日本血栓止血学会
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用語集
血液凝固機序(coagulation mechanisms)
定義
血液凝固がどのように起こるかの仕組み。血液中にある多数の凝固因子が相互に反応して最終的にフィブリノゲンをフィブリンにする反応である。昔は凝固に必要と思われる因子も少なかったが、時代とともに新しい凝固因子が発見され複雑になった。
ポイント
  1. 血液中の12種類のたんぱく質(凝固因子)、カルシュウムイオン、血小板(又はリン脂質)が必要である。
  2. 凝固機序には2種類(外因系と内因系)が知られている。
  3. 外因系は、血管が破れたときに外から組織液が入り血中の凝固因子を活性化して進む。止血に重要なのは外因系である。
  4. 一方、内因系は血液がガラスなどの異物面と接触した時に凝固因子が活性化されて進む。二つの経路の引き金は異なるがあとの反応はほぼ同じである。
  5. 凝固因子が一つでも欠乏するとフィブリンが出来るのが遅くなり止血困難となる(出血する)。
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凝固制御機序
血液凝固制御機序(anticoagulant mechanisms)
定義
血液凝固制御機序は、血管の傷害部位以外での血栓形成を阻止し、血液の流動性を維持する生体防御機構の1つである。この凝固制御機序は、活性型凝固補助因子を蛋白分解して阻害するプロテアーゼ制御機序、及び活性型プロテアーゼ凝固因子を阻害するプロテアーゼインヒビター制御機序に大別される。
ポイント
  1. 血液凝固機序は血管の傷害部位での止血血栓の形成とそれに続く創傷治癒に重要な生体防御機構である。
  2. 他方、正常な血管内には 傷害部位以外での血栓の形成を阻止し、血液の流動性を維持するための凝固制御機序が存在する。
  3. 凝固制御機序は主に血管内皮細胞上で進行し、その作用機序から、(1)活性型凝固補助因子を蛋白分解して阻害するプロテアーゼ制御機序(プロテインC凝固制御機序)、及び (2)活性型プロテアーゼ凝固因子を直接阻害するプロテアーゼインヒビター制御機序(組織因子経路インヒビター: tissue factor pathway inhibitor [TFPI]による制御機序と、アンチトロンビン(AT)やヘパリンコファクターII (HCII)等のセルピン: serine protease inhibitor [serpin]による制御機序)に大別される。
  4. プロテインC凝固制御機序は、プロテアーゼ前駆体のプロテインCの活性化によって開始される。トロンビン・トロンボモジュリン(TM)の限定分解を受けて活性化されたプロテインC(活性化プロテインC: activated protein C [APC])は、細胞膜上のプロテインSに結合して、凝固反応を増幅する補助因子の活性化第V因子(第Va因子)と活性化第VIII因子(第VIIIa因子)を蛋白分解して失活化し、凝固増幅反応を制御する。
  5. また、APCは内皮細胞プロテインC/APC受容体(endothelial protein C/APC receptor [EPCR])に結合して、プロテアーゼ活性化受容体(protease-activated receptor-1 [PAR-1])を活性化し、抗炎症作用、細胞保護作用を示す。
  6. TFPIによる凝固制御機序は、血管内皮細胞上のヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)に結合したTFPIが、組織因子(tissue factor [TF])に結合した活性化第VII因子(第VIIa因子)と活性化第X因子(第Xa因子)を阻害して、TF依存性凝固開始反応を制御する機序である。
  7. ATによる凝固制御機序は、生理的には血管内皮細胞上のHSPGに結合して活性化されたATIIIが、トロンビン、第Xa因子、活性化第IX因子(第IXa因子)などを阻害して、凝固反応を制御する機序である。
  8. ATによる凝固制御機序は、外来性のヘパリンによっても活性化される。未分画ヘパリンはATによるトロンビンと第Xa因子の両方の阻害を促進するが、低分子量ヘパリンや合成低分子ヘパリン(フォンダパリヌクス)はATによる第Xa因子の阻害を選択的に促進する。
  9. HCIIによる凝固制御機序は、生理的には血管内皮下のデルマタン硫酸や内皮上のHSPGに結合して活性化されたHCIIが、トロンビンを阻害して、凝固反応を制御する機序である。
血液凝固制御機序に関わるプロテインC、プロテインS、TM、EPCR、TFPI、AT、HCII等の因子欠損症は血栓症を発症しやすい血栓性素因となる
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フィブリノゲン (Fibrinogen、第I因子、factor I、FI)
フィブリノゲンは、異なる3本鎖ポリペプチドがジスルフィド結合によって相互に連結して2量体(AαBβγ)2を形成している分子量340 kDaの糖タンパク質で、血栓の主成分であるフィブリンの前駆体である。凝固反応で生じたトロンビンが、AαよびBβ鎖のアミノ末端部分(フィブリノペプチドAとB)を遊離すると水溶性フィブリンモノマーが生じ、引き続いて規則正しいフィブリンモノマーの非酵素的重合反応が進行してフィブリン繊維が形成されゲル化(固相化)する。フィブリン繊維はさらに活性化第XIII因子(FXIIa)による分子内および分子間架橋反応により安定化フィブリンに変換されて止血機能を発揮する。また、フィブリノゲンは凝固反応の因子としてばかりでなく、血小板凝集の一因子としても働き、妊娠の維持をはじめ、いろいろな生体内反応にも重要な働きをする。
フィブリノゲンは肝臓で産生され、健常人の血漿には200〜400 mg/dL存在する。血漿濃度は年齢と共に増加するが、炎症の急性期、外傷性ショック、心筋梗塞などで一過性に血漿濃度が増加する一種の急性期反応物質でもある。
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プロトロンビン(Prothrombin、第II因子、factor II、FII)
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組織因子(tissue factor,TF, factor III)
定義
分子量47,000の膜蛋白質であり、第VII因子(あるいは活性化第VII因子(第VIIa因子, FVIIa))と複合体を形成して第IX因子および第X因子を活性化する外因系凝固反応の開始因子(凝固機序を参照)。
ポイント
  1. TFは通常、血管外組織や血管外膜、内皮下の線維芽細胞、周皮/平滑筋細胞などの血液と直接接触しない細胞に発現しており、血管傷害で血液が流出した際は直ちに血中の第VII因子(第VIIa因子)を結合して凝固プロテアーゼ活性化のカスケード反応を開始させる。
  2. エンドトキシンや炎症性サイトカイン、トロンビン、脂質メディエータは単球や内皮細胞にTFの発現を誘導する。感染や炎症の局所でこれらの細胞に発現したTFは、血栓による異物の封じ込めや炎症反応の増幅、創傷治癒などに機能する。
  3. TFの発現制御の破綻はDICの要因であり、動脈硬化病変の形成・進展や静脈血栓症にも関与すると考えられている。
  4. 動脈硬化性プラークにおいて、TFは泡沫化したマクロファージや平滑筋細胞などに多量に発現しており、プラーク破裂の際,血栓形成を惹起する要因になる。
  5. 急性前骨髄球性白血病や多くの固形癌細胞ではTFが高発現しており,患者の易血栓傾向との関連が示唆されている.
  6. 血中に凝固活性を有するTF(blood-borne TF)が循環していることが示され、この血中TFを介した新しい凝固反応の活性化・増幅機序が提唱されている。
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第V因子(factor V, FV)
定義
第V因子は, 血液凝固反応カスケードの中でコファクターとして働く凝固因子である.
血液中で第V因子はコファクター活性がほとんどない前駆体として存在しており, トロンビンによる限定分解を受けて活性化第V因子(FVa)になり, 血小板膜上でプロトロンビナーゼ複合体(prothrombinase complex:活性化第X因子+活性化第V因子+リン脂質+Ca2+)を形成し, プロトロンビンをトロンビンへと活性化して凝固反応を促進する.
ポイント
  1. 第V因子は出血性疾患のパラ血友病の欠損因子として発見され, 第V因子の欠乏や活性低下は出血傾向を惹き起こす.
  2. 第V因子は分子量約330KDaの一本鎖糖蛋白質として主に肝臓で合成され, 濃度約7μg/mL (20nM), 半減期約12-15時間で血中に存在する. 血小板α顆粒, 巨核球, 単球, 内皮細胞などにも存在し, 巨核球においても合成されると考えられている.
  3. 第V因子は, 第VIII因子やセルロプラスミンなどの銅結合性蛋白質と共通ドメイン構造(A1-A2-B-A3-C1-C2)をとる.
  4. 活性化第V因子は, トロンビンや活性化第X因子により, 第V因子のArg709-, Arg1018-, Arg1545-が限定分解を受けてBドメインが除去され, H鎖(A1-A2)とL鎖(A3-C1-C2)が Ca2+を介して結合している.
