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凝固因子製剤の種類がインヒビター発現に及ぼす影響
平成18年11月16日
凝固因子製剤の種類がインヒビター発現に及ぼす影響 日本血栓止血学会学術標準化委員会血友病部会 嶋 緑倫(部会長)、瀧 正志(副部会長)、天野 景裕(副部会長) 岡 敏明、高田 昇、高松 純樹、竹谷 英之、花房 秀次 日笠 聡、福武 勝幸、松下 正、三間屋 純一 吉岡 章(担当理事)、白幡 聡 第VIII因子製剤とインヒビター発生の因果関係について、不正確な情報をもとにした推測により、過剰と思われる心配が患者さんや医療関係者に広がっていると見受けられるため、血友病専門医として現時点での情報を分析して見解を述べる。 凝固因子製剤を輸注された血友病A(B)患者に、血液凝固第[(\)因子に対するインヒビターが発現することがある。ひとたびインヒビターが発現すると凝固因子製剤による補充療法の止血効果が減弱ないし消失するため、その後の止血管理が困難になる。 これまで、インヒビターの発現にどのような要因が関与するか多くの研究が行われてきた。その結果、発現リスクは血友病Bより血友病A、中等症・軽症より重症型、人種では黒人、ヒスパニック、白人の順に、さらに、小さな遺伝子変異より大きな変異例に高いことなどが国内外の血友病専門医の一致した見解である。一方、使用された凝固因子製剤の影響については、わが国では使用されなかった二種類の特定の血漿由来製剤で明らかに高率にインヒビターが発現したという事実があるものの1,2)、これ以外の血漿由来製剤と遺伝子組換え製剤の間でインヒビター発現に差があるかについては、専門医の間で必ずしも見解が一致していない。両製剤間の差異の有無を明確にするためには、同一施設(群)において、同時期に、同間隔、同一方法でインヒビターの発現率と発現したインヒビターの性質(低反応型か高反応型かなど)を前方視的に比較検討した成績が必要であるが、これまでそのような成績の報告はない。従って、現時点で両製剤間でのインヒビター発現の差異を検討する場合、異なる研究で得られた成績を用いて比較せざるを得ない。それらの中で、比較的、患者背景や測定条件を揃え、患者数も多い調査成績をみると、ドイツの広範な疫学的研究など多くの比較研究で3)、両群間のインヒビター発現率に差がないと報告されている。これに対し、Wightら4)のレビューでは、単独の血漿由来製剤を輸注された患者群では、複数の血漿由来製剤や遺伝子組換え製剤を輸注された患者群と比べてインヒビター発現率が低かったと報告されている。しかし、単独の製剤輸注群として引用されている4文献で5〜8)、輸注された製剤は全て異なっていて、高純度製剤での検討は1文献のみであり、他の文献では、クリオプレシピテートや中間型濃縮製剤が用いられている。また、本年フランスの研究グループが、血漿由来製剤は遺伝子組換え製剤に比べてインヒビターの発現が低いことを示唆する成績を報告したが9)、この論文の評価にあたっても下記の点に留意する必要がある。すなわち、(1)本論文は、遺伝子組換え第[因子製剤とvon Willebrand因子含有血漿由来製剤を投与された、過去に凝固因子製剤を投与され たことのない患者に関して、別々に実施された調査報告の比較であり、調査条件が同等でない。(2)3つのエンドポイントで、全てのインヒビター発生率と、高力価のインヒビター発生および(あるいは)免疫寛容療法を行った患者の率、には有意差を認めたが、高力価インヒビターの発生率に限ると有意差はみられていない。(3)本調査は、遺伝子組換え第[因子製剤とvon Willebrand因子含有製剤 の比較であり、von Willebrand因子を含有していない血漿由来第[因子製剤は調査対象となっていない。従って、遺伝子組換え第[因子製剤によるインヒビター発生率をモノクローナル抗体精製血漿由来第[因子製剤による発生率と比較しているかのように考えるのは誤りである。 高反応型(high responder type)のインヒビターが発現した血友病A(B)患者に対して、第[(\)因子製剤を頻回、大量に輸注してインヒビターの消失をはかる治療法(免疫寛容療法,ITI)がある。von Willebrand因子(V WF)を含まない第[因子製剤による免疫寛容療法が失敗した患者にVWFを含む第VIII因子製剤で、再度、免疫寛容療法を施行したところ、インヒビターが消失した例があったという報告もあるが、比較研究ではない。製剤の投与方法と製剤間のITIの成功率の差異を厳密に比較する国際研究が現在進行中であるので、免疫寛容療法における製剤間の優劣の有無については、国際研究の結果を待って判断すべきである。 以上、VWFがインヒビターの発現に抑制的に働く可能性を否定はできないものの、国外の多くの血友病専門医の見解と同様、インヒビターの発現に関して、「VWF含有第VIII因子製剤と遺伝子組換え第VIII因子製剤の間には差がある可能性は否定できないが、血漿由来製剤と遺伝子組換え製剤の間に、統計学的に明らかな差があるといえる信頼できる研究成果はなく、インヒビターの発生率に関して製剤の違いによる差異はわかっていない。」というのが、現時点での本部会の見解である。また、免疫寛容療法を実施するにあたって、どの製剤が優れているか、現時点では言及できない。 文献
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