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日本血栓止血学会 学術専門部会 血友病標準化検討部会
コンセンサスシンポジウム 議事録 血友病家庭療法の再評価と保険適応外治療の方向性
開催日:平成14年11月16日 午後3:00〜5:00
神戸国際会議場 メインホール 座長:吉岡 章 (奈良県立医科大学 小児科教授) 連絡先:新井盛夫 東京医科大学 臨床検査医学 〒160-0023 東京都新宿区西新宿6−7−1 電話:03-5339-3770 FAX:03-5320-8816 血友病標準化検討部会のコンセンサスシンポジウム「血友病家庭療法の再評価と保険適応外治療の方向性」は、医療者、患者、製薬企業、行政の4者が参加して開催された。参加者総計は170名(表1)と、昨年の88名を大きく上回り、各方面から活発な意見が交わされた。血友病医療に革新をもたらした家庭療法は、広く普及するにつれて、患者の管理や教育の充実を求める声が出ている。今回、本療法の定着と標準化を目的として本部会が作成した「ガイドライン新案」が紹介された。後半では、医学的必要性から行われている凝固因子製剤の「適応外使用」に焦点を当て、現状と問題点が製薬企業から提示され、今後の方向性が明確にされた。 発表の概要
1. 血友病家庭療法の再評価
2. 血友病および類縁疾患における保険適応外の治療法の評価
I. 保険適応外治療の現状 東京医科大学 臨床検査医学 新井 盛夫 II. ファイバ、プロプレックスSTに関する問題点 バクスター株式会社 バイオサイエンス事業部 白石 睦 III. ノボセブンに関する問題点 ノボ ノルディスク ファーマ(株)小松 京子 1. 血友病家庭療法の再評価
I. ガイドライン新案 兵庫医科大学 総合内科 日笠 聡(スライド21枚)
血友病の在宅自己注射療法(家庭療法)は1983年に認可されて以来、全国に広く普及している。しかし、家庭療法の基準、教育項目、遵守事項、管理項目に関しては施設間での相違があり、患者の移動に伴う不都合が生じている。今回、血友病標準化検討部会では、家庭療法の標準化の推進、医療者側の管理基準などに重点を置いた新ガイドライン案を作成した。現在まで使用された各種のガイドラインやマニュアルと兵庫医科大学での自己注射の状況が報告され、患者により教育の指導者や内容にばらつきがあることや補充量が適切でない症例などが示された。新ガイドライン案では、従来からの家庭注射療法の目的、意義、方法、適応基準、認可、遵守事項が更改された。さらに新たな項目として、教育項目、記録表、継続・管理、教育の評価、実施医療機関のありかたに関する事項が提示され、継続にあたっては5年を目安に教育や治療方法の見直しが必要だとした。
II. 家庭バイパス治療のガイドライン案 静岡県立こども病院 血液腫瘍科 三間屋 純一(スライド16枚)
インヒビター保有患者の止血治療はバイパス製剤の副作用や止血効果の不確実性の問題があり、永らく家庭療法の適応とはみなされなかった。一方で、出血症状を繰り返し、バイパス製剤の早期輸注効果のあるインヒビター症例などには家庭療法を導入するニーズが高まっていた。平成11年には、インヒビター保有患者のバイパス治療の家庭療法が、一般の家庭療法に16年遅れて事実上認められた。インヒビター保有患者の家庭療法の導入の際には、非インヒビター患者の家庭療法の基準や教育項目に加えて、インヒビターの基本的知識や止血治療の特殊性の理解が求められる。しかし、開始年齢や出血頻度・重症度、インヒビター力価などには自由度をもたせる必要があるとした。バイパス療法に用いられるプロプレックスST、ファイバ、ノボセブンの3製剤に関して、血友病標準化検討部会が検討中の家庭療法時のプロトコール案が提示された。また、止血効果を高める使い方の提案として、ノボセブンと抗線溶剤の併用やノボセブンとプロプレックスSTを少量同時投与する方法が紹介された。
2. 血友病および類縁疾患における保険適応外の治療法の評価
I. 保険適応外治療の現状 東京医科大学 臨床検査医学 新井盛夫 (スライド16枚)
