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用語集(詳細説明)

大分類:血小板

小分類:機能分子


トロンボポエチン(TPO)
thrombopoietin (TPO)

解説

 トロンボポエチン(TPO)は、骨髄における巨核球の増加・成熟を促進し、血小板数を増加させる血小板特異的な造血因子である。

【分子量】
 80-100 kDa

【血中濃度】 TPOは主要な産生臓器である肝臓から恒常的に産生され、転写レベルでの調節は行われていない。血中TPO濃度は、血小板や巨核球の細胞膜上に発現するトロンボポエチン受容体(MPL)によって制御されており、血小板や巨核球が減少するとMPLに捕捉されるTPOが減って血中TPOレベルが上昇し、逆に血小板や巨核球が増加するとMPLに捕捉されるTPOが増加して血中TPOレベルが低下するというメカニズムが考えられている。

【構造と機能】
 染色体3q27に位置するヒトTPO遺伝子は約6.2 kbにわたり、6個のエクソンから構成される。TPO cDNAの塩基配列から、全長サイズの成熟型ヒトTPOタンパク質は332アミノ酸残基からなる。TPO分子は2つのドメインに分けられ、N末端側ドメインは2組のジスルフィド結合のための4個のシステイン残基を有しており、TPOがMPLに結合する活性領域である。また、N末端側ドメインのアミノ酸配列は動物種間で良く保存されており、赤血球産生因子エリスロポエチン(EPO)と最も高いホモロジーを示す。その立体構造は典型的な4-helix bundle構造である。一方、C末端側ドメインは、N末端側ドメインに比べて種間でのホモロジーは低く、他に類似するタンパク質は認められない。ヒトTPOのC末端側ドメインだけに6箇所のアスパラギン結合型糖鎖付加部位が存在し、また、セリン/スレオニン結合型糖鎖付加部位はTPO分子全体に分布している。

【機能】
 TPOは巨核球前駆細胞の生存を維持して増殖・分化を促進し、多倍体化した成熟巨核球への分化を促進する。成熟巨核球は最終的に血小板を産生する。正常動物にTPOを投与すると末梢血中の血小板数が数倍にも増加する。また、TPOはEPOに協同して赤血球前駆細胞の増殖・分化を促進する。造血幹細胞の骨芽細胞ニッチにおいて、TPOは静止期造血幹細胞の維持にも関与している。

【ノック・アウトマウスの表現形】
 TPOをノックアウトしたマウスでは、正常の10~15%程度にまで血小板が激減するが、他系統の末梢血血球は減少しない。

【病態との関わり】
 TPO mRNAの翻訳亢進による血小板増多症の家系(常染色体優性遺伝)が複数報告されている。通常の8番目のAUGコドンから開始されるTPO mRNAの翻訳は、それより上流の5'非翻訳領域に存在する7個ものopen reading frame(ORF)によって強く抑制されている。しかし、そのような家系では、5'非翻訳領域における一塩基の置換や欠失によってORFの影響が軽減し、TPO mRNAの翻訳効率が高まっている。一方、TPOの17番目のアラニン残基がシステイン残基に置換したTPO遺伝子変異の一家系が報告されており、常染色体劣性遺伝形式で血小板減少を呈する。

図表

図 TPOの構造

図 TPOの構造

参考文献

1) 宮崎洋,加藤尚志:トロンボポエチン研究の歴史とクローニング,トロンボポエチンの基礎を知る,池田康夫編,トロンボポエチン受容体作動薬のすべて.先端医学社,2012年,19-30.

引用文献

著者

宮崎 洋 (国立研究開発法人 日本医療研究開発機構)

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