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用語集(詳細説明)

大分類:線溶

小分類:機構


組織線溶・細胞線溶
tissue fibrinolysis, cellular fibrinolysis

解説

【概要】
 線溶系は止血機構の一環として研究されてきた。その間もプラスミノゲンアクチベータ(PA)が組織活性化因子として研究されていたが、組織の機能との関係では明らかでなかった。しかし、PAの一つであるウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ(uPA)の特異的な受容体であるウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ受容体(uPAR)の同定以降、細胞の機能、ひいては組織の機能と線溶系との役割が飛躍的に解明されてきた。これまでに、細胞の接着および遊走、がん細胞の浸潤・増殖/転移、組織修復、動脈硬化、血管新生創傷治癒、アレルギー反応、長期増強、神経可塑性、記憶、神経細胞死などに線溶系が関与していることが明らかになっている。その作用は、1)細胞表面で生成したプラスミンが直接あるいはマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMPs)の活性化を介して細胞外マトリックスタンパク質(ECM)を分解する機序、および2)線溶因子がリガンドとしてレセプターに結合しシグナル伝達を行う機序に大別される。

【ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ受容体(uPAR)】
 uPARは細胞膜上にglycosylphosphatidylinositol(GPI)をアンカーとして結合し、N末端側から順にドメインI(DI)、II(DII)、III(DIII)の3ドメインからなり、uPAと高親和性結合(Kd=10-10~10-9M)をする。uPAはそのN末端領域のATF(amino-terminal fragment)がuPARのDⅠに結合するので、uPAのC末領域にある酵素活性部位は「uPAR結合uPA」として酵素活性を発現できる。これによって細胞周辺に限局して酵素活性を発現する。この際uPAがプラスミノゲンを活性化しプラスミンを生成して細胞周囲のECM分解などを行うと共にMMP系を活性化することにより、セリン系酵素とメタル酵素が細胞表面/周囲の酵素活性制御に関与する。またuPARは、uPAをリガンドとする受容体として細胞内シグナル伝達系に作用する。このように、1)uPARはuPAの酵素活性に依存した細胞表面/周囲の酵素活性制御機能と、2)uPAの酵素活性を必要とせずuPAの結合による細胞内シグナル伝達制御機能をあわせ持つ。

【tPA受容体(tPAR)】
 tPAは血管内皮細胞以外に神経細胞でも分泌され、記憶、学習などに関わる神経の可塑性、あるいは神経細胞死などに係っている。tPARには多数あるが、その機能により2つに大別できる。すなわち、1)結合したtPAを細胞内に取り込み・分解を行うための代謝型と、2)結合したtPAの酵素活性を保持し、さらにその活性を修飾するいわゆる組織線溶調節型である。代謝型には、マンノース受容体およびlow-dencity lipoprotein receptor-related protein(LDL受容体関連タンパク;LRP)がある。組織線溶調節型には、アネキシンA2、20kDa tPAR、および56kDa tPARがある。

プラスミノゲン受容体(Plg-R)】
 プラスミノゲンはクリングル領域のリジン結合部位(LBS)を介してPlg-Rに結合するため、Plg-Rに結合したままでもPAによりプラスミンに変換される。したがってプラスミンがPlg-Rと結合している限り、LBSが占拠されているためα2アンチプラスミンによる阻害を受けない。その結果、細胞に結合したプラスミンはα2アンチプラスミンによる阻害を受けず、組織線溶を強力に発現できる。Plg-Rには 45k Daタンパク質、アクチン、αエノラーゼ、およびアンホテリンなどがある。多くはプラスミノゲンとともに組織型プラスミノゲンアクチベータ(tPA)をも結合し、プラスミン生成が増強する仕組みがある。


図表

参考文献

1) 松尾理:線溶反応,冨山佳昭,血栓・止血異常の診療.中山書店,2014.

2) Ploug M, Rønne E, Behrendt N, Jensen AL, Blasi F, Danø K: Cellular receptor for urokinase plasminogen activator. Carboxyl-terminal processing and membrane anchoring by glycosyl-phosphatidylinositol. J Biol Chem 266:1926-1933, 1991.

3) Hajjar KA, Guevara CA, Lev E, Dowling K, Chacko J: Interaction of the fibrinolytic receptor, annexin II, with the endothelial cell surface. Essential role of endonexin repeat 2. J Biol Chem 271: 21652-21659, 1996.

4) Arza B, Félez J, Lopez-Alemany R, Miles LA, Muñoz-Cánoves P: Identification of an epitope of alpha-enolase (a candidate plasminogen receptor) by phage display. Thromb Haemost 78: 1097-1103, 1997.

引用文献

著者

松尾 理 (近畿大学医学部)

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