2015年SPCシンポジウム演題募集の御案内


日本血栓止血学会 会員の皆様へ

第37回日本血栓止血学会学術集会(2015年5月21日-5月23日、尾崎由基男 会長、山梨)では、5月21日の午後にSPCシンポジウムを開催いたします。今回はSPC委員会指定の4テーマで実施します。SPCシンポジウムでの発表 を希望される方は、先ず、演者、演題名、抄録などを一般演題としてオンライン登録してください。発表形式選択欄では希望のSPCシンポジウムテーマをお選 びください。また、同時に、SPCシンポジウムでの発表を希望する旨を学会事務局(headquarters@www.jsth.org)まで、選定テーマ、演 者、演題名、登録番号、抄録をe-mailでご連絡下さい。確認のためにFAX(03-6912-2896)でもお送り下さい。座長が中心となり各テーマ に相応しい演題を採用させていただきます。

なお、採択された演題は、英文・字数 (半角) 2940字以内で抄録を作成し、学会事務局(headquarters@www.jsth.org)までお送り下さい。採用されなかった演題は、一般演題としてプ ログラム委員会で取り扱います。不採用の場合の発表形式は、口演発表、ポスター発表、口演・ポスターの両方の何れかを選んでUMINで登録をお願い致します。

奮って応募くださるようお願い申し上げます。

SPC委員会
委員長 一瀬 白帝

 

2015 SPCシンポジウムのテーマ

1.炎症・免疫と血栓を繋ぐ動物モデル(動物モデル部会/炎症・免疫と血栓部会~共同開催~)-Animal model connecting inflammation/immunity to thrombosis-

2.Cell-based coagulation の立場からの抗凝固療法(抗血栓療法部会)
-Anticoagulant therapy on the basis of cell-based coagulation-

3.臨床データからみた癌患者における血栓症研究のすすめ ~本邦での未検討領域を明確に~(癌と血栓部会)
-Suggestion of the thrombosis research in the domain of oncological and hormone replacement therapy-

4.線溶系因子の新規機能解析と創薬への応用(線溶とその制御部会)
-Studies on the novel function of fibrinolysis factors and the drug discovery research-

 

各シンポジウム概要

 

1.炎症・免疫と血栓を繋ぐ動物モデル-Animal model connecting inflammation/immunity to thrombosis-
座長:永井信夫(長浜バイオ大学バイオサイエンス学部)
惣宇利正善(山形大学医学部分子病態学)
テーマの目的と内容:
生 体防御を担う免疫系と血栓形成系(血小板、凝固・抗凝固、線溶)は、時に互いに関連しあいながら、様々な炎症像をもたらしている。ある意味、炎症は外的 (時に内的)刺激とそれぞれの系を構成する分子、細胞・組織間の高次元な相互作用を反映するものとらえられる。したがって、炎症につながる免疫系と血栓形 成系との総合的かつ詳細な関係を明らかにするうえで、個体レベルでの検証が不可欠である。
炎症・免疫と血栓との関連は、感染や炎症性疾患における 出血あるいは血栓性病態から伺われ、リポポリサッカライドなどの炎症惹起物質の投与などといった、動物を用いた実験から検証されてきた。一方で、抗リン脂 質抗体症候群や特発性血小板減少性紫斑病、インヒビターによる後天性血友病など、自己免疫の破綻による血栓形成系の異常も、免疫と血栓との関連を理解する うえで重要である。
昨今の遺伝子改変技術により、免疫系・血栓形成系を構成する個々の因子に異常をもつ動物が作成され、炎症・免疫と血栓との緊密 な関係を示す様々な知見が得られつつある。本シンポジウムでは、動物モデルを用いて得られた炎症・免疫と血栓との関連の新たな知見を紹介するとともに、最 新の遺伝子改変動物作成技術について学び、免疫系と血栓形成系との高次元な相互作用の総合的解明に向けた今後の方向性を見出していきたい。

 

