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用語集(詳細説明)

大分類:血管

小分類:機能分子


NOS(一酸化窒素合成酸素)
NOS(nitric oxide synthase)

解説

 一酸化窒素合成酵素(nitric oxide synthase, NOS)はLアルギニンを酸化してLシトルリンと強力な血管拡張作用をもつ一酸化窒素 (NO)に変換する一連の酵素である。動脈硬化症や血栓症と関連が深いのは内皮一酸化窒素合成酵素(endothelial NOS, eNOS)と誘導型一酸化窒素合成酵素(inducible NOS, iNOS)である。神経型一酸化窒素合成酵素(neuronal NOS, nNOS)は中枢神経系で多く発現している。細胞のタンパク質の分解で生じる非対称性ジメチルアルギニン(asymmetric dimethylarginine, ADMA)は内因性のNOS阻害物質でありアルギニンからのNOの遊離を阻害する。

【構造】
 eNOS, nNOS, iNOSの分子量は130kから160kで基本構造は50-60%の相同性を示す。同一分子内に酸化酵素ドメインと還元酵素ドメインをもつ。

【機能】
 eNOSの活性は血管壁を動脈硬化症から防ぐのに重要な働きをする。一方、iNOSの血管機能への影響は多彩で、動脈硬化症への影響も定まってはいない。通常の状態で一酸化窒素を合成するには、Lアルギニンのグアニジノ窒素に電子を伝達するために eNOSはヘム基近傍に結合しているテトラヒドロビオプテリン(tetrahydrobiopterin, BH4)を必要とする。Lアルギニンあるいは BH4が存在しない条件では eNOSはO2と H2O2を産生する(NOS uncoupling脱共役、アンカップリング)。内皮細胞でeNOSのアンカップリングはNOの減少とO2増加、ペルオキシ亜硝酸(peroxynitrite)産生により酸化ストレスを亢進させ内皮機能を低下させる。NOと酸化ストレスのバランスは血管壁で動脈硬化症の進行、炎症、アポトーシスなどに関連した遺伝子の発現に影響する。NOSsの完全欠損マウスは加齢、動脈硬化、冠動脈攣縮、メタボリック症候群などを示す。

【病態との関わり】
 動脈硬化病変ではeNOSの活性が低下していることが実験的に示されている。内因性のNOS阻害物質ADMAは動脈硬化症、虚血性心疾患、閉塞性動脈硬化症、高血圧症、慢性腎不全や糖尿病等の循環器系疾患の危険因子である。一方、NO産生自体は動脈硬化病変部位ではマクロファージのiNOSにより増加している可能性もある。心血管系疾患では過剰のNO産生がみられることがある。そのような病態ではNOSの抑制が有効なアプローチと考えられている。

図表

参考文献

1) 筒井正人他:NO合成酵素完全欠損マウスの開発,Yakugakuzasshi 127:1347-1355,2007.

2) 筒井正人他:一酸化窒素合成酵素の構造と機能とくに血管組織における動態と意義,蛋白質 核酸 酵素 47:2024-2031,2002.

引用文献

著者

藤井 聡 (旭川医科大学臨床検査医学講座)

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