日本血栓止血学会
血友病部会
平成18年度 活動報告書

1.血友病止血療法のガイドライン案の作成
 血友病の出血症状に対する止血治療の基本は、第VIII因子あるいは第IX因子製剤を用いる補充療法、あるいはインヒビター保有症例ではバイパス止血療法である。止血療法の実施にあたっては、出血部位や重症度を考慮し、製剤の選択・投与量・投与期間を決定することが必要である。しかしながら、わが国に確立されたガイドラインはなく、専門施設を中心とした経験的な指針に基づいて実施されているのが現状である。したがって、施設間や医師間で差があることは否定できない。
 そこで、本検討部会では、内外の止血補充療法の現状を調査し、止血補充療法の臨床的・基礎的エビデンスを集積することにより、わが国における血友病止血補充療法のガイドライン案を作成することを目的として活動を実施し、議論を重ねてきた。その結果、『インヒビターのない血友病患者の急性出血、処置・手術における凝固因子補充療法のガイドライン』と、『インヒビター保有先天性血友病患者に対する止血治療ガイドライン』の最終案をそれぞれ平成19年2月23日、平成19年4月19日付で日本血栓止血学会理事会に提出した。現在、審査委員会で審議中である。
2.後天性インヒビターに関する前方視的調査研究
 本邦における後天性凝固因子インヒビター症例の実態を把握する目的で、アンケート形式による前方視的調査研究を2003年10月1日から実施し、2006年9月末で終了した。 現在で40施設57例の登録があった。うち、55例が第VIII因子、1例が第V因子、1例が第VIII, IX, XI, XII因子に対するインヒビターであった。調査内容については、第29回日本血栓止血学会学術集会において発表した。さらに日本血栓止血学会誌へも投稿の予定である。
3.患者様と医療者との血友病診療連携についての懇談会
 2007年3月11日、東京医科大学病院本館会議室にて「第4回 患者様と医療者との血友病診療連携についての懇談会」を開催した。今回も全国の血友病患者会からの代表と血友病部会部会員が集まり、血友病の医療について議論を行った。
4.血友病標準化検討部会コンセンサスシンポジウム
 2007年2月に慶應義塾大学医学部にて実施された日本血栓止血学会学術標準化委員会(SSC)シンポジウムにおいて、瀧 正志(聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院)・福武勝幸(東京医科大学)を座長とし、「後天性血友病の診断と治療」のテーマで下記のシンポジウムを開催した。
1)本邦における後天性凝固因子インヒビターの前方視的調査
田中一郎(奈良県立医科大学小児科)
2)岡山近隣で経験した後天性血友病症例の臨床病態
新谷憲治(笠岡市立市民病院内科)
3)後天性血友病の診断
天野景裕(東京医科大学臨床検査医学講座)
4)後天性血友病の凝血学的特性
嶋 緑倫(奈良県立医科大学小児科)
5)後天性血友病の診断と治療−抗リン脂質抗体症候群との鑑別−
山崎雅英[金沢大学大学院医学系研究科細胞移植学(血液内科)]
「追加発言」
 トロンビン生成に対する抗第ヲ因子抗体と抗リン脂質抗体の相違
山崎 哲(聖マリアンナ医科大学病院臨床検査部),
瀧 正志(聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院小児科)
6)後天性血友病におけるリツキサンの役割
毛利 博(藤枝市立総合病院血液内科)
田邊寿一(藤枝市立総合病院血液内科)
村田 興(同 化学療法科)
立花宗孝(静岡日本赤十字病院血液内科)
田口 淳(静岡日本赤十字病院血液内科)
5.継続中の調査研究
1)免疫寛容導入療法に関する国際的無作為化比較対照試験〔研究代表者:吉岡 章〕
(1)国際研究で登録例50例中研究実施例が38例で、その中で日本での実施例は7例と国際ITI研究のなかでも日本が貢献している。さらに、国際研究対象患者の基準の変更(インヒビター発生後12ヶ月以内が24ヶ月以内に)された。国内実施例の臨床経過も良好である。
(2)ITIの製剤についてバクスター社(4−6症例)、バイエル社(2症例)、化血研(4症例)から正式に申し出があり、国際ITIの研究参加が可能となった。
2)乳幼児重症血友病に対する凝固因子製の定期補充療法に関する前方視的研究 〔瀧 正志〕
すでに倫理委員会で承認された施設は多いものの、患者登録例が予想を大幅に下回っている。最近、定期補充実施例が増加しており、すでに実施している症例が多いことも原因と考えられる。引き続き積極的な参加が望まれる。
3)血友病患者の出血エピソードと関節症に関する臨床研究 〔竹谷英之〕
  現在、まだ症例数も少なく積極的な参加が望まれている。
4)活性型第VII因子製剤高用量投与に関する研究 〔白幡 聡〕
目標登録症例26例に対して、登録済み症例19例、phase1;終了19例、phase2;1回目終了6例、2回目終了3名で登録症例が不足している。さらにphase2実施例が少ない。
6.血友病医療に関する運動
1)ファイバの使用制限の撤廃に関する運動
 平成15年3月10日、日本血栓止血学会、血友病部会から厚生労働省医政局長・医薬局長宛に、ファイバの使用について1)インヒビター力価10Bethesda単位以上の患者への使用制限の解除、2)原則として3日以内の投与の解除、3)1日の総投与量を200単位/Kgへ制限の追加、について要望書を提出した。
その後、平成17年6月30日に、日本血液学会の要望により内保連経由にて厚生労働省へ医薬品再評価希望書を提出、同年12月22日、日本血栓止血学会血友病部会代表(嶋 緑倫部会長)が厚生労働省保険局長宛要望書を提出した。平成18年5月22日、保険局長通知(保発第0522001号)が出され、インヒビター力価10Bethesda単位以上の患者への使用制限が解除され、1日の総投与量を200単位/Kgへ制限が追加された。
2)血液製剤とインヒビター発生率に関する提言
 Goudemand J らの論文(Influence of the type of factor VIII concentrateon the incidence of factor VIII inhibitors in previously untreated patients with severe hemophilia A. Blood 107:46-51, 2006)がきっかけとなり、血友病A治療製剤とインヒビター発生率に関する理解について混乱が生じた。
そこで、本部会は本論文を詳細にレビューし、日本血栓止血学会誌18巻第1号に提言「凝固因子製剤の種類がインヒビター発現に及ぼす影響」を発表した(p87-88,2007年)。


【日本血栓止血学会学術標準化委員会血友病部会 部会員】
天野 景裕(副部会長) 東京医科大学 臨床検査医学講座講師
岡 敏明 札幌徳州会病院 小児科・血液科部長
嶋 緑倫(部会長) 奈良県立医科大学 小児科准教授
白幡 聡 産業医科大学 小児科教授
高田 昇 広島大学病院 輸血部准教授
高松 純樹 名古屋大学医学部附属病院 輸血部教授
瀧 正志(副部会長) 聖マリアンナ医科大学横浜西部病院 小児科・周産期センター 准教授
竹谷 英之 東京大学医科学研究所付属病院 関節外科講師
花房 秀次 荻窪病院 小児科・血液科部長
日笠 聡 兵庫医科大学 血液内科講師
福武 勝幸(診療連携幹事) 東京医科大学 臨床検査医学講座主任教授
松下 正 名古屋大学医学部附属病院 血液内科講師
三間屋 純一 静岡県立こども病院 血液腫瘍科 副院長兼医療安全室長
吉岡 章(担当理事) 奈良県立医科大学 小児科教授
  


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