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用語集(詳細説明)

大分類:血小板

小分類:疾患


P2Y12受容体欠損症
P2Y12 deficiency receptor

解説

【概要】
 血小板表面には7回膜貫通型アデノシン二リン酸(ADP)受容体 P2Y1、P2Y12が発現している。血小板がアゴニスト刺激を受け、濃染顆粒から放出されたADPは血小板凝集の初期にはP2Y1受容体、続いてP2Y12受容体を介して血小板活性化を増幅し、血栓の安定化に寄与している。このため抗血小板療法の重要なターゲットとして、P2Y12受容体阻害剤が血栓症予防の目的で広く使用されている。日本からの1症例を含め、少数ではあるがP2Y12受容体の欠損症例が報告されている。

【病態・病因】
 これまで報告されたP2Y12受容体欠損症例では、遺伝子変異によるフレームシフトで生じた新たな終止コドンが正常なP2Y12受容体の発現障害の原因となっている。血栓の形成過程ではフィブリノゲンが血小板表面のインテグリンαIIb/β3(GPIIb/IIIa)に結合、血小板同士を架橋することで凝集塊を形成するが、P2Y12受容体の欠損はインテグリンαIIb/β3の活性化を障害する。このため、血管損傷部位で露出した血管内皮下コラーゲンなどへの血小板の粘着は正常に起こるが、フィブリノゲンの架橋による安定した血小板凝集塊は形成されず、止血機能異常を呈する。

【検査と診断】
 一般に血小板数・凝固系検査は正常で、出血時間血小板凝集能検査に異常が見られる。血小板凝集能検査では、ADP刺激において高濃度ADPでも凝集に著明な障害が見られる。P2Y1受容体が作用する凝集初期には健常人同様の挙動を示すが、凝集反応の後期に向けての凝集塊の増大が見られず、逆に凝集がほぐれていくパターンを示すことが特徴である(図A)。コラーゲン・トロンビンによる刺激では、凝集の抑制は低濃度刺激時のみ観察され、ほぼ健常人血小板と同等の凝集が高濃度刺激時には観察される(図B)。
 これら一般臨床での検査よりP2Y12受容体の異常が疑われた場合、様々な血小板表面受容体の発現レベル、他のアゴニストによる詳細な凝集検査、顆粒放出反応などを確認し、遺伝子検査によって診断を確定していく。

【治療】
 先天的な遺伝子異常によるP2Y12受容体の発現欠損のため根本的な治療法はなく、外傷や外科的処置に伴う出血時の止血には血小板輸血により対応する。

図表

P2Y12欠損血小板凝集

P2Y12欠損血小板凝集

参考文献

1) 冨山佳昭:P2Y12受容体に関する遺伝子関連検査,日本血栓止血学会誌 第23巻第5号,2012.

2) Cattaneo M: The platelet P2Y₁₂ receptor for adenosine diphosphate: congenital and drug-induced defects. Blood 117: 2102-2112, 2011.

3) Shiraga M, Miyata S, Kato H, Kashiwagi H, Honda S, Kurata Y, Tomiyama Y, Kanakura Y: Impaired platelet function in a patient with P2Y12 deficiency caused by a mutation in the translation initiation codon. J Thromb Haemost 3: 2315-2323, 2005.

引用文献

著者

加藤 恒 (大阪大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科)

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