プラスミンになる前駆体1本 鎖糖タンパク質です。
血中に10-20 mg/dlの濃度で存在し、必要な場所でプラスミノゲン活性化因子の働きによって 限定分解を受けプラスミンとなります。5つのクリン グル構造を有するアミノ末端(N末)A鎖と プロテアーゼ活性を持つB鎖とからなり、クリングルを介 して細胞や細胞外基質に結合して働きます。 プラスミンはフィブリンの他にもプロコ ラゲナーゼなどの酵素前駆体や、HGF, TGF-βなどの サイトカインを限定分解し活性 化することを通して、組織修復、並びに癌の浸潤など 様々な病態形成に関わっています。 相談相手
・近畿大学医学部第2生理 松尾理 教授
参考資料
・(一般向け)青木延雄著、血栓の話、中公新書1523, 2000・Fedor Bachmann, The Plasminogen-Plasmin Enzyme System, In Colman RW, Hirsh J, Marder VJ, Salzman EW (eds): Hemostasis and Thrombosis: Basic Principles and Clinical Practice, 3rd ed. Philadelphia, PA, JB Lippincott Co, pp1592-16 22, 1994 ・Francis J. Castellino, Plasmin, In Barrett AJ, Rawlings ND, Woessner JF (e ds): Handbook of Proteolytic Enzymes, London, UK, Academic Press, pp190-199, 1998 ・Desire Collen, The plasminogen (Fibrinolytic) System, Thromb Haemost 82(2) ; 259-270, 1999 (文責:理研筑波研究所 小嶋聡一) 組織型プラスミノゲン活性化因子(tPA)
tPAは、ウロキナーゼ型プラスミノゲン活性化因子(uPA)とともに、プラスミノゲンのArg-Valを切断してプラスミンに変換するプロテアーゼです。
主に血管内皮細胞より1本鎖糖タンパク質として産生・分泌されます。 血栓(フィブリン)に高い親和性を有しているので、主に血栓溶解の際のプラスミノゲン活性化に 働いています。遺伝子工学的に組換え型tPAが作られ血栓溶解薬として使用されています。 相談相手
・近畿大学医学部第2生理 松尾理 教授
参考資料
・<一般向け>青木延雄著、血栓の話、中公新書1523, 2000・一瀬白帝、プラスミノゲンアクチベーター、Key Word 1998-2000血液、溝口秀昭、浦部晶夫、斉藤政樹、中川雅夫編、先端医学社、東京、pp196-197, 1998 ・小嶋聡一、内皮細胞と線溶系、血管と内皮 10(4); 305-314, 2000 ・Fedor Bachmann, The Plasminogen-Plasmin Enzyme System, In Colman RW, Hirsh J, Marder VJ, Salzman EW (eds): Hemostasis and Thrombosis: Basic Principles and Clinical Practice, 3rd ed. Philadelphia, PA, JB Lippincott Co, pp1592-1622, 1994 ・H.R. Lijnen & D. Collen, t-plasminogen activator, In Barrett AJ, Rawlings ND, Woessner JF (eds): Handbook of Proteolytic Enzymes, London, UK, Academic Press, pp184-190, 1998 (文責:理研筑波研究所 小嶋聡一) ウロキナーゼレセプター(u-PAR)
u-PARは生体内の様々な細胞の表面にあるウロキナーゼ型プラスミノゲン活性化因子 (u-PA)の受容体です。その作用は、結合したu-PAの酵素活性を利用して細胞周囲の 蛋白分解作用を引き起こしたり、インテグリンと呼ばれる細胞接着因子と提携して、細胞内シグナル伝達を起こしたりすることです。癌細胞の浸潤や転移にはu-PA/u-PAR系の 蛋白分解活性が関与し、組織修復の際の組織細胞の移動や炎症における白血球の遊走には さらに細胞内シグナル伝達も関与しています。
