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用語集(詳細説明)

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高分子キニノゲン(HMWK)
high molecular weight kininogen(HMWK)

解説

1)分子量、血中濃度
 高分子キニノゲン(high molecular weightkininogen: HMWK)は、主として肝臓で産生される626個のアミノ酸からなる分子量約120kDaの一本鎖血漿タンパク質で、血中濃度は約70μg/mlである。

2)構造と機能
 HMWKは、凝固第XI因子血漿プレカリクレインと複合体を形成して血中を循環しており、創傷などにより陰性荷電が露呈したとき、HMWKはそのhistidine-rich domainを介して陰性荷電に結合する。これにより同様に陰性荷電に結合し、活性化されて生成した第XIIa因子とともに、陰性荷電上でHMWK、凝固第XI因子およびプレカリクレインの4因子が濃縮されることになる。続いて、陰性荷電表面上で、第XIIa因子による凝固第XI因子やプレカリクレインの活性化が起こり、生成した第XIa因子は凝固第IX因子を活性化することにより凝固カスケードの逐次的活性化によるフィブリン生成を誘引する。同時に生成したカリクレインはポジティブフィードバック機構により凝固第XII因子を活性化するとともに、HMWKを分解することにより9個のアミノ酸からなるブラジキニンを生成し、ブラジキニンは血管透過性を亢進させることにより炎症性の浮腫を惹起する。

3)ノックアウトマウスの表現型
 キニノゲン欠損マウスが作成されている。キニノゲン欠損マウスでは凝血学的異常は認められず、尾静脈切断後の出血時間では、野生型マウスとの間に有意な差を認めなかった。しかしレーザーにより動脈を傷害した後の閉塞時間は、野生型マウスに比較してキニノゲン欠損マウスで閉塞時間が延長していた。HMWKは正常止血には影響せず、病的止血に影響することが考えられる。

4)病態とのかかわり
 HMWK欠損症患者では、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の延長を示すが、通常、出血症状は認められない。最近、日本で脾臓梗塞を発症した患者でホモ接合体性のHMWK欠損症が報告されている。その患者では、血中HMWK濃度が0.9%と著しく低下しており、APTTの著しい延長が認められている。

5)その他のポイント・お役立ち情報
 HMWK分子上には、ブラジキニンに対応する領域に隣接してシステインプロテアーゼインヒビター活性を有する領域が存在することが知られている。その役割としては、炎症による局所傷害に伴い、細胞内から放出されるプロテアーゼによる過度の組織傷害から生体を保護する役割が推定されている。

図表

図 ヒト高分子キニノゲンの構造の概略と機能領域

図 ヒト高分子キニノゲンの構造の概略と機能領域

参考文献

1) 中冨靖,中垣智弘:内因系血液凝固研究の現状―XII因子,XI因子及び高分子キニノーゲンの欠損マウスについてー,日本血栓止血学会誌 20:323-328,2009.

2) 岡本貴行,鈴木宏治:血漿蛋白質の種類と機能 よくわかる病態生理5 血液疾患 第1版,日本医事新報社,107-109.

3) Fukushima N, Itamura H, Wada H, Ikejiri M, Igarashi Y, Masaki H, Sano M, Komiyama Y, Ichinohe T, Kimura S: A novel frameshift mutation in exon 4 causing a deficiency of high-molecular-weight kininogen in a patient with splenic infarction. Intern Med 53: 253-257, 2014.

引用文献

著者

林 辰弥 (三重県立看護大学・生化学)

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