2.Cell-based coagulation の立場からの抗凝固療法-Anticoagulant therapy on the basis of cell-based coagulation-
座長:山崎昌子(東京女子医科大学医学部神経内科学)
後藤信哉(東海大学医学部内科学系循環器内科学)
テーマの目的と内容:
直 接抗Xa薬と直接抗トロンビン薬は、血液凝固機序のcell-based model theoryを基に、凝固カスケードの要となるXaとトロンビンを標的として開発された。これらの直接凝固因子阻害薬は、国際共同試験において、モニタリ ングをしない固定用量での投与がPT-INR 2〜3を標的としたワルファリンに対し非劣性であることが証明され、ワルファリン投与の煩雑さを解消する経口抗凝固薬として、わが国でも市販後数年間で多 くの患者に処方されている。ワルファリンに比べて頭蓋内出血、中でも脳内出血が少なく、合併したとしても軽症であることが示唆され、その理由を血液凝固機 序から説明できることも、心房細動患者の抗凝固療法にワルファリンよりも直接凝固因子阻害薬を選択する大きな要因となっている。
ワルファリン療法 中の出血のリスク因子の中で、高齢、腎機能障害、抗血小板薬併用は、直接凝固因子阻害薬の出血リスクでもある。中等度の腎機能障害を有する高齢者や抗血小 板薬との併用で抗凝固療法を行う場合には、PT-INRの目標値を低めにしてワルファリンが選択されることが少なくない。このように出血リスクが高く、頭 蓋内出血のリスクを下げたい患者の方が、むしろ個別最適化の行えない直接凝固因子阻害薬を使いにくい状況もある。直接凝固因子阻害薬の特徴を生かして使い こなすために、個別に心血管イベントのリスクを予測し、投与の対象となるハイリスク患者を選択する方法や、血中濃度や凝固能から過度な凝固抑制を評価して 重篤な出血を回避する方法の確立が望まれている。現在、トロポニンや脳性ナトリウム利尿ペプチドなどのバイオマーカーの有用性や、PTやAPTTによる血 中濃度の著明な上昇の評価などが検討され、Xaの構造と機能の解析を基にGlaドメインを欠き活性中心のセリンがアラニンに置換されてプロトロンビンの活 性化作用を持たない拮抗薬が開発されている。本シンポジウムでは、直接凝固因子阻害薬の登場により明らかとなった経口抗凝固療法の課題と今後について、 cell-based coagulation の基礎研究の進歩と心房細動の病態理解の観点から議論してみたい。

 

3.臨床データからみた癌患者における血栓症研究のすすめ ~本邦での未検討領域を明確に~
-Suggestion of the thrombosis research in the domain of oncological and hormone replacement therapy-
座長:保田知生(近畿大学医学部外科,附属病院安全管理部)
川口龍二(奈良県立医科大学産科婦人科)
テーマの目的と内容:
本 邦における癌患者の血栓性合併症の頻度は欧米に比べると比較的低いため,手術や化学療法の治療の際に予防が施されることは少ないと思われる.2004年に 発刊された本邦の静脈血栓塞栓症の予防ガイドラインでは,癌はリスク要因の一つと認定されているが,この付加リスクを予防処置にどのようにいかすかは各臨 床現場に任されているのが現状である。近年,癌手術に於いても術前や術後に化学療法が併せて行われ,あるいは中心静脈などの併施も相まって,治療中に血栓 性合併症を併発することも少なくない。欧米ではASCOのVTE予防ガイドラインが2013年に改定され,ISTHも癌患者の中心静脈留置に関するVTE 予防ガイドラインが発刊され,その理論的背景が明らかとなっている。本邦での近年の報告をみると,Myelomaおよび神経上皮腫瘍の領域でその発生頻度 が検討されている。本邦と欧米のVTEに関するリスク強度はどのくらい異なるのか,本邦では未検討の領域が多いため明確ではない。
シンポジウムの 目的は,欧米の現在の血栓症予防の現状とわが国の現状を討論して頂き,本邦で未検討の領域が何であるのかを明らかとしたい。また同時にホルモン療法による 癌誘発,および血栓性合併症の本邦における現状を取りあげ,今後の血栓症研究のすすめ方の一助となるように努めたい。

 

4.線溶系因子の新規機能解析と創薬への応用 – Studies on the novel function of fibrinolysis factors and the drug discovery research –
座長:関 泰一郎(日本大学大学院生物資源科学研究科)
鈴木優子 (浜松医科大学医生理学講座)
テーマの目的と内容:
線 溶系因子は、血管内に形成された血栓の溶解のみならず、細胞表面に存在する受容体や特異的結合タンパク質を介して結合し、細胞周囲のタンパク質分解や細胞 機能の制御に関与している。このような細胞や組織レベルでの線溶の機能は組織線溶と呼称され、血管新生、創傷治癒、神経変性、がん細胞の増殖・浸潤・転移 などの様々な生命現象に関与している。
本SPCシンポジウムでは、以下の2つの課題を取り上げて、関連分野の最新の知見を提供して活発な議論を展開することを目的としている。
①生活習慣病の病態における組織線溶と線溶系因子の新しい機能、その分子メカニズムに関する最近の成績について報告する。近年急増している糖尿病と骨代謝、特に糖尿病性骨粗鬆症の病態機序における線溶系因子の新しい機能について、細胞線溶機能を中心に討論する。
② 線溶系因子の3次元X線結晶構造解析情報をもとに、最新のstructure-based drug design(SDD)により線溶因子の活性中心にドッキングする候補化合物から開発されたPAI-1阻害薬、また、醗酵生産物から単離された線溶制御物 質の新規脳梗塞治療薬としての新しい機能、薬効について、臨床への応用例を含めた最新の知見について紹介する。
これらの2つの課題に関する最新知見について議論することにより、基礎と応用を結び付ける線溶研究の新しい方向性や可能性についても考える。また、上記2課題に関連した独創性の高い線溶研究を一般演題から採択し、本学会の線溶分野の研究の発展につなげていく。

 

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