  5. 活性化第V因子は, 活性化プロテインC(APC)によって, プロテインS(PS)の存在下でArg306-, Arg506-, Arg679-が分解されて不活性化第V因子になる.
  6. 第V因子は, プロトロンビナーゼ複合体を形成し凝固反応を促進するだけではなく, 制御する機能も備えている. 活性化プロテインCが第VIII因子を不活性化する際に, 第V因子はプロテインSと結合することによって, 活性化プロテインCのコファクターとして抗凝固作用をつかさどる.
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第VII因子(factor VII、FVII)
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第VIII因子(factor VIII、FVIII)
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第IX因子( factor IX、FIX )
定義
第VIIa因子(組織因子・リン脂質・カルシウムイオン複合体として)あるいは第XIa因子(カルシウムイオン存在下に)により2箇所の限定分解を受け、活性化ペプチドの遊離を伴い、プロテアーゼ活性を有する二本鎖の活性化第IX因子(Factor  IXa)に変換され、第VIIIa因子の存在下、第X因子を活性化する。セリンプロテアーゼに分類される血液凝固因子であり、止血に重要な役割を果たしている。
ポイント
  1. 肝臓において酵素前駆体として合成される分子量約57, 000の一本鎖糖蛋白質である。
  2. ビタミンK依存性蛋白質であり、アミノ末端領域に12残基のγ−カルボキシグルタミン酸を有し、カルボキシル末端領域が触媒活性本体のセリンプロテアーゼである。
  3. 第VII因子、第X因子、プロテインCとは共通の分子構造を有する。
  4. 第IXa因子の活性は生理的にはアンチトロンビンIIIにより制御される。
  5. 第IX因子の遺伝子はX染色体長腕に所在する。
  6. 従来まで知られていた血友病とは異なる、1952年に報告された、血友病例において欠損していることが後年明らかにされた血液凝固因子である。
  7. 第IX因子の先天的欠損は出血性疾患である血友病B(クリスマス病)として知られ、伴性劣性形式で遺伝する。
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第X因子(factor X, FX、)
定義
肝臓で合成される分子量約59,000のビタミン K依存性の凝固因子で、血液中では凝固活性のない酵素原として存在する(血液濃度:5~10μg/mL)。生理的には、組織因子に結合した活性化第VII因子(第VIIa因子)は第IX因子を活性化し、生成された活性化第IX因子(第Ixa因子)が活性化第VIII因子(第VIIIa因子)の補酵素作用の存在下に第X因子を活性化する。高濃度の活性化第VII因子(第VIIa因子)/組織因子複合体は、第IX因子と第VIII因子に依存せずに第X因子を直接活性化することができる。生じた活性化第X因子(第Xa因子)は凝固反応の次の過程として、活性化血小板膜上で活性化第V因子(第Xa因子の補酵素として働く)に結合し、プロトロンビンを活性化しトロンビンを生成する。
トロンビンを始め種々のセリンプロテアーゼは蛋白分解に止まらず、Protease-activated receptor (PAR) を活性化することで細胞内シグナル伝達を起こす。PARファミリーにはPAR1、PAR2、PAR3、PAR4の4種類の分子が同定され、トロンビンはPAR1、PAR3、PAR4を、活性化第X因子はPAR1、PAR2を活性化する。活性化第X因子はPAR1あるいは PAR2を活性化することで、凝固反応のみならず免疫、炎症、創傷治癒などにも関与する。
ポイント
  1. 第X因子が低下すると、プロトロンビン時間(PT)と活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)がともに延長する。臨床検査では第X因子凝固活性として測定される(正常値:80~120%)。
  2. 先天性第X因子欠乏症(常染色体性劣性遺伝)は脳出血など強い出血傾向を示す。後天性欠乏は、肝硬変などの重症肝疾患、ビタミンK欠乏、抗第X因子自己抗体でおこる。アミロイドーシスにおいても第X因子がアミロイドへ吸着され欠乏することがある。
  3. 活性(化)第VII因子を含む製剤は、第VIII因子/第IX因子を介さずに第X因子を直接活性化できるため、インヒビターを有する血友病患者の出血治療に有効である。
トロンビンを阻害せずに活性化第X因子を特異的に阻害する薬剤(抗Xa薬、Xa阻害薬)は、効率よく凝固反応を抑える一方、出血合併症は少ないとされ、術後の静脈血栓塞栓症予防に用いられている。
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第XI因子(factor XI,FXI)
定義
FXIは酵素の前駆体であり,血液凝固反応が開始した際,前駆体から酵素活性を持つ活性化型(FXIa)に変化し,FXIを活性化する凝固因子は、トロンビン,活性化第XII因子および活性化FXI自身であり,このFXIを介した反応は血液凝固反応維持機構に重要な役割を果たす。第XI因子(factor XI,FXI)は血液凝固因子の一種で,その欠乏・異常症で異常出血する場合がある.
参考資料
  1. ヒトFXIは同一構造のサブユニットが2つ結合した独特の構造(ホモダイマー構造)を持ち,この構造はヒト第XI因子が凝固反応に寄与するために必須である.
  2. 最近の動物モデルによる研究や臨床研究で,敗血症,虚血性心疾患に伴う凝固異常などにおける第XI因子の血栓成長維持への関与が明らかにされている.
  3. FXI欠乏・異常症は異常出血がみられる症例があり(異常が発見できないものもある),先天性は白人系ユダヤ人で比較的よく発見されるが,本邦では稀である.海外では止血にリコンビナント活性化第VII因子製剤などが使用される.
  4. 後天性のFXI欠乏・異常症は稀な疾患で,FXIの活性を失わせる抗体が血液中に出現し発症する.原因不明の場合もあるが,全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus, SLE)などの自己免疫疾患,抗リン脂質抗体症候群,悪性腫瘍などが基礎疾患で発症するものが報告されている.このスクリーニング検査は正常血漿との混合試験(cross mixing test)である.
  5. FXI欠乏・異常症では,活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)が血友病と同様に異常延長する.血友病との鑑別は,凝固因子定量、FXI定量で行なう.
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第XII因子(factor XII、FXII)
定義
596個のアミノ酸からなるセリンプロテーゼ前駆体(M.W.80kDa)である。肝細胞で単鎖ポリペプチドとして産生され血中に分泌される。血漿中濃度は30~40mg/mLである。陰性荷電を有する物質と結合することにより活性化をうけ活性化第XII因子(第XIIa因子)となり内因系凝固が開始される。欠損症発端者の名前からHageman因子ともいわれる。
ポイント
  1. 陰性荷電を有する物質に高分子キニノゲンとともに結合し、カリクレインあるいは微量の活性化XII因子により活性化され、2本鎖のセリンプロテアーゼとなり第XI因子を活性化し、内因系凝固機序が開始される。
  2. 構造的には線溶系酵素と相同性がありクリングルドメインを有する。
  3. 人種間差があり、白人は東洋人に比較し約2倍の血中濃度がみられる。この原因は、F12遺伝子の-4C/TのSNP(1塩基遺伝子多型)の頻度による。
  4. 凝固活性化だけでなく、線溶系、補体系、キニン系にも関与する。
  5. serin protease inhibitor family (Serpin)に属するC1-inhibitorによって制御されている。
  6. 生理的な止血機序にはあまり関与していない。
  7. 完全欠損症においても出血症状みられず、無症状であり生理的役割は不明である。
妊娠およびエストロゲン服用者では血漿第XII因子が増加する。
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第XIII因子(factor XIII、FXIII)
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血漿プレカリクレイン(plasma prekallikrein, PPK)
定義
HMWKが陰性荷電体(ガラス,エラジン酸,カオリン,セライト)に吸着し,HMWKと複合体を形成しているPPKが陰性荷電体上でXIIaにより限定分解されてカリクレインになる。カリクレインはXIIを限定分解してXIIaにする。XIIとPPKの間で相互活性化反応が生じ,内因系凝固反応が開始する。Fletcher trait に欠損している因子

