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用語集(詳細説明)

大分類:線溶

小分類:機能分子


アネキシンA2
annexin A2

解説

【分子量】
 分子量36-kDaのカルシウムイオン(Ca2+)・リン脂質結合タンパクであるアネキシンファミリーの一つである.

【構造と機能】

 アネキシンは4個のα-へリックス構造のいわゆるアネキシンリピートからなる彎曲したコアドメインをもち,その凸面にはCa2+とリン脂質結合部位が存在する.膜貫通領域はない.アネキシンA2の凹面のN末端領域にC末端リジンを有するS100A10が結合し,組織型プラスミノゲンアクチベータ(tPA)とプラスミノゲンの結合部位となる.細胞質においてアネキシンA2は可溶性の単量体として存在し発現量が十分となるとS100A10と結合してヘテロ四量体を形成する.このヘテロ四量体はSrc様チロシンキナーゼによりアネキシンA2のTyr23がリン酸化されると細胞表面へ移行するとされる(図).
 細胞内での膜輸送や細胞骨格の足場タンパクとして機能するほか,細胞表面においてS100A10(分子量11-kDa)とヘテロ四量体を形成しプラスミノゲン受容体として機能する.細胞表面のアネキシンA2-S100A10複合体はプラスミノゲンの活性化を10-100倍増強し、さらに細胞表面で生成されたプラスミンα2プラスミンインヒビターの阻害を受けにくい。A2-S100A10複合体によるプラスミン活性は、炎症反応や血栓症、自己免疫疾患、がんなどの病態形成に関与する.

【ノックアウトマウスの表現型】
 血管内皮細胞表面のプラスミン生成が阻害されるため,傷害血管における血栓消退が遅延するほか,血管新生も抑制される.

【病態との関わり】
1)炎症反応において単球やマクロファージ表面にA2-S100A10複合体の移行が増大し,細胞周囲でのプラスミン活性の増強により基質タンパクが分解され,炎症局所へのマクロファージの動員を増強する.またプラスミンによる限定分解により遊離するアネキシンA2サブユニットのN末端ペプチドは,膜貫通型受容体のリガンドとして炎症反応を増強させる細胞内シグナリングを惹起する.
2)血管内膜癌症(血管内皮がアネキシンA2を高発現する腫瘍細胞で置換される)を呈した移行上皮癌の肺動脈転移例では、全身性の高い線溶活性を呈する播種性血管内凝固症候群(DIC)を発症する(引用文献1)。また急性前骨髄球性白血病細胞やこれに由来するマイクロパーティクルにアネキシンA2が多く発現し、線溶優位のDIC発症との関連が示唆されている.
3)抗リン脂質抗体症候群(APS)の患者血清中に,アネキシンA2に対する自己抗体が存在する.アネキシンA2は,抗リン脂質抗体の主要な抗原であるβ2グリコプロテインIの血管内皮細胞表面の結合分子であり,いずれの抗体も血管内皮細胞を活性化し血栓形成の促進に関わるとされる.

図表

細胞内外でのアネキシンA2とS100A10;プラスミノゲンの活性化と細胞内シグナリング(Godier A, et al. J Thromb Haemost.2013;11:26-34より引用)

細胞内外でのアネキシンA2とS100A10;プラスミノゲンの活性化と細胞内シグナリング(Godier A, et al. J Thromb Haemost.2013;11:26-34より引用)

参考文献

1) 浦野哲盟他:プラスミノゲンレセプター,Annual Review血液:209-215,2014.

引用文献

1) Madoiwa S, Someya T, Hironaka M, Kobayashi H, Ohmori T, Mimuro J, Sugiyama Y, Morita T, Nishimura Y, Tarumoto T, Ozawa K, Saito K, Sakata Y: Annexin 2 and hemorrhagic disorder in vascular intimal carcinomatosis. Thromb Res 119: 229-240, 2007.

著者

鈴木 優子

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