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用語集(詳細説明)

大分類:血管

小分類:機能分子


TGF-β受容体
TGF-β receptor

解説

【概要】
 TGF-β(transforming growth factor-β)受容体はシグナル伝達に必須のI型/II型受容体と補助受容体であるIII型受容体(ベータグリカンおよびエンドグリン)などが存在する。TGF-βがI型(TGF-β type I receptor, TβRI)およびII型受容体(TGF-β type II receptor, TβRII)と複合体を形成後、TβRIIがTβRIのセリン/スレオニンキナーゼをリン酸化し活性化、転写因子やMAPキナーゼ等のリン酸化を介してシグナルを伝達する。

【構造と機能】
 TβRI(53 kDa)、TβRII(70-80 kDa)は、TGF-βが結合する比較的短い細胞外領域、膜貫通領域、セリン/スレオニンキナーゼドメインを含む細胞内領域をもつ1回膜貫通型受容体である。TβRIは単独ではTGF-βと結合することができず、TGF-βと結合したTβRIIにリクルートされ、1分子のTGF-β(ジスルフィド結合による2量体)に対し、TβRIとTβRIIがそれぞれ2分子ずつ結合しヘテロ4量体を形成する。TβRIIがTβRIのグリシン、セリン残基に富んだGS領域をリン酸化し、セリン/スレオニンキナーゼを活性化、細胞質に存在する転写因子Smad2/3をリン酸化し、Smad2/3とSmad4との複合体形成およびその核内移行を誘導、標的遺伝子発現を調節する。また、ERKやJNK、p38といったMAPキナーゼ経路やRho GTPアーゼも活性化する。
 ベータグリカン(200-300 kDa)とエンドグリン(180 kDa)は、比較的大きな細胞外領域、膜貫通領域および短い細胞内領域をもち、TGF-βとTβRI、TβRIIとの結合を補助する役割をもつ。エンドグリンは血管内皮細胞や血球系の細胞、ベータグリカンはそれら以外の細胞に広く発現している。TGF-β2はエンドグリンに対する親和性が低く、ベータグリカン存在下において高い親和性でII型受容体と結合する。

【ノックアウトマウスの表現形】
 TβRIおよびTβRII、エンドグリンのノックアウトマウスは、発生段階における血管形成異常により胎生致死。ベータグリカン、エンドグリンのノックアウトマウスでは心臓形成異常がみられる。

【病態との関わり】
 遺伝性出血性毛細血管拡張症においてはエンドグリン遺伝子の変異、大動脈や骨格、眼、皮膚などの結合組織が脆弱化するMarfan症候群においては、弾性線維を構成するフィブリリン1遺伝子のほか、TβRII遺伝子の変異が報告されている。また、Marfan症候群に類似したLoeys-Dietz症候群において、TβRIおよびTβRII遺伝子の変異によるTGF-βシグナルの増強が報告されている。

図表

図1 TGF-β受容体の構造と分類

図1 TGF-β受容体の構造と分類

図2 TGF-βシグナル伝達

図2 TGF-βシグナル伝達

参考文献

1) TGF-βと線維症,医学のあゆみ Vol.234 No.10,医歯薬出版株式会社,2010.

2) TGF-βファミリーによる血管・リンパ管新生制御,再生医療 Vol.12 No.3,株式会社メディカルレビュー社,2013.

引用文献

著者

坂田 幸大郎 (湧永製薬株式会社 創薬研究所 第二研究室)

小嶋 聡一 (理化学研究所 ライフサイエンス技術基盤研究センター 微量シグナル制御技術開発特別ユニット)

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