医療上の様々な理由や必要性から、薬剤が本来の「効能・効果」の枠を超えて使用されることがある。これらの所謂、「適応外使用」は、@適応や用法の追加、変更が望まれるもの、A臨床試験を必要とするもの、B学会で指針を出すべきもの、C警鐘を鳴らすべきものに大きく分類されることが示された。血友病および類縁疾患において適応外使用されている製剤に関しては、今後、適応外使用に係わる医薬用医薬品の取り扱いについて定めた厚生省の指針(医薬審104号、平成11年)に沿って方向性を打ち出す必要がある。その中で学会が担うべき役割が提起された。専門部会から使用指針を作成して公表し、さらにその後国内での適応外使用の状況と成績を吸い上げることにより、前向きに使用指針の改定と安全性情報の更新が可能であるとした。
II. ファイバ、プロプレックスSTに関する問題点
バクスター株式会社 バイオサイエンス事業部 白石 睦(スライド12枚)
ファイバの「効能・効果」は、血液凝固第VIII又は第\因子インヒビター力価が10ベセスダ単位(BU)以上の患者が対象とされている。この設定には科学的根拠はなく海外の添付文書にはインヒビター力価による使用基準は設けられていない。国内で10BU未満のインヒビター症例にファイバが有効に使用された13症例が紹介され、「効能・効果」の10BUの使用制限は合理的ではない旨が提示された。また、ファイバの使用にあたっては、「頭蓋内出血等緊急の場合又は、他の療法が奏効しないとき」「原則として連続3日以内投与する」などの保険局長通知もあり、臨床使用上の制限として問題になっていることも挙げられた。今後メーカーとして、10BU未満のインヒビター症例の適応について厚生労働省と相談するとした。プロプレックスSTはプロトロンビン複合体製剤であるが、「効能・効果」は血友病Bの補充療法及び第VIII因子インヒビター保有患者のみとなっている。国内では、第VII因子や第X因子の欠乏症・低下症の治療薬として承認された薬剤はないが、「血液製剤の使用指針(厚生省医薬安全局長通知、平成11年)」には、濃縮プロトロンビン複合体製剤を用いる旨の記載があるために矛盾が生じている。国内では、プロプレックスSTが第VII因子欠損症に実際に適応外使用され、11症例の有効例が報告されている。米国では同製剤が第VII因子欠乏症の治療製剤として認められていることも紹介され、今後、学会等から使用指針などによる指導を希望するとした。
質疑応答
長尾(前神奈川県立小児医療センター長)白石さんは、ファイバの認可の治験のときに、10ベセスダ単位という縛りはなかったとおっしゃいましたが、私の記憶では、当時の治験のデザインが、血友病Aで、10ベセスダ単位以上の患者さんを対象としていたと理解しています。実際には、私どもの血友病Bの患者さんで10ベセスダ未満の方の重症出血にも治験薬を使わせて頂きました。東京医科大学の藤巻先生がそのとき、中央薬事審議委員会で審査して、「症例があったので血友病Bのインヒビターも適応に入れました」とおっしゃった記憶もありますので、藤巻先生の御記憶がどうなのか確認できればと思います。白石さんが言われたように、10ベセスダ単位未満の症例のきちんとしたデータを蓄積して、改めて厚生労働省にお願いするというのが筋だろうと思っております。
白石 当時実際に治験にあたっていたのは、日本臓器製薬株式会社でしたので、私どもで入手している資料は限られています。しかし、その中で治験のプロトコールに関しましては、ベセスダ単位についての縛りはなかったと理解しています。それ以上の詳細の情報につきましては、私どもで開発をしてきたものではないので、わかりかねる部分がございます注)。 藤巻(東京医科大学名誉教授)ファイバの有効性を知るには、10ベセスダ単位以上の症例の方がいいだろうということで、そのようなデザインになったというように私は記憶しています。 吉岡 同時に連続使用は3日間までという縛りがかかったかと思いますが、これについても当時、具体的にプロトコール上に記載があったのかについても、御記憶があればお話しいただきたいと思いますが。 長尾 認可がおりる際に、私どもが(旧)厚生省に呼ばれまして、「こういう条件で認可しようと思う、どう思いますか」というお話がありました。その時に初めて3日間という縛りをつけることを聞きました。ファイバを3日間使用しますと当時の計算で1000万円かかりました。