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用語集(詳細説明)

大分類:凝固

小分類:疾患


第XI因子欠乏症・異常症
congenital factor XI deficiency/abnormality

解説

【概要】
 先天性第XI因子欠乏症・異常症は、血液凝固第XI因子(FXI)抗原量の低下を伴った、凝固第XI因子活性の低下による、常染色体劣性遺伝形式の稀な凝固障害症である。

【遺伝子】
 第XI因子遺伝子(F11)は第4染色体q35に存在し、全長約23kbで15のエクソンから構成されている。

【病態・病因】

 出血症状は無症状も多く、比較的軽度であるが、症例により著しく異なる。変異のヘテロ接合体例でも出血症状を示すことがある1)。凝固第XI因子活性の程度と出血傾向の強さは関連がない。一般的に自然出血は稀であるが、鼻出血や血尿が現れることがある。特に、線溶活性が亢進している口腔内や泌尿生殖器領域からの出血が特徴的であり、関節・筋肉内出血は稀である。外傷や外科的手術に際して、出血症状が出現し、さらに、遅発性に出血がおこることがある。
ユダヤ人では、3種類の遺伝子変異により、タイプ1:イントロン14のスプライシング部位変異(IVS14+1G>A)、タイプ2:エクソン5のナンセンス変異(Glu117X)、タイプ3:エクソン9のミスセンス変異(Phe283Leu)に分類され、タイプ2と3はアシュケナージ系ユダヤ人、タイプ2はイラクやアラブのユダヤ人に多くみられる。

【疫学】
 重症型第XI因子欠乏症の発生頻度は一般的には100万人に1人である。人種差が著しく、アシュケナージ系ユダヤ人では、変異のヘテロ接合体例で軽症型第XI因子欠乏症は8人に1人と、非常に頻度が高い。国際血栓止血学会(ISTH)のMutation Causing Rare Bleeding Disordersの凝固第XI因子変異データベース4)には、193種類の変異が集まっている。
日本では、血液凝固異常症全国調査平成26年度報告書(財団法人エイズ予防財団)に、第XI因子欠乏症は37例(男性22例、女性15例)が報告されている。

【検査と診断】
 ホモ接合体例の患者では、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)が著明に延長するが、プロトロンビン時間(PT)は基準範囲内にある。軽症型やヘテロ接合体例ではAPTTは基準範囲内かやや延長している程度であるので、本症を疑う場合は凝固第XI因子活性の測定が必要である。確定診断には遺伝子解析が必要になることもある。

【治療の実際】
 出血の可能性は個々の症例により異なるが、変異のタイプや因子活性をもとに治療計画をたてる。手術時や外傷時などの止血管理は、新鮮凍結血漿(FFP)の輸血を行うが、高い血中濃度を必要とする場合は血漿交換療法も考慮する必要がある。最少止血レベルは10~20U/dlとされているが、大手術では50 U/dl以上を維持する必要がある。生体内の回収率は100%近くであり、半減期は48~84時間とされている。局所の止血にはフィブリン糊を用い、抗線溶薬の併用も行われる。抜歯の際にも抗線溶薬が有効である。
 日本では上述のように補充療法としてFFPを投与するが、海外では血漿分画製剤として、Hemoleven®(LFB社, France)とFactor XI Concentrate(BPL社, Elstree, UK)の、2つのFXI製剤がある。

図表

参考文献

1) Duga S, Salomon O: Congenital factor XI deficiency: an update. Semin Thromb Hemost 39: 621-631, 2013.

2) Batty P, Honke A, Bowles L, Hart DP, Pasi KJ. Uprichard J, Austin SK: Ongoing risk of thrombosis with factor XI concentrate : 5 years experience in two centres. Haemophilia. doi: 10.1111/hae.12682. [Epub ahead of print], 2015.

3) Bauduer F, de Raucourt E, Boyer-Neumann C, Trossaert M, Beurrier P, Faradji A, Peynet J, Borg JY, Chamouni P, Chatelanaz C, Henriet C, Bridey F, Goudemand J, French Postmaeketing Study Group: Factor XI replacement for inherited factor XI deficiency in routine clinical practice: results of the HEMOLEVEN prospective 3-year postmarketing study. Haemophilia. doi: 10.1111/hae.12655. [Epub ahead of print], 2015.

4) 国際血栓止血学会(ISTH),Mutation Causing Rare Bleeding Disorders,凝固第XI因子変異データベースhttp://c.ymcdn.com/sites/www.isth.org/resource/resmgr/publications/fxi_mutations-2011.pdf

引用文献

1) Bolton-Maggs PHB: Factor XI deficiency. Bailliere`s Clin Haemat 9: 355-368, 1996.

著者

篠澤 圭子 (東京医科大学 血液凝固異常症遺伝子研究寄附講座)

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