相談相手
くらしき作陽大学食文化学部栄養学科 深尾偉晴 教授
参考資料
・深尾偉晴、松尾 理:内皮細胞上の線溶分子の受容体. 血管と内皮 10 (4):321-331, 2000.・深尾偉晴、松尾 理:細胞移動ー組織修復と線溶系. 血液・腫瘍科 39 (4): 319-326, 1999. ・深尾偉晴、松尾理:炎症と線溶系. 臨床リウマチ 10 (2) : 75-90, 1998. ・Fukao, H., Ueshima, S., Okada, K. and Matsuo, O. The role of the pericellular fibrinolytic system in angiogenesis. Jpn. J. Physiol. 47(2):161-171, 1997. ・深尾偉晴、松尾理:癌細胞の転移、浸潤と線溶系. Biotherapy 10 (8) :1067-1074, 1996. ・深尾偉晴、松尾理:単球と線溶系反応. 血液・腫瘍科 33 (4) : 292-300,1996. ・深尾偉晴、萩家康弘、松尾理: ウロキナーゼレセプター:その細胞性線溶における構造と機能. 血管18 (4):193-205, 1995. ・Danソ K, Behrendt N, Brunner N, Ellis V, Ploug M, and Pyke C : The urokinase receptor. Protein structure and role in plasminogen activation and cancer invasion. Fibrinolysis 8 (Suppl 1): 189-203, 1994 (文責:近畿大学医学部第2生理学教室 松尾 理) スタフィロキナーゼ
スタフィロキナーゼ(以下SAKと略)は黄色ブドウ球菌が産生し分泌する蛋白質で、SAK単独では何ら酵素活性を示しませんが、プラスミンと複合体を形成することによってプラスミノゲンをプラスミンに活性化させるプラスミノゲンアクチベーター(PA)活性を発現します。SAK-プラスミン複合体によるPA活性はα2-プラスミンインヒビター(以下α2-PIと略)によって阻害されることから、SAKはα2-PIの存在する循環血液中では線溶活性を発現しません。一方、SAK-プラスミン複合体は、複合体を構成するプラスミンのリジン結合部位を介してフィブリンと結合します。
フィブリンに結合したSAK-プラスミン複合体はα2-PIによる活性阻害を殆ど受けず(α2-PIによる活性阻害は1/100に減弱する)、フィブリンに結合しているプラスミノゲンをプラスミンに活性化してフィブリン(血栓)を分解します。このように、SAKは循環血液中では線溶活性を出現させず、血栓のみを特異的に溶解する薬剤として期待されています。しかし、細菌由来のSAKを体内に投与すると、アレルギー反応や中和抗体の出現が認められます。 そこで、抗原性を減弱させた組換えSAKや,抗原性を減弱させたうえにさらにポリエチレングリコールの結合によって半減期を延長させた組換えSAKが開発されています。外国では後者の組換えSAKを用いて急性心筋梗塞症に対する臨床治験が行なわれ、良好な結果が得られています。 相談相手
・近畿大学農学部食品栄養学科生体機能学教室 上嶋 繁 教授
参考資料
・上嶋 繁ら、血栓溶解療法ーその種類と比較、medicina 37(5):769-772,2000.・岡田清孝ら、スタフィロキナーゼの立体構造と機能発現、日本血栓止血学会誌11(4):385-390, 2000. ・Collen D et al.、Recent developments in thrombolytic therapy、Fibrinolysis & Proteolysis 14(2/3):66-72, 2000. ・Collen D、The plasminogen (fibrinolytic system), Thromb Haemost 82(2) 259-270,1999. ・上嶋 繁ら、新しい血栓症治療薬、血栓と循環 6(2):67-73, 1998. ・松尾 理、線溶療法薬、in 血栓症治療(池田康夫 編)pp125-139、メディカルレビュー社、東京、1996. (文責:近畿大学農学部食品栄養学科生体機能学教室 上嶋 繁 教授) LDL receptor related protein (LRP)
