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用語集(詳細説明)

大分類:血小板

小分類:検査


抗血小板療法のモニタリング
 

解説

 急性冠症候群におけるステント留置術には、アスピリンチエノピリジン系抗血小板薬の二剤併用抗血小板薬併用療法がスタンダード治療として行われている。アスピリン及びクロピドグレルには、薬効である血小板機能抑制作用に個人差があることが報告されている。

 抗血小板療法のモニタリングは、主として血小板凝集計で行い抗血小板剤の薬理学的作用の個人差(効き過ぎ、至適値領域、不応症)を把握し適正使用に役立てることである。抗血小板薬モニタリングには、臨床現場で簡便にリアルタイムに測定、判断できるように工夫された全血凝集計が一般的に用いられている。全血凝集計はいろいろなものが開発されており、長所と短所を有している。これらには、吸光度法を改良し全血で測定可能なVerifyNowシステムインピーダンス法としてはMultiplateアナライザー(MEA: multiple electrode aggregometry)、SFP(screen filtration pressure)法としてはWBA-Neo装置、血流条件下での血栓測定装置T-TASがある。ただし、WBA-Neoは日本のみ普及している装置である。また、血小板機能抑制シグナルであるcyclic AMP依存性リン酸化タンパク質VASP(vasodilatator stimulated phosphoprotein)のリン酸化をフローサイトメトリーやELISAで測定する方法などがある。point-of-care testing(患者のすぐ近くで行う検査)として全血凝集計による検査が普及してきたが、なかでもVerifyNowシステムは、凝集惹起物質-血液が1つのカートリッジ内で反応するように設計され極めて簡便に行えるため、日本を含め世界中で用いられ数多くの報告がなされている。

 アスピリンまたはクロピドグレルの不応症は、薬理学的な観点から標準用量のアスピリンまたはクロピドグレルの投与により血小板凝集能が充分に抑制されない状態である。不応症の検出方法が標準化されておらず、また不応症の評価基準は報告者により様々であるが、急性冠症候群にステント植え込みを施行し二剤併用療法を行った場合クロピドグレル不応症例の心血管イベントの発症リスクは概して高いとする報告が多い1)

 抗血小板薬服用による不応症(高凝集値)や低凝集値を判別する値が閾値(cut-off値)であり(図)、不応症のcut-off値は通常心血管イベント発生数よりROC曲線(receiver operating characteristic curve、受信者動作特性曲線)より算出されるため、心血管イベント頻度が少ないと多くの登録症例での解析が必要である。

 これまでに報告されている欧米のクロピドグレル不応症のcut-off値をまとめると、VerifyNow-P2Y12値>230PRU(最近のADAPT-DES2)では>208PRU), VASP PRI>50%, MEA>468AU×min(46Uと同じ)であり、これ以上の高値を示すとクロピドグレル不応症と判断されると考えられる。一方、出血のcut-off値については、あるとする報告、計算していない報告、ないとする報告が混在しており、定かではない。医療保険制度の違いによる虚血性心疾患治療の内容の違い,人種差による薬物代謝酵素の違いなどが考えられ、日本人にこれらの虚血性イベントのcut-off値の基準を用いるには、更なる検討が必要である。

図表

図. ステント植え込み術施行の急性冠症候群のでのクロピドグレルによる血小板凝集能とイベントとの関係

図. ステント植え込み術施行の急性冠症候群のでのクロピドグレルによる血小板凝集能とイベントとの関係

参考文献

引用文献

1) Tantry US, Bonello L, Aradi D, Price MJ, Jeong YH, Angiolillo DJ, Stone GW, Curzen N, Geisler T, Ten Berg J, Kirtane A, Siller-Matula J, Mahla E, Becker RC, Bhatt DL, Waksman R, Rao SV, Alexopoulos D, Marcucci R, Reny JL, Trenk D, Sibbing D, Gurbel PA; Working Group on On-Treatment Platelet Reactivity: Concensus and update on the definition of on-treatment platelet reactivity to adenosine diphosphate associated with ischemia nand bleeding. J Am Coll Cardiol 62: 2261-2273, 2013.

2) Stone GW, Witzenbichler B, Weisz G, Rinaldi MJ, Neumann FJ, Metzger DC, Henry TD, Cox DA, Duffy PL, Mazzaferri E, Gurbel PA, Xu K, Parise H, Kirtane AJ, Brodie BR, Mehran R, Stuckey TD; ADAPT-DES Investigators: Platelet reactivity and clinical outcomes after coronary artery implantation of drug-eluting stents (ADAPT-DES): a prospective multicentre registry study. Lancet 382: 614-623, 2013.

著者

西川 政勝 (三重大学医学部附属病院臨床研究開発センター)

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