セリンプロテアーゼであるカリクレインの前駆体
ポイント
  1. PPKは619個のアミノ酸で構成される糖タンパク(分子量88,000)であり,4つのappleドメインからなるheavy chainと,セリンプロテアーゼ活性中心を含むlight chainがS-S結合でつながっている。膵臓,唾液腺,尿中などに存在する組織カリクレインとは類似するが別の物質である。
  2. 血中ではPPKの75%はcarrier proteinである高分子キニノゲン(HMWK)と1:1で複合体を形成し,残りの25%はフリーの状態で存在している。血中濃度は約50μg/mLとされている。
  3.  
  4. PPK活性は市販の欠乏血漿を用いて凝固活性として測定するか,または合成基質(S-2302 ; 積水メディカル)を用いてアミド水解活性として測定する。市販の抗体を用いて免疫学的(ELISAなど)に抗原量として測定することもできる。
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高分子キニノゲン(high-molecular-weight kininogen, HMWK)
定義
ヒトHMWKは626アミノ酸残基からなる1本鎖の血漿タンパク質である。陰性荷電物質に結合し、活性化第XII因子による第XI因子および血漿プレカリクレイン(PK)の活性化を増強して内因系凝固に関与することから、第XII因子、PKとともに接触因子(contact factors)と呼ばれる。HMWKはカリクレインによって切断され、血圧降下作用や平滑筋収縮作用を示す生理活性ペプチドのブラジキニン(RPPGFSPFR)を生成する。
ポイント
  1. HMWK活性低下では、活性化トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time, APTT)が延長する。
  2. 第XII因子、PK、HMWK欠乏症では出血傾向を全く認めないことから、生理的血液凝固における接触因子の役割は疑問視されている。
  3. 最近、血管内皮細胞、血小板などの細胞膜にPK-HMWK複合体が結合し、膜表面のprolylcarboxypeptidase (PRCP)によってPKが切断されてカリクレインを生成することが明らかになった。生成したカリクレインによって、第XII因子やsingle-chain urokinase (scu-PA)が活性化され、ブラジキニンが生成する。この血管表面での接触因子の新たな活性化機構は、血圧や血流、血栓形成だけでなく、血管内皮細胞増殖、血管新生などの調節にも重要な役割を果たすものと注目されている。
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Von Willebrand因子
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アンチトロンビン(Antithrombin、AT)
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プロテインC(Protein C、PC)
定義
ビタミンK依存性凝固制御因子の一つ。分子量62,000の一本鎖糖タンパク質。主に肝臓で合成される。血中の10-15%は一本鎖だが、大部分は軽鎖と重鎖がジスルフィド結合した2本鎖。軽鎖はγ-carboxyglutamic acid (Gla)残基を含むGlaドメインと2つのEGF様ドメインからなる。重鎖はセリンプロテアーゼドメインである。ヒトプロテインC遺伝子は第2染色体2q13-q14に位置し、約11 kbで、9個のエクソンから構成される。プロテインCはトロンビン-トロンボモジュリン複合体により活性化プロテインCへと変換され、活性化プロテインCは活性化凝固V因子(Va)と活性化第VIII因子(第VIIIa因子)を限定分解により不活化し、凝固反応を抑制する。この不活化作用はプロテインSにより増強される。この作用により、プロテインCは抗凝固因子と位置づけられる。プロテインCは血管内皮細胞上に存在するEPCRに結合しPAR-1を活性化することにより抗炎症作用やアポトーシス抑制作用を発揮する。
ポイント
  1. プロテインCの活性化は、トロンボモジュリンを発現している血管内皮細胞上で起こる。
  2. 活性化プロテインCの抗凝固作用は、第Va因子と第VIIIa因子の不活化による。
  3. 先天性プロテインC欠損症は静脈血栓塞栓症のリスクが高い。白人種に広く見られる第V因子Leiden変異は活性化プロテインCによる分解に抵抗性を示し易血栓性を示す。本変異は日本人には同定されていない。
  4. プロテインCは血管内皮細胞上に存在するEPCRに結合し、Gタンパク共役型受容体であるPAR-1を活性化することにより抗炎症作用やアポトーシス抑制作用を発揮する。
  5. 活性化プロテインCは重症敗血症やDICの治療に使われ良い成績を挙げている。
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プロテインS(Protein S、PS)
定義
ビタミンK依存性凝固制御因子の一つ。分子量80,000の一本鎖糖タンパク質。主に肝臓で合成される。分子のN末端領域にはγ-carboxyglutamic acid (Gla)残基を含むGlaドメインを持ち、この領域で細胞膜リン脂質に強く結合する。ヒトプロテインS遺伝子は第3染色体3q11.2に位置し、約100 kbの大きさで、15個のエクソンから構成される。プロテインSは活性化プロテインCの補酵素として働き、活性化プロテインCの抗凝固作用を高める。また、プロテインSはTFPIによる第Xa因子阻害活性を促進する。この両作用により、プロテインSは抗凝固因子と位置づけられる。
ポイント
  1. プロテインSは酵素ではなくプロテインCに結合し、活性化プロテインCの活性を高める補酵素である。
  2. 血中では、プロテインSは補体制御因子C4BPと1:1で結合している。C4BP結合型プロテインSは抗凝固能を示さず、遊離プロテインSのみが抗凝固能を示す。したがって、血中のプロテインSの抗凝固能を調べるには、プロテインS活性もしくは遊離プロテインS抗原量を測定することが肝要であり、全(トータル)プロテインS抗原量の測定は適さない。ごく最近、C4BP結合型プロテインSは活性化プロテインCによる第Va因子のArg306切断活性を10倍以上亢進させ、Arg506切断活性を3-4倍低下させるので、その抗凝固活性は遊離プロテインSと比べて6-8倍低いと報告された。
  3. プロテインS遺伝子には極めて相同性が高い偽遺伝子がある。
  4. 先天性プロテインS欠損症は静脈血栓塞栓症のリスクが高い。日本人にはK196E変異保有者が55人に1人見られ、この変異保有者はプロテインS活性が16%程度低く、静脈血栓塞栓症のリスクが高いと報告されている。
  5. プロテインS活性は妊娠中に低下する。
  6. プロテインSは酸性リン脂質への結合能が高いので、負電荷を持つフォスファチジルセリンが表面に表れたアポトーシスを起こした細胞や活性化血小板に結合する。アポトーシスを起こしプロテインSが結合した細胞は貪食されやすい。
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ヘパリン・コファクターII (heparin cofactor II, HCII)
定義
血漿中に存在する2種類のヘパリン依存性トロンビン阻害因子 (heparin cofactor)の中の一つ. 480個のアミノ酸からなる分子量66-kDaの1本鎖糖タンパク質で, serine protease inhibitor (serpin)に属する. 主に肝臓で産生される. もう一つの heparin cofactorであるアンチトロンビン(AT)と同様に, ヘパリンなどのグリコサミノグリカン(GAG)と結合することにより活性化され,トロンビン阻害反応速度はGAG非結合時の1000倍以上に促進される.
ポイント
  1. ATと同様に,トロンビンにより反応部位P1-P1’(Leu444-Ser445)が切断された後,トロンビン-HCII複合体を形成することによりトロンビンを阻害する.
  2. ATと同様に, GAG結合による活性化にはHCII分子の立体構造変化が関与している. HCIIは ヘパリン,ヘパラン硫酸以外に,デルマタン硫酸でも活性化される点が特徴である.
  3. トロンビン以外の凝固因子は阻害しない.
  4. 先天性HCII欠乏症はこれまでに少なくとも15家系が報告されており, その中には静脈血栓塞栓症や動脈血栓症の既往を持つ例が含まれる. しかし, 統計学的にはHCII遺伝子のヘテロ接合性変異と血栓症の間には明らかな関連は証明されていない.
  5. HCIIの生理的役割については不明な点が多いが,最近の臨床研究からHCIIが動脈留置ステントの再狭窄や動脈硬化を抑制する可能性が示されている.また, HCIIノックアウトマウスを用いた研究でも, HCIIが動脈壁において産生されたトロンビンの作用を阻害することにより,傷害血管のリモデリングを抑制する可能性が示されている.
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プロテインZ(protein Z, PZ)
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トロンボモジュリン(Thrombomodulin、TM)
トロンボモジュリン(TM)は、主として血管内皮細胞上に存在する高親和性のトロンビン受容体で、TMに結合したトロンビンは、フィブリノゲンを限定分解することによるフィブリン生成反応、第V因子活性化能、血小板凝集促進活性などといった向凝固活性を失う一方で、抗凝固セリンプロテアーゼ前駆体であるプロテインCに対する活性化能を獲得する。生成した活性化プロテインC(APC)は、凝固促進因子の第Va因子と第VIIIa因子を限定分解することにより、凝固反応の行き過ぎを制御し、このAPCによる凝固阻害反応は、ビタミンK依存性蛋白質のプロテインSによって促進される。また、トロンビン-TM複合体は、トロンビン活性化線溶阻害因子(thrombin-activatable fibrinolysis inhibitor: TAFI)前駆体を活性化することにより、線溶を制御することも知られている。先天性TM欠損症は、そのヘテロ接合体が深部静脈血栓症、表在性血栓性静脈炎、肺梗塞などの血栓症を引き起こすことが知られている。他方、TMには、抗凝固作用だけではなく、抗炎症作用や血管新生促進作用なども示唆されている。
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FPA
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プロトロンビンフラグメントF1+2(prothrombin fragment PF1+2)
定義
血液凝固カスケードにおいて中心的役割を担うトロンビンの前駆体であるプロトロンビンは活性化第X因子を中心としたプロトロンビナーゼにより限定分解を受けてトロンビンに活性化される。その際に、プロトロンビンのN末端からフラグメントが遊離する。このフラグメントはフラグメント1とフラグメント2から構成されることからプロトロンビンフラグメント1+2:F1+2と呼ばれる。
ポイント
  1. プロトロンビナーゼによりプロトロンビンはArg271-Thr272間の開裂によりプレトロンビンとフラグメントに切断される。プレトロンビンは自己触媒的にαトロンビンに活性化される。このフラグメントがF1+2であり、271アミノ酸よりなる分子量34000の一本鎖ポリペプチドである。血液中の半減期は約90分である。
  2. F1+2に対する抗体を用いたELISAによる定量が可能で、定量感度はnmol/Lのオーダーである。健常人ではおおよそ1nmol/L以下である。
