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用語集(詳細説明)

大分類:凝固

小分類:疾患


第VII因子欠乏症・異常症
coagulation factor deficiency

解説

【病態・病因】
 常染色体劣性遺伝の形式をとる。凝固第VII因子の生合成低下、機能の低下した凝固第VII因子の合成、あるいはこの両者が発症の原因となる。本症の出血傾向は血友病と比較すると軽微であるが、凝固第VII因子レベルが1%以下のホモ接合体や複合へテロ接合体例では、重症血友病に類似した重症出血を生じることがある。通常は皮膚粘膜出血(皮下出血、鼻出血、歯肉出血、性器出血)、抜歯後の出血、外傷後出血、月経過多が主体であるが、関節出血、消化管出血、頭蓋内出血、分娩後異常出血なども認めることがある。凝固第VII因子レベルが5%以上ある患者のほとんどは、歯肉出血、鼻出血、月経過多、打撲痕が特徴である。ヘテロ接合体例の約2割にも皮膚粘膜出血を主体とした症状を認める。凝固第VII因子活性と出血症状の重症度が一致しないこともあり、凝固第VII因子活性が1%以下でも無症候の場合もある。

【疫学】
 本症は血友病とフォン・ヴィレブランド病(VWD)を除いた稀な凝固因子欠乏/異常症(rare bleeding disorders;RBD)のなかで最も頻度が高い疾患である。2010年World Federation Hemophilia Annual Global Surveyの結果ではRBDの28%と報告されており、平成25年度血液凝固異常症全国調査ではRBDの23%を占めている。発症頻度は地域によって異なり、日本では200万に1人、米国、オーストラリアでは50万人に1人、イギリスでは10万人に1人と推定される。

【検査と診断】
 プロトロンビン時間(PT)は著明に延長するが、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)は正常範囲内である。凝固第VII因子活性が著明に低下し、後天性第VII因子インヒビター発生や、肝機能障害、ビタミンK欠乏などが除外された場合、先天性第VII因子欠乏/異常症と診断される。まれに、凝固第VII因子とX因子、VII因子とIX因子、あるいはすべてのビタミンK依存性凝固因子の遺伝性欠損症がある。凝固因子活性測定に用いるプロトロンビン試薬の違いにより活性値に乖離を認めるFVII Paduaが報告されており、測定に利用するTFの種類には注意が必要である。

【治療の実際】
 補充療法は関節内出血や脳出血の重症出血時に必要となる。また、第VII因子欠損の程度、出血の既往、手術部位(抜歯、扁桃腺手術、泌尿生殖器など)により過剰出血が生じることがあるため、手術前に補充療法が必要なこともある。皮膚の損傷は局所の止血のみでよい。通常、第VII因子レベルが10~25%のレベルが得られれば止血は可能である。第VII因子欠乏症に対する補充療法について、第VII因子活性が10%以下の手術では補充療法が必要であり、特に術後3日間は15%以上に保つべきであるとの報告もある。凝固第VII因子の血漿半減期は2~4時間と短く、新鮮凍結血漿(fresh frozen plasma : FFP)による治療は循環血液量の過剰が生じるために困難なことが多い。現在わが国では第VII因子欠乏/異常症に対して、遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)と血漿由来の活性型プロトロンビン複合体製剤(APCC)が使用可能である。rFVIIaは15~30μg/kgを止血が得られるまで4~6時間ごとに投与する(血友病インヒビター症例,後天性血友病に用いる1/3~1/6量,間隔も2倍)。rFVIIaの投与後に凝固第VII因子に対する抗体が検出されたり、血栓症も報告されている。APCC使用時にも他の凝固因子活性の上昇により凝固能が亢進し、血栓形成などの合併症を併発した報告があるために注意が必要である。無症候の患者で抜歯など侵襲の少ない手術の場合は、トラネキサム酸の投与が有効である。

図表

参考文献

1) 公益財団法人エイズ予防財団 血液凝固異常症全国調査委員会:血液凝固異常症全国調査平成25年度報告書:10,2014.

引用文献

著者

長江 千愛 (聖マリアンナ医科大学 小児科)

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