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用語集(詳細説明)

大分類:血小板

小分類:機構


Gタンパク質共役受容体と血小板活性化
 

解説

【概要】
 Gタンパク質共役受容体(GPCR)は、外来の刺激や、神経伝達物質、ホルモン、イオンなどの内因性の刺激を感知し、細胞内に伝達する。リガンドがGPCRに結合すると膜貫通へリックスの立体構造に変化がおこり、細胞内で三量体Gタンパク質と共役することで、様々なシグナル伝達カスケードを活性化する。血小板では、トロンビンアデノシン二リン酸(ADP)トロンボキサンA2(TXA2などによって、Gタンパク質から伝達される活性化シグナルが、血小板活性化と放出反応に働き、血小板凝集を起こす。

【構造と機能】
 GPCRは7回膜貫通型受容体で、GPCRの種類や発現している細胞により、共役しているGタンパク質が異なる。それらはαサブユニットの配列により,Gs,Gi/Z,Gq,G12/13の4つのタイプに分類される。
1)トロンビン受容体
 トロンビン受容体の一つであるPAR-1はGq、G13、Giと共役する。Gq はPLC、カルシウム、PKCを介したシグナルを惹起し、血小板の放出反応、インテグリンαIIb/β3活性化、血小板凝集を引き起こす。G13はRhoを介したシグナルで形態変化を引き起こす。Giはアデニル酸シクラーゼの活性を阻害し、エピネフリン(GZ)様作用を持つと考えられている。
2)ADP受容体
 ADP受容体のうち、P2Y1はGqと共役し、P2Y12はGiと共役する。P2Y12はADPの刺激によってcyclic AMPの産生を抑制し、インテグリンαIIb/β3活性化の維持、血小板凝集の安定化に働く。
3)TXA2受容体(thromboxane prostanoid receptor, TP)
 TXA2受容体にはTPαとTPβの2つのスプライシングバリアントが存在するが、ヒト血小板には主としてTPαが発現している。TPはGqやG13と共役し、血小板を活性化させる。
4)プロスタサイクリン(PGI2受容体
 Gsと共役し、血小板内cAMP を上昇させ、インテグリンαIIb/β3活性化や放出反応などの血小板機能を抑制する。他にも、プロスタグランジン受容体 (EP3 receptor)やセロトニン受容体 (5-HT2A receptor) が同定されている。

【ノック・アウトマウスの表現形】
 上述受容体欠損マウスでは、in vitroでその特異的アゴニスト刺激による血小板凝集が阻害された。In vivoでは出血時間の延長と血栓形成能の低下が認められた。
 Gαqのノックアウトマウスでは、TXA2、ADP、トロンビンによる放出反応や血小板凝集ならびにIP3の産生、Caの流入に障害が認められた。トロンビンとTXA2による形態変化やRhoAの活性化は正常であったが、ADP刺激では障害された。出血時間は延長していた。

【病態との関わり】
 本邦からもGPCRの異常症として、ADP-P2Y12受容体異常症とTXA2受容体異常症が報告されている。いずれの症例も、臨床症状としては出血時間の延長と軽度の出血傾向を示すのみであったが、in vitroの解析で、血小板活性化のメカニズムを解明する上での重要な情報を提供している。

【その他のポイント・お役立ち情報】
 2012年のノーベル化学賞は、米国Duke大学のRobert J. Lefkowitz教授と米国Stanford大学のBrian K. Kobilka教授の、GPCRの構造と機能に関する研究成果に対し、授与された。

図表

参考文献

1) Offermanns S, Toombs CF, Hu YH, Simon MI: Defective platelet activation in G alpha(q)-deficient mice. Nature 389: 183-186, 1997.

2) Shiraga M, Miyata S, Kato H, Kashiwagi H, Honda S, Kurata Y, Tomiyama Y, Kanakura Y: Impaired platelet function in a patient with P2Y12 deficiency caused by a mutation in the translation initiation codon. J Thromb Haemost 3: 2315-2323, 2005.

3) Kamae T, Kiyomizu K, Nakazawa T, Tadokoro S, Kashiwagi H, Honda S, Kanakura Y, Tomiyama Y: Bleeding tendency and impaired platelet function in a patient carrying a heterozygous mutation in the thromboxane A2 receptor. J Thromb Haemost 9: 1040-1048, 2011.

引用文献

著者

田所 誠司

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