  3. F1+2は、トロンビンの前駆体であるプロトロンビンが限定分解を受けてトロンビンに活性化される際に遊離してくるフラグメントである。従って、F1+2はトロンビン生成を反映するものと考えられる。血栓形成が亢進する種々病態で高値を示すことが報告されている。血栓性の分子マーカーとしてトロンビン・アンチトロンビン III 複合体と同様の臨床学的意義を有し、これらは凝血学的分子マーカーと呼ばれる。
  4. その血中濃度は悪性腫瘍・感染症などを基礎疾患とする藩種性血管内凝固症候群(DIC)で著増し、DICの病態把握や治療効果の判定に有用であると報告されている。また、DIC準備状態や、血栓形成傾向の亢進する種々病態で増加することから、その予知にも用いられる。 さらに、F1+2の血中レベルはワーファリン投与時にも抗凝血療法の強度に比例して低下するため、抗凝血療法時のコントロール判定に有益であると報告されている。
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トロンビン-抗トロンビン複合体(Thrombin-antithrombin complex、TAT)
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可溶性フィブリン( soluble fibrin /soluble fibrin monomer complex SF/FMC)
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PIVKA(protein induced by vitamin K absence or antagonistsあるいはprotein induced in vitamin K absence)
定義
Gla領域に10数個存在するGla残基の形成が欠如しているビタミン依存性蛋白前駆体
ポイント
  1. ビタミンKは、プロトロンビン、第VII因子、第IX因子、第V因子、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、オステオカルシンなど、ビタミンK依存性因子と総称される多くの蛋白の生成に必須とされる微量栄養素である。
  2. ビタミンKはこれらの蛋白のN末端近傍にある特定のグルタミン酸残基のγ位にカルボキシル基を付与して、γ carboxyglutamyl acid (Gla)に変換する酵素(vitamin K dependent γ-carboxylase)のcofactorとして働く。
  3. ビタミンKが欠乏したり、ビタミンK拮抗剤が存在すると、Glaへの変換が進まず、これらの蛋白はグルタミン酸残基の状態にとどまることになる。これをPIVKAと呼ぶ。
  4. PIVKAはGlaを欠くためにそれぞれの反応の場へ参画することができず、生理活性がない。例えば、プロトロンビンはGla残基がカルシウムイオンを介して燐脂質膜に結合し、同じくGla残基により燐脂質膜に結合した活性型第X因子、燐脂質膜に存在する第V因子と複合体を形成することにより効率的に限定分解され、トロンビンになる。従って、Glaを欠くPIVKA-II(第II因子のPIVKA)やPIVKA-X(第X因子のPIVKA)は、それぞれの反応の場へ参画し生理活性を発揮することができない。
  5. PIVKAの中で、臨床現場で診断薬として用いられているのは、PIVKA-IIで、ビタミンK欠乏症や原発性肝癌で増加するが、後者でPIVKA-IIが増加する機序は明らかではない。
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ヘパリン(Heparin)
定義
イズロン酸あるいはグルクロン酸とグルコサミンからなる2糖が単位となって重合した直鎖状の酸性ムコ多糖類。
ポイント
  1. Heparin(ヘパリン)は血漿中のセルピン(serine protease inhibitors superfamilu: SERPIN)であるアンチトロンビン(antithrombin:AT)およびヘパリンコファクターII(heparin cofactor II: HCII)と複合体を形成する。AT・ヘパリン複合体はトロンビン(thromin)、活性化第IX因子(第IXa因子)、活性化第X因子(第Xa因子)、活性化第XI因子(第XIa因子)および活性化第XII因子(第XIIa因子)など複数の活性型血液凝固因子に対して、HCII・ヘパリン複合体はトロンビンのみに対して、プロテアーゼ活性を阻害する。その複合体による阻害作用はATおよびHCII単独に比べて1000倍以上となり、即時的に抗凝固作用を示す。
  2. ヘパリンは製剤中に含まれる分子量の違いによって、未分画ヘパリン(分子量3000〜10000の種々分子を含有)と低分子ヘパリン(分子量約5000)に分けられる。
  3. AT・ヘパリン複合体がトロンビン活性を阻害する場合には、分子量5000以上のヘパリンでないと阻害活性は弱い。一方、第Xa因子活性を阻害する場合には、分子量5000以下のヘパリンでも強い阻害活性を示す。それは、トロンビンに対する阻害作用において、AT・ヘパリン複合体のヘパリンはトロンビンとも結合することが必要だが、第Xa因子阻害に対してはAT・ヘパリン複合体のヘパリンはXaと相互作用する必要がなく、複合体が直接第Xa因子と結合するだけでXa活性を阻害することができるためである。
  4. ヘパリンの点滴静注はAPTTが投与前の2〜3倍になるように投与量をコントロールする。
  5. ヘパリンの重要な副作用として、ヘパリンと血小板第4因子(plateletfacor 4: PF4)の複合体に対する自己抗体産生が原因で、ヘパリン起因性血小板減少症(heparin-induced thrombocytopenia; HIT)の発症することがある。本自己免疫疾患は血栓形成と血小板減少を伴う。詳細はHITの項を参照。
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カリクレイン
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PARs
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HMBG-1
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Factor V Leiden
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フィブリノゲン欠損/異常症(Afibrinogenemia, Hypofibrinogenemia, Dysfibrinogenemia)
定義
遺伝子の欠失やDNA塩基配列の突然変異により生合成が中途停止して起きる無フィブリノゲン症と、構造異常分子が生合成されて血中に分泌される異常フィブリノゲン症がある。後者には血中への分泌が低下するケースと正常に分泌されて血漿濃度は正常で、凝固活性のみが低下するケースがある。
ポイント
  1. 先天性フィブリノゲン欠損症として、現在までに500症例が報告されており、遺伝子の異常部位のデータベース(http://www.geht.org/databaseang/fibrinogen/)が作られている。
  2. 変異は個々のフィブリノゲン機能発現部位すべてにわたって報告されているが、変異の7割はAα鎖に集中しており、多くの無フィブリノゲン症の主たる原因となっている。また、異常フィブリノゲン症の4〜5割はAα-16位かγ-275位のアミノ酸置換のどちらかである。
  3. 無フィブリノゲン症では、新生児期に脳内出血で死亡する傾向が高いが、成長後は中程度から重症の出血傾向を示す。
  4. 無フィブリノゲン症、低フィブリノゲン症患者の妊娠では、妊娠初期から流産の危険性が高く、フィブリノゲン補充が妊娠の維持に必須である。
  5. 異常フィブリノゲン症では、出血あるいは血栓傾向が報告される場合があるが、一般には症状は軽く、臨床症状を示さない場合も多い。
  6. 重症肝臓疾患や播種性血管内凝固症候群(DIC)などの疾患では、フィブリノゲン産生が低下したり、消費が亢進するために、後天性低フィブリノゲン血症となる。
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プロトロンビン低下/異常症(Prothrombin deficiency/variant)
定義
先天性プロトロンビン低下/異常症は、血漿中のプロトロンビンの量的低下 (低下症)または質的異常(異常症)に起因する、まれな出血性疾患である。
ポイント
  1. ホモ接合体あるいは複合へテロ接合体の発症頻度は、200万人に1人と極めて稀である。活性および抗原を完全に欠失する無プロトロンビン血症はいまだに報告がなく、致死的と考えられている。
  2. ホモ接合体あるいは複合へテロ接合体の症状は、乳幼児期より皮下出血、筋肉内出血、関節出血、頭蓋内出血、尿路出血などを認め、外傷や抜歯、手術後には止血困難を示す。新生児期に臍帯出血を呈する症例もある。一方、ヘテロ接合体は、無症状である。
  3. 異常出血時の治療や術前の出血予防投与には、プロトロンビン補充療法として新鮮凍結血漿(FFP)あるいは複合型第IX因子濃縮製剤の輸注を行う。補充療法は重症度に応じて行うべきであるが、一般的に止血に十分な血中FXのレベルは20〜30%と考えられている。
  4. 後天性には、肝機能障害、ビタミンK欠乏、ワーファリンなどの経口抗凝固薬の服用などにより低下する。またループスアンチコアグラント陽性症例で、抗プロトロンビン抗体による後天性低プロトロンビン血症を合併し、出血傾向をきたす場合がある(ループスアンチコアグラント・低プロトロンビン血症症候群:lupus anticoagulant- hypoprothrombinemia syndrome)。
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第V因子欠乏症/異常症(factor V deficiency/abnormality)
相談相手
先天性第V因子欠乏症/異常症(congenital factor V deficiency/abnormality)は, 血液凝固第V因子(factor V, FV)の量的欠乏や機能異常による先天性凝固障害症である.
参考資料
  1. 常染色体劣性遺伝形式をとり, 稀な出血性疾患である.
  2. 第V因子遺伝子は第1染色体q23-24に存在し, 全長約80kbで25個のエクソンから構成されている.
  3. 通常, 第V因子遺伝子に変異をもつホモ接合体例や複合ヘテロ接合体例は出血症状があり, ヘテロ接合体例は無症状である. また, 第V因子活性が1%未満でも無症状の報告例がある.
  4. 出血症状は, 鼻出血, 歯肉出血, 皮下出血, 過多月経などの粘膜出血が主体となるような軽度-中等度であるが, 関節内出血, 筋肉内血腫, 脳内出血や消化管出血などの重度な出血をきたす場合もある.
  5. 本症では, プロトロンビン時間(PT)と活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の両者が延長し, これらの延長は正常血漿混合で補正される. 第V因子活性が10%以下であれば本症を疑い, 獲得性(後天性)第V因子インヒビターによる第V因子の低下, 重症肝疾患による合成低下, DICによる消費, 先天性第V因子・第VIII因子合併欠乏症との鑑別が必要である.
  6. 第V因子異常症の中には血栓症を惹き起こすケースがある. 特に, 活性化プロテインC(APC)の主要切断部位であるArg506がGlnへと置換した分子異常のFactor V Leiden は, 欧米では高頻度にみられる第V因子遺伝子の変異(遺伝子多型)であり, ヘテロ接合体例でも深部静脈血栓症(DVT)などをきたす血栓性素因になる. 黒人や日本人を含む東洋人はこの変異を持っていない.
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第VII因子欠乏/異常症
相談相手

