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用語集(詳細説明)

大分類:凝固

小分類:薬剤


ワルファリン
warfarin

解説

1) 一般名(製品名):ワルファリン warfarin(製品名:ワーファリン,ワーファリンカリウム)

2) 適応:血栓塞栓症(静脈血栓症、心筋梗塞症、肺塞栓症、脳塞栓症、緩徐に進行する脳血栓症等)の治療及び予防

3) 副作用・禁忌:

(ア) 副作用:出血,皮膚壊死(6を参照)

(イ) 使用上の注意:肝機能障害など凝固因子産生低下時,ビタミンKを高用量含む食品・薬剤,薬剤相互作用

(ウ) 併用禁忌薬:メナテトレノン(グラケー),イグラチモド(ケアラム,コルベット)

4) 作用機序:ビタミンK依存性凝固因子は肝臓でN末端側のグルタミン酸残基がγカルボキシグルタミン酸(Gla)残基に置換され機能的な凝固因子となる.このGla残基はカルシウムと結合して凝固因子の細胞膜表面のリン脂質への結合に必須であり,凝固因子の機能に重要である.ワルファリンは肝臓でのビタミンK代謝サイクルのビタミンKエポキシドレダクターゼ(VKORC1)とビタミンKキノンレダクターゼの両酵素活性を非可逆的に阻害し,その結果としてビタミンK依存性凝固因子をGla残基を持たない不完全な凝固因子 (protein induced by vitamin K absence: PIVKA) のままにすることで抗凝固作用を発揮する(図1).

5) 半減期・代謝経路:ワルファリンは経口摂取後に上部消化管から完全に吸収される.内服後1-2時間程度で最高血中濃度に達し,約40時間程度の半減期を持って代謝される.ワルファリンは光学異性体であるSワルファリン(薬理活性が高い)とR-ワルファリンが当量の割合で含有されている.Sワルファリンは主に肝臓細胞のチトクロームP450 (CYP),特にCYP2C9による代謝により水酸化化合物となり代謝される.薬効の個人差は,この代謝に関与するCYP2C9,またワルファリンの標的分子であるVKORC1の遺伝子多型による。これらを調べることでワルファリンの必要量が推測できる[1].また薬剤相互作用としては、CYP2C9を阻害する薬剤の併用によりワルファリンの血中濃度が増加し,逆にCYP2C9を誘導する薬剤ではワルファリンの血中濃度が減弱する.またビタミンKを含有する食品(納豆など)により作用が減弱する.

6) その他のポイント・お役立ち情報:ワルファリンの作用はプロトロンビン時間(PT)にてモニタリングする必要があり,国際標準化比 (INR)で欧米においては2-3,日本人では1.5-2.5が出血合併症と抗凝固作用のバランスがとれる指摘量である[2].ワルファリンは,その薬剤効果を検査値により明確にすることが可能であり,検査値を参考に患者毎に薬剤の微調整が可能という点では使いやすい薬剤ともいえる.プロテインC欠乏症プロテインS欠乏症患者においてはワルファリン投与初期に急速なプロテインC,S活性低下に伴い皮膚壊死などの血栓症が悪化することがある.これらの患者では十分な抗凝固療法の基,慎重に投与量を増加させる必要がある.

図表

<b>図 ワルファリンの作用機序<br></b>ワルファリンはビタミンKエポキシドレダクターゼ,キノンレダクターゼを不可逆的に阻害して機能的な凝固因子の生産を抑制する(著者作成).

図 ワルファリンの作用機序
ワルファリンはビタミンKエポキシドレダクターゼ,キノンレダクターゼを不可逆的に阻害して機能的な凝固因子の生産を抑制する(著者作成).

参考文献

引用文献

1) International Warfarin Pharmacogenetics Consortium, Klein TE, Altman RB, Eriksson N, Gage BF, Kimmel SE, Lee MT, Limdi NA, Page D, Roden DM, Wagner MJ, Caldwell MD, Johnson JA: Estimation of the warfarin dose with clinical and pharmacogenetic data. N Engl J Med 360: 753-764, 2009.

2) Yamaguchi T: Optimal intensity of warfarin therapy for secondary prevention of stroke in patients with nonvalvular atrial fibrillation : a multicenter, prospective, randomized trial. Japanese Nonvalvular Atrial Fibrillation-Embolism Secondary Prevention Cooperative Study Group. Stroke 31: 817-821, 2000.

著者

大森 司 (自治医科大学生化学講座病態生化学部門)

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