ですから、(高額な薬剤の許認可にあたっての経済的、)政治的配慮であるというふうに理解いたしました。 吉岡 今おっしゃいました1000万円というのは、おそらく、体重を50kgと考えて、最大限の投与量、100単位/kgを1日に3回まで投与した場合の3日間の総額が約1000万円になるということですね。 藤巻 長尾先生と私ともう一人の先生、3人で、(旧)厚生省の方に呼ばれまして、その時に保険の点数を決める担当の技官が、用量・用法を最大限3日間用いた場合に、約1000万円かかるということを非常に強調されました。私達3人の医師は、それ(3日間の使用制限)に相当反発しましたが、どうしても担当技官が折れないで、そのまま話が流れていってしまったということを記憶しています。 長尾 思い出しましたが、3日間の制限に関して、「原則として」という言葉を入れていただくのが、精一杯だったということです。現在の添付文書には「原則として」というのが入っているはずです。 注)バクスター社が後日確認したところ、当時のファイバ(非加熱製剤)の臨床試験のプロトコール上、対象患者のインヒビター力価の制限はなかった。実際に10BU未満のインヒビター保有患者も臨床試験に参加し、その結果は申請書類に含まれている。 III. ノボセブンに関する問題点 ノボ ノルディスク ファーマ(株)小松 京子(スライド12枚)
ノボセブンの「効能・効果」は、“インヒビターを保有する第VIII因子欠乏症(血友病A)または第IX因子欠乏症(血友病B)の出血抑制”であるが、この表現に後天性血友病が含まれるか否かが問題点として提起された。第VIII因子インヒビターは非血友病者にも自然発生する場合があり、後天性血友病と呼ばれる。海外でノボセブンが後天性血友病患者の止血治療に有効に用いられた成績が示された。またEUでは、申請審査過程で当局からの指導に基づき、ノボセブンの適応に「後天性血友病」と具体的に明記された経緯がある。本邦ではノボセブンが後天性血友病患者に処方できるかについて、「効能・効果」に括弧で示される(血友病A)(血友病B)という表現のために解釈が不明瞭になっている。また、インヒビター製剤の「効能・効果」の表現は、製剤により大きく異なっているが、特に科学的な根拠はないと考えられることから、これらを整合性のある妥当な表現とするよう学会での検討が要望された。一方、市販後調査の登録症例と学会報告より、ノボセブンが「適応外」で使用された各種の出血性疾患が報告された。しかし、血小板異常症や第VII因子欠乏症は非常に稀な疾患であり、各々の適応症に対して臨床試験を実施していくことは現実的ではない。現時点では、これらの症例にノボセブンを使用した場合には、保険審査の査定も問題になる。このため、学会で臨床試験に代わる方法で臨床的な有効性や安全性を評価し、治療指針が打ち出されることを希望するとした。
質疑応答
一瀬(山形大学 分子病態学)ドイツの大学と共同研究をしている関係で、毎年ドイツに行っていますが、そこでノボセブンの研究会にいつも出席して話を聞いています。その中で、今話されたようなノボセブンの適応外使用の症例の報告もたくさんありますが、交通事故で大量出血した場合や、イスラエルなどでは頭や腹を撃たれたときにも止血治療として使っています。あれは治験であったり、緊急事態だから医師の判断で使っているというわけですね。現在もEUにおけるノボセブンの適応というのは、先程示された通りと理解してよろしいですか。
小松 はい。現時点でのEUの適応症は先程示したとおりですし、米国におきましても国内の適応症の表現とほぼ同様のものです。 一瀬 日本の国内で、先程言ったような使い方はされておりませんか。 小松 外傷につきましてはございません。 総合討論
吉岡 それでは、これから討論に入りたいと思います。まず前半の家庭療法のガイドラインにつきまして、ご発言があればお願いいたします。家庭療法は現在では定着してきておりますが、えてして、時間がたつと医療者も患者さん側もルーズになることとか、もう一つは、体重や関節の状態が5年を経ますと状況が当然変わってきます。必ず再評価をすべきであるということが、日笠先生の御提案の中で新しい視点だったと思います。この点について、日笠先生、強調されることはございますか。
