日本血栓止血学会
血友病部会
平成16年度 活動報告書

1.血友病標準化検討部会会議

 2004年4月16日に、福岡ソフトリサーチパークにて血友病標準化検討部会会議を開催し、以下の議題につき報告・審議された。
議題: 1) ITIの現況に関して
2) 血友病診療費の包括評価(DPC)の問題と今後の対策
3) 最近の血友病診療報酬の査定状況について
4) IFN自己注射の方向性
5) ファイバの適応外使用における特定療養費扱いについて
6) プロプレックスSTの供給不足問題
7) BeneFIXの臨床開発の動向
8) クリスマシン-Mの現況
9)本年度のコンセンサスシンポジウムの内容に関して
2.血友病診療ネットワーク構築
 2002年度までに、全国の主だった血友病診療施設82か所の医師132名のデータベースと、電子メーリングリスト(血友病診療ネットワーク)を作成した。2004年度には、更にデータベースの登録医師を増やし、2004年4月16日現在、105医療施設の医師192名(内、メールアドレス登録者は145名)となっている。2003年10月7日から、血友病診療ネットワークを通して血友病に関する医療指針の配信を開始した。
3.血友病患者グループとの意見交換会
 ※別紙(『第2回 患者様と医療者との血友病診療連携についての懇談会』)参照
4.ノボセブンの後天性血友病の適応追加
 2002年11月16日に日本血栓止血学会でのコンセンサスシンポジウム「血友病家庭療法の再評価と保険適応外治療の方向性」が開催され、医師・看護師(60名)、患者(11名)、製薬企業(94名)、行政(4名)の担当者が参加した。本会議において、後天性血友病がノボセブンの適応症として明確に用法・用量に示されるべきとするコンセンサスが得られた。2003年3月10日、同学会から添付文書の改訂に関する要望書が厚生労働省に提出された。また2003年4月25日には、ノボノルディスクファーマ社より、学会に同調する形で厚生労働省に「効能・効果」の一部変更承認申請が提出された。これらに対し、行政からの要請で、2004年10月14日に、厚生労働省審査管理課から林氏、医薬品総合機構から国枝氏・前田氏・小池氏、ノボノルディスクファーマから中野氏・関口氏・荻原氏、そして本学会血友病検討部会を代表して新井が医学専門家として参集し、医薬品機構において話し合いがもたれた。その結果、2004年11月19日付けで本件は承認され、ノボセブン添付文書中の効能・効果は、「血液凝固第VIII因子又は第IX因子に対するインヒビターを保有する先天性血友病及び後天性血友病患者の出血抑制」と変更された。
5.血友病標準化検討部会コンセンサスシンポジウム
 インヒビター保有血友病のバイパス止血治療には、(活性型)プロトロンビン複合体製剤に加え、遺伝子組み換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)が用いられている。近年、FVIIaを中心に新しい止血機序が提唱され、臨床モニターとしても、より有用な検査パラメーターが開発されてきた。臨床実地においては、インヒビター保有症例の大手術における止血管理の経験が蓄積されてきた。他方では、rFVIIaの一般的止血効果が着目され、血友病以外の出血性疾患をはじめ、外傷、外科手術などの止血管理への利用が模索され始めている。第27回日本血栓止血学会学術集会において「バイパス止血治療の展望」と題して血友病検討部会コンセンサスシンポジウムを開催した。本シンポジウムにおいて、基礎的、臨床的側面から活性型凝固因子製剤が展望され、最新の治療現況が紹介された。

【日時・場所】平成16年11月18日(木)午後3:30〜5:00、奈良県新公会堂
【座   長】産業医科大学小児科 白幡 聡教授
【シンポジウムの概容】
1) 活性型凝固因子の止血機序:友清和彦(化学及血清療法研究所)
FVIIaは、TF依存性の外因系凝固機転の開始以外に、高濃度ではTF非依存性に活性化血小板膜上で直接第X因子を活性化する。また、高濃度のFVIIaは余剰の第X因子の存在下でトロンビン生成能をさらに促進させる。一方で、FVIIaは第Va因子の存在下に、酸性リン脂質上で新しいプロトロンビナーゼ複合体を形成しトロンビンを生成する。これらのFVIIaの凝固系における多機能性が論じられた。
2) バイパス止血治療の新しい臨床モニター:嶋 緑倫(奈良県立医科大学小児科)
rFVIIaの止血治療モニターとしては、血漿第VII因子活性の10 U/ml以上の上昇やPTの8秒以下の短縮などが一般に用いられている。しかし、これらの指標は臨床的止血効果が十分に反映されないことがある。演者らは、自動血液凝固解析装置を用いたフィブリン生成過程の精密な数学的解析により、APCCやrFVIIa投与中の止血能を解析した。また、従来のトロンボエラストグラム(TEG)の利便性を向上させてデータのコンピューター解析を可能にした機器(RoTEM)を利用し、同様に、バイパス止血治療中の止血モニターとしての有用性を検討した。これらの新しい指標とトロンビン生成能などとの関連から、臨床モニターとしての有用性が論じられた。
3) バイパス止血製剤による整形外科手術の止血管理:竹谷英之(国立病院機構福井病院 リハビリテーション科)
インヒビター保有血友病患者の大手術の止血管理は大きな難関とされてきた。演者は、近年経験した整形外科手術におけるバイパス止血製剤を用いた止血管理の成績を通して、インヒビター保有血友病症例の外科手術の普及の可能性を論じた。
4) 救命医療におけるrFVIIaの止血効果:野田真理子、太田祥一、三島史朗、行岡哲男(東京医科大学救急医学)
rFVIIaは、大きな外傷の救命治療における一般的止血剤としても期待がもたれている。骨盤骨折に伴う腸骨動脈出血に対しては一般的に経動脈カテーテルによりエンボリゼーションによる止血を行う。本症例では、その代わりに末梢静脈からrFVIIaが投与された。講演では、rFVIIa投与後の止血過程が動脈造影画像により提示された。

