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用語集(詳細説明)

大分類:線溶

小分類:機能分子


組織型プラスミノゲンアクチベータ(tPA)
tissue-type plasminogen activator(tPA)

解説

【分子量,半減期,血中濃度】
 組織型プラスミノゲンアクチベータ(tPA) は527個のアミノ酸からなる一本鎖糖タンパクのセリンプロテアーゼ血管内皮細胞の小分泌顆粒またはWeibel-Palade小体(内皮特有分泌顆粒)から分泌される.分子量は糖鎖の違いにより55~60-kDaとなる.肝細胞や肝類洞内皮細胞の低密度リポタンパク関連受容体(LRP1)やマンノース受容体を介して血中より取り込まれ半減期は短い(~5分).日内変動(朝高く夕方低い:3-5 ng/ml)と季節性の変動(晩春低く秋は高い:3.5-5.6 ng/ml)があるが,血中では多くがその特異的阻害因子であるプラスミノゲンアクチベータインヒビター1(PAI-1)との複合体として存在するためPAI-1値の変動も加味される.加齢により分泌が低下するが,運動を継続していると年齢による低下は認めにくい.

【構造と機能】
 tPAはプラスミノゲンのArg561-Val562を限定分解することによりプラスミンに活性化し,線維素溶解(線溶)反応を開始する.N末端側から,フィンガードメイン,epidermal growth factor様ドメイン,二つのクリングルドメイン,触媒ドメインで構成される(図).プラスミンによりtPAのArg275-Ile276間が限定分解されると十分なセリンプロテアーゼ活性をもつ二本鎖tPA となるが,一本鎖でも二本鎖の約1/10の酵素活性を有する.両型ともにフィブリンアネキシンA2などの細胞表面タンパク質やβアミロイドなどのクロスβ構造を有するタンパクへの結合によりその活性は大きく増強する.フィブリン上にはフィンガードメインと2番目のクリングルドメイン(K2)を介してtPAが、またリジン結合部位によりプラスミノゲンが結合することにより三者複合体が形成され、フィブリン特異的に効率よく線溶系が活性化される.活性型酵素であるtPAの血漿中の活性は,PAI-1との濃度バランスで決まる.種々の分泌刺激(細胞内Ca2+濃度やcAMPの増加など)に応じてtPAの局所濃度が増大すると酵素活性は増強する.線溶促進作用のほかにも多彩な生理活性を有し,中枢神経系で神経細胞や小膠細胞・星状膠細胞に発現するtPAは,プラスミン活性依存性あるいは非依存性に神経可塑性,学習や記憶,情動,発達における神経細胞の移動や,グルタミン酸による神経細胞死にも関わる.また腫瘍増殖時の血管新生の促進にも関与する.

【ノックアウトマウスの表現型】
 発生、出産には影響しない.血栓溶解遅延を認め,ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ(uPA)とのダブルノックアウトでは遅延が増強する.また、tPAノックアウトマウスでは、学習・記憶能力の低下や、グルタミン酸による神経細胞死の低下が認められる。

【病態との関わり】
 血栓溶解薬としてリコンビナントtPA製剤(rtPA)が用いられるが、出血性梗塞等の副作用が問題となっている。脳梗塞では発症後4.5時間以内に投与する必要がある。

【その他のポイント】
 近年,蛍光顕微鏡下に血管内皮細胞からのtPA分泌の可視化が試みられ,分泌後のtPAは細胞表面に留まり効率的な活性発現に繋がることが判明した。生体内での細胞表面tPA活性調節機構の解明が待たれる。

図表

t-PAのドメイン構造

t-PAのドメイン構造

参考文献

1) 浦野哲盟他:血栓形成と凝固・線溶 治療に生かせる基礎医学,メディカル・サイエンス・インターナショナル,2013.

2) Kruithof EK, Dunoyer-Geindre S: Human tissue-type plasminogen activator. Thromb Haemost 112: 243-254, 2014.

引用文献

著者

鈴木 優子

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