日笠 はい、慣れてきますと、だんだん洗練されてきますが、一部はルーズになってきます。一定時期に、ある一定の基準で再教育することが必要だと考えております。 河ア(福井病院) 家庭自己注射の、特に追加注射の事でコメントいたします。関節内出血で関節が腫れている患者さんは、補充療法さえすれば腫れも引くというような感覚をお持ちの方が結構いらっしゃいます。止血のためには当然、製剤の注射が必要ですが、注射したから腫れも引くというわけではなくて、局所に対する治療も合わせてするべきだということを、内科系の先生方のご理解とご指導も合わせてお願いしたいと思っております。 吉岡 大変大事な視点です。局所が改善しないまま、あるいは、なんとなく腫れているからという程度で輸注を続けることについては、やはりきちんとした教育や訓練が必要ですね。それではインヒビター症例のバイパス療法の家庭治療に関してはいかがでしょうか。世界的な流れとして、ハイレスポンダーとローレスポンダーという分類の考え方が少し変わってきたというように思っていますが、いかがでしょうか。 三間屋 最近では5単位以上がハイレスポンダーとされていますが、臨床的にはそれにあまり固執する必要はないと思います。ハイレスポンダーであれ、ローレスポンダーであれ出血症状は同様に出てくる場合があります。たしかに、かなりベセスダ単位が高い人では止血困難な場合もあると思いますけれども、基本的には治療方針は同じだと思います。 吉岡 線を引くとすれば、5ベセスダ単位が一応のラインになってきているということが一つと、バイパス治療を考えるときに、いわゆるバイパスするわけですから、インヒビターの力価は極端に言えば1であっても、100であっても、1000であっても、理論的にはあまり意味がないという理解でよろしいでしょうか。 三間屋 それでよろしいと思います。それから、インヒビターのある患者さんの場合に、どこまで家庭でバイパス治療をするべきかをきちんと説明しておきませんと、漫然と投与されて(医療費も)かなり高額になってしまいます。ある程度基準を決めておいて家庭治療で止血が不十分な時には病院に連絡していただくということが大切です。 高田(広島大学 輸血部) 私達のインヒビター患者さんの中で、家庭療法用にノボセブンとファイバを両方使われるかたがいらしゃいます。出血だと気がついて非常に早い時期にはノボセブンが良く効き、少し遅れてしまったと考えた時にはファイバが効果的だとおっしゃっています。あるいはまずノボセブンを注射し、止血効果がないときにファイバに変えるという使い分けをされています。私は、これは合理的だと思いました。ベセスダ単位には関係なく、そのような使い方もあるということをご紹介しました。 吉岡 インヒビターの患者さんについては、御自身の御経験や主治医と患者さんしかわからない、「あうんの呼吸」のような面もありますので、一人一人のテーラーメードの方法もあるのかと思います。学会で作るガイドラインは、こういう方法もある、ああいうことも可能だということに配慮することも必要だと思われます。 三間屋 現実的には病院によってノボセブンを(納入されていないので)処方できないこともありますので、地域によって治療法の対応が違ってくることがあります。しかし、最低限のガイドラインは確かに必要かと思っております。 新井 高田先生のご発言とは違う意見ですが、必ずしも出血してから時間が経ってしまうとノボセブンは効かないというものではなく、そのような根拠もありません。実際、我々の経験した中でも陳旧性の血腫に効いた症例があります。また、ベセスダの力価とバイパス療法の製剤の選択は関連づけられないと考えていいと思います。1000単位ある患者さんでも、プロプレックスSTで効く患者は効きます。また、1単位であっても、ファイバ、ノボセブンが必要な患者さんもいます。やはり、使える製剤のオプションは多いに越したことはないですね。すべての患者さんのすべての出血をカバーできる製剤は1剤もありません。治療製剤はすべて同じような条件下で使えるのが一番いいと思います。 吉岡 もうひとつ大事なoff-labelの問題について議論を深めたいと思います。まず、プロプレックスとファイバについてバクスターの方からお話がございました。ファイバの使用についてはインヒビター力価が10ベセスダ単位以上の症例に限定されていることは大きな問題だと思います。