先天性第VII因子欠乏症は第VII因子の病的阻害因子の発生がなく、凝固活性および抗原量が著しく低下したもの、第VII因子異常症は凝固活性が著しく低下するが、抗原量が十分量に存在するものと定義される。両者を合わせて第VII因子欠乏/異常症と言う。

ポイント
  1. 第VII因子の基礎:第VII因子は肝臓で生合成され、成熟蛋白質となるペプチドのアミノ酸末端の10ケのグルタミン酸残基がビタミンKの存在下でカルボキシラーゼによってγ-カルボキシグルタミン酸(Gla)となる。このため、第VII因子はプロトロンビン、X因子、IX因子と共にビタミンK依存性凝固因子と呼ばれる。
  2. 生合成された第VII因子はGlaドメイン、2つのEGFドメインおよび触媒ドメインから構成される406ケのアミノ酸残基からなる分子量50KDaの1本鎖のセリン蛋白質分解前駆酵素として分泌される。血漿濃度は500ng/mL(10nM)であるが、その約1%は第VIIa因子として循環している。半減期は凝固因子のなかでは最も短く3-4時間である。第VII因子/第VIIa因子は血管傷害や炎症などによる血管の活性化よって出現した組織因子とCaの存在下で複合体を形成して凝固を開始する。
  3. 頻度:常染色体劣性遺伝形式で50万に1人の頻度で発症し、人種や地域に差はない。
  4. 臨床症状:第VII因子活性が2%以下を呈するホモ接合体には出血症状が見られるが、無症候例もあり、凝固活性と出血症状との間に相関性は乏しい。頭蓋内出血や胸腔内出血など致死的出血を来す症例もあるが、一般的には皮膚粘膜出血、抜歯後出血、外傷後出血、月経過多などが主である。
  5. 診断:止血スクリーニング検査で出血時間、血小板数、APTTに異常なくPTの延長がみられる。正常血漿での補正試験で凝固時間の短縮がみられ、正常血清で補正して正常Ba吸着血漿で補正がなければ、定量検査で確認する。
  6. 管理:プロトロンビン複合体製剤(PCC)が使用(保健適応外)されてきたが、海外で遺伝子組換え型活性型第VII因子(rVIIa)製剤の有用性が報告されている。
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血友病 A
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血友病 B(Henophilia B)
定義
血液凝固第IX因子の異常に伴う先天性あるいは後天性出血性疾患である。先天性欠乏症あるいは質的異常症(変異病型)は、X連鎖劣性遺伝性疾患(第IX因子の遺伝子座はX染色体Xq27.1に存在する)で、通常男児に発症する(ただし、ライオンの仮説によるX染色体不活化から女児例の報告もある)。しかし、多くは家系内に血友病患者がいない弧発例が約半数みられる。先天性血友病Bの患者数は、2006年度の血液凝固異常症の総数は6,249名で、その内、血友病Aが4,100名、血友病Bが900名と報告されている.
ポイント
  1. 先天性血友病Bの臨床症状は、鼻出血や皮下出血、口腔内出血のほか、筋肉内や関節内出血を反復する。新生児期では臍出血の原因でもある。時に重篤な頭蓋内出血や内臓出血を起こす。学童期移行に関節出血から運動障害を合併する。
  2. 止血検査では出血時間およびプロトロンビン時間が正常で、活性化部分トロンボプラスチン時間が著明に延長する場合には本症を疑う。第IX因子活性(FIX:C)の測定は第IX因子欠乏血漿を用いた凝固1段法、あるいは第IX因子特異発色合成基質を用いた比色法で測定する。FIX:Cが<1%を重症型、1〜5%を中等症、5%<を軽症として分類される。重症型は新生児期や乳児期から発症し、FIX:Cと臨床症状とはほぼ平衡する。重症型や中等症では重篤な出血や深部出血をおこす。さらに、第IX因子抗原量(FIX:AG)はIX因子ポリクローナル抗体やモノクローナル抗体で測定する。第IX因子抗原量の測定により、FIX:CおよびFIX:AGがともに欠乏するCRM-(cross-reactive or reacting material;CRM negative;FIX:AG<1%)、FIX:CおよびFIX:AGが共に低下するCRMR(CRM reduced;FIX:AG1-50%)、およびFIX:Cに比較してFIX:AGが多く存在するCRM+(CRM positive;FIX:AG>50%)に分類される。血友病Bの遺伝子異常はHemophilia B: database of point mutations and short additions and deletions-eight edition. Nucleic Acids Research, 26:265-268,1998を参照。
  3. 血友病Bの治療薬には献血血漿由来のノバクトM(化血研/アステラス)とクリスマシンM(ベネシス/田辺三菱)とII、VII、IX、X因子を含むPPSB−HT[ニチヤク](日本製薬)がある。重症先天性血友病BへのIX因子製剤の補充療法に伴い自己抗体(インヒビター)を発症する。血友病Bインヒビターの治療は、活性型プロトロンビン複合体製剤や遺伝子組換え活性型第VII因子(rVIIa)製剤によるバイパス止血治療とIX因子製剤大量投与による中和療法がある。臨床症状とインヒビター力価からバイパス止血療法か中和療法によるかを選択する。だだし、インビビター患者へのIX因子製剤輸注ではアナフィラキシーショックや自己免疫性腎炎を発症することがあり注意が必要である。ただし、アナフィラキシーを発症する患者への出血症状への治療にはステロイド薬の併用が有効である。
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凝固第X因子欠乏/異常症(Factor X deficiency/variant)
定義
先天性第X因子欠乏/異常症は、血漿中の凝固第X因子(FX)の量的低下/欠損(欠乏症)または質的異常(異常症)に起因する、まれな出血性疾患である。
ポイント
  1. ホモ接合体あるいは複合へテロ接合体の患者は出血傾向を示す。鼻出血、歯肉出血、過多月経、外傷や術後の過剰出血が多いが、関節内出血、頭蓋内出血など重篤な出血をきたす場合もある。
  2. 活性が50%程度のヘテロ接合体ではほとんど出血を認めず、スクリーニング検査や家系内調査のときに偶然発見されることが多い。
  3. 一般的には、明らかな家族歴があり、PT・APTTともに延長し、後天性FX欠損を除外できる場合、先天性FX欠乏/異常症を疑う。血漿中のFX活性は低値を示すが測定可能であり、FXの完全欠損は致死的と考えられている。
  4. 異常出血時の治療や術前の出血予防投与には、FX補充療法として新鮮凍結血漿(FFP)あるいは複合型FIX濃縮製剤の輸注を行う。補充療法は重症度に応じて行うべきであるが、一般的に止血に十分な血中FXのレベルは15〜20%と考えられている。
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第XI因子欠乏/異常症(Factor XI deficiency/variant)
定義
第XI因子欠乏症は第XI因子の病的阻害因子の発生がなく、凝固活性および抗原量が著しく低下したもの、第XI因子異常症は第XI因子凝固活性が著しく低下するが、抗原量が十分量に存在するものと定義される。両者を合わせて第XI因子欠乏/異常症と言う。
ポイント
  1. 第XI因子の基礎:第XI因子は肝臓で生合成された後、成熟蛋白質としてC321でS-S結合した160 KDaのホモ2量体のセリン蛋白質分解酵素前駆体として分泌される。酵素活性中心をもつL鎖と4つのアップルドメインを持つH鎖から成る。活性化XII因子やトロンビンによって活性化される。血漿濃度は5μg/mLで性差なく、半減期は60-80時間である。
  2. 頻度:先天性XI因子欠乏症は血友病Cとも称され、常染色体劣性遺伝形式で100万に1人の頻度で発症する稀な凝固障害症であるが、アシュケナージ系ユダヤ人における頻度は高く8人に1人がヘテロ接合体である。
  3. 臨床症状:無症状のものも多く、出血症状は血友病に比べると軽度である。関節内出血などの報告もあるが、一般的には外傷や外科処置後の過剰出血が見られる。鼻、生殖器や泌尿器など線溶活性の高い場所で出血することが多い。
  4. 診断:止血スクリーニング検査で出血時間、血小板数、PTに異常なくAPTTの延長がみられる。正常血漿での補正試験で凝固時間の短縮、正常Ba吸着血漿および正常血清とも補正が認められたら、定量検査で確認する。
  5. 管理:出血傾向の重症程度によって異なるが、FFPでの治療が報告されている。XI因子製剤もあるが、本邦では取り扱われていない。トラネキサム酸は補助的治療に用いられている。
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第XII因子欠乏/異常症(Factor XII deficienct)
定義
第XII因子遺伝子異常により、血中第XII因子抗原量および活性が消失あるいは低下するものを言う。明らかな臨床症状はみられない。
ポイント
  1. F12遺伝子の-4CがTに置換している1塩基遺伝子多型SNPは白人に比較し、日本人に多く、第XII因子蛋白発現量が低下するため、血中第XII抗原量は-4C/Cに比較し、-4T/Tでは約50%に減少している。
  2. 第XII因子欠損症は、常染色体劣性遺伝である。
  3. 明らかな臨床症状はみられないが、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の延長によって偶然発見されることが多い。
  4. 第XII抗原量が存在しない真の欠損症(CRM-)と抗原量は存在するが、活性がみられない異常症(CRM+)がある。
  5. ほとんどはCRM-タイプが多く、遺伝子上のいろんな部位の点変異(ナンセンス変異)、欠失、挿入などの異常により発症する。CRM+タイプは、ミスセンス変異により発症し、Cys571->Ser置換をきたすFXII Washington DCが有名である。
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第XIII因子欠乏/異常症
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血漿プレカリクレイン欠乏/異常症 (plasma prekallikrein deficiency)
相談相手
血漿中にPPKを欠損する状態。PPKタンパクそのものが欠乏するtype I欠損症と,機能異常タンパクが存在するtype II欠損症がある。
参考資料
  1. 1965年HathawayらによってFletcher traitとして初めて記載された(Blood, 26, 521-532, 1965)。
  2. 先天性PPK欠損症は2008年6月現在で,約30家系が報告されており,そのうち遺伝子(KLKB1)レベルではTokushima(G401E),Seki(G104R, N124S)を含めて14症例が解析されている。先天性PPK欠損症は第XII因子あるいはHMWK欠損症と同様,全く出血症状を示さない。このことから,これらの因子の内因系凝固機構における生体内での作用に疑問が投げかけられている。
  3. APTTの延長を示すが,活性化剤と長時間(10〜20分)孵置しておくと,APTTの短縮がみられるのが特徴である。
  4. 血中のPPKの75%はHMWKと結合して安定化している。このためHMWK欠損症でもPPKが25%にまで低下する。
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VWD
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後天性血友病
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後天性フォンウイルブランド病 (acquired von Willebrand syndrome, AvWS)
定義
先天的にvon Willebrand因子が量的・質的異常をきたし出血素因を呈するものをvon Willebrand病(von Willebrand disease, vWD)と定義されている。vWDは3つのタイプに分類されており、タイプ1は頻度は最も多く、vWFの量的異常が原因であり、タイプ2は質的異常によりおこる。タイプ3は、vWFが血中にほとんど存在しないものをいう。
vWDと臨床像ならびに検査所見がきわめて類似した疾患群をまとめて後天性von Willebrand症候群(acquired von Willebranmd syndrome; AvWS)という。
ポイント
  1. 必ず基礎疾患がある。基礎疾患として、リンパ増殖性疾患、循環器疾患、骨髄増殖性疾患、甲状腺機能低下症、自己免疫性疾患、悪性腫瘍などがある。
  2. 病態は様々である。甲状腺機能低下症ではvWFの産生低下、リンパ増殖性疾患や自己免疫性疾患ではvWFに対する抗体の関与、循環器疾患では弁膜症などで高ずり応力下で高分子マルチマーの消費、骨髄増殖性疾患ではvWFの分解亢進により起きると考えられている。
  3. 出血症状は軽微なことが多く、本症候群の存在を認識することが大切である。家族歴・既往歴に出血性疾患がなく、原因不明の出血症状があり、部分トロンボプラスチン時間の軽度延長がみられるときには、本症候群を疑うことが大切である。
  4. リストセチンコファクター活性(vWF:RCo)の低下、コラゲン結合能(vWF:CBA)の低下、家族歴・既往歴に出血性素因がない、出血時間(Template Ivy法、Simplate法)の延長であれば確定診断される。
  5. vWFのマルチマー解析では、高分子vWFマルチマーが減少し、タイプ2型vWDに類似したものが多い。
  6. 血液型がO型では、正常人でもvWF活性は60%前後であり、血液型がO型では診断には注意が必要である。
  7. 基礎疾患の治療が最も重要である。AvWSに対する一般的な治療は、vWF含有第VIII因子製剤あるいはDDAVP療法である。しかし、MGUSなどリンパ増殖性疾患では、抗vWF抗体が関与する可能性が高く、本邦では保険適応されていないが免疫グロブリン大量療法(1g/kg/日、1~2日間)が有効との報告が欧米ではみられる。
