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用語集(詳細説明)

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抗血小板第4因子・ヘパリン複合体抗体(HIT抗体)
anti-platelet factor 4・heparin antibodies (HIT antibodies)

解説

【基準値】
 抗血小板第4因子・ヘパリン複合体抗体(HIT抗体)は、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)診断に測定される。診断根拠となるヘパリン依存性血小板活性化能を持つHIT抗体の検出が重要。

【異常値を示す病態とそのメカニズム】
 ヘパリンと適度な濃度比で存在する場合に血小板第4因子(PF4)の構造が変化し、新たな抗原性を提示し抗体産生が起こる。一部が血小板活性化能を持ち(HIT抗体)、血小板表面で多重合体を形成した免疫複合体が、CD32(FcγRIIA)をクロスリンクし活性化させ、凝固促進活性を持つマイクロパーティクルが放出される。HIT抗体は、単球や血管内皮細胞の活性化により、組織因子を介した凝固因子の活性化も引き起こし、トロンビンの過剰産生が生じ、血小板減少、さらには血栓塞栓症を誘発する。

【測定法・測定原理】
 HIT抗体量を測定する免疫測定法と、血小板活性化能を測定する機能的測定法がある。前者には、PF4・ヘパリン(もしくはスルホン化ポリビニル)複合体を標的とした酵素結合免疫測定法、ラテックス凝集法、化学発光免疫測定法などがある。機能的測定法として、多血小板血漿を用いる場合、洗浄により血小板がある程度活性化し、PF4が放出され、ヘパリンの血小板への結合を増強し感度が高くなる利点がなくなり、血漿中IgGや急性反応物質が偽陰性や偽陽性を招く可能性があり、感度、特異度に劣る。洗浄血小板を用いる方法が、感度、特異度に優れるが、HIT抗体に最適反応を示すドナーを選択する、弱陽性コントロールを含むなど、高い品質管理が要求される。感受性の高いドナーの洗浄血小板を用い、ヘパリン依存性にHIT抗体で誘導される血小板由来マイクロパーティクルをフローサイトメトリーで定量化されている1)

【異常値を示す病態とそのメカニズム】
 免疫測定法は特異度が低く、偽陽性が多い。臨床的に意義がないIgM、IgAをIgGとともに測定すること、IgGの一部のみが血小板活性能を有することによる。インターロイキン8などに対する抗体が同様にヘパリン依存性血小板活性化を引き起こすが、関与は非常に限られ、免疫測定法による(HIT抗体)が陰性の場合、ほぼ(95-99%程度)HITを否定して良い。免疫測定法の(特にIgGの)抗体価が高くなるほど、HITらしい患者が増加する。ヘパリン依存性血小板活性化能を測定する洗浄血小板を用いた機能的測定法がHIT診断に重要。

【その他のポイント】(HIT既往患者へのヘパリン再投与)
 HIT既往患者に対し、原則的にヘパリン再投与は禁忌とされるが、HIT抗体陰性化後は、再投与後に必ずしも再発しない。ただ、最近、ヘパリン再投与後に、HIT抗体の再上昇が少なからず認められると報告され、注意が必要。ヘパリン再投与が必要な場合(人工心肺手術など)、可能な限りHIT抗体陰性化まで待機し、必要時(人工心肺使用時)のみヘパリンを投与、離脱後は直ちに中止、術後必要であれば抗トロンビン剤(アルガトロバン)を投与する方法が最善。

図表

参考文献

1) 宮田茂樹:ヘパリン起因性血小板減少症における最新の知見,血栓止血誌 23:362-374,2012.

引用文献

1) Maeda T, Noguchi T, Saito S, Yoshioka R, Horibe E, Miyanaga S, Seguchi S, Kanaumi Y, Kawai T, Okazaki H, Miyata S: Impact of heparin-induced thrombocytopenia on acute coronary artery thrombosis in patients undergoing PCI. Thromb Haemost 112: 624-626, 2014.

著者

宮田 茂樹 (国立循環器病研究センター 輸血管理室)

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