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用語集(詳細説明)

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脳血栓塞栓症と線溶療法
fibrinolytic therapy in cerebral thromboembolism

解説

【概要】
 血栓性および塞栓性機序によって閉塞された脳血管を、血栓を溶解することによって再開通させ、血管支配領域の神経細胞が壊死に陥るのを防ぐのが線溶療法である。虚血性脳血管障害超急性期の血栓溶解療法は、奏功すれば劇的な効果を発揮する反面、合併症としての頭蓋内出血によりかえって重篤となる場合もある。

【血栓溶解療法の基礎】
 脳血流が低下すると、神経細胞には虚血の程度と持続時間に応じた可逆性の細胞機能傷害や非可逆性の細胞死が起こる。虚血によって細胞機能傷害に陥っているものの、細胞死には至っていない神経細胞が存在する低灌流領域をペナンブラと呼ぶ。脳血栓塞栓症では、壊死に陥った虚血中心の周囲にペナンブラが存在し、発症後の時間経過ともに壊死に陥ると考えられている。壊死に陥る前にペナンブラの血流が再開すれば、細胞機能が正常に回復し、臨床転帰が改善することが期待される。ただし、虚血による内皮傷害は、再灌流時の出血性梗塞の増悪を引き起こす。このため、血栓溶解療法の適応は、再灌流によって改善しうる組織の可逆性と、出血性梗塞のリスクから総合的に判断する。

【治療の実際】 
 血栓溶解療法は、経動脈的に局所選択的に行う方法もあるが、静脈内投与が一般的である。
経静脈的血栓溶解療法は、発症後4.5時間以内に治療可能な、虚血性脳血管障害が対象となる。脳血栓塞栓症の臨床病型は問わず、神経症候、画像や臨床検査から適応を判断する。虚血性脳血管障害急性期の適応で承認されている血栓溶解薬は、遺伝子組換え組織型プラスミノゲンアクチベータ(tPA製剤、アルテプラーゼ)のみである。アルテプラーゼ0.6 mg/kg の10%を急速投与し、残りは 1 時間かけて静注する。治療開始後24時間は、基本的には抗血栓療法を行わない。

【ポイント】 
1)日本脳卒中学会から出されている適正治療指針を遵守する。使用基準を遵守しないと、症候性頭蓋内出血の危険性が著しく増大する。
2)承認当初は発症後3時間以内が対象であったが、2012年に4.5 時間以内へと拡大された。ただし、発症から再開通までの時間が短いほど良好な転帰が期待できるため、可及的早期に治療を開始する。 
3)アルテプラーゼ投与量は、わが国のみ0.6 mg/kgと独自用量で、欧米諸国の0.9 mg/kg と同様の治療成績が得られている。 
4)画像診断を駆使してペナンブラの存在や症候性頭蓋内出血の危険性を評価する。 
5)アルテプラーゼ静注療法の治療効果は、血管閉塞部位により異なる。

【お役立ち情報】
1)アルテプラーゼは、フィブリン特異性がそれ程高くなく、神経毒性を有するなどの問題点があり、新しい薬剤の開発が進んでいる。 (デスモテプラーゼの開発が進んでいたが2015年に中止された。)
2)機械的に血栓を除去する血管内治療が進歩し、アルテプラーゼにより再開通が得られない場合の後療法などとして行われている。

図表

参考文献

1) rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法適正治療指針 第二版,日本脳卒中学会ホームページhttp://www.jsts.gr.jp/img/rt-PA02.pdf

引用文献

著者

山崎 昌子

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