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ビタミンK欠乏症
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アンチチロンビン欠乏/異常症(Antithrombin deficiency/variant)
定義
生理的凝固阻止因子であるAntithrombinの遺伝子異常に伴う先天性欠損症/異常症で、若年性血栓傾向を示す血栓性素因(thrombophilia)の一つとして知られる疾患。
ポイント
  1. 常染色体優性遺伝の遺伝形式を示し、主として深部静脈血栓症(deep venous thrombosis: DVT)や肺塞栓症(pulmonary embolism: PE)を引き起こす。
  2. アンチトロンビンの抗原量および活性の両者が減少しているもの(I型:欠損症)と,抗原量は正常であるが活性に異常を認めるもの(II型:異常症)とに大別される。
  3. II型はさらに,プロテアーゼとの反応の異常(II型-反応部位異常),へパリン結合能の異常(II型-ヘパリン結合部位異常),多面的な異常(II型-多面的効果の異常)に細分される。
  4. 本症は通常へテロ接合体として認められ,ホモ接合体は致死的と考えられるが,分子異常の一部においてはホモ接合体例が少数報告されている。
  5. 日本人での発生頻度は、欧米人と同程度の人口10万人あたり1〜2人で、その遺伝子異常はミスセンス突然変異が多い。
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プロテインC 欠損症/異常症(Protein C deficiency)
定義
生理的凝固阻止因子である Protein C の遺伝子異常に伴う先天性欠損症/異常症で、若年性血栓傾向を示す血栓性素因(thrombophilia)の一つとして知られる疾患。
ポイント
  1. 常染色体優性遺伝の遺伝形式を示し、主として深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓症(PE)を引き起こす。
  2. プロテインC活性低下に比例してプロテインC抗原量の低下している I 型(欠損症)と活性低下にもかかわらずプロテインC抗原量の正常な II 型(異常症)に分類される。
  3. I 型が圧倒的に多い。
  4. ホモ接合体はきわめて稀で,血中プロテインC活性は著減し,新生児期に全身皮膚の激しい出血性壊死を起こす、いわゆる電撃性紫斑を発症することが多い。
  5. 日本人での発生頻度は、欧米人と同程度の人口10万人あたり1〜2人で、その遺伝子異常はミスセンス突然変異が多い。
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プロテインS欠乏/異常症(Protein S deficiency/variant)
定義
プロテインSは凝固制御系因子の一つで、リン脂質膜上で活性型プロテインCと複合体を作り、活性化第V、第VIII因子(第Va,因子 第VIIIa因子)を分解し凝固活性を制御する分子量約7.5万の糖蛋白質でビタミンK依存性因子である。近年、アジア人血栓症患者では、高頻度にプロテインS欠乏/異常症が見出されており、プロテインS欠乏/異常症はアジア人の血栓症危険因子として注目されている。
ポイント
  1. プロテインC・プロテインS系はアンチトロンビン系、Tissue Factor Pathway Inhibitor (TFPI) 系などと共に、代表的は凝固制御系である。
  2. 凝固系で生成されたトロンビンが血管内皮膜上に発現しているトロンボモジュリンと結合すると、トロンビンは血栓形成促進活性(フィブリノーゲンを切断しフィブリンにする活性など)を失い、プロテインC分子を切断して活性型プロテインCにする。
  3. 補体結合蛋白質(C4BP)と結合している結合型プロテインSと結合してない遊離型プロテインS(Free PS)とが血中に存在する。凝固制御系因子として作用するのは遊離型プロテインSである。
  4. プロテインSの血中濃度は、遊離型プロテインSは約10mg/mL、C4BP結合型プロテインSは約15mg/mLであり、遊離型と結合型の総和は、約25mg/mLである。
  5. 健常人におけるプロテインS活性低下を示す頻度は、アジア人(日本人、中国人、タイ人など)では1-3%で白色人種の約10倍である。
  6. 深部静脈血栓症を発症している患者について調べると、プロテインS活性低下を示す頻度は、アジア人では19-27%で、白人患者の8倍〜10倍も高頻度である。白人深部静脈血栓症患者で多くみられる凝固第V因子の多型Factor V Leiden (R506Q)の保因者(白人深部静脈血栓症患者の20-50%)はアジア人には発見されていないが、アジア人深部静脈血栓症患者のプロテインS活性低下を示す頻度は、Factor V Leiden (R506Q)を保因する白人深部表脈血栓症患者に相当する。
  7. 日本人特有のプロテインS分子多型の1つに、プロテインS徳島(K155E)があり、その頻度は健常人の1-2%である。プロテインS徳島は深部静脈血栓症発症の危険因子である(オッズ比:3.7-5.6)。
  8. 日本人のプロテインS欠乏/異常症では、II型(PS抗原量は基準範囲内だが、PS活性が低下)異常が多いので、PS検査は、PS抗原量とPS活性とを共に測定しないと、見逃すケースが多くなる。
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Heparin cofactor II欠乏/異常症
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Thrombotic microangiopath
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経口避妊薬と血栓症
定義
経口避妊薬(oral contraceptives:OC)は、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲストーゲン(黄体ホルモン)の合剤で、その内服により排卵が抑制され、避妊効果を発揮する。現在はエストロゲン量を50μg以下に減少させた低用量のOCが主流である。エストロゲンは肝における血液凝固因子産生を促進し、さらに血小板や血管内皮にも作用し血液凝固を促進させる可能性があるため、血栓症との関連性が取り沙汰されている。
ポイント
  1. OCと血栓症に関しては、1961年OC服用者に血栓症が偶発したと報告されて以来、欧米において多くの疫学的調査や凝固学的検討がなされてきた。現在では、OC服用時に血栓症を併発しやすいことはほぼ間違いない事実とされている。従来の疫学的調査ではエストロゲンと血栓症の関連性が指摘され、その低用量化が新しいOCの目標とされてきた。エストロゲン量を減少させた低用量OCでは高用量OCより血栓症の危険性は減少したが、OC非服用者に比べ依然として血栓症のリスクは高い。
  2. OCの歴史は含有するエストロゲン量を減量させるのみならず、プロゲストーゲンの力価の向上や男化作用の軽減を目的にその改良も行われ、第一世代(ノルエチステロンのグループ)、第二世代(ノルゲストレルのグループ)、第三世代(デソゲストレル、ゲストデンのグループ)と新しいタイプのものが開発され、また、投与法にも工夫が加えられてきた。ところが1995年、エストロゲンの含有量に大差がない第三世代のOC服用者と第二世代のOC服用者とを比較すると、前者において肺血栓塞栓症の相対危険度は明らかに上昇すると結論付けられた。しかしその後、初回使用者効果と呼ばれる内服開始1年以内に静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism: VTE)の多くが発症する現象などのバイアスを除いた結果、現在では第三世代と第二世代のOC服用者間におけるVTEの相対危険度に明確な差があるかどうかやや疑問となりつつある。1998年のWHO(World Health Organization)の報告書は、デソゲストレルもしくはゲストデン含有OCのVTE発症リスクは、おそらくレボノルゲストレル含有OCのそれをわずかに超える程度としている。
  3. 日本人に関する疫学データは乏しいものの、以上述べたようにOC服用者にVTEが発症することは事実である。しかし、日本人は欧米人より先天性血栓性素因の少ない人種であるため、OC服用者におけるVTEの絶対危険度は欧米よりはさらに低い。むしろ妊娠自体のほうがVTEの危険度ははるかに高いと考えられる。なお、心筋梗塞あるいは脳梗塞等の動脈血栓症に関しては、様々のリスク因子の影響を受け、OC単独の影響は大きいとはいえない。
  4. 投与禁忌:血栓症既往/血栓性素因、重症肝機能障害、エストロゲン依存性悪性腫瘍(子宮体癌、乳癌など)などである。エストロゲン依存性良性腫瘍(子宮筋腫、乳腺疾患など)、高血圧、糖尿病、肥満、喫煙者(35歳以上で、1日15本以上)には投与を控える。
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炎症と凝固
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SIRS
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肝障害による出血傾向 (Bleeding tendency due to liver dysfunction)
定義
各種肝疾患において肝での凝固因子・線溶因子およびそれらの阻害因子の産生低下により凝固異常をきたし、臨床的には出血傾向を認める病態をいう。
ポイント
    (概念)
  1. 第I (fibrinogen), II(prothrombin), V, VII, VIII, IX, X, XI, XII, XIII因子、プレカリクレイン、高分子キニノゲン、アンチトロンビン、プロテインC、プロテインS、プラスミノゲン、α2-プラスミノゲンインヒビター等は全て肝で産生される。
  2. 急性肝炎、急性肝不全、肝硬変、胆汁性肝硬変、閉塞性黄疸等の各種肝疾患において凝血学的異常が指摘されている。
    (臨床病態)
  3. 急性肝炎ではPT, APTTの延長が認められ、急性肝不全に至るとさらにフィブリノゲン,ATを初めとする肝での産生蛋白は減少し、出血症状を認める。肝硬変ではさらに消費性凝固障害の病態も呈する。
  4. 胆汁性肝硬変、閉塞性黄疸ではビタミンK依存因子の低下が著明で、PTは著しく延長し、強い出血症状を呈する。
    (治療)
  5. 一般的に肝不全を認めない限り、出血が問題となることはない。急性肝不全で出血症状を呈する症例には、FFP, PCの補充療法を行う。劇症肝炎には血漿交換を行う。肝硬変の出血時や観血的手技前には、補充療法を行う。一部の肝硬変、胆汁性肝硬変や閉塞性黄疸の出血時にはビタミンKの非経口投与を行う。DIC併発時には、ATや合成プロテアーゼインヒビター(FOY, FUTなど)
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DIC(播種性血管内凝固、播種性血管内凝固症候群)
定義
播種性・全身性の微小血栓形成とそれに伴う線溶亢進状態を言い、重篤化すると予後が極めて悪い病態である。
ポイント
  1. 各種領域により、DICの定義・概念・病態が異なる。
  2. 感染症、白血病、産科疾患など、DICを合併しやすい基礎疾患が存在する。
  3. 感染症DICは死亡率が30-40%で経過が早く、臓器症状が主体で出血症状が軽微なことが多い。高サイトカイン血症を呈し、線溶系は抑制されている。
  4. 白血病DICは死亡率が10-20%で、出血症状が主体のDICであり、血小板数はDIC以外の原因でも低下し、線溶系は亢進していることが多い。
  5. 大動脈瘤・固形癌のDICは比較的慢性に経過することが多い。
  6. DICの診断にはいくつかの診断基準が考案されている(厚生労働省の診断基準などの項目を参照)が、主に検査値異常にて診断される。
  7. DICの治療には抗凝固療法や補充療法等とともに、基礎疾患の治療が重要である。
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DICの病型分類
概念
播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)においては、全身性持続性の著しい凝固活性化がみられる点は共通しているものの、線溶活性化の程度は種々であり、線溶活性化の程度によって、「線溶抑制型DIC」「線溶均衡型DIC」「線溶亢進型DIC」に分類される。
解説
線溶抑制型DICは、敗血症に合併した場合に代表され、線溶阻止因子のプラスミノゲンアクチベータインヒビター(plasminogen activator inhibitor:PAI)が著増するために、凝固活性化(TAT上昇)は著しいものの線溶活性化(PIC上昇)は軽度である。臨床的には臓器症状は重篤であることが多いが出血は意外と見られにくいのが特徴である。
線溶亢進型DICは、急性前骨髄球性白血病や腹部大動脈瘤に合併したDICに代表され、凝固活性化、線溶活性化ともに高度である(TAT、PICともに著増)。また、PAIはほとんど正常なことが多い。臨床的には出血症状が高度であるが、臓器症状はほとんど見られないことが特徴である。
線溶均衡型DICは、上記の中間的な病態を示し、固形癌に合併したDICに代表される。進行例を除いて、出血症状、臓器症状ともにみられにくい。
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厚生労働省DIC診断基準
概要
エビデンスに基づいて作られた最も優れたDIC診断基準である。基礎疾患、臨床症状(出血、臓器症状)、検査値異常によりスコア化して、DICを診断する。
実際
表1 厚生労働省DIC診断基準

