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用語集(詳細説明)

大分類:凝固

小分類:疾患


外傷とDIC
 

解説

【背景】
 出血は外傷の急性期死亡原因の約50%に関与する。大量輸血施行例の死亡率は50%を超え、急性期死亡を回避できてもショックが遷延した場合には、敗血症・多臓器不全による死亡にも大きな影響を与える。このような大量出血を伴う外傷では、主要な出血源の制御が行えないことではなく、凝固障害を中心とした生理学的恒常性破綻のために救命しえないことが多く(1)、凝固異常の把握とその制御は重要である(1)。従来、外傷に伴う凝固異常の本体は希釈性障害であり、低体温とアシドーシスがこれを修飾すると考えられてきた。近年、外傷そのものにより惹起される凝固障害の存在が認識されている(2)。

【病態】
 外傷後の生理的凝固線溶反応は、組織損傷に伴う内皮細胞損傷による血小板凝集とともに、組織因子の遊離による外因系活性化に始まる。これに引き続き、二次線溶が起こりDダイマーの上昇が認められる。しかし、二次線溶亢進が持続すると再出血の危険が生じるため、プラスミノゲンアクチベータインヒビター1(PAI-1)が発現し線溶抑制状態となり、上昇していたDダイマーの低下が認められる。時間経過とともに内皮および組織の修復が完成すると、止血のためのフィブリン血栓は不要であるためにPAI-1活性は低下し、二次線溶再活性化状態となる。外傷後の生理的凝固線溶反応として、このような変動が受傷後3~7日間にわたり認められる。
 受傷直後の凝固線溶亢進状態において、線溶亢進が著明な場合には過剰線溶=線溶亢進型播種性血管内凝固症候群(DIC)が発現し、著しい出血傾向が前面に認められる。臓器症状が出現することはまれである。組織低灌流、および組織型プラスミノゲンアクチベータ(tPA)産生促進やα2プラスミンインヒビター(α2PI)の消費性枯渇などが線溶亢進に関与する。
 この線溶亢進型DICは、持続的組織損傷がなく、ショックからの離脱が可能であれば、比較的短時間に改善する。急性期のみダイナミックに生じる外傷そのものによるDICである(3)。そして、外傷急性期に認められる凝固異常は、この線溶亢進型DICとともに、蘇生による希釈・アシドーシス・低体温、さらに、外傷による炎症反応と既存因子の相互作用として発現し(4)、出血症状を前面とした臨床病態がみられるものである。

図表

外傷に伴う凝固異常機序

外傷に伴う凝固異常機序

参考文献

1) Wyrzykowski AD. Trauma damage control. In: Feliciano DV MK, Moore EE, editor. Trauma 7th edition. New York, McGraw-Hill, 725-46, 2013.

2) Parr MJ, Bouillon B, Brohi K, Dutton RP, Hauser CJ, Hess JR, Holcomb JB, Kluger Y, Mackway-Jones K, Rizoli SB, Yukioka T, Hoyt DB: Traumatic coagulopathy: where are the good experimental models? J Trauma 65: 766-771, 2008.

3) Gando S, Wada H, Thachil J; Scientific and Standardization Committee on DIC of the International Society on Thrombosis and Haemostasis (ISTH): Differentiating disseminated intravascular coagulation (DIC) with the fibrinolytic phenotype from coagulopathy of trauma and acute coagulopathy of trauma-shock (COT/ACOTS). J Thromb Haemost 11: 826-835, 2013.

4) Spahn DR, Bouillon B, Cerny V, Coats TJ, Duranteau J, Fernández-Mondéjar E, Filipescu D, Hunt BJ, Komadina R, Nardi G, Neugebauer E, Ozier Y, Riddez L, Schultz A, Vincent JL, Rossaint R: Management of bleeding and coagulopathy following major trauma: an updated European guideline. Crit Care 17: R76, 2013.

引用文献

著者

久志本 成樹 (東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座救急医学分野)

工藤 大介 (東北大学病院 救急科・高度救命救急センター)

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