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用語集(詳細説明)

大分類:凝固

小分類:機能分子


ポリリン酸
polyphosphate

解説

1) ポリリン酸の構造
 ポリリン酸はリン酸が直鎖状につながった陰電荷物質である。ポリリン酸は血小板の濃染顆粒や微生物の細胞内顆粒中に蓄えられており、刺激依存性に放出される。活性化血小板は60-100個のリン酸が結合した中鎖ポリリン酸を放出する。原核生物の顆粒中には数百個-数千個のリン酸がつながった長鎖ポリリン酸が存在する。

2)ポリリン酸の凝固系・キニン系における機能
 ポリリン酸は血液凝固惹起因子であり、内因系経路の凝固第XII因子(FXII)を活性化する。活性化したFXII(FXIIa)は、凝固第XI因子(FXI)の活性化を通して血栓形成、血漿プレカリクレインの活性化を通して炎症反応を、それぞれ惹起する。また、ポリリン酸はトロンビンによる凝固第V因子(FV)とFXIの活性化を著しく促進する、太くて強いフィブリンを形成するなど、血栓促進因子としての機能を持つ。このように、ポリリン酸は血液凝固の内因系経路の活性化を通してトロンビン形成とフィブリン塊の形成を行うだけでなく、血漿プレカリクレインの活性化を通してブラジキニン産生を介して炎症も惹起する。

3) 病態との関わり
 マウスの研究では、ポリリン酸-FXII経路により凝固系とキニン系が作動することが明らかになっている。事実、マウスにポリリン酸を静注すると肺塞栓が観察される。ポリリン酸は脱リン酸化酵素で容易に分解を受け、血中半減期は1.5-2時間である。

4) その他のポイント・お役立ち情報
 ポリリン酸は抗血栓の標的分子と考えられる。活性を中和する低分子化合物はマウス血栓モデルで強力な抗血栓能を示した。

図表

ポリリン酸の化学構造

ポリリン酸の化学構造

参考文献

1) 宮田敏行,坂野史明:Ⅵ.凝固線溶系(3)血栓症と炎症におけるポリリン酸の役割,Annual Review 血液 2014,216-223,2014.

引用文献

1) Smith SA, Mutch NJ, Baskar D, Rohloff P, Docampo R, Morrissey JH: Polyphosphate modulates blood coagulation and fibrinolysis. Proc Natl Acad Sci USA 103: 903-908, 2006.

2) Morrissey JH: Polyphosphate: a link between platelets, coagulation and inflammation. Int J Hematol 95: 346-352, 2012.

3) Jain S, Pitoc GA, Holl EK, Zhang Y, Borst L, Leong KW, Lee J, Sullenger BA: Nucleic acid scavengers inhibit thrombosis without increasing bleeding. Proc Natl Acad Sci USA 109: 12938-12943, 2012.

著者

宮田 敏行 (国立循環器病研究センター・分子病態部)

坂野 史明 (国立循環器病研究センター・分子病態部)

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