造血器腫瘍群* 非造血器腫瘍群
基礎疾患
臨床症状

1点
臓器症状1点
出血症状0点
1点
臓器症状 1点
出血症状 1点
血小板数 0点 80-120:1点、50-80:2点、50>:3点
FD P(μg/mL) 10-20;1点、20-40;2点、40 < ;3点
フィブリノゲン 100-150 mg/dL;1点,100 mg/dL>;2点
PT PT比:1.25-1.67;1点、1.67<;2点
DIC(疑い)
4点以上(3点)  7点以上(6点)
*白血病など骨髄での血小板産生が低下する群

注1 基礎疾患が肝疾患の場合は以下の通りとする。
a. 肝硬変および肝硬変に近い病態の慢性肝炎の場合には、総得点から3点減点した上で、造血器腫瘍群の判定基準に従う。
b. 劇症肝炎および上記を除く肝疾患の場合は、本診断基準をそのまま適用する。
注2 本診断基準は新生児、産科領域、劇症肝炎の診断には適用しない。
注3 「DICの疑い」患者で、「表2. 診断のための補助的検査成績、所見」のうち2項目以上満たせばDICと判定する。


表2 診断のための補助的検査成績、所見
1. 可溶性フィブリンモノマー陽性
2. D-Dダイマーの高値
3. トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)の高値
4. プラスミン-プラスンインヒビター複合体(PPIC)の高値
5. 病態の進展に伴う得点の増加傾向、特に数日内での血小板数あるいはフィブリノゲンの急激な減少傾向ないし、FDPの急激な増加傾向の出現
6. 抗凝固療法による改善
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急性期DIC診断基準 (DIC diagnostic criteria established by the Japanese Association for Acute Medicine)
全身性凝固炎症反応異常と捉えることができるDICを、発症早期に感度良く診断することを目的に作成された新しいDIC診断基準
ポイント
  1. 外科・内科を含む多様な基礎疾患・病態から発症するDICを、特異度を維持しつつ良好な感度で診断可能。
  2. 診断必要項目は一般凝固線溶系指標と全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome, SIRS)スコアであり、通常検査体制で常時診断可能。
  3. スコアはDICの重症度・予後と良好な相関があり、病態の管理・治療指針として使用可能。
急性期DIC診断基準
1. 基礎疾患(全ての生体侵襲はDICを引き起こすことを念頭におく)
1. 感染症(全ての微生物による)
2. 組織損傷
  外傷
  熱傷
  手術
3. 血管性病変
  大動脈瘤
  巨大血管腫
  血管炎
4. トキシン/免疫学的反応
  蛇毒
  薬物
  輸血反応(溶血性輸血反応、大量輸血)
  移植拒絶反応
5. 悪性腫瘍(骨髄抑制症例を除く)
6. 産科疾患
7. 上記以外にSIRSを引き起こす病態
  急性膵炎
  劇症肝炎(急性肝不全、劇症肝不全)
  ショック/低酸素
  熱中症/悪性症候群
  脂肪塞栓
  横紋筋融解
  他
8. その他
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急性前骨髄球性白血病と線溶
概念
急性前骨髄球性白血病(acute promyelocytic leukemia:APL)は、播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)を高率に合併することが知られている。この場合、著明な線溶活性化を伴う「線溶亢進型DIC」を合併し、出血症状を来しやすい。
ポイント
  1. APL細胞には、アネキシンIIが過剰発現することが知られている。アネキシンIIに、組織プラスノゲンアクチベータ(tissue plasminogen avtivator:t-PA)とプラスミノゲンが結合すると、t-PAの働きが飛躍的に高まり、著しい線溶活性化を来す。
  2. APLに対して、分化誘導治療薬としてのビタミンA誘導体All-trans retinoic acid(ATRA)を投与すると、APLの分化誘導よりも遥かに早くDICが軽快することが知られている。これは、ATRAによって、APL細胞の組織因子(tissue factor:TF)発現が抑制されることに加えて、アネキシンIIの発現も抑制されるためと考えられている(ATRAにより凝固活性化、線溶活性化ともに抑制されることになる)。
  3. なお、APLに対してATRA療法を行っている場合には、決してトラネキサム酸の投与を行ってはいけない。このような治療によって全身性の血栓症の合併や死亡例も報告もある。
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SOFA(Sequential Organ Failure Assessment)スコア
定義
SOFAスコアは,コンセンサスカンファレンスを基盤として開発した重症度スコアで(Vincent JL et al. Intensive Care Med 1996;22:707-710),もともとは,敗血症関連の臓器不全スコアであったが,その後他の重症患者でも利用されている.6つの臓器障害を0から4点でスコア化する.
ポイント
  1. 同様な重症度スコアであるMultiple Organ Dysfunction Score (MODS)の循環機能の評価がPAR(pressure adjusted heart rate;心拍数HR×右心房圧RAP/平均動脈圧MAP)を用いているのに対し,SOFA スコアは平均動脈圧MAPと血管収縮薬の投与量を指標としている.
  2. SOFAスコアやMODSスコアの方がAPACHEIIスコアよりも予後予測が正確という報告がある.


0 1 2 3 4
Respiratory: PaO2/FIO2 (mmHg) >400 400 300 200 100
Renal: creatinine (mg/dl)or urine output <1.2 12.-1.9 1.0-3.4 3.5-4.9 or <500 mL/d 5.0 or <200 mL/d
Hepatic: bilirubin (mg/dL) <1.2 12.-1.9 2.0-5.9 6.0-11.9 12.0
Cardiovascular: hypotension No hypotension MAP <70 mmHg Dopamine 5 or dobutamine (any dose)a Dopamine >5 or epinephrine 0.1 or norepinephrine 0.1a Dopamine >15 or epinephrine >0.1 or norepinephrine >0.1a
Hematologic: platelet count
(103/mm3)
>150 150 100 50 20
Neurologic: Glasgow Coma Score 15 13-14 10-12 6-9 <6
a Adrenergic agents administered for at least 1 h (doses given are in μg/kg/min)
b With ventilatory support
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APACHE (acute physiology, age and chronic health evaluation)II スコア
定義
Knausらが1981年に発表した重症度のスコアを簡略化し,1985年に発表された重症度スコア (Knaus WA et al. Crit Care Med 1985;13:818-29).
ポイント
  1. 患者の24時間以内の血液検査データ,血液ガスデータ,体温,平均血圧,心拍数などの急性期の12のパラメーターと,年齢と,既往歴や合併症などの慢性併存病態を, それぞれ点数化して,その合計で患者の重症度を判定する.
  2. APACHE IIでは死亡率を予測することもできるが,疾患や病態ごとに異なった係数をかけ死亡率を予測する.
  3. 本来は急性期の患者重症度評価や予後予測として開発されたが,急性膵炎など種々の他の疾患での重症度評価にも用いられることがある.
  4. 現在,日本の医療レベルが向上し,APACHEIIで予測された予後よりも実際の成績はずっと良いことが多い.