LRPはLDL受容体遺伝子ファミリーに属する約600kDaの細胞膜タンパク質で、アポリポプロテインE(apoE)及びapoEに富むリポタンパク質やカイロミクロンレムナント、リポプロテインリパーゼのレセプターとして脂質代謝に関与しています。LRPはα2マクログロブリン(α2M)レセプターと同一分子であり、種々のプロテアーゼと結合したα2M、PAI-1と結合したuPA,tPAなどをエンドサイトーシスにより細胞内へ取りこみ、血液凝固・線溶に係わる様々な因子のクリアランスにも関与しています。LRPは肝臓、脳、肺、小腸、筋肉などの臓器に存在していますが、最近、アルツハイマー症患者脳の老人斑にLRPやそのリガンドの蓄積が観察され、脳におけるLRPの生理的意義や病態形成への関与も注目されています。
相談相手
・日本大学大学院 応用生命科学 関 泰一郎 助教授
参考資料
・高橋慶一:LDL受容体関連蛋白:高脂血症の分子生物学、医学のあゆみ(別冊),1996,p85-90.・中原洋、神窪勇一:LRPの欠損マウス、血栓止血誌 1998, 9(3):205-214. ・Camani C, Kruithof EK. Clearance receptors for tissue-type plasminogen activator. Int J Hematol. 1994,60(2):97-109. ・Gliemann J. Receptors of the low density lipoprotein (LDL) receptor family in man. Multiple functions of the large family members via interaction with complex ligands. Biol Chem. 1998,379(8-9):951-64. ・Lambert JC, Chartier-Harlin MC, Cottel D, Richard F, Neuman E, Guez D,Legrain S, Berr C, Amouyel P, Helbecque N. Is the LDL receptor-related protein involved in Alzheimer's disease Neurogenetics. 1999,2(2):109-13 (文責:日本大学大学院・応用生命科学専攻・生体機能科学分野 関 泰一郎) Plasminogen activator inhibitor type-1 (PAI-1)
PAI-1はtPA、uPA(活性)を特異的に阻害するセリンプロテアーゼインヒビターであり、plasminの生成を抑制します。PAI-1は立体構造の違いによりtPA,uPA阻害活性を示す活性型(active form)と示さない潜在型(latent form)があります。通常血漿中には20ng/mlのPAI-1が存在し、血管内皮細胞がPAI-1の主要な産生細胞であると考えられますが、肝細胞、megakaryocyte、脂肪細胞での産生も知られています。
PAI-1は急性期タンパク質であり、種々のサイトカイン・増殖因子により産生が亢進し、敗血症やDICにおける虚血性臓器障害の原因の一つとして考えられています。また、PAI-1遺伝子プロモータの一塩基置換による遺伝子多型が知られており、血漿PAI-1濃度の増加が明らかにされています。 相談相手
・Professor Paul Declerck;Faculty of Pharmaceutical Sciences,KatholiekeUniversiteit Leuven, Belgium・日本大学大学院 応用生命科学 関 泰一郎 助教授 参考資料
・濱本高義、岩永貞昭、PAI-1の欠損マウス、血栓止血誌、1997,8:410-413.・小出武比古、城谷裕子、プラスミノゲンアクチベーターインヒビター1(PAI-1)の立体構造と機能相関、血栓止血誌、2000,11(1):89-94. ・Gils A, Declerck PJ. Structure-function relationships in Serpins:current concepts and controversies. Thromb Haemost.1998,80(2):531-41. (文責:日本大学大学院・応用生命科学専攻・生体機能科学分野 関 泰一郎) 糖尿病性腎症
