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用語集(詳細説明)

大分類:凝固

小分類:疾患


後天性インヒビター(FVIII、VWFを除く)
acquired coagulation factor inhibitors

解説

 インヒビター(抑制物質)は、狭義には凝固因子に対してその因子活性の低下を直接的に引き起こす獲得性抗体を指す。抗体には因子欠乏患者への当該因子の補充療法の結果として出現することのある同種抗体と健常者あるいは種々の基礎疾患に伴い自然発生する自己抗体(後天性インヒビター)に分けられる。インヒビターの本体は免疫グロブリンであるが、自己抗体により直接活性低下を引き起こすもの、他のタンパクと複合体を形成しクリアランスを亢進させることで因子活性の低下を引き起こすものなどを含む。ループスアンチコアグラント(LA)抗リン脂質抗体症候群(APS)にみられるリン脂質依存性の凝固第II因子(プロトロンビン)インヒビターや凝固第XII因子インヒビターなどがこれに含まれる。一方、免疫グロブリンの存在なしに、凝固因子の組織への過剰な吸着により因子量が低下、あるいはそれによるクリアランスの亢進の結果として活性低下を示すものも広義のインヒビターと称することがあり、その代表がアミロイドーシスに合併する凝固第X因子(FX)インヒビターである。

 凝固第VIII因子(FVIII)後天性血友病A)、フォン・ヴィレブランド因子(VWF)後天性VWD)以外の自己抗体については、「まれ」あるいは「きわめてまれ」であり、十分な検証、検討がなされていないのが現状である。ここでは、フィブリノゲン(凝固第I因子: FI)、プロトロンビン(凝固第II因子: FII)、凝固第V因子(FV)凝固第VII因子(FVII)凝固第IX因子(FIX)凝固第X因子(FX)凝固第XI因子(FXI)凝固第XII因子(FXII)、凝固第XIII因子(FXIII)について、これまでの知見をもとにそれぞれの特徴を表1、表2に示した。

図表

表1 凝固因子インヒビター

表1 凝固因子インヒビター

表2 凝固因子インヒビター

表2 凝固因子インヒビター

参考文献

1) 嶋緑倫,田中一郎,川合陽子他:本邦における血液凝固後天性インヒビターの実態,血栓止血誌 14:107-121,2003.

2) 家子正裕:18その他の後天性インヒビター-後天性凝固因子抗体-第3章 凝固反応,一瀬白帝編著,図説 血栓・止血・血管学 血栓症制圧のために 初版.423-430,2005.

3) 新井盛大:b. 獲得性凝固因子インヒビター A.出血性疾患,浅野茂隆,池田康夫,内山卓監修,三輪血液病学 第3版.1735-1742,2006.

4) 杉俊隆:不育症と自己免疫性thrombophilia(抗リン脂質抗体,抗第XII因子抗体,抗キニノーゲン抗体),血栓止血誌 20:510-518,2009.

5) 一瀬百帝:後天性血友病XIII(13)(出血性後天性凝固第13因子欠乏症)とは? 医学と医療の最前線,日本内科学会雑誌 99:184-193,2010.

6) 鈴木隆史:第IX因子インヒビター,血栓止血誌 23:494-505,2012.

7) 森下英理子:後天性第V因子インヒビター VII凝固・線溶異常による出血傾向 血液症候群(第2版)II その他の血液疾患を含めて,新領域別症候群シリーズNo.22 別刷 日本臨床.日本臨床社,2013,584-586.

8) 野上恵嗣:後天性凝固因子インヒビターの基礎と病態,臨床血液 54:361-368,2013.

引用文献

著者

鈴木 隆史 (東京医科大学 臨床検査医学分野)

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