APACHE IIスコア
APACHE IIスコア=A+B+Cの合計
A:Total Acute Physiology Score(APS) (12の生理学的パラメーターの点数合計)
生理学的パラメーター
上方異常

下方異常
+4
+3
+2
+1
0
+1
+2
+3
+4
直腸温(℃) (腋窩温+1℃) ≧41 39-40.9
38.5-38.9 36-38.4 34-35.9 32-33.9 30-31.9 ≦29.9

平均動脈血圧(mmHg)
(拡張期血圧+1/3×脈圧)

≧160 130-159 110-129
70-109
50-69
≦49
心拍数 ( /min) ≧180 140-179 110-139
70-109
50-69 40-54 ≦39
呼吸数 ( /min) ≧50 35-49
25-34 12-24 10-11 6-9 ≦5
動脈血酸素化
a.Fi02≧0.5でA-aD02 #

b. Fi02<0.5でPao2 (mmHg)
≧500

350-499

200-349


≦199


>70



61-70




55-60



<55
動脈血pH


血清HC03濃度
(Venous-m mol/L)
(動脈血ガス分析未施行時)
≧7.7


≧52
7.6-7.6


51.9-41.0



-
7.5-7.59


40.9-32.0
7.33-749


31.9-22.0



-
7.25-7.32

21.9-18.0
7.15-7.24

17.9-15.0
<7.15


<15.0
血清Na濃度 (mEq/L) ≧180 160-179 155-159 150-154 130-149
120-129 111-119 ≦110
血清K濃度 (mEq/L) ≧7 6-6.9
5.5-5.9 3.5-54 3-3.4 2.5-2.9
<2.5
血清Creatinine(mg/dL)
(急性腎不全では点数は2倍)
≧3.5 2-3.4 1.5-1.9
O.6-1.4
<0.6

Hct(%) ≧60
50-59.9 46-49.9 30-45.9
20-29.9
<20
WBC(×103/mm3) ≧40
20-39.9 15-19.9 3-14.9
1-2.9
<1
Glasgow Coma scale(GCS)*
Score=15-GCS









#通常はFiO2 = 1.0の場合のPaCO2とPaO2を求めて右の計算式で求める: A-aDO2 = 713 - PaCO2 - PaO2
FiO2<1.0の場合は右の簡略式を用いると便利である: A-aDO2 = {FiO2 × 713 - (PaCO2 / 0.8)} - PaO2

*: Glasgow Coma score = a + b + c
ポイント
1
2
3
4
5
6
a. 開眼 開眼しない 痛み刺激で開眼 呼びかけで開眼 自発的に開眼

b. 発語 発語しない 理解不能な発語
(言葉にならない音)
不適当な言葉
(言語混乱)
錯乱状態
(会話混乱)
見当識あり
(正常応答)

c. 運動機能 反応しない 四肢伸展反応 異常な屈曲運動 痛み刺激からの逃避運動 痛み刺激の部位に
手足を動かす
指示に従う
挿管および処置による鎮静によってスコア−の判定が難しい場合は、その要因がない場合を想定しスコアを判定する。

B:年齢ポイント
年齢(歳)
≦44
45-54
55-64
65-74
≧75
ポイント
0
2
3
5
6

C:慢性併存病態ポイント
重篤な臓器(肝、循環器、呼吸器、腎)不全あるいは免疫能低下があるときは
a.非手術あるいは救急手術患者: 5ポイント
b.予定手術患者: 2ポイント
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PT-INR
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APTT
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複合因子測定(HPT,TT)
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フィブリノゲン測定(Fibrinogen assay)
定義
フィブリノゲンの測定法には、凝固活性測定法(1〜3項目)と抗原量を測定する方法(4〜7の項目)があり、現在臨床検査の場で最も用いられている方法は1のトロンビン時間法である。)
ポイント
  1. 血漿にトロンビンを添加して凝固時間を測定するクラウス法
  2. 血漿にトロンビンを添加してフィブリンを析出させ、これをNaOHに溶解しフェノール試薬を加えて発色後比色定量するチロシン法
  3. 血漿にトロンビンを添加してフィブリンを析出させ、これをアルカリ性尿素溶液に溶解して、蛋白質の吸光度を測定するヤコブソン法
    フィブリノゲン抗原量を測定する方法
  4. 血漿を12% 硫酸アンモニウムでフィブリノゲンを塩析し、その濁度を測定する比濁法
  5. 抗ヒトフィブリノゲン抗体を含む試薬を血漿と混合し、抗原抗体反応を起こさせて生じる凝集塊による濁度を測定する免疫比濁法
  6. 抗ヒトフィブリノゲン抗体を結合したラテックス粒子と血漿を混合して生じるラテックス粒子凝集塊に、近赤外光を照射して単位時間あたりの吸光度変化を測定するラテックス凝集法
  7. 抗ヒトフィブリノゲン抗体を一次抗体として用いるELISA法などがある。
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補正試験
APTTやPTが原因不明の延長をきたしている場合に、凝固因子の欠乏または低下によるものか、何らかのインヒビターの存在によるものかを判別するために有用なスクリーニング検査で、「血液凝固補正試験」「混合補正試験」などと表現される場合もある。
いくつかの異なる比率で患者血漿に正常血漿を混合し、正常血漿から補充された凝固因子によって凝固時間が補正される程度を横軸に混合比、縦軸に凝固時間でグラフ化して評価する。下に凸のパターンをとった場合に凝固因子の欠乏または低下を疑い、上に凸のパターンをとった場合に何らかのインヒビターの存在を疑う。また、一般に凝固因子に対するインヒビターは遅延型(時間依存性)、ループスアンチコアグラントは即時型を示すことが多く、混合直後と37℃1-2時間孵置の両者を測定する。しかし、測定試薬の選択が判定に大きく影響することや、必ずしも定型的なパターンを示さない場合も存在することから結果の解釈には注意を要する。
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凝固因子活性測定(主としてFVIII,FIX)
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凝固因子抗量測定
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抗凝固因子測定(Bethesda法)
定義
Bethesda(ベセスダ)法は、凝固因子に対するインヒビター(抗体)の存在およびその力価を、凝固因子阻害活性から測定する方法である。
凝固因子阻害活性はBethesda単位(BU/mL)で表現され、1BU/mLは正常血漿1mL中に存在する凝固因子活性を50%阻害する(半減させる)力価と定義されている。基準値は“検出されない”であり、0.5BU/mL以上を陽性と判断する。
被検血漿またはその希釈列(希釈にはイミダゾール緩衝液(0.05mol/Lイミダゾール含0.1M NaCl、pH7.4)を用いる)を正常血漿と当量混和した検体の、37℃で2時間加温した後の残存因子活性を測定する。片対数グラフの縦軸に残存因子活性%を対数で、横軸にBU/mLをとり、(25%,2BU/mL)、(50%,1BU/mL)、(75%,0.415BU/mL)の3点をプロットした検量線を作成する。検体の残存因子活性%から検量線にてBU/mLを求め、これに希釈倍率を乗じ、被検血漿のBU/mLを算出する。
ポイント
  1. 各種凝固因子インヒビターの測定に応用できるが、主に抗第VIII・IX因子インヒビターの測定法として繁用されている。
  2. 検量線が片対数であることから、残存因子活性のわずかな差異はBU/mLに大きく影響する。従って、凝固因子定量検査に対しての習熟が必要である。
  3. インヒビターは多様であり、凝固因子活性に対する阻害様式は抗体濃度に比例する場合とそうでない場合がある。
    a.比例する場合(タイプ1インヒビター)
    先天性凝固障害(血友病など)によって発生する同種抗体の場合に多い。このような場合には残存因子活性が25〜75%の範囲となるような希釈を行い、この範囲内の複数のポイントから算出し、平均する。
    b.比例しない場合(タイプ2インヒビター)
    一般に分娩、自己免疫疾患や加齢を背景として後天性に発生する自己抗体の場合に多い。このような場合には、希釈列において残存活性が50%に最も近いポイントから算出する。
  4. 0〜0.5BU/mLの領域の判定は困難である。このような被検血漿に対し、測定感度と特異性が高いとされるNijmegen(ナイメゲン)変法が報告されている。しかしこの方法は非常に特殊であり、また経済的でない。
  5. Bethesda法では表現されない、すなわち因子阻害活性を示さない抗凝固因子抗体も存在する。
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AT/AC/TM測定
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Thrombin generation test
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抗凝固療法
定義
血栓症の治療ならびに予防に用いられ、凝固系活性化を抑制する治療法である。抗凝固療法は抗血小板療法、線溶療法と会わせて、抗血栓療法と総称されている。
ポイント
  1. 作用部位により、抗Xa剤(フォンダパリヌクス)、抗トロンビン(IIa:アルガトロバン)剤、抗Xa/IIa剤(低分子ヘパリン)、広範阻害型(アンチトロンビン、未分画ヘパリン、合成プロテアーゼ阻害剤、ワルファリン)、プロテインC制御系(活性化プロテインC、トロンボモジュリン)に分かれる。
  2. また投与方法により経口剤と、皮下注射薬、静脈投与薬に分かれる。
  3. 抗凝固薬の副作用として出血症状が出現するのは、薬効からいって宿命であるが、抗Xa剤や合成プロテアーゼ阻害剤等は比較的出血症状が出現しにくい。
  4. ワルファリンや未分画ヘパリンは安価で、作用も強力であるので、使用頻度は高いが、international normalized ratio (INR)や活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)などでモニターする必要がある。
  5. 抗Xa剤や抗Xa/IIa剤ならびに合成プロテアーゼ阻害剤は出血の副作用が少ないが、簡単なモニターの方法はない。
  6. 上記の薬剤の特性ならびに血栓症の病態を考えて、抗凝固療法を選択する必要がある。
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アスピリンとワーファリンの使い分け
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止血剤(γFVIIaを含む)
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第XIII因子製剤
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ヘパリン類
概念
現在日本において使用可能なヘパリン類としては、未分画ヘパリン(unfractionated heparin:UFH)、低分子ヘパリン(low molecular weight heparin:LMWH)、ダナパロイド(danaparoid sodium:DS)、フォンダパリヌクス(fondaparinux)の4種類が知られている。これらの薬剤は、アンチトロンビン依存性に抗凝固活性を発揮する点では共通しているが、抗Xa/トロンビン比、半減期などに差違がみられる。
解説
薬品名
未分画ヘパリン
低分子ヘパリン
ダナパロイド
フォンダ
パリヌクス
商品名
ヘパリンなど
フラグミン、クレキサン
(それぞれ、ダルテパリン、
エノキサパリン)など
オルガラン
アリクストラ
分子量
5,000〜30,000

5,000前後に分布

5,500
1,728
日本での
適応症
DIC、体外循環の血液凝固防止
(透析)、血栓症の予防や治療など
(フラグミンなど)
血液体外循環時の灌流血液の
凝固防止、DIC
(クレキサン)
一部の整形外科手術および腹部外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制
DIC
一部の整形外科術後および腹部外科手術後のVTE発症抑制
半減期
0.5-1時間
2-4時間
20時間
17時間
抗トロンビン
/FXa活性比
1 : 1
1 : 2〜5
1 : 22
1 : 7,400
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トロンボモジュリン製剤
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フィブリン糊
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