腎症は網膜症、神経症と並んで糖尿病の3大合併症と呼ばれています。糖尿病患者では急性心血管系疾患の合併率が高く重篤な血栓症が合併しやすいことが知られています。
また、糖尿病患者の腎組織における凝固・線溶系因子の動態が腎症と密接に関連することが明らかにされつつあり、血糖・血圧のコントロールに加えアンジオテンシン変換酵素阻害薬、ヘパリン、ワーファリンが腎機能の低下を阻止することが知られています。 相談相手
・社会保険横浜中央病院 腎・透析・血液浄化療法科 海津嘉蔵
参考資料
・海津嘉蔵:糖尿病と血栓症、日本内科学会雑誌、1997, 86(6), 67-72.・海津嘉蔵、Qie Yue Ling:糖尿病と血栓傾向、medicina, 1996-7,33(7),1301-4. ・羽田勝計:腎症のマネージメント、Mebio, 2001,18(3), 43-46. ・Perolle J-P et al., Plasminogen activator inhibitor type-1 is a potential target in renal fibrogenesis. Kidney International, 2000, 58,1841-1850. (文責:日本大学大学院・応用生命科学専攻・生体機能科学分野 関 泰一郎) 内臓脂肪症候群
肥満は糖尿病、高脂血症、高血圧、さらには心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患発症の基盤となっている。
これらの病気は必ずしも全身の肥満度に関連するのではなく、腹腔内内臓脂肪の蓄積に関連していることが明らかになった。つまり脂肪の有無にかかわらず内臓脂肪の蓄積は様々な代謝異常を合併し、動脈硬化のリスクファクターが集簇した状態であり内臓脂肪症候群と呼ばれている。
最近では脂肪細胞自身がさまざまな生理活性物質(アディポサイトカイン)を分泌していることが明らかにされ、内臓脂肪症候群の分子機構が明らかにされつつある。 相談相手
・大阪大学大学院医学系研究科 分子制御内科学(第二内科) 船橋 徹 講師
参考資料
・松沢祐次:肥満分子医学総論. pp62-66 最新内科学体系 プログレス2 内分泌・代謝疾患. 中山書店 1997 ・船橋 徹:Multiple risk factor症候群と内臓脂肪症候群. TG EPOCH 17:2-7, 1999 (文責:大阪大学大学院医学系研究科 分子制御内科学(第二内科)冨山佳昭) レプチン
肥満の原因の一つに食欲コントロールの異常があげられる。
レプチン遺伝子(ob遺 伝子)は、遺伝性肥満マウス(obマウス)の病因遺伝子として発見された脂肪組織に特異的に発現する 遺伝子である。レプチン遺伝子はN末端に21アミノ酸からなるシグナルペプチドを有する 167アミノ酸のレプチン前駆体蛋白質をコードし、循環血中にはシグナルペプチドが除かれた 成熟型レプチンが存在する。レプチンは主に視床下部に存在するレプチン受容体を介して 食欲制御を行っていると考えられ、obマウスではレプチン遺伝子にナンセンス変異 (105Arg→stop)が存在しレプチンが合成されないため過食となる。ヒトでも稀であるが レプチンやレプチン受容体遺伝子異常に起因する肥満が報告されている。 相談相手
・大阪大学大学院医学系研究科 分子制御内科学(第二内科) 船橋 徹 講師
参考資料
・Zhang Y, Proenca R, Maffei M, Barone M, Leopold L, Friedman JM: Positional cloning of the mouse obese gene and its human homologue. Nature 372:425-432, 1994・松澤佑次:肥満と肥満症. Molecular Medicine臨時増刊号35:388-389, 1998 ・細田公則、中尾一和:ob, db遺伝子異常と肥満. pp80-84, 最新内科学体系 プログレス2 内分泌 ・代謝疾患. 中山書店1997 (文責:大阪大学大学院医学系研究科 分子制御内科学(第二内科)冨山佳昭) 肝硬変
推定患者数約40万人の肝硬変は慢性肝障害の終末像で我が国の死亡原因の第8位です。