それから「原則3日間の使用」という縛りについてご意見はありますでしょうか。 森戸(患者) 患者の森戸と申します。ファイバの使用に3日間の縛りがあることは、あまり合理的ではないと思います。特に重篤な頭蓋内出血等の場合、3日間で出血が止まらなければ、患者にとっては命の危機に直面する問題です。この件に関しては本学会の(血友病標準化検討)部会が強力にコメントして頂きたいと思います。もちろん、我々患者も運動して(意見を厚生労働省に)訴えかけていきたいと思いますので宜しくお願い致します。 吉岡 例えば、インヒビターのない患者さんが頭蓋内出血した場合に、3日間で止血治療をやめていいかといいますと、大多数の先生方は大変危険だとおっしゃると思います。止血を完全にするためや、(経過中に起こり得る)微出血とか後出血の予防のために最低1週間は補充療法が必要になります。そうしますと、(ましてや)インヒビターの患者さんは、3日間の治療だけでその重大出血に対応できるというわけではないので、無理のある設定であろうと思います。「原則3日間の使用」というこの縛りを今後是正していただくには、どういう方法があるかということを、厚生労働省から来ていただいている先生方にお伺いしたいと思います。 山田(厚生労働省、医薬局 審査管理課)ファイバの「原則3日間の使用」というのは、薬事法上の添付文書の記載ではなく、医療保険の適用上の縛りです。私は、直接所管しておりませんので、詳しくは保険局の方にお尋ねいただきたいのですが、学会の方で保険収載、あるいは保険で取り扱う内容について要望がある場合にはその保険当局の方に、出来るだけエビデンスになるような資料を一緒につけていただいて要望していただく方法があると思います。 吉岡 ありがとうございました。私どもでもエビデンスに基づくデータがあるわけですから、これは学会としても、また、メーカー側としても、是非要望を提出したいと思います。しかし、一方漫然と使っていいという問題ではありません。この縛りがある意味では安全性を担保したという面もあるかと思いますが、どうしても必要な患者さんにとっては、命にかかわることもあるという理解で進めたいと思います。「インヒビター力価が10ベセスダ単位以上の症例」という縛りの廃止についても、エビデンスに基づくデータをつけて、同様に要望を上げていけばよろしいのでしょうか。 山田 10単位という縛りは、添付文書の効能・効果の方に書いてありまして、これは薬事法上の承認事項です。これは先程、新井先生の御発表の中でございましたけれども、やはり何らかの有効性等を示すような臨床データをつけていただいて、効能・効果の一部変更の承認申請をしていただかなければならないかと思います。インヒビターを発現しているような稀少疾病で症例数が集まりにくい場合には、いろいろな施設での使用経験や文献データなども活用していただいて、データを集めていただき、学会で評価をいただいた上で、学会として御要望いただくというプロセスだと思います。 吉岡 どうもありがとうございました。プロプレックスSTについては、第IX因子の補充療法以外に第VII因子欠乏症その他に使われている実態があるということでしたが、これについて新井先生、いかがでしょうか。 新井 我々も先天性第VII因子欠損症の手術にプロプレックスSTを使用した症例報告を出しておりますが、本製剤を使って良好な止血管理がされたという症例は、他の施設でも経験されていると思います。そういった症例報告や海外のデータを集めれば、十分に説得力のあるものになると思いますので、学会の方から、まず指針を出すことは出来ると思います。適応症に追加を要望するかどうかは、次のステップでもよろしいかと考えます。 吉岡 プロトロンビン、第VII因子、第X因子の先天性欠乏症は極めて少ない疾患ですので、やはりこのようなプロセスでお願いをするという形になろうかと思います。我が国のプロトロンビン複合体製剤にはもう1剤、日本製薬のPPSBがあります。これについても同じ議論が必要ですが、日本製薬のかたにご意見をお伺いします。 田中(日本製薬) 大変申し訳ありませんが、私は研究に所属しておりまして、本日責任をもってお答えできる立場の者はきておりません。 吉岡 効能効果に書かれていない、稀少症例の止血効果に関する適用拡大の申請については、どなたにお聞きしたらよろしいでしょうか。 