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用語集(詳細説明)

大分類:凝固

小分類:病態


不育症
recurrent pregnancy loss

解説

【概念】
 習慣流産(habitual abortion)とは、3回以上連続した流産のことで、時期は妊娠22週未満に限定される。生殖年齢女性の1-2%が罹患する。これに対し不育症(recurrent pregnancy loss)とは、反復流産(流産回数2回以上)や妊娠中期以降の子宮内胎児死亡・死産もしくは生後1週間以内に死亡する早期新生児死亡を繰り返す場合も含まれる。1回の独立した妊娠の流産頻度を20%と仮定すると、2回反復流産率:0.2×0.2=0.04 (4%)、3回反復流産率:0.04×0.2=0.008 (0.8%)となり、もはや偶然とはいえない。実際、2回連続流産後の流産率は、36~44%と報告されている1,2)

【原因・機序】
 図に厚生労働省研究班により集計したわが国での不育症のリスク因子別頻度を示す2)。子宮形態異常が7.8%、甲状腺の異常が6.8%、両親のどちらかの染色体異常が4.6%、抗リン脂質抗体症候群後天性血栓性素因)が10.2%、凝固因子異常として第XII因子欠乏症が7.2%、プロテインS欠乏症が7.4%となっている。なお、不育症例に陽性率の高い抗リン脂質抗体の一種である抗PE抗体陽性者が、34.3%に認められるが、この抗体が本当に流産・死産の原因になっているかは、未だ研究段階である。検査をしても明らかな異常が判らない方が65.3%にも存在する。抗PE抗体陽性者を除いても約40%はリスク因子不明であるが、これは「偶発的」とした方が良いのかも知れない。流産の原因で最も頻度の高いものは胎児の染色体異常で約80%に存在する。したがって3回流産したことのある人で、胎児染色体異常がたまたま3回くり返した人は0.8×0.8×0.8=0.512となり、51%を占める。つまり胎児染色体異常以外の要因(抗リン脂質抗体、凝固異常、子宮異常、甲状腺異常、夫婦染色体異常等)は約半数となる。この偶発的流産・リスク因子不明(65.3%)の中で、51%は何のリスク因子もない不育症と考えられる。

【治療】
 偶発的流産・リスク因子不明の場合は、何の治療をしなくても次回の妊娠で成功する確率は高いが、抗リン脂質抗体陽性例や凝固異常の場合は、低用量アスピリンと未分画ヘパリンによる抗凝固療法が標準的治療法と考えられ、生児獲得率は70-80%とされている。挙児希望の時点からアスピリン(81mgもしくは100mg/日)を開始し、子宮内妊娠が確認できた時点から未分画ヘパリン(5000単位×2回/日の皮下注射)を投与するのが一般的である。なお、抗リン脂質抗体症候群や血栓性素因保有患者では未分画ヘパリンの在宅自己注射が保険適用されている。

図表

図 不育症のリスク因子別頻度

図 不育症のリスク因子別頻度

参考文献

1) 小林隆夫:習慣流産と凝固異常:最近の進歩,高久史麿,溝口秀昭,坂田洋一,金倉譲,小島勢二編集,Annual Review 血液 2007.東京,中外医学社,2007,265-274.

2) 斎藤滋他:不育症治療に関する再評価と新たなる治療法の開発に関する研究,厚生労働科学研究費補助金 成育疾患克服等次世代育成基盤研究 平成22年度 総括・分担研究報告書 2011年3月.

引用文献

1) 厚生労働科学研究費補助金 成育疾患克服等次世代育成基盤研究 平成22年度,総括・分担研究報告書,2011.

2)斎藤滋他:不育症治療に関する再評価と新たなる治療法の開発に関する研究. 厚生労働科学研究費補助金 成育疾患克服等次世代育成基盤研究 平成22年度.総括・分担研究報告書, 2011年3月

3)成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業,反復・習慣流産(いわゆる「不育症」)の相談対応マニュアル.2012

著者

小林 隆夫 (浜松医療センター 院長)

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