日本血栓止血学会
血友病検討部会
新井 盛夫※1 東京医科大学 臨床検査医学客員助教授
嶋 緑倫(幹事) 奈良県立医科大学 小児科助教授
白幡 聡※2 産業医科大学 小児科教授
高田 昇 広島大学 輸血部助教授
高松 純樹 名古屋大学 輸血部教授
瀧 正志(幹事) 聖マリアンナ医科大学 小児科助教授
花房 秀次 荻窪病院 小児科部長
日笠 聡 兵庫医科大学 総合内科
福武 勝幸(診療連携幹事) 東京医科大学 臨床検査医学教授
三間屋 純一 静岡県立こども病院 血液腫瘍科科長
吉岡 章(ITI小委員長) 奈良県立医科大学 小児科教授

※1部会長就任期間:2004年4月1日〜2004年10月31日
※2部会長就任期間:2004年11月1日〜2005年3月31日
 新井盛夫は、2004年10月31日付けで東京医科大学を辞し、11月1日よりノボノルディスクファーマ(株)のノボセブン臨床開発部長に就任した。11月1日付けで、吉岡章教授(血友病検討部会担当理事)より、2004年11月1日から2005年3月31日までの期間の部会長は白幡聡教授に委嘱された。
【※別紙】第2回 患者様と医療者との血友病診療連携についての懇談会
 血友病検討部会では、平成17年3月20日(日)午前10時から午後4時まで、東京医科大学病院本館6階の第2第3会議室において、『第2回患者様と医療者との血友病診療連携についての懇談会』を開催した。参加者は全国の患者会関係者33名、医療関係者13名であった。

 午前10時から 「開会の挨拶」を産業医科大学の白幡聡教授が行い、続いて、血友病検討部会からの話題提供として、東京医科大学の福武勝幸が司会を務め、1)血友病患者数の動向(瀧正志)2)最近の血友病の治療薬の動向(白幡聡)3)定期補充療法(瀧正志)4)インヒビターと治療 全般(嶋緑倫)、ITI(吉岡章)5)HIV感染症の治療(花房秀次)6)HCV慢性肝炎の治療(福武勝幸)7)血友病医療事情について(三間屋純一)8)専門医の役割・連絡体制の整備(高田昇)9)患者様と製薬会社との関係、その他(福武勝幸)について、各テーマ5分間程度のプレゼンテーションを行った。

 午前11時から、患者と専門部会の二つに分かれ、患者懇談会は第2第3会議室、専門部会は特別会議室にて各々の話し合いの時間を設けた。午後1時からの昼食を挟み、そのまま続いて、午後1時30分より第2第3会議室にて合同懇談会を行った。患者さんに司会をお願いし、次のような仮のテーマをもとに質疑を行った。1)各地域の血友病医療のために、「いわゆる専門医」にしてもらいたいことがあるか。例えば、各地域で定期的に専門医と懇談する場を作る(実際には各地で行われているかもしれない)。2)各地域の血友病医療で不足しているものが何かあるか。3)定期補充療法についてどう考えて取り組むべきと思うか。4)C型肝炎の治療を普及させるにはどうしたら良いと思うか。何が治療を滞らせる原因か(通院時間、自己注射など)。5)全国規模で、医療側と患者側との連絡体制を密接にする方法はどうしたらよいか(医療側の連絡網、患者側の連絡網、両者合同の連絡網の整備の可能性など)。6)世界の患者会との連携についてどう考えるか。7)小児慢性特定疾患療養費への今後の対応について。8)その他の希望。以上のテーマについて、活発な議論が行われた。

 午後3時55分に閉会挨拶を奈良県立医科大学の吉岡章教授が行い、午後4時に閉会した。

 詳細は議事録に記載するが、この懇談会のように直接話し合う機会は大切であるとする認識は、患者さんの間でも医療者の間でも同じであり、今後とも継続して更に緊密な関係作りをすることを望むとの方向性で意見が一致した。
(福武 勝幸)



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