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用語集(詳細説明)

大分類:線溶

小分類:病態


神経系と線溶
 

解説

 神経系における線溶の機能は多彩であり、神経細胞生存/死の制御、神経ネットワークの可塑性、ミクログリアの機能制御、脳血管機能/透過性制御等が挙げられる。

 組織型プラスミノゲンアクチベータ(tPA)は神経細胞およびミクログリアに発現しており、神経細胞では神経終末および樹状突起より分泌されると考えられている。脳では海馬、辺縁体、小脳(プルキンエ細胞)の発現が多く、脊髄でも発現している。tPAの作用はプラスミン生成を介する反応とレセプターへの結合による反応に大別される。tPAのレセプターとして、NメチルDアスパラギン酸(NMDA)型グルタミン酸受容体サブユニットA、B、D、リポタンパク受容体関連タンパク(LRP)、アネキシンA2が報告されている。tPAの作用機序、発現する細胞種、制御する細胞機能を表に示す。このうち、神経細胞の生存/死に対するtPAの作用については、多くの相反する知見が報告されてきた。また、tPAの神経細胞死誘導作用は、製剤の混入物に起因すると言う報告もある1)。さらに、tPAは心的外傷後ストレス障害(PTSD)、総合失調症2)、アルツハイマー病に関連することが報告されている。

 プラスミンは神経栄養因子であるBDNF、およびミクログリア遊走因子(MCP1)の活性化を介して神経ネットワークの可塑性・記憶、およびミクログリアの集積を制御している。

 神経系ではプロテアーゼネキシン1 がtPAのインヒビターとして機能していると考えられている。また、プラスミノゲンアクチベーターインヒビター1(PAI-1)が神経細胞3)あるいはグリア細胞4)において発現し、神経機能の制御に寄与している可能性が示唆されている。

 ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ受容体(uPAR)は、uPARノックアウトマウスでの大脳皮質頭頂葉の介在性抑制性神経の減少および頭頂葉てんかんの亢進、あるいはてんかん誘導に伴う海馬での発現亢進が報告されていることから、てんかん形成に寄与する可能性が示唆されている5)

図表

表 tPAのレセプターとプラスミンの基質、ターゲットの細胞種、制御する細胞機能

表 tPAのレセプターとプラスミンの基質、ターゲットの細胞種、制御する細胞機能

参考文献

1) 永井信夫:中枢神経系におけるtPAの役割,日本血栓止血学会誌第20巻第1号,2009.

引用文献

1) Samson AL, Nevin ST, Medcalf RL: Low molecular weight contaminants in commercial preparations of plasmin and t-PA activate neurons. J Thromb Haemost 6: 2218-2220, 2008.

2) Hoirisch-Clapauch S, Nardi AE: Multiple roles of tissue plasminogen activator in schizophrenia pathophysiology. Semin Thromb Hemost 39: 950-954, 2013.

3) Stefos GC, Soppa U, Dierssen M, Becker W: NGF upregulates the plasminogen activation inhibitor-1 in neurons via the calcineurin/NFAT pathway and the Down syndrome-related proteins DYRK1A and RCAN1 attenuate this effect. PLoS ONE 8: e67470, 2013.

4) Simón D, Martín-Bermejo MJ, Gallego-Hernández MT, Pastrana E, García-Escudero V, García-Gómez A, Lim F, Díaz-Nido J, Avila J, Moreno-Flores MT: Expression of plasminogen activator inhibitor-1 by olfactory ensheathing glia promotes axonal regeneration. Glia 59: 1458-1471, 2011.

5) Bruneau N, Szepetowski P: The role of the urokinase receptor in epilepsy, in disorders of language, cognition, communication and behavior, and in the central nervous system. Curr Pharm Des 17: 1914-1923, 2011.

著者

永井 信夫

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