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用語集(詳細説明)

大分類:凝固

小分類:機構


ウイルス感染と凝固X因子
 

解説

【概要】
 一般にウイルスなどの微生物が血液中に存在するのは厳しい環境にある。なぜなら、ウイルスなどの外来微生物が血液中に侵入すると直ちに外来微生物はIgMなどの免疫系因子の攻撃を受けるからである。血中に侵入したウイルスと微生物は、まずIgMと結合し、C3コンベルターゼが活性化され、自然免疫の補体系の活性化により、殺菌・処理される。しかし、血清5型アデノウイルス(Ad5)の場合は、不思議なことに、この攻撃に対し抵抗性があることが知られていた。
Ad5は、遺伝子治療の研究で最もよく用いられてきたウイルスベクターであり、Ad5の研究テーマは、今日なお重要な位置を占めている。2008年に、凝固第X因子はアデノウイルス血清5型(Ad5)の肝臓感染に必須であるという意外な事実が明らかにされた。

【構造と機能】
 Ad5hexonのtrimer(3量体)はX因子と親和性が高く(ナノモーラ濃度のオーダ)1ヴィリオンあたり240分子のX因子が結合する。
 最近、凝固第X因子は自然抗体と補体によるAd5への攻撃を防ぐことが明らかにされた。凝固X因子がAd5によるマウス血清C3の活性化を阻止した。X因子を含む正常血清では、静脈中に侵入してきたAd5は直ちにそのAd5表面にX因子が結合することにより、本来補体系因子が作用するのを防ぐ結果、Ad5が肝臓へ導入されると結論つけられた(図)。

図表

図 文献3)より引用

図 文献3)より引用

参考文献

1) 森田隆司:アデノウィルスの肝臓導入に対する凝固X因子のユニークな機能:自然免疫系と補体系の攻撃を防ぐ,血栓止血誌 24:609-612,2013.

2) Xu Z, Qiu Q, Tian J, Smith JS, Conenello GM, Morita T, Byrnes AP: Coagulation factor X shields adenovirus type 5 from attack by natural antibodies and complement. Nat Med 19: 452-457, 2013.

3) Nemerow GR: Coagulation factor defends adenovirus from immune attack. Nat Med 19: 406-407, 2013.

引用文献

著者

森田 隆司

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