その病因の約90%がウイルス性(C型約70%、B型約20%)で残りがアルコール性、自己免疫性などです。肝の壊死と再生、持続する炎症に線維化が続発し、肝硬変に至ります。 肝線維化の過程では、血小板由来成長因子(PDGF), endothelin,(TGF-β: Transforming Growth Factor-β)といったサイトカインの働きで肝星細胞が活性化され、コラゲンを始めとする線維タンパク質を異常産生することがわかってきました。 年率5-7%の高率で肝癌に至る主要経路であり、現在、その治療法の開発に向けて様々な取り組みがなされています。 相談相手
・岐阜大学第一内科 森脇久隆 教授・Prof. Scott L. Friedman Department of Medicine, Division of Liver Diseases Mount Sinai School of Medicine 参考資料
・奥野正隆ら、肝星細胞をターゲットにした肝線維化の治療、肝膵胆 40(2); 263-2 72, 2000・Scott L. Friedman, Molecular Regulation of Hepatic Fibrosis; an Integrated Cellular Response to Tissue Injury, J. Biol. Chem. 275(4); 2247-2250, 2000 (文責:理研筑波研究所 小嶋聡一) 心筋梗塞
心筋梗塞は、冠動脈の閉塞によって灌流域の心筋が壊死に陥る病気です。
締めつけられるような強い胸痛が30分以上持続します。 病院に辿り着くまでに3割の方が死亡します。 病院に搬送された方もかつて30%の死亡率がありましたが、緊急カテーテルの発達により死亡率は10%以下にまで改善してきました。 発症からただちに診断し、早期(6時間以内)に再灌流する事が非常に重要です。 典型的な症状があり心電図にて隣接する2つ以上の誘導でST上昇(もしくは低下)を認めたならば、すぐに専門医の診察を要請しましょう。 相談相手
・自治医科大学循環器内科 島田和幸 教授
参考資料
・新臨床内科学;高久史麿ら監修 医学書院・循環器疾患最新の治療2000-2001; 篠山重威ら編集 南江堂 (文責:自治医科大学循環器内科 松井圭二 医師) 狭心症
狭心症は、冠血流の減少により胸痛を来す病気です。
原因は動脈硬化による器質的な冠動脈狭窄と、冠動脈攣縮によるものがあります。 器質的な狭窄による狭心症は、一定以上の労作で必ず胸痛が生じ、安静により3分程度で消失するという特徴があります。一方、冠攣縮による狭心症は夜間から早朝にかけて好発し15分程度持続します。 いずれもニトログリセリンの舌下投与が奏功します。 治療方針の決定のためには冠動脈造影をすることが望ましいです。 相談相手
・自治医科大学循環器内科 島田和幸 教授
参考資料
・新臨床内科学;高久史麿ら監修 医学書院・循環器疾患最新の治療2000-2001;篠山重威ら編集 南江堂 (文責:自治医科大学循環器内科 松井圭二 医師) 骨髄幹細胞
近年、骨髄幹細胞は血球だけでなく骨、軟骨、筋、脂肪、血管、神経などに分化する多能性を有することが明らかになってきました。
そこで、多分化能を有する骨髄幹細胞から自己の組織(あるいは臓器)をつくり出す再生医学が盛んに研究されています。骨髄中の血管内皮前駆細胞を、動脈硬化で虚血に陥った下肢に注入して血管新生を起こす、という臨床治験もわが国で始められています。 相談相手
・信州大学医学部循環器内科 池田宇一 教授
参考資料
・最新医学 1999年 12月号 54巻 特集 再生医学・医学のあゆみ 2000年 9月号 vol.194 No.10 特集 血管新生研究の新しい展開 (文責:自治医科大学循環器内科 松井圭二 医師) 放射線傷害と凝固・線溶
放射線の作用は直接DNAを障害する直接作用と生体の60%を占める水に作用してできたフリーラジカルが作用する間接作用があり、主としてラジカルによる酸化障害と言える。 また、放射線は、分裂・増殖細胞を強く傷害するので造血組織>生殖組織>脾臓・胸腺>消化管>循環器>腎臓>肝臓>中枢神経>の順に放射線感受性である。 放射線傷害には数週間以内に起こる急性障害と数年後に起こる晩発障害があり、凝固・線溶系への影響は急性放射線障害の一部として表れ、造血器障害から血小板減少、消化器障害から消化器出血がある。 ラット全身または肝照射実験ではAPTT,PTが延長する。 血管内皮も傷害される。 照射線量、照射部位により傷害は異なる。 相談相手
・愛知医科大学 放射線医学 伊藤要子 講師
参考文献
放射線障害:・金子昌生、放射線障害、標準放射線医学(医学書院) |