別井(厚生労働省、医政局 研究開発振興課) 医政局の研究開発振興課では、関係企業に学会からの御要望をお伝えしていくという使命を持っております。このような(希少症例に薬剤を適応外使用する)ケースにつきましては、過去の薬害(の事例)を考えますと、今の段階で誰も責任をとらないような状況で使われ続けるということは、適切ではありません。当局の立場から言えば、やはり適応外使用でずっと使われるのでなく、申請をしていただく必要があると思います。もちろん、今、山田補佐の方が言いました通り、稀少疾病の場合には、そのデータ(の解釈)については(審査において)配慮できるかと思います。今日、担当の審査センターの永田が来ておりますが、審査におけるコメントが彼の方からあると思います。 吉岡 具体的にこういうものの申請を受ける立場としては、永田先生の方から、いかがでしょうか。 永田(国立医薬品食品衛生研究所 医薬品医療機器審査センター審査第3部) 適応外使用に関して、先程の通知(医薬審104号)に基づいて申請されるものは、社会的あるいは臨床現場でのニーズが高いものだと思いますので、審査センターとしても迅速に審査を進めて、可能な限り承認する方向で対応をしていきたいと考えており、実際にそうしております。しかしながら、そういう審査の際におきましても、申請時に出される資料が充実していますと審査も順調に進みますが、申請者の方で調べきれていない部分が多かったり、データのまとめ方が悪い時にはどうしても審査の過程でその点が問題になり、不必要に時間を要し、結果的に医療現場の方にとっても良くない状況となります。申請に際して申請者の方には資料に不備がないよう重々お願いしておきたいと存じます。 吉岡 ご指導いただきましてありがとうございました。それでは、最後にノボセブンの問題に移ります。ノボセブンの「効能・効果」の文言ですが、血友病というのは、一般には先天性の血友病を考えますが、「後天性血友病」という名前がある限り、それも含まれないわけではないという考え方と、やはり一般的に先天性を考えるのであれば、後天性というのは改めて「効能・効果」に明記した方が良いという考え方の議論だったかと思います。ヨーロッパではノボセブンの申請の時に、「後天性」も加えるべきだということを行政の方から指導されて、「効能・効果」に入っているようです。日本では、会社として「効能・効果」の文言を決めるとき、あるいは、治験にたずさわった者としてはもっと慎重にあるべきだったと言われればその通りだと思います。現実には「血友病」ということで、広く解釈していただくことは可能でしょうか。「血友病は先天性も後天性も含まれる」とは、言っていただけないとしても、実際、それしか止血方法がない場合には、(ノボセブンの後天性血友病に対する使用を)認めていただけるという希望もありますが。山田先生、お立場上難しいと思いますが、一言お願い致します。 山田 薬事法上は、医薬品の承認事項として設定される「効能・効果」というのは、どういう効能があるかということを示すというだけで、書き方について一定のルールがあるというわけではありません。ですから、学会や国際的基準で認められた疾患名とか症状名が一般的にどのような範囲で認識をされるかということだと思います。ノボセブンの場合については、主たる「効能・効果」の表現としては、血液凝固第VIII因子欠乏症、それから第IX因子欠乏症となっておりまして、括弧書きで書いてあるのは、いわば例示というふうに認識をしております。ですから、血友病Aそれから血友病Bという括弧書きがふさわしいかどうかは、先生方、あるいは専門の学会のほうで、御見解を出していただければ、それでよろしいかもしれません。それから、必要であればふさわしい表現に読み替えるとかいうことは可能だと思います。読み替えという場合には、承認事項の変更になりますので、製薬メーカーから(一部変更承認)申請をしていただくことになりますけれども、特段、特別なデータ等はなくても、申請を受け付けるような取り扱いはしたいと思っております。 吉岡 本当にありがとうございます。時間も押し迫っておりますけれども、off-labelの問題につきまして、さらに御質問なり御追加ございますか。 新井 一つだけコメントしますが、稀な疾患の患者さんは本当にマイノリティなのです。血友病、特に血友病Aの患者さんは(先天性凝固異常症の中では)多数派で治療法にはむしろ恵まれています。凝固異常症の中で、たまたま第XI因子欠損症で生まれた方には凝固因子製剤がありません。我々は、血友病Aの治療で補充療法がほぼ究極に達した今は、そういったマイノリティの方に目を向ける時代になってきていると思います。血友病患者さんの間でも、血友病Bは常に血友病Aの後を追わされてきました。製剤の加熱の時期も遅れましたし、高度精製製剤の登場も遅れました。今でも、第IX因子の遺伝子組換え製剤が海外では使われているのに、日本では認められていない状況です。そういったことを、これから十分に考えていく必要があると思います。 吉岡 ありがとうございます。今日は医薬局から血液対策課の課長補佐でいらっしゃる田中先生もおみえいただいております。皆さんにとって、大事な第VIII因子の供給不足問題につきまして、11月初めに行われました血液事業部会で、大体のコンセンサスが出たとお聞きしておりますので、田中先生よろしければそのあたりにつきまして御説明いただいてもいいでしょうか。 田中(厚生労働省、医薬局 血液対策課) 今のところの見通しですが、12月末には第VIII因子製剤の在庫量は6.2か月分が見込まれている状況です。したがいまして、いろいろと成分献血の推進などを進めてきたわけですけれども、そういった緊急対応すべき状況というのは解消されつつあるということを報告させていただきました。今後は、もう少し安定供給の状況を見極めたいということと、この(第VIII因子供給不足の)原因となりました米国の工場の現状などにつきまして、もう少し情報を集めまして、結論を出していきたいと思います。 吉岡 ありがとうございました。今、お話をお伺いして、かなり安心できる状況に近づいていると思いました。最後になりますけれども、国際的なITI(免疫寛容療法)研究にスタンバイは出来ていましたが、(それに必要な第VIII因子製剤供給不足の問題が発生したため)実際には開始できる状況ではありませんでした。田中先生の今のご発言がありましたので、その点につきまして、御協力をお約束していただいておりました日赤として、見通しはいかがなものでしょうか。 鈴木(日本赤十字社) お答えします。日本赤十字社がITI国際研究に協力するということにつきまして、平成12年の12月に、日本赤十字社の社長が、日本血栓止血学会の理事長に対してお約束させていただいております。今日もその考えは全く変わりありません。昨年来から、クロスエイトMの(出庫の)月別変動が大きいということから、先を見通すということが非常に困難でした。ただ、最近になりまして、供給状況の見通しができるようになってまいりました。本年10月現在のクロスエイトMの在庫は3ヶ月弱です。危機管理を考慮した適正在庫としての4ヶ月分には至っていませんが、安定供給のための適正在庫にはほぼ近づいているという状況です。今後も、直近数ヶ月の平均実績で供給が継続するならば、平成15年度も同様の在庫をほぼ維持できる見込みがあると考えております。日本赤十字社では、現時点におきまして、安定供給に必要な在庫を今後も維持できる見込みがたったと判断しております。したがいまして、ITI療法の臨床研究用として、適切な時期にクロスエイトMを提供することが可能だと判断しております。具体的な製品の提供時期、あるいは提供方法につきましては、今後ITI小委員会の先生方と御相談させていただきたいと思います。 吉岡 鈴木さん、本当にありがとうございました。非常に力強いお言葉をいただきまして、今日は最後にホッとすることになりました。これですべての血友病、off-labelを含める治療の問題が解決したというほど簡単ではありませんけれども、いろいろ紆余曲折がある中で、将来に向けての方向性は十分に整いつつあるという力強い印象を感じました。5人の先生方、御発言ありがとうございました。また、フロアは患者さん、企業の方、そして厚生労働省からも遠いところお忙しい中を参加していだきましたことを、司会者として非常にうれしく思っております。